贈与契約に関しては、民法上では個人間だけに限定しているわけではありません(民法549)。そのため、個人と法人、または法人間で贈与が行われることもあるということになります。
 贈与における個人と法人の関係は、以下の4つの形式に分類することができます。
 ①個人から個人への贈与、②個人から法人への贈与、③法人から個人への贈与、④法人から法人への贈与、となります。
 形式によっては、お金や物をあげた (贈与した)人である「贈与者」と、お金や物をもらった人である「受贈者」の両者とも税金がかかります。

個人から個人への贈与

 「受贈者」に贈与税がかかります。なお、基本的には、個人が財産をもらった場合には、その財産の増加によって所得が生じるため、所得税の課税原因となります。ただし、贈与税が課税されるため、重ねて所得税を課税しないこととされています(所法9①十六)。なお、財産をあげる「贈与者」は、原則的には税金がかかりません。

個人から法人への贈与

 (通常の法人に贈与した場合)
 財産をもらう「受贈者」である法人には法人税がかかります。財産を時価でもらったことになり、受贈益になるからです(法法22②)。仕訳は以下の通りになります。
 土地  ×××    受贈益  ×××
 
 また、「贈与者」である個人も、財産を時価で渡したとして「みなし譲渡所得課税」がかかります(所法59)。注意点は、財産をもらった方も、あげた方も、財産を路線価ではなく時価で税金を計算するということです。
 「みなし譲渡所得課税」とは、文字どおり譲渡所得があったとみなして、税金をかけるということです。財産を時価で売却し収入があったとみなし、その財産の取得費などを差し引いた所得に対して所得税がかかります。そのため、含み益がある財産(例えば、購入したときより値上がりしている土地)を、法人にあげた場合、財産をあげた個人にも税金がかかることになります。なお、現金で贈与する場合、含み益がありませんので、「みなし譲渡所得課税」は、かかりません。
 
 (公益法人に贈与した場合)
 一定の要件を満たす公益法人等への贈与(一般的には寄付と言われる)の場合は、「みなし譲渡所得課税」は、かかりません(措法40)。
 
 (同族会社に贈与した場合)
 同族会社に贈与した場合、株式等の価額が増加したならば、増加した部分に相当する金額を株主は贈与されたとされます(相基通9-2)。よって、「贈与者」と「受贈者」に税金がかかるだけではなく、その同族会社の株主にも贈与税がかかることになります。

法人から個人への贈与

 「贈与者」である法人は、財産を時価で渡したとして法人税がかかります。仕訳は以下の通りになります。
 貸方(右側)は、時価と取得価額との差額が「売却益」となります。また、借方(左側)は、法人と個人間に雇用関係等(従業員・役員)があれば「賞与・役員賞与」になり、雇用関係がなければ「寄付金」となります。
 寄付金等  ×××     土地   ×××
                  売却益 ×××
 
 一方、「受贈者」である個人には、所得税がかかります。法人と個人間に雇用関係(従業員・役員)があれば「給与所得」になり、雇用関係がなければ「一時所得」となります (所法34①、所基通34ー1)。

法人から法人への贈与

 「贈与者」である法人は、上記と同じように財産を時価で渡したとして法人税がかかります。「受贈者」である法人は、財産を時価でもらったことになり、受贈益として法人税がかかります。

まとめ

贈与形式贈与者の課税受贈者の課税
個人から個人への贈与課税なし贈与税がかかる
個人から法人への贈与みなし譲渡所得課税法人税がかかる
法人から個人への贈与法人税がかかる所得税がかかる
法人から法人への贈与法人税がかかる法人税がかかる