概要
マイニングにより暗号資産を取得した場合、その取得に伴い生ずる利益は所得税又は法人税の課税対象となります。
暗号資産の取得時点の価額(時価)については所得の金額の計算上総収入金額(法人税においては益金の額)に算入され、マイニング等に要した費用については所得の金額の計算上必要経費(法人税においては損金の額)に算入されることになります。
なお、個人によるマイニングに係る所得は事業所得ではなく雑所得に該当すると判断された令和4年1月7日裁決(大裁(所)令3第28号)があります。
現時点で、個人がマイニングをしても儲かるような環境でないため、されている方は以前に比べ少ないと思いますが、事業所得とする場合は注意が必要です。
令和4年1月7日裁決・大裁(所)令3第28号判断要旨
請求人は、請求人が行う仮想通貨のマイニング(本件マイニング)に係る所得は、本件マイニングについて、①人的・物的設備を備え、②自己の危険と計算による企画遂行を行い、③精神的・肉体的労力を費やしていることなどから事業性が認められ、また、本件マイニングの開始に当たり、マイニングマシンを経営力向上設備等とする経営力向上計画について中小企業等経営強化法の認定を受けていることから、中小企業経営強化税制の目的に鑑みても、事業所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件マイニングは、①マイニングマシンの購入代金の完済を停止条件として当該マイニングマシンの販売元の会社(N社)にマイニングの業務委託が行われ、②本件マイニングの収益において最も重要な仮想通貨の種別の選択権や市況環境を踏まえての停止や種別変更の判断も全てN社に委ねられ、請求人には異議を述べる権限もうかがわれないし、③請求人は本件マイニングに係る損失も負担せず、その運営経費の内容・金額についても不知であることからすると、請求人が行う本件マイニングは、請求人がマイニングマシンの取得費用の限度で危険を負担してN社が主体となって行う本件マイニングから生じる利益の分配を受けるというものに等しく、その経済的実質はN社が行うマイニングへの投資に等しいといえるから、客観的、実質的にみて、請求人の計算と危険において独立して営まれる業務であるとはいえない。
また、中小企業等経営強化法における経営力向上計画の認定を受けただけでは、租税特別措置法第10条の5の3《特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除》第1項に規定する特定経営力向上設備等を「事業の用に供した」ことを充足することにはならない。
以上のことを踏まえると、本件マイニングに係る所得は事業所得ではなく雑所得に該当する。