消費税の課税の対象となる取引は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等です。国内において行われているかどうかの判定は、資産の譲渡の場合、その譲渡が行われる時におけるその資産の所在場所が国内であるかどうかにより行います(消法4③一)。
昨今、有価証券の電子化等に伴って増加している無券面の有価証券等については、所在場所が明らかでなく、平成30(2018)年度税制改正以前は、譲渡が行われる時に所在場所が明らかでないものについては、その譲渡を行う者の主たる事務所等の所在地で判定することとされていました。
そのため、無券面の外国株式等を譲渡したものが内国法人(国内事務所等が取引)である場合、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等となり、消費税の課税対象(非課税売上)となっていました。
非課税売上(譲渡対価×5%)となる場合には、仕入税額控除が減少(課税売上割合が低下)し、消費税の納付額が増加する場合があります。
それが、平成30(2018)年度税制改正で、無券面の有価証券等の譲渡に係る内外判定は、次のように取り扱われることとなりました(消令6①九)。なお、この改正は、平成30年4月1日以後の取引について適用されます(平成31年消令附則1、2)。
① 振替機関及びこれに類する外国の機関(以下「振替機関等」といいます。)が取り扱う券面のない有価証券等については、振替機関等(※)の所在地。
② ①以外の無券面の有価証券等については、その有価証券等に係る法人の本店、主たる事務所その他これらに準ずるものの所在地。
※ 振替機関には、社債、株式等の振替に関する法律2条2項《定義》に規定する振替機関である株式会社証券保管振替機構及び同法48条《日本銀行が国債の振替に関する業務を営む場合の特例》の規定により振替機関とみなされる者である日本銀行が該当します。また、これに類する外国の機関には、例えば、アジア・太平洋地域や欧州地域等、各地域に設立されている振替機関などが所属する協会(いわゆるCSD協会)に加盟する各振替機関(清算機関を除きます。)及び外国の中央銀行が該当します(消令6①九ハ)。
有価証券等の種類 | 内外判定基準 | 例 | ||
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振替機関等が 取り扱うもの | ・有価証券(消法別表第一第二号) ・有価証券に表示されるべき権利(消令9条1項一号) ・持分会社の持分等(同二号) | 振替機関等の所在地 | ・上場株式 ・振替債 | |
振替機関等が取り扱わないもの | 券面 あり | ・有価証券(消法別表第一第二号) | 有価証券の所在地 | (券面のある) ・非上場株式 ・振替債以外の債券 |
券面 なし | ・有価証券に表示されるべき権利(消令9条1項一号) ・持分会社の持分等(同二号) ・権利株等(同三号) | 権利又は持分に係る法人の本店、主たる事務所その他これらに準ずるものの所在地 | (券面のない) ・非上場株式 ・振替債以外の債券 |
上記の改正により、振替機関等の所在地が国外にある場合及び振替機関等が取り扱わない無券面の外国株式等である場合は、国外取引として区分され、消費税の課税対象外となります。このことにより消費税の課税において、次のように納税者有利に取り扱われることとなりました。
① 国外取引なので、譲渡対価(不課税売上)の額は、課税売上割合の計算に影響を及ぼしません。
② 個別対応方式による場合、購入時、譲渡時における国内手数料を課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等に係るものとして区分し、手数料に係る消費税額の全額を仕入控除税額(消基通11-2-13)とし、その課税期間中の課税売上げに係る消費税額から控除することが可能です。