外国税額控除とは

 一般的に、日本の居住者の場合であっても、外国にその源泉がある所得(外国株式投資に係る配当や外国公社債投資に係る利子)は、まず外国で課税(源泉徴収)されます。

 そして、この外国で課税された配当・利子等に対して日本国内でも課税されます。

 このように外国と日本とで二重に課税されることを二重課税といいますが、確定申告等において外国税額控除が適用でき、支払った外国所得税額のうち一定額を日本の所得税・住民税から控除することができます(所法95①、44の3、所令222)。

 なお、外国税額控除の適用を受けるためには、確定申告書、修正申告書又は更正の請求書に外国税額控除に関する明細書及び控除対象外国所得税を課されたことを証する申告書等の写し等のほか、各種所得ごとに計算された国外所得総額の計算に関する明細書を添付する必要があり、適用を受けることができる金額は、当該明細書等に記載された金額が限度となります(所法95⑩⑪、所規41、42)。

 したがって、源泉分離課税である一般公社債等の利子や、申告不要を選択した上場株式等の配当等、特定公社債等の利子等については、外国税額控除の適用はありません。

 また、外国所得税は、税額控除に代えて、選択により事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入することができます(所法46)。

外国税額控除限度額の計算

 支払った外国所得税額のうち控除できる金額(外国税額控除限度額)は、次の計算式によって計算します(所令222①)。

(1)所得税の控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)

〇「その年分の所得税額」とは、配当控除や住宅借入金等特別控除などの税額控除、災害減免額を適用した後の所得税額をいいます。

〇「その年分の所得総額」とは、純損失または雑損失の繰越控除や上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除などの各種繰越控除の適用を受けている場合には、その適用前のその年分の総所得金額、分離長(短)期譲渡所得の金額(特別控除前の金額)、一般株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等に係る譲渡所得等の金額、申告分離課税の上場株式等に係る配当所得等の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、退職所得金額および山林所得金額の合計額をいいます(所令222②)。

〇「その年分の調整国外所得金額」とは、純損失または雑損失の繰越控除や上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除などの各種繰越控除の適用を受けている場合には、その適用前のその年分の国外所得金額(非永住者については、国外所得金額のうち国内において支払われ、または国外から送金された国外源泉所得に係る部分に限ります。)をいいます。ただし、国外所得金額がその年分の所得総額に相当する金額を超える場合は、その年分の所得総額に相当する金額となります(所令222③)。

 なお、外国所得税額が上記の(1)「所得税の控除限度額」を超える場合には、次の算式で計算した金額を限度として、その超える金額を、その年分の復興特別所得税額や個人住民税(道府県民税・市町村民税)から差し引くことができます(復興所得税令3、所法95②、所令223)。

(2)復興特別所得税の控除限度額=その年分の復興特別所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)
(3)道府県民税の控除限度額=所得税の控除限度額×12%(一定の指定都市の区域内に住所を有する方は6%)
(4)市町村民税の控除限度額=所得税の控除限度額×18%(一定の指定都市の区域内に住所を有する方は24%)

〇「その年分の復興特別所得税額」とは、基準所得税額(その年分の所得税額)に2.1パーセントの税率を乗じて計算した金額をいいます。

国内上場株式等の譲渡損と外国上場株式等の配当・外国特定公社債の利子との損益通算をした場合の外国税額控除

 上場株式等の配当や特定公社債の利子が国外のものであっても、国内上場株式等の譲渡損(金融商品取引業者等を通じて譲渡したもの)と損益通算することができます。

 例えば、国内上場株式等の譲渡損600万円、外国上場株式等の配当400万円(国外源泉税40万円、他に国内源泉税あり)、総合課税による所得800万円だとします。

 確定申告により、国内上場株式等の譲渡損600万円、外国上場株式等の配当400万円を損益通算し、分離課税の所得金額は0円となります。

 そして、結果、総合課税による所得金額800万円に対する所得税額が仮に60万円(外国税額控除前)だとします。

 問題は、損益通算した場合の調整国外所得金額をどう考えるのかです。つまり、損益通算をする前で考えるのか、後で考えるのかです。

 上記例でいえば、調整国外所得金額を損益通算した後の0円(0円以下なら0円)と考えるのか、それとも、損益通算前の400万円と考えるのかということです。

 外国税額控除における所得税の控除限度額は、「その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)」となるため、調整国外所得金額が0円なら結果的に0円となります。

 調整国外所得金額が400万円なら、所得税の控除限度額は以下のようになります。

所得税額60万円×(調整国外所得金額400万円/所得総額800万円)=30万円

 損益通算した場合の調整国外所得金額をどう考えるのかで、外国税額控除の金額が変わってきてしまいますが、ここについてははっきりした答えがありません。

(1)損益通算した後で考える説
 外国税額控除の規定は、外国と日本との二重課税を調整するために設けられています。よって、損益通算した結果、国内所得税が課されていない外国上場株式等の配当について外国税額控除は適用できないという考えです。

(2)損益通算する前で考える説
 条文の文理解釈上、損益通算した後とは読めない、国内上場株式等の譲渡損は調整国外所得金額には含まれない等の理由で、外国税額控除は適用できるという考えです。

 上記2つの説があるので、確定申告をする場合は、所轄税務署に事前相談をされると良いでしょう。

 個人的には、「(2)損益通算する前で考える説」を支持しています。

 なお、条文上は、「当該国外所得金額がその年分の所得総額に相当する金額を超える場合には、その年分の所得総額に相当する金額とする。」(所令222③ただし書き)となっており、国外所得金額(分子)が所得総額(分母)を超える場合も想定されているという事になります。