所得税

 次年分の確定申告書の提出のときまでに、期限後申告書に必要書類(確定申告書付表及び計算明細書)を添付して提出することにより、上場株式等の譲渡損失の金額を「純損失等の金額」として申告することができます。

 つまり、本年分について特例を適用した期限後申告書を提出すれば、次年分の当初申告において繰越控除の適用を受けることができます。

 確定申告書には期限後申告書を含むこととされているからです(措法2①十、所法2①三十七)。なお、上場株式等の譲渡損失を翌年に繰り越すためには、譲渡損失の金額に関する明細書等の添付のある確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出しなければならないとされていますが、確定申告書を期限内に提出することは要件とされていません(措法37の12の2⑤⑦、平成28年3月7日裁決・裁事102集)。

 上場株式等の譲渡損失の金額が生じた口座が特定口座(源泉徴収あり)であっても、期限後申告書を提出することにより繰り越すことができます。

 ただし、法定納期限から5年を経過している場合は、期限後申告をすることはできず、上場株式等に係る譲渡損失を繰り越すことはできません(令和4年1月12日裁決・関栽(所)令3第13号)。

 また、本年分の期限後申告(確定申告書付表及び計算明細書)を提出する前に、次年分の確定申告書の提出をしてしまった場合には、その後において連続して確定申告書を提出したこととならないため、本年分の上場株式等の譲渡損失の金額については次年分に繰り越すことはできません。次年分について繰越控除の適用を求める更正の請求をすることはできません。

期限後申告書とは

 期限内申告書を提出すべきであった方は、申告書の提出期限を経過した後でも、税務署長の決定があるまでは、いつでも納税申告書を提出することができます(通法18①)。

 この規定により提出する納税申告書を期限後申告書といいます(通法18②)。

 期限内申告との違いは、その申告書が法定申告期限内に提出されたかどうかにとどまり、申告書の記載事項及び添付書類は何ら変わりはありません。

 令和5年中において上場株式等の譲渡損失の金額200万円が生じていたが、令和6年3月15日までに申告をしていなかったとします。

 この場合、令和6年分の確定申告書の提出のときまでに、令和5年分の期限後申告書に必要書類(確定申告書付表及び計算明細書)を添付して提出すれば、譲渡損失の金額200万円を令和6年分以後に繰り越せます。

 令和5年分の期限後申告(確定申告書付表及び計算明細書)を提出する前に、令和6年分の確定申告書の提出をしてしまった場合には、その後において連続して確定申告書を提出したこととならないため、令和5年分の上場株式等の譲渡損失の金額200万円については令和6年分以後に繰り越すことはできません。

住民税

 令和5年度(令和4年分)以前の申告については、住民税の納税通知書が送達されるまでに、申告書を提出していないと、当該年度に生じた譲渡損失を、翌年度以降に繰り越すための申告ができませんでした。

 ただし、令和6年度(令和5年分)以降は、確定申告書が提出されれば、納税通知書の送達後であっても、所得税と同様に住民税においても(損益通算・)繰越控除が適用されます。

 なお、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除は、依然として、納税通知書が送達されるまでに提出することが要件となっているので、注意が必要です(いずれ、法改正されると思いますが)。

地方税法附則35条の2の6(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除) 改正前

5 道府県民税の所得割の納税義務者の前年前三年内の各年に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額(この項の規定により前年前において控除されたものを除く。)は、当該上場株式等に係る譲渡損失の金額の生じた年の末日の属する年度の翌年度の道府県民税について上場株式等に係る譲渡損失の金額の控除に関する事項を記載した第四十五条の二第一項又は第三項の規定による申告書(第八項において準用する同条第四項の規定による申告書を含む。以下この項において同じ。)を提出した場合(市町村長においてやむを得ない事情があると認める場合には、これらの申告書をその提出期限後において道府県民税の納税通知書が送達される時までに提出した場合を含む。)において、その後の年度分の道府県民税について連続してこれらの申告書(その提出期限後において道府県民税の納税通知書が送達される時までに提出されたものを含む。)を提出しているときに限り、附則第三十五条の二の二第一項後段の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、当該納税義務者の同項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び附則第三十三条の二第一項に規定する上場株式等に係る配当所得等の金額(第一項の規定の適用がある場合には、その適用後の金額。以下この項において同じ。)を限度として、当該上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上控除する。

地方税法附則35条の2の6(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除) 改正後

4 道府県民税の所得割の納税義務者の前年前三年内の各年に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額(この項の規定により前年前において控除されたものを除く。)は、当該上場株式等に係る譲渡損失の金額の生じた年分の所得税について確定申告書を提出した場合において、その後の年分の所得税について連続して確定申告書を提出しているとき(租税特別措置法第三十七条の十二の二第五項の規定の適用があるときに限る。)に限り、附則第三十五条の二の二第一項後段の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、当該納税義務者の同項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び附則第三十三条の二第一項に規定する上場株式等に係る配当所得等の金額(第一項の規定の適用がある場合には、その適用後の金額。以下この項において同じ。)を限度として、当該上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上控除する。

法定納期限から5年を経過しているため期限後申告をすることはできず、上場株式等に係る譲渡損失を繰り越すことはできないとされた事例-令和4年1月12日裁決(関栽(所)令3第13号)(棄却)

(1)事案の概要

 本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 審査請求人Xは、令和2年3月14日に、平成25年分及び平成26年分の所得税等について、各確定申告書に、「翌年以後に繰り越される上場株式等に係る譲渡損失の金額」、「翌年以後に繰り越される先物取引の差金等決済に係る損失の金額」を記載して申告した(以下、平成25年分の所得税等の確定申告を「平成25年分確定申告」といい、Xが平成25年分確定申告をした時を「平成25年分確定申告時」という。)。なお、平成25年分の所得税等の法定申告期限及び法定納期限は、平成26年3月17日である。また、Xは、平成24年分の所得税の確定申告をしておらず、原処分庁もXに対し当該年分の所得税に係る決定をしていない。

② Xは、令和2年6月8日に、平成27年分、平成28年分、平成29年分及び平成30年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税等について、期限後申告をした。

③ 原処分庁は、令和2年9月9日付で、Xに対し、平成25年分の所得税等の確定申告書は期限後申告をすることができる期間を徒過して提出されたものであるから、平成25年分に生じた損失金額を翌年分以後の年分に繰り越すことはできないなどとして、本件各年分の所得税等の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)並びに平成27年分及び平成28年分の所得税等に係る無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
 これに対し、Xが、その全部の取消しを求めた。

(2)本件の主な争点

 平成25年分確定申告時における平成25年分の所得税等の期限後申告の可否である。

(3)裁決要旨(棄却)

① 所得税等の期限後申告書を提出できる期間については、国税通則法(以下「通則法」という。)18条1項が同法25条の規定による決定があるまでと規定するほかに、これを明示する規定はない。しかしながら、課税庁が調査を行い、通則法24条の規定による更正又は同法25条の規定による決定を行うことができるのは、国税の徴収権が存在することが前提となるところ、国税の徴収権は、原則としてその国税の法定納期限から5年間行使しないことによって時効により消滅し(同法72条1項)、その時効については、その援用を要せず、また、その利益を放棄することができない(同条2項)ことからすると、時効期間が経過した場合は、納税者が時効の利益を受ける意思があるか否かを問わずに国税の徴収権は絶対的に消滅し、課税庁は徴収手続をすることができないと解することが相当である。そして、確定申告は、納税者自らの判断と責任においてその納税額を自ら確定させる行為であると解されるから、通則法25条の規定による決定がされない場合であっても、当該申告の対象となる国税の時効期間が経過し、抽象的な納税義務自体が消滅し、具体的な納税義務の内容をおよそ確定することができなくなったときには、期限後申告書は提出できなくなると解するほかはない。したがって、納税者が期限後申告書を提出できる期間は、原則として、当該国税に係る法定納期限から5年間〔ただし、国税の徴収権で、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、又はその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税に係るものの時効は、当該国税の法定納期限から2年間は進行しない(通則法73条3項)ので、この場合には、期限後申告書を提出できる期間は、法定納期限から7年間〕であると解するのが相当である。

② Xは、平成24年分の所得税について、偽りその他不正の行為により税額を免れていたから、平成24年分の所得税の期限後申告をすることができる期間は法定納期限から7年を経過する日までであり、平成25年分の賦課権が平成24年分より先に消滅することはあり得ないから、平成25年分の所得税等の期限後申告ができる旨主張する。しかしながら、措置法37条の12の2第9項の規定により読み替えた後の所得税法123条1項は、「その年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合」と、措置法41条の15第5項の規定により読み替えた後の所得税法123条1項は、「その年において生じた先物取引の差金等決済に係る損失の金額がある場合」と規定し、そもそも、所得税等の納税義務は暦年の終了の時に成立する(通則法15条2項1号)ことからすれば、期限後申告書を提出できる期間は年分ごとに判断するのは明らかである。そうすると、仮に平成24年分の所得税について通則法70条5項及び同法73条3項に規定する偽りその他不正の行為により税額を免れた事実があったとしても、当該事実が平成25年分の所得税等の期限後申告の期限に当然に影響するとはいえない。

③ また、Xは、平成25年分の所得税等についても偽りその他不正の行為により税額を免れていた事実がある旨主張するが、当該事実につき具体的な主張等をせず、不正な行為を行った事実を認めるに足りる証拠資料もないから、平成25年分の所得税等について、偽りその他不正の行為により税額を免れようとした事実は認められない。そうすると、令和2年3月14日の平成25年分確定申告時においては、平成25年分の所得税等の法定納期限(平成26年3月17日)から5年を経過し、Xの平成25年分の所得税等に関し通則法73条《時効の完成猶予及び更新》3項所定の事情(法定納期限から7年間)が存するとは認められないから、Xは、平成25年分の所得税等の期限後申告をすることができなかったこととなる。