概要
整理銘柄・監理銘柄に指定された株式でも、上場廃止前であれば、税法上は引き続き「上場株式等」に該当します。証券会社への売委託など一定の方法で売却して生じた損失は、要件を満たせば、上場株式等の配当等との損益通算や、翌年以後3年間の繰越控除の対象になります(措法37の11②一、37の12の2①②⑤)。
ただし、上場廃止後の売却や、NISA口座内の売却損失は取扱いが異なります。この記事では、個人が保有する国内上場株式について、指定中の売却、上場廃止後の売却、株式の価値喪失を分けて解説します。
整理銘柄・監理銘柄とは
整理銘柄・監理銘柄は、上場廃止の決定やその可能性について、取引所が投資家に注意を促すための指定です。指定されたこと自体で、直ちに上場廃止となるわけではありません。
| 区分 | 指定の意味 | 上場の状況 |
|---|---|---|
| 監理銘柄 | 上場廃止基準に該当するおそれがあり、取引所が確認・審査等を行っている銘柄 | 指定中も上場している |
| 整理銘柄 | 上場廃止が決定され、上場廃止までの売買機会を確保するために指定された銘柄 | 実際の上場廃止までは上場している |
監理銘柄は、確認・審査等の結果によって指定が解除されることもあれば、上場廃止が決定され、整理銘柄に指定されることもあります。
古い資料で使われる「監理ポスト」「整理ポスト」は、現在の監理銘柄・整理銘柄に対応する旧来の呼び方です。
整理銘柄の指定期間を一律に1か月と考えない
整理銘柄の指定期間は、上場廃止の理由や取引所の規則によって異なります。通常1か月程度とされる場合がありますが、東証の上場維持基準への不適合に関しては、原則6か月間の監理・整理銘柄期間を経て上場廃止に至る取扱いがあります。
売却を検討するときは、その銘柄について公表されている「最終売買日」と「上場廃止日」を確認してください。上場廃止日の前日まで取引所で売買できるとは限りません(日本取引所グループ「上場維持基準に関する経過措置の終了」及び東京証券取引所「経過措置適用会社の状況について」4頁)。
上場廃止前の売却損失はどう扱うか
整理銘柄・監理銘柄でも、上場株式等として計算する
整理銘柄・監理銘柄の指定中でも、上場廃止前に売却した株式の損益は、上場株式等の譲渡損益として計算します。売却益が生じた場合も、通常の上場株式と同様に申告分離課税の対象です(措法37の11①②一)。
売却損失は、まず、同じ年の他の上場株式等の譲渡益と合わせて計算します。さらに、証券会社への売委託など、法令で定める譲渡方法による損失であれば、控除しきれない部分について、次の特例を利用できます(措令25の9①、措法37の12の2①②⑤)。
| 段階 | 損失の控除先・取扱い |
|---|---|
| 同じ年の譲渡損益の計算 | 他の上場株式等の譲渡益から控除する |
| 配当等との損益通算 | 申告分離課税の対象となる上場株式等の配当等・特定公社債等の利子等から控除する |
| 控除しきれない損失の繰越控除 | 翌年以後3年間の上場株式等の譲渡益や、申告分離課税の対象となる配当等・利子等から控除する |
配当所得と損益通算するには、その配当について申告分離課税を選択する必要があります。総合課税を選択した配当や、申告不要とした配当は、その確定申告での損益通算の対象になりません。また、大口株主等に係る配当など、申告分離課税を選択できないものもあります(措法8の4①、37の12の2①、措通37の12の2-2)。
給与所得や不動産所得、一般株式等の譲渡益などから、この上場株式等の売却損失を控除することはできません(措法37の11①、37の12の2)。
計算例
取得費100万円の整理銘柄を、上場廃止前に証券会社への売委託により20万円で売却したとします。手数料等を考慮しない場合、売却損失は80万円です。
同じ年に、他の上場株式等の譲渡益30万円と、申告分離課税を選択する配当所得10万円がある場合は、次のようになります。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 整理銘柄の売却損失 | 80万円 |
| 他の上場株式等の譲渡益から控除 | 30万円 |
| 配当所得との損益通算 | 10万円 |
| 翌年以後に繰り越す損失 | 40万円 |
残る40万円は、必要な確定申告を行うことにより、翌年以後3年間の対象所得から繰越控除できます。例えば、令和8年に生じた損失の繰越先は、令和9年分から令和11年分までです(措法37の12の2⑤⑥⑦)。
損益通算・繰越控除を利用するときの注意点
証券会社を介さない個人間の相対取引などは特例の対象外
損益通算・繰越控除の特例は、上場株式であれば、どのような売却方法でも利用できる制度ではありません。証券会社等を介さない個人間の相対取引などによる売却損失は、この特例の対象になりません(措法37の12の2②)。
この場合も、同じ年の上場株式等の譲渡損益の計算と、配当等との損益通算・翌年以後の繰越控除とは分けて判断します。また、証券会社自体に売却する取引など、売委託以外にも法令で定める対象取引があります(措令25の9①、措法37の12の2②二)。
NISA口座内の売却損失は対象外
NISA口座内で生じた売却損失は、税務上ないものとみなされます。整理銘柄・監理銘柄の指定中に売却した場合も、他の口座の譲渡益や配当等との損益通算、損失の繰越控除はできません(措法37の14、国税庁タックスアンサーNo.1474)。
一般口座での売却も対象になり得る
上場廃止前に、一般口座で保有していた株式を証券会社への売委託など一定の方法で売却した場合も、損益通算・繰越控除の特例の対象になり得ます。
特定口座での保有は、この特例の必須要件ではありません。ただし、一般口座での売却については、取得費や譲渡損益を自分で計算する必要があります(措法37の12の2②、国税庁タックスアンサーNo.1476)。
繰越控除には、取引のない年も確定申告が必要
損失を翌年以後に繰り越すには、損失が生じた年分の確定申告書に、所定の付表・計算明細書を添付して申告します。その後も、繰越控除を続ける間は、所定の付表を添付した確定申告書を連続して提出する必要があります。株式の売買がなかった年も、繰越しのための申告が必要です(措法37の12の2⑦、国税庁タックスアンサーNo.1474)。
主な書類は、次のとおりです。
- 所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)
- 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
源泉徴収ありの特定口座でも、損失を翌年以後に繰り越す場合や、他の口座の譲渡損益と合わせて計算する場合は、確定申告が必要です(国税庁タックスアンサーNo.1476)。
なお、源泉徴収ありの特定口座に配当等を受け入れている場合は、その口座内の売却損失との損益通算が証券会社で行われます。その口座内の処理だけで完結する場合は、確定申告をせずに済むことがあります(措法37の11の6、国税庁タックスアンサーNo.1476)。
その口座の譲渡損失を確定申告する場合には、同じ口座に受け入れた配当等も併せて申告する必要があります(国税庁タックスアンサーNo.1476)。
上場廃止後の売却と、株式の価値喪失は別に考える
上場廃止後に売却した場合
上場廃止によって税法上の上場株式等に該当しなくなった株式を、その後に通常の相対取引で売却した場合は、原則として一般株式等の譲渡として扱われます。その売却損失を上場株式等の譲渡益や配当等から控除したり、上場株式等の譲渡損失として翌年以後に繰り越したりすることはできません(措法37の10、37の11、37の12の2)。
購入時に上場していた株式でも、この取扱いは同じです。ただし、他の取引所で上場が続いているなど、引き続き税法上の上場株式等に該当する場合は、別に判定します(措法37の11②、措令25の9②)。
上場廃止だけでは取得費の全額を損失にできない
株式を売却せずに保有している場合、整理銘柄への指定、上場廃止、株価の下落だけを理由に、取得費の全額を譲渡損失として計上することはできません。
ただし、特定口座で保有していた内国法人の株式を、上場廃止後も同じ証券会社の特定管理口座で引き続き管理し、清算結了や破産手続開始の決定など一定の事実が生じた場合には、取得価額相当額を上場株式等の譲渡損失とみなす特例があります。要件を満たした場合は、配当等との損益通算や繰越控除の対象にもなります(措法37の11の2①、国税庁タックスアンサーNo.1475)。
この特例は、特定口座で保有していたという事実だけで適用されるものではありません。上場廃止が見込まれるときは、証券会社に、特定管理口座の開設状況、移管の可否、必要な手続及び証明書の取扱いを確認してください。
一般口座の上場株式の価値喪失について必要経費算入を認めた裁決
一般口座で保有していた上場株式が、上場廃止後に価値を失った場合について、株式取引の所得区分を検討し、必要経費への算入を認めた裁決があります(平成24年9月25日裁決・裁事88集、関裁(所)平24第6号)。
この事案では、一般口座で保有していた上場株式が、平成21年に民事再生計画に基づき無償で消滅しました。請求人がその取得金額約4,177万円を必要経費に算入したところ、課税庁は、特定管理株式等の特例の対象ではなく、譲渡所得の取得費として控除できないとして否認しました。
国税不服審判所は、当時の特定管理株式等の特例は適用されないとした上で、株式の価値喪失による損失について、所得区分に応じた次の考え方を示しました。
| その株式が基因となる所得 | 当該裁決で示された価値喪失損失の取扱い |
|---|---|
| 譲渡所得 | 所得金額の計算上、損失を考慮しない |
| 事業所得 | 売上原価の計算を通じて、取得価額相当額を必要経費に算入する |
| 雑所得 | 雑所得の金額を限度として、取得価額相当額を資産損失として必要経費に算入する |
請求人は、信用取引を中心に、年間約2,800回、売却額約164億円の株式取引を行い、現物株式の大部分も保有期間が6か月未満でした。審判所は、こうした取引実態や、価値を失った株式も継続的な取引の一環として取得されていたことなどから、事業所得又は雑所得に該当すると判断し、所法37①又は51④に基づく必要経費算入を認め、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を全部取り消しました。
この裁決からは、特定管理株式等の特例の適用要件と、株式取引の所得区分に応じた必要経費・資産損失の取扱いとを、それぞれ検討する必要があることが分かります。
ただし、この裁決は平成21年分の事案です。平成28年以後は、上場株式等と一般株式等の譲渡所得等を区分して計算し、原則として相互に損益を通算できません。現在の申告にこの裁決を参照するときは、所得区分に加え、損失をどの課税区分で計算するか、特定管理株式等の特例が適用されるかを確認する必要があります(措法37の10、37の11、37の11の2)。
一般口座で保有していた上場株式が無価値になったという事実だけで、現在の上場株式等の譲渡益から取得価額相当額を控除できるわけではありません。
参考資料
- 国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
- 国税庁「上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
- 国税庁「特定口座制度」
- 国税庁「破産等により株式の価値が失われたときの特例」
- 日本取引所グループ「上場維持基準に関する経過措置の終了」
- 東京証券取引所「経過措置適用会社の状況について」
※令和8年10月31日現在の法令・公表資料に基づいています。

