人の死亡に伴う葬儀は個人の行事であると考えられますから、本来は、葬儀費用については遺族が負担すべきものです。

 ただし、死亡した役員がその法人の功労者等である場合や、従業員でも業務中に死亡したような場合では、その法人の負担において社葬を行うことは社会通念上相当と認められるいると考えられます。

 そのため、法人が、その役員等の死亡について社葬を行い、その費用を負担した場合において、その社葬を行うことが社会通念上相当と認められるときは、その負担した金額のうち社葬のために通常要すると認められる部分の金額は、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができるものとされています(法基通9-7-19)。

社葬のために通常要すると認められる部分

 法人が社葬費用を負担した場合において、その社葬を行うことが社会通念上相当と認められるときは損金に算入できます。

 新聞広告掲載料等の広告費、取引先等への案内状・通知費用、葬儀場使用料等の会場費、僧侶への読経料(お布施)、祭壇料、会葬礼状費用、葬儀及び告別式に関する諸費用が社会通念上相当と認められると考えられます。

 一方、通夜や密葬の費用、墓石・仏壇・位牌等の購入費用、戒名料など明らかに故人の遺族が負担すべきであると認められるものを法人が負担した場合には、これは遺族に対する寄付金・給与とされます。

葬儀に引き続き他の場所で行つた「おとき」の費用

 葬儀に引き続き他の場所で行つた「おとき」の費用は、社葬費用に当たりません。得意先等取引関係者を対象とした部分は交際費に、会社に直接関係のない故人の親族、友人等を対象とした部分は遺族が負担すべきものとなります。

昭和60年2月27日裁決(裁事29集111頁)判断要旨

 請求人(家具販売業を営む同族会社)の前代表者の死亡による社葬費用を法人の損金に算入することは妥当であるが、葬儀に引き続き場所をホテルに移して行つた「おとき」は、死者に対する追善供養を目的とする法会の一環であり、主として請求人の取引先の者に飲食を供したものであるから、それに係る費用を社葬費用に当たるものとみることはできない。
 したがつて、「おとき」に係る費用のうち、取引先の者を対象とするものは交際費、また現代表者の親族、友人を対象とするものは現代表者個人の負担とするのが相当である。

香典及び香典返し

 社葬費用を法人が負担した場合でも、会葬者が持参した香典等を法人の収入としないで遺族の収入としても差し支えありません(法基通9-7-19注)。なお、遺族が個人から受ける香典で社会通念上相当と認められるものについては、贈与税は課税されません(相基通21の3-9)。

 香典を遺族が収受した場合、香典返しの費用は香典の返礼という意味合いからすると、通常は、遺族が負担すべきものとされているため、法人の社葬に要した費用に含めることはできません。

昭和50年10月16日裁決(関裁(法)50第309号)判断要旨

 請求人(株式会社X)が、昭和〇年〇月17日開催の臨時株主総会により、前社長の葬儀を社葬とすること及び香典を喪主の収入とすることを決議し、これに基づいて、同月20日に社葬を行い、香典を喪主である社長個人が収受したことは争いのないところである。
 請求人が当該社葬に要した費用を損金に算入したことは、相当と認められるが、引物は、元来香典の返礼と解されるものであるので、これに要した費用は、香典を収受した者が負担すべきであるから、これを社葬に要した費用に含めて請求人の損金に算入することは相当でない。

通達

法人税法基本通達9-7-19(社葬費用)

 法人が、その役員又は使用人が死亡したため社葬を行い、その費用を負担した場合において、その社葬を行うことが社会通念上相当と認められるときは、その負担した金額のうち社葬のために通常要すると認められる部分の金額は、その支出した日の属する事業年度の損金の額に算入することができるものとする。

(注) 会葬者が持参した香典等を法人の収入としないで遺族の収入としたときは、これを認める。

相続税法基本通達21の3-9(社交上必要と認められる香典等の非課税の取扱い)

 個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱うものとする。