所得税の確定申告書は、提出時の納税地を所轄する税務署長に提出することになっています(通法21①)。また、所得税の納税義務を履行する場所になっています。

 つまり、申告及び納税等の手続は、これらを行う際における納税者本人の納税地を所轄する税務署に対し行うこととなっています。

 よって、納税地はどこなのかを、ちゃんと理解しておく必要があります。

国内に住所のほか居所を有する場合

 個人の納税地は、原則として、その個人の「住所地」で、住所がなく居所がある場合には「居所地」となります(所法15一、二)。

 また、納税義務者は、住所地に代えて「居所地」を、納税地として選択することができます(所法16①)。

 選択する場合は、「所得税(消費税)の納税地の異動又は変更に関する届出書」を住所地の所轄税務署長に遅滞なく提出します(所法16③、20、所令57)。

 住所とは、生活の本拠のことです。生活の本拠かどうかは客観的事実によって判定されます。

 また、居所とは、相当期間継続して居住しているものの、その場所との結びつきが住所ほど密接でないもの、すなわち、そこがその者の生活の本拠であるというまでには至らない場所をいうものとされています。

横浜地裁平成22年9月8日判決(税資260号-147(順号11503)、訟月58巻2号448頁)要旨

 所得税法15条1号が、原則として、納税地を納税義務者の生活の本拠である住所地としたのは、納税義務者が申告・納付等をすべき税務官庁や納税義務者に対する更正・決定等の行政処分を行う税務官庁を決する基準となるなど、納税地が、所得税の手続に関し、重要な役割を果たすものであることに基づくものであると解され、同法16条1項が例外的に居所地を納税地とすることができるものとした趣旨も、納税地が上記のような所得税の手続に関する基準として重要な役割を有することと納税義務者の便宜との調和を図ろうとするところにあると解される。このような、同法15条、16条1項の趣旨からすれば、居所地が納税地として認められるためには、単に納税義務者が居所地として届け出れば足りるというものではなく、実体的にも当該場所が当該納税者の居所地であると認められることが必要である。

 居所とは、納税義務者がその場所に一時的に居住するだけではなく、生活の本拠(住所)という程度には至らないものの、個人がある程度の期間継続して居住する場所をいうものと解される。

国内に住所(又は居所)のほか事業に係る事業場等を有する場合

 住所または居所のいずれかがある人が、その住所または居所の他に事業所などがある場合には、住所地等に代えてその事業所などの所在地を納税地にすることができます(所法16②)。

 選択する場合は、「所得税(消費税)の納税地の異動又は変更に関する届出書」を住所地等の所轄税務署長に遅滞なく提出します(所法16④、20、所令57)。

 事業所を納税地としていた方が事業を廃業(法人成り)した場合には、納税地を事業所から住所地へ変更する必要があります。

納税義務者が死亡した場合

 死亡した人の所得税の確定申告(準確定申告)をする場合には、相続人の納税地ではなく、死亡した人の死亡時の納税地となります(所法16⑥)。

住所を移転した場合

 確定申告書は、その提出する際における納税地を所轄する税務署長に対し提出することとされています(通法21、所法15)。

 例えば、令和4年1月5日に転居した給与所得者が、令和3年分の確定申告書(医療費控除のため)を提出する場合は、転居後の住所地を所轄する税務署長に対して確定申告書を提出することとなります。

国内に住所を有さなくなった場合

 国内に住所及び居所を有しないこととなった方の納税地については、次の順番で判断します(通法21、所法15、所令53、54)。

状況納税地
(1)国内において行う事業に係る事務所等を有する場合その事務所等の所在地
(2)(1)以外の者で、その納税地とされていた住所又は居所にその者の親族等が引き続き、又はその者に代わって居住している場合その納税地とされていた住所又は居所
(3)(1)及び(2)以外の場合で、国内にある不動産の貸付け等の対価を受ける場合その貸付けの対価に係る資産の所在地(その資産が二つ以上ある場合には、主たる資産の所在地)
(4)(1)~(3)により納税地を定められていた者が、そのいずれにも該当しないこととなった場合その該当しないこととなった時の直前において納税地であった場所
(5)(1)~(4)以外で、その者が国に対し所得税の申告及び請求等の行為を行う場合その者が選択した場所
(6)(1)~(5)のいずれにも該当しない場合麹町税務署の管轄区域内の場所

 なお、納税管理人を定めた場合でも、納税管理人の住所地を所轄する税務署長に対し、納税者本人の申告及び納税等の手続を行うことはできません(所法15三~六、所令53、54)。あくまでも、出国する方の納税地は、上記により判断します。

不動産所得がある場合

 納税地は、原則として住所地とされ、事業所を納税地とする場合は、住所地の所轄税務署長に対して、その旨を記載した届出書を提出しなければならないことになっていますが、一般的に、賃貸物件の所在地は事業所とはなりません(所法16②、④)。

 不動産所得の基因となる資産があるというだけでは、その所在地を納税地とすることはできなく、不動産貸付けの規模、貸付不動産の管理状況等を総合勘案のうえ判定することになります。

 不動産の貸付けが事業と称するに足るものであり、かつ、管理事務所等を有する場合のような場合に限って、その資産の所在地を事業場等として納税地とすることができると考えられています。

不動産所得がある方が、国内に住所を有さなくなった場合

 出国する方の納税地は、家族等がその地に引き続き居住している場合には、その方が国内に住所を有しなくなった時に納税地とされていた場所です。

 ただし、家族等がその地に引き続き居住しないときには、不動産所得の基因となる不動産の所在地が納税地となります(所法15四、五、所令53)。