概要

 被相続人が死亡したときの住所地を所轄する税務署に、相続税の申告書を提出し、納税します(相法附則3、相基通27-3)。

 ここでいう「住所」とは、各人の生活の本拠をいうのですが、その生活の本拠であるかどうかは、客観的事実によって判定するものとし、この場合において、同一人について同時に2箇所以上の住所はないものとします(相基通1の3・1の4共-5)。

 よって、住民登録は自宅のままでも、終身利用権付の有料老人ホームに転居した後、亡くなったような場合は、その老人ホームの所在地を管轄する税務署に申告書を提出すべきということになります。

 相続税の申告と納税の期限は、相続開始を知った日(被相続人の死亡した日)の翌日から10ヶ月以内となっています(相法27、33)。

相続税の申告

 相続税の申告をするときは、被相続人が死亡したときの住所地を所轄する税務署に相続税の申告書を提出します(相続人の住所地を所轄する税務署ではありません)。

 相続税の申告関係の書類は、15表まであります。しかし全15表(実際は、「4表の2」というようなものがあり数自体は15以上にあります。)を提出することはまれで、必要な表だけを書けばよいことになっています。

  被相続人の死亡時において、相続や遺贈によって取得した財産(相続時精算課税の適用を受けた財産を含む)の額の合計額が、基礎控除額以下のときは、相続税の申告も納税も必要ありません。超えていれば申告をする必要があります。

 しかし、配偶者の税額軽減など各種の税額控除や小規模宅地等の評価減の特例は、申告することで初めて適用になります。よって、その場合、相続税がゼロのときでも申告する必要があります。

 なお、申告の有無により、修正申告か期限後申告の違いが生じ、加算税の金額が変わってきてしまうため、遺産額が基礎控除額ギリギリで納税額0の場合でも申告される方はいます。税務調査が入って、基礎控除額が超えてしまう場合を想定してのことです。

 相続税の申告期限は、相続開始を知った日(被相続人の死亡した日)の翌日から10ヶ月以内となっています(相法27)。例えば、1月10日に死亡した場合にはその年の11月10日が申告期限になります。なお、この期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、これらの日の翌日が期限となります(通法10)。

 申告期限までに申告をしなかった場合や、実際にもらった財産の額より少ない額で申告をした場合には、本来の税金のほかに加算税がかかりますので注意してください(詳しくは、加算税のページまで)。

 なお、相続税の納付金額は遺産分割が確定しないと決まりません。それでは、申告書の提出期限内に遺産分割ができない場合はどうなるのでしょうか。

 申告書の提出期限に間に合わない場合には、とりあえず法定相続分にしたがって遺産分割をしたとして各相続人が相続税を払います。そして、正式に遺産分割が終わった後に、相続税の過不足を精算するようにします。

 とはいえ、この10ヶ月以内に遺産分割がまとまらないと、その後もしばらくは、まとまらない可能性はとても高いのですが。

相続税の納税

 相続税の納税期限は、申告期限と同じく、相続開始を知った日(被相続人の死亡した日)の翌日から10ヶ月以内となっています(相法33)。

 納税は税務署だけでなく金融機関や郵便局の窓口でもできます。期限までに納めなかったときは利息にあたる延滞税がかかりますので注意してください(詳しくは、延滞税のページまで)。

 相続税も金銭で一度に納めるのが原則ですが、特別な納税方法として延納と物納制度があります。延納(詳しくは、延納のページまで)は何年かに分けて納めるもので、物納(詳しくは、物納のページまで)は相続などでもらった財産そのもので納めるものです。

 なお、この延納、物納を希望する方は、相続税の申告期限までに手続をとる必要があります。

相続登記と相続税の申告

 相続の登記と、相続税の申告は関係がありません。相続税の課税時期は、相続により財産を取得した時(被相続人が亡くなったとき相基通1の3・1の4共-8)であり、登記をしたときではありません。