個人の場合、上場株式の配当金(大口個人株主が内国法人から支払いを受けるものを除く。以下同じ。)については、次の3つの課税方式のうちいずれか有利な方式を選択できることになっています。なお、配当等を確定申告するかどうかの適用単位には、注意をしてください。

(1)申告不要
 確定申告をしないで源泉徴収税額(所得税15%※、住民税5%)のみで課税関係を終了させる課税方式です(措法8の5①)。配当を確定申告するかどうかは、特定口座(源泉徴収あり)で受取る配当についてはその特定口座ごとに選択することが出来ます。それ以外の配当については、1回に支払いを受ける配当ごとに選択することが出来ます。ただし、申告不要を選択すると、配当控除や所得税等の源泉徴収税額の控除を受けられません。なお、未上場株式等係る少額配当等と違って、上場株式等の配当等については金額に関係なく申告するかしないかを選択できます。

(2) 総合課税
 確定申告により給与所得、雑所得(年金等)や不動産所得(家賃収入等)その他の総合課税の対象となる所得を合算した総所得金額から各種所得控除を差し引いて計算した課税総所得金額に累進税率(所得税は5%〜45%※、ただし、住民税は一律10%の比例税率)を適用して税額を算出する課税方式です。総合課税により課される税金と配当受取時に源泉徴収された税金との差額は、確定申告により精算されます。

(3) 申告分離課税
 他の各種所得と分離してその分離した課税所得金額に一定の税率(上場株式等に係る課税配当所得等の金額の場合は、所得税15%※、住民税5%)を適用して税額を算出する課税方式です。上場株式等の売却損と損益通算するためには、申告分離課税を選択する必要があります。なお、申告分離課税を選択すると、配当控除は受けられません(措法8の4①②)。

※源泉徴収および確定申告の際に所得税額の2.1%に相当する復興特別所得税が付加されます。

 なお、申告する場合であっても、同一年においては、申告分離課税と総合課税を併用することができません(後述)。

確定申告後の修正申告及び更正の請求

 上場株式の配当については、確定申告(期限後申告を含みます。)をする時点において、それを含めて確定申告するか、それを除外して確定申告するかの選択を、申告する者の意思に委ねており、上場株式の配当の金額を除外して確定申告した場合(措置法8条の5適用)には、その後の更正又は修正申告においても同法8条の5《確定申告を要しない配当所得等》を適用して課税関係を律することとなります(国税庁HP質疑応答事例「確定申告で申告しなかった上場株式等の利子及び配当を修正申告により申告することの可否」)。

 つまり、確定申告を要しない配当所得を申告した場合には、その後の修正申告や更正の請求において除外することはできません(措通8の5-1)。また、確定申告を要しない配当所得の申告漏れについては、修正申告はできず、更正の請求の事由にも当たりません。

 また、確定申告において、配当所得について申告分離課税を選択せず、確定申告不要制度を選択した場合や総合課税を選択した場合は、その後、修正申告又は更正の請求において、これらの配当所得について申告分離課税制度に変更することはできません。逆に、申告分離課税を選択した場合も同様に総合課税等に変更できません(措通8の4-1)。

上場株式等の配当等について確定申告をする場合には、同一年においては、申告分離課税と総合課税を併用することはできない

 上場株式等の配当等(大口株主等が支払を受けるものを除く。)に係る配当所得について確定申告する場合は、その年分について申告する配当所得の全てについて、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択する必要があります(措法8の4②)。

 例えば、令和3年に、上場会社であるA株式会社及びB株式会社から受領した配当の確定申告を行うに当たり、A株式会社に係る配当については総合課税を選択し、B株式会社に係る配当については申告分離課税を選択するようなことはできず、総合課税又は申告分離課税のいずれか一方を選択することになります。

上場株式等の配当所得のうち総合課税の適用を受けたものがある場合は、他の上場株式等の配当所得について申告分離課税の特例の適用を受けることができず、また、更正の請求によっても本件特例の適用を受けることはできないとされた東京高等裁平成30年5月17日判決(税資268号-48(順号13153))(棄却)(上告受理申立て)

(1)事案の概要

1 X(納税者)は、平成22年分ないし24年分の所得税の確定申告(以下「本件各申告」といい、当該申告に係る申告書を「本件各申告書」という。)において、上場株式等の配当所得のうち、A配当金に係る配当所得(以下「A配当所得」という。)については総合課税を適用し、その他の配当所得については申告分離課税の特例(以下「本件特例」という。)を適用した。
 その後、Xは、Y(課税庁)に対し、平成23年分及び24年分の所得税の確定申告について、A配当所得を総合課税の適用対象としたことは、「A配当所得が上場株式等の配当所得に該当しない」という誤信に基づくものであるから、国税通則法23条1項1号の事由に該当するとして、A配当所得を本件特例の適用対象とし、加えて、新たにB配当金に係るB配当所得(以下「B配当所得」という。)を計上し、本件特例の適用対象とする更正の請求をした(以下「本件各更正の請求」という。)。

2 Yは、①本件各更正の請求に対して、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行うとともに、②本件各申告に対して、措置法8条の4第2項(※)の規定に基づき、すべての上場株式等の配当所得について総合課税を適用する各更正処分等を行った。
 これに対し、Xは、当該各更正処分等(本件各申告又は更正の請求による金額を超える部分)の取消しを求めて本訴を提起した。
※ 上場株式等の配当所得について総合課税の適用を受けた場合には、同一の年中に支払を受けるべき他の上場株式等の配当所得について本件特例を適用しない旨の規定

3 一審の東京地裁平成29年12月6日判決(平成28年(行ウ)10号)で X の請求が棄却されたため、控訴した。

(2)本件の争点

1 措置法8条の4第2項の該当性
2 本件各更正の請求によるA配当所得及びB配当所得に対する本件特例の適用の可否

(3)判決要旨(請求棄却)

 裁判所は、第一審判決を補正又は引用し、以下のとおり判断した上で、Xの控訴を棄却した。
1 措置法8条の4第2項の適用場面となる前提として、同一の年中に支払いを受けるべき上場株式等の配当等に係る配当所得の一部のみが総合課税の適用対象として確定申告がされる場合があることが想定されていると解されるから、そのような確定申告書の記載をもって法律の規定に反するものであるとはいえない。
2 A配当所得については、総合課税の適用対象とするXの意思と本件各申告書の記載との間に不一致は存在せず、本件特例を選択する意思をXが有していたことを本件各申告書の記載から見て取れる状況にはなかった。たとえ、Xが本件特例の解釈を誤り、その結果として本件各申告書に記載をしたのだとしても、A配当所得に係る税額等の計算は、国税に関する法律の規定に反するものではなく、本件各申告書の記載と整合し、適法に行われているのであるから、誤りがあったとはいえない。
3 平成25年度税制改正により、措置法8条の4第1項の「確定申告書を提出したとき」という文言が削除された上、同条2項に「確定申告書を提出した場合に限り適用する」という文言が新設されたことは、当該税制改正を機にその趣旨(本件特例の適用の際のいわゆる“当初申告要件”)を明確化したものと解するのが相当である。

(4)その後

最高裁第三小法廷令和元年10月29日決定
 Xの上告受理申立ての理由は民事訴訟法318条1項に規定する事件に当たらないとして、Xの上告受理申立てが上告審として受理されなかった。