ストック・オプションが公正な評価額で有償発行(金銭の払い込みにより取得)されたいわゆる有償ストック・オプションは、広義では税制非適格ストック・オプションに該当しますが、権利行使時に給与所得等として課税されることはありません。

 取締役や従業員等の付与対象者が新株予約権の発行価格を金銭で払い込むことにより新株予約権を購入するものであるため、従来の無償ストック・オプションのように会社から付与されたものを受動的に受け取るものではなく、付与対象者が自らの判断で購入することになります。

所得税法上の取扱い

 取締役や従業員等の付与対象者が新株予約権を公正な金額(適正な対価)で購入するのであれば、付与対象者は何ら経済的利益を受けません。よって、新株予約権の取得時と株式を取得する権利行使時のいずれにおいても課税されず、取得した株式を売却した時に、株式譲渡所得の課税がされるのみです。

 つまり、新株予約権の取得時には、課税されず、払い込んだ金額が当該新株予約権の取得価額となります。また、新株予約権の権利行使時にも、課税されません。

 株式の取得価額は、「当該新株予約権の取得時の払込金額」と「権利行使時の払込金額」の合計となります。そして、取得した株式を売却した時に、譲渡収入額から取得価額を差し引いた金額が株式譲渡所得として課税されます。

留意点

  • 新株予約権を公正価値より低い額で付与対象者が取得すれば、経済的利益が発生し取得時に課税されます。
  • 取締役に対して付与した場合であっても、報酬として発行するストック・オプションではないため、株主総会において報酬決議を経る必要がありません。ただし、株式の譲渡が制限されている非公開会社では、新株予約権の発行自体に株主総会決議が必要となります。