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個人株主の株式分割・株式併合・無償割当て・有償増資|取得価額の計算方法

概要

 株式分割や株式併合などによって保有株式数が変わると、売却時の取得費を計算するための「1株当たりの取得価額」も調整する必要があります。

 株数が増えたからといって、取得価額の総額まで増えるわけではありません。追加の払込みがない株式分割・株式併合・同一種類の株式の無償割当てでは、基本的には従来の取得価額の総額を増減後の株数に配分します。有償増資では、新たな払込金額等を加えて計算します(所令110①、111①②、118②)。

 以下では、日本の居住者である個人株主について、課税口座で保有する株式の取得価額を説明します。計算例は、特に記載したものを除き、手数料等がなく、1株未満の端数も生じない場合を前提としています。

取得価額の調整方法の全体像

株式数が変わる原因取得価額の基本的な取扱い
株式分割従来の取得価額の総額を、分割後の株数で割る
株式併合従来の取得価額の総額を、併合後の株数で割る
同一種類の株式の無償割当て従来の取得価額の総額を、割当て後の合計株数で割る
異なる種類の株式の無償割当て所定の条件を満たす場合、割当株自体の取得価額は0円。旧株の取得価額は変わらない
株主割当て有償増資旧株の取得価額の総額に新株の払込金額・取得費用を加え、旧株と新株の合計株数で割る

 この表の有償増資は旧株と同一種類の新株を取得する通常のケースを示しています。また、株式分割等に伴って1株未満の端数が処分される場合には、後述のとおり、その端数相当部分の取得費と残る株式の取得価額を分けて考えます。

株式分割が行われた場合

 株式分割とは、1株を2株にするなど、既存の株式を細分化して株式数を増やすことです(会社法183)。

 株式分割後の1株当たりの取得価額は、分割前の取得価額の総額を、分割後の株数で割って計算します。分割で増えた株式だけを取得価額0円の株式として別管理するのではなく、分割後の株式全体の単価を調整します(所令110①、118②)。

 分割後の1株当たりの取得価額=分割前の取得価額の総額÷分割後の株数

計算例:100株が200株になった場合

 A社株式100株を、1株当たりの取得価額1,000円で保有していたところ、1株を2株とする株式分割により、保有株式数が200株になりました。

 分割後の1株当たりの取得価額は、次のとおり500円となります。

 1,000円×100株÷200株=500円

 分割前の取得価額の総額は100,000円であり、分割後も500円×200株=100,000円です。

株式併合が行われた場合

 株式併合とは、2株を1株にするなど、複数の株式をまとめて株式数を減らすことです(会社法180)。

 株式併合後の1株当たりの取得価額も、併合前の取得価額の総額を、併合後の株数で割って計算します。株数が減るため、1株当たりの取得価額は高くなります(所令110①、118②)。

 併合後の1株当たりの取得価額=併合前の取得価額の総額÷併合後の株数

計算例:200株が100株になった場合

 B社株式200株を、1株当たりの取得価額1,000円で保有していたところ、2株を1株とする株式併合により、保有株式数が100株になりました。

 併合後の1株当たりの取得価額は、次のとおり2,000円となります。

 1,000円×200株÷100株=2,000円

 併合前の取得価額の総額は200,000円であり、併合後も2,000円×100株=200,000円です。

株式無償割当てが行われた場合

 株式無償割当てとは、会社が株主に新たな払込みをさせずに、その会社自身の株式を割り当てることです。株式分割と異なり、普通株式の株主に優先株式を割り当てるなど、旧株と異なる種類の株式を交付することもできます(会社法185、186)。

旧株と同一種類の株式を取得した場合

 旧株の数に応じて、旧株と同一種類の株式が無償で割り当てられた場合は、株式分割と同様に、従来の取得価額の総額を割当て後の合計株数に配分します(所令111②、118②)。

 割当て後の1株当たりの取得価額=割当て前の取得価額の総額÷割当て後の合計株数

 例えば、1株当たりの取得価額1,000円のC社普通株式100株を保有しており、同じ普通株式100株が無償で割り当てられた場合は、合計200株の1株当たりの取得価額が500円となります。

 1,000円×100株÷200株=500円

旧株と異なる種類の株式を取得した場合

 旧株と異なる種類の株式が無償で割り当てられた場合は、同一種類の株式に適用される上記の調整計算は行いません。発行法人の株主等として与えられ、他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合には、割り当てられた株式自体の取得価額は0円となり、旧株の取得価額は変わりません(所令109①四、111②、118②)。

 例えば、C社普通株式100株の取得価額の総額が100,000円であり、上記の条件を満たす無償割当てにより、これまで保有していなかったC社優先株式100株を取得した場合は、普通株式の取得価額の総額は100,000円のまま、割り当てられた優先株式の取得価額は0円となります。

 ただし、「異なる種類の株式を無償で受け取れば、どのような場合も取得価額は0円」とは限りません。種類株主間で経済的価値が移転する特殊な割当てなどでは、個別に課税関係を確認する必要があります。

 また、子会社など別の会社の株式が交付されるスピンオフ等は、ここで説明している発行会社自身の株式の無償割当てとは区別して検討します。

株主割当て有償増資が行われた場合

 株主割当て有償増資とは、既存の株主が、その保有株式数に応じて新株を引き受け、金銭を払い込んで取得する増資です。払込価額が時価より低く設定される場合もありますが、時価より低いこと自体が、この計算方法の適用要件ではありません(会社法202、所令111①)。

 旧株と同一種類の新株を取得する通常の株主割当てでは、旧株の取得価額の総額に、新株の払込金額とその取得のために要した費用を加え、旧株と新株の合計株数で割って1株当たりの取得価額を計算します(所令111①、118②)。

 増資後の1株当たりの取得価額=(旧株の取得価額の総額+新株の払込金額の総額+新株の取得費用)÷(旧株数+取得した新株数)

 株式を取得する権利が、保有株式の内容・数に応じて平等に与えられ、種類の異なる株式を保有する株主との間でも経済的な衡平が維持される場合は、払込価額が時価より低いという理由だけで取得時に所得課税されるものではありません(所令84③、所基通23~35共-8)。

計算例:500株を保有し、新たに500株を取得した場合

 D社株式500株を、1株当たりの取得価額1,000円で保有していたところ、旧株1株につき新株1株の株主割当て有償増資が行われました。新株1株につき500円を払い込み、同一種類のD社株式500株を追加取得したものとします。

 増資後の1株当たりの取得価額は、次のとおり750円となります。

 (1,000円×500株+500円×500株)÷(500株+500株)=750円

 増資後の取得価額の総額は、旧株500,000円と新たな払込金額250,000円を合わせた750,000円となります。

 なお、この新株取得のために5,000円の費用を要した場合は、その費用も加算し、1株当たりの取得価額は755円となります。

 (500,000円+250,000円+5,000円)÷1,000株=755円

取得価額の計算で注意したいこと

購入時の手数料等も取得価額に含める

 調整の基礎となる旧株の取得価額には、購入代金だけでなく、購入手数料やその消費税など、購入のために要した費用も含めます。「1株当たりの購入価格」と「税務上の1株当たりの取得価額」が同じとは限りません(所令109①五、措通37の10・37の11共-10)。

1株未満の端数処分代金は、譲渡損益を確認する

 株式分割・株式併合等により1株未満の端数が生じ、その端数相当部分が売却されて代金が交付された場合は、その部分について株式の譲渡損益を計算します。株式数の調整だけの場合と、金銭を受け取る場合を区別する必要があります(会社法235、所法33、措法37の10、37の11)。

 例えば、1株当たりの取得価額1,000円の株式105株について、10株を1株とする株式併合が行われ、10株と0.5株相当の端数に分かれる場合を考えます。

 併合後の1株当たりの取得価額は10,000円です。端数0.5株相当部分に対応する取得費は5,000円、残る10株の取得価額の総額は100,000円となります。端数処分代金が7,000円で、処分費用がなければ、その部分の譲渡益は2,000円です。

 旧株の取得価額105,000円の全額を、実際に残る10株だけに配分しないように注意してください。

 上場廃止後に端数相当部分が処分される場合は、通常、一般株式等の譲渡として取り扱われます。この場合、上場株式等の譲渡損益とは原則として通算できず、上場株式等の譲渡損失についての3年間の繰越控除も適用されません(措法37の10、37の11、37の12の2)。

売買と株式分割等が重なる場合は、順序を整理する

 同一銘柄を複数回に分けて取得している場合や、途中で一部を売却している場合は、購入・売却・分割等の履歴を時系列に整理します。通常の個人投資家の譲渡所得・雑所得では総平均法に準ずる方法を用い、株式分割等の直前までの取得価額を踏まえて調整します(所法48③、所令117、118)。

 特定口座内の株式は、原則として特定口座ごとに、一般口座とは区分して取得価額を計算します(措法37の11の3)。

 詳しい計算方法は、同一銘柄の株式の取得費に関する解説もご参照ください。

取得単価の1円未満の端数は原則として切り上げる

 総平均法や総平均法に準ずる方法で計算する1株当たりの取得価額に1円未満の端数が生じたときは、原則として切り上げます。先ほどの「1株未満の株式の端数」とは別の、金額の端数処理です(措通37の10・37の11共-14)。

参考資料・主な根拠

  • 所得税法施行令:所令84③、109①一・四・五、110①、111①②、117、118
  • 会社法:会社法180、183、185、186、202、235
  • 国税庁「No.1464 譲渡した株式等の取得費」
  • 国税庁「No.1466 同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費」
  • 国税庁「措法37の10・37の11共通関係」:措通37の10・37の11共-10、共-14
  • 国税庁「所基通23~35共通関係」:所基通23~35共-8
  • 国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」、「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」

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