夫から妻に対して仕事の依頼(業務報酬)は必要経費にできません。所得税法では、事業主と「生計を一にする親族」に支払った給料、賃借料、借入金利子、役務提供の対価等は、その事業主の事業所得等の金額の計算上必要経費に算入しない旨を規定しています。
 
 また、それとともに、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上、その親族が他に支払う賃借料、保険料、公租公課等必要経費とされるものがある場合には、その金額は事業主の必要経費に算入することとされています。この場合において、その親族については、収入金額も必要経費もないものとみなされます(所法56)。

区分取扱い
親族に支払う給料、賃借料等必要経費不算入
事業のために親族が他に支払う賃借料、保険料、公租公課等必要経費に算入
事業の用に供した親族の資産の減価償却費、資産損失等必要経費に算入

  ただし、生計を一にする親族が事業主の事業に従事している場合には、次の特例が設けられています。
(1) 青色申告者に係る「青色事業専従者給与」
(2) 白色申告者に係る「事業専従者控除額」

弁・税事件と弁・弁事件

 弁護士が税理士である配偶者に対して税理士報酬を支払ったが認められなかった弁・税事件(最高裁平成17年7月5日第三小法廷判決・税資255号順号10070)や、弁護士が弁護士である配偶者に対して弁護士報酬を支払ったが認められなかった弁・弁事件(最高裁平成16年11月2日第三小法廷判決・判例タイムズ1173号183頁)があり、確定しています。
 なお、弁・税事件の一審判決の東京地裁平成15年7月16日判決(税資253号順号9393)では、役務を提供する配偶者等の事業の専門性と独立性があって当該役務の対価が合理的に算定し得るものであれば、所得税法56条の適用を除外し得るとする解釈も成り立つととして、税理士である配偶者に対する役務対価が必要経費として認められました。ただし、その後の控訴審及び上告審では認められませんでした。
 各判決は、所得税法56条の文理を忠実に解釈することにより、配偶者等が独立して事業を営んでいたとしても、所得税法56条の適用除外は認められていない旨判示しています。

所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)

 居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。