令和4年度税制改正

 令和4年度税制改正で、悪質な納税者への対応策として、隠蔽仮装による申告を行った場合や無申告の場合には、次の(1)又は(2)に該当する場合を除き簿外経費(のうち間接経費に当たる部分)の額は、必要経費(個人)又は損金(法人)に算入できないこととなります。

(1)保存する帳簿書類等により当該費用の額が生じたことが明らかである場合(災害その他やむを得ない事情により帳簿書類の保存をすることができなかったことを納税者が証明した場合を含む)
(2)帳簿書類等により当該費用の額に係る取引先が明らかな場合やその取引があったと推測される場合であって、反面調査等により税務署長がその取引が行われたと認める場合

 個人の場合は、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得(前々年分のその雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が300万円超の場合)が対象となります。

 個人については2023年(令和5年)分以後の所得税についてから適用され、法人については2023年(令和5年)1月1日以後開始事業年度の法人税についてから適用されます。

 なお、具体的な取り扱い(間接経費に当たる部分等)については、今後、法令や通達等で明らかになり次第、アップ(記事追加修正)していきます。

税制改正の背景

 上記の税制改正の背景は、税務調査時において税務当局が所得漏れを把握すると、悪質な納税者は簿外経費について主張等するようなことがありました。

 例えば、税務調査の際に、税務署職員が所得漏れを把握すると、後出しで海外の企業からの領収書を大量に提出し、計上漏れ経費が調査による指摘された所得漏れと同額あるから追加の税金はかからないと主張するような納税者がいました。

 そのようなことをされると、真実の所得把握に係る税務当局の執行コストは多大にかかってしまい、行政制裁等を適用する際の立証に困難が伴ってしまいます。

 最近の判決では、例えば、東京地裁令和3年12月23日判決(平成31年(行ウ)113号)のように、簿外経費の主張立証責任は納税者にあると判示していますが、法令上、明文化することが悪質な納税者への対応策となるため、今回のような税制改正となりました。

 よって、隠蔽仮装による確定申告を行った場合や無申告の場合にのみ適用されることとなったのですが、無申告はともかく、納税者が意識していないのに隠蔽仮装による確定申告を行ったとみなされる場合があるので注意が必要です。

令和3年11月17日(水)財務省/納税環境整備に関する専門家会合の議論の報告(案)/簿外経費の主張

① 簿外経費の主張として、事後的に大量の領収書を提出した事例
  後出し的な簿外経費の主張であっても、当局側が多大な事務量を投下してその真偽を確認する必要があった。

② 簿外経費の主張によって刑事告発を断念した事例
  犯則事件として着手したが、簿外経費がないことの立証が困難として、法人税法違反での告発を断念。

東京地裁令和3年12月23日判決(平成31年(行ウ)113号)においての必要経費、簿外経費の主張立証責任に関する判示要旨

 原告(株式会社A)は、本件各コンサル契約書及び本件各領収証に基づいた帳簿書類の記載に反し、本件各金員は本件各工事の受注に必要不可欠であったI(不動産ブローカー)に委託したコンサルタント業務の対価であって、本件各工事の必要経費に該当する旨主張する。原告の上記主張は、帳簿書類と異なる必要経費の主張、すなわち簿外経費の主張に他ならない。

 必要経費の存否及び額についての立証責任は、原則として課税庁側にあると解すべきであるものの、必要経費の支出は、納税義務者の直接支配する領域内であり、納税義務者は当該具体的事実を熟知していることが通常である。これに加え、実額課税である青色申告の場合においては、納税義務者は、帳簿書類を備え付け、これに個々の取引を記帳し、その帳簿書類を保存するなどして、事業所得等の金額を正確に記録することが義務付けられており、かつ税務署長は、当該帳簿書類について、必要な指示をすることができるとされていること(法人税法126条1項、2項等)などに鑑みると、青色申告の納税義務者が、帳簿書類の記載と異なる経費の主張、すなわち簿外経費の存在を主張する場合には、納税義務者において、必要経費として支出した金額、支払年月日、支払先、支払内容等の事実につき、具体的に特定して主張立証をし、業務との関連性についても主張立証すべきであり、そのような主張立証がされない限り、当該経費を当該業務の経費として損金に算入することはできないというべきである。原告の必要経費の主張立証に関する主張は、以上に反する限度において採用することができない。

 原告は、平成27年5月27日付けで、平成25年3月期以降の青色申告承認の取消処分を受けるまでは、青色申告の納税義務者であったことからすると、本件各コンサル契約書及び本件各領収証の作成日付においては青色申告の納税義務者であり、また、平成27年5月27日以降も、別件訴訟において、その処分の適法性を争っていたことからすると、本件各事業年度についても、原告において、本件各金員の支出と業務との関連性を合理的に推認させるに足りる具体的な立証を行うべきであり、そのような立証に奏功しない限り、本件各金員の支出が業務の遂行に必要であったと認めることはできず、本件各金員を損金の額に算入することは認められないというべきである。