必要な書類

概要

 上場株式等の売却損益(譲渡所得等)は、「売却収入―取得価額―売却費用―売却年の借入金利子」により計算します。

 1年間の売却損益の集計結果が「利益」の場合には、その利益に対して税金がかかります。一方、結果が「損失」の場合には、税金はかかりません。なお、その損失が一定の「上場株式等の売却取引」 により生じたものである場合には、確定申告すれば上場株式等の配当等との損益通算や繰越控除が可能です。

 上場株式等に係る譲渡損益があった場合の確定申告に必要な書類は、申告するのが上場株式等の売却益か売却損か、どの口座で売却したかなどにより異なります。なお、平成31年4月1日以後に提出する確定申告書については、「特定口座年間取引報告書」の添付が不要となりました。

確定申告の基本

 上場株式等の売却取引について1年間の集計結果が利益であった場合は、原則として自ら確定申告し税金を納付しなければなりません。

 上場株式等の売却益については、給与所得等の他の所得とは分離して、単独で税額を計算します(申告分離課税)。税率は20.315%です。 

 また、特定口座(源泉徴収あり)内で生じた上場株式等の売却益については、売却益に対して課される所得税・住民税(20.315%)を金融機関が源泉徴収して納付するため、確定申告は不要です。ただし、確定申告をすることもできます。

 NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAで生じた売却益も、非課税であるため、確定申告をする必要はありません

一般口座で上場株式等の売却益が生じた場合

  • 「申告書B第一表、第二表」および「申告書第三表(分離課税用)」
  • 「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」

 一般口座の申告の際には、譲渡所得等の金額の計算明細書を添付すれば足り、原則として取得価額等を証する書類の提出は要しません(措令25の8⑭、25の9⑬、措規18の9②)。

特定口座(源泉徴収なし)で上場株式等の売却益が生じた場合

  • 「申告書B第一表、第二表」および「申告書第三表(分離課税用)」
  • 「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」

 ただし、上記明細書は、1つの特定口座の取引以外に申告すべき取引がない場合には、「特定口座年間取引報告書」を添付することにより、提出を省略することができます。

特定口座(源泉徴収あり)で上場株式等の売却益が生じた場合

 通常、申告不要を選択できるのですが、他の口座で上場株式等の売却損が生じており、通算して確定申告する場合

  • 「申告書B第一表、第二表」および「申告書第三表(分離課税用)」
  • 「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」

上場株式等の売却損と配当を損益通算する場合

 特定口座(源泉徴収あり)内で損益通算されている場合は申告不要を選択できるのですが、それ以外の場合で、確定申告して損益通算する場合

  • 「申告書B第一表、第二表」および「申告書第三表(分離課税用)」
  • 「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」
  • 「申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算および繰越控除用)」

1年間の上場株式等の売却損益を計算した結果が 「損失」である場合

譲渡損失発生年分

 上場株式等の売却損を、申告分離課税を選択した上場株式等の配当等と損益通算したり、翌年以降3年間繰越すために確定申告する場合

  • 「申告書B第一表、第二表」および「申告書第三表(分離課税用)」
  • 「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」
  • 「申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算および繰越控除用)」

譲渡損失発生年分の翌年以後の年分

(1)株式等の譲渡がない場合
  譲渡損失発生年分の後の年に株式等の譲渡がない場合でも、損失の繰越をするためには、連続して申告書付表を含む確定申告書を提出する必要がありますので、注意をして下さい。

(2)株式等の譲渡がある場合
 計算明細書、申告書付表を含む確定申告書を提出する必要があります。

株式の譲渡所得の他に事業所得や不動産所得がある者が、事業所得等が損失となった場合

 国税庁は「第四表がある場合、第三表の提出は不要」と指導しているため、いくつかの所得税申告ソフトは「申告書第三表(分離課税用)」と「申告書第四表(損失申告用)」を同時に作成できません。

 この場合、第三表、第四表のどちらを提出すべきか、税務署(職員)によっても判断は分かれおり、また、第三表と第四表の両方とも提出してくれという所もあります(納税者にとっても、その方が安全でしょう)。

 よって、所得税申告ソフトの会社のサポートセンターに事情を説明し、どうやって両方作成するのか聞くのが良いでしょう。

株式等についての取得価額を証する書類

 株式等の譲渡所得等に係る確定申告の際には、原則として、株式等についての取得価額を証する書類の提出は必要としません。ただし、次に掲げる特例の適用を受ける場合には、取得対価の額等を証する書類として、都道府県知事等が発行した確認書の提出が必要です。

  • 特定投資株式の取得に要した金額の控除等の特例(措法37の13)
  • 特定投資株式が株式としての価値を失った場合の特例(措法37の13の2①)
  • 特定投資株式に係る譲渡損失の損益の計算の特例(措法37の13の2④)
  • 特定投資株式に係る譲渡損失の繰越控除の特例(措法37の13の2⑦)
  • 特定中小会社が発行した株式に係る譲渡所得等の課税の特例(旧措法37の13の3)