概要

 所有する土地及び家屋等の不動産を譲渡した場合、売主は不動産の譲渡代金とは別に、本年度分の固定資産税及び都市計画税の未経過分に相当する金額を買主から収受する場合があります。

 問題は、この未経過固定資産税等の所得税及び消費税の取扱いがどうなるのかです。

所得税の取扱い

 固定資産税等は、各年ごとに、1月1日(賦課期日)現在における不動産の所有者を納税義務者として課される税です。

 したがって、その年中において、不動産売買があり所有者が変わっても、新たな所有者が固定資産税等の納税義務を負担することはありません。

 不動産の新たな所有者である買主は、固定資産税等の未経過分に相当する金額を税として地方公共団体に対して支払うのではなく、固定資産税等の負担なしに所有することができる不動産の購入代金の一部として売主に対して支払うものといえます。

 したがって、売主が支払を受けた未経過固定資産税等に相当する額は、譲渡所得の収入金額に算入されます(国税庁HP質疑応答事例「未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合」)。

 なお、固定資産税等の未経過分に相当する金額を支払った買主側は、その金額については不動産の取得価額を構成することになります。

不動産の譲渡に際して収受した未経過固定資産税等相当額は、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されるとされた事例-平成14年8月29日裁決(裁事64集152頁)要旨

 請求人は、土地の譲渡に際して買受人から収受した、売却後の期間に対応する未経過固定資産税等相当額について、固定資産税等が期間コストの性質を有することを前提に、収受した金員は、実質的には立替金の清算であり、担税力を有するものではなく、このことは、未経過固定資産税等相当額について不当利得返還請求権が発生することからも裏付けられるとして、譲渡所得の総収入金額に算入すべきでない旨主張する。

 しかしながら、固定資産税等は、賦課期日である毎年1月1日現在において、固定資産台帳に所有者として登録されている者に対して課されるものであり、賦課期日後に所有者の異動が生じたからといって、課税関係に変動が生じるものではないから、賦課期日後に当該資産の所有者となった者は、固定資産税等の納税義務を負担するものではなく、また、譲渡人は、譲受人に対して未経過固定資産税等の求償権を取得するものでもない。そうすると、未経過固定資産税等相当名目での金員の授受は、当事者間の契約によって初めて生じる債権債務関係に基づいてなされるものであり、その性質は売買条件の一つにほかならず立替金の清算とはいい得ない。

 また、当該資産の所有関係の変動が当事者間の契約に基づいて生じた場合に、固定資産税等名目の金員の授受について、何らの取決めもなされないのであれば、当事者の意思解釈としては、そのような名目での金銭のやり取りはしない趣旨であることが通常であると思われるから、そのような場合に、当事者の合理的意思解釈に反して、不当利得返還請求権が発生する余地はない一方、固定資産税等名目の金員の授受を行うとの取決めがなされるのであれば、その授受は、まさに契約に基づいて行われるものであるから、固定資産税等名目で譲渡の際に授受された金員の性質が不当利得返還請求権の性質を有することもありえない。

消費税の取扱い

 不動産売買契約における未経過固定資産税等は、私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するものであるから、固定資産税等の未経過分を含めた譲渡価額のうち、家屋部分が資産の譲渡の対価の額に含まれ、課税の対象となります(消法2①八、28①、消基通10-1-6)。

 つまり、売主は土地の譲渡部分については非課税売上、家屋の譲渡部分については課税売上として計上するということになります。

消費税法基本通達10-1-6(未経過固定資産税等の取扱い)

 固定資産税、自動車税等(以下10-1-6において「固定資産税等」という。)の課税の対象となる資産の譲渡に伴い、当該資産に対して課された固定資産税等について譲渡の時において未経過分がある場合で、その未経過分に相当する金額を当該資産の譲渡について収受する金額とは別に収受している場合であっても、当該未経過分に相当する金額は当該資産の譲渡の金額に含まれるのであるから留意する。

(注) 資産の譲渡を受けた者に対して課されるべき固定資産税等が、当該資産の名義変更をしなかったこと等により当該資産の譲渡をした事業者に対して課された場合において、当該事業者が当該譲渡を受けた者から当該固定資産税等に相当する金額を収受するときには、当該金額は資産の譲渡等の対価に該当しないのであるから留意する。