社長の「1人飲み」の飲食代は、法人税法上、通常、「交際費」とはならず、「役員貸付金」または「役員賞与」となります。

 租税特別措置法61条の4 は、法人が支出する交際費等の額について、原則として、損金不算入とし、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人について、年800万円までは全額損金の額に算入することとしています。

 つまり、資本金1億円以下の会社の場合、年800万円までの交際費なら全額損金となるということです。中には、会社を2つ、3つ持っている社長もいるでしょう。その場合、会社ごとに、年800万円までの交際費なら全額損金となります。

 飲食代であっても、それが交際費であるなら問題となりませんが、社長の「1人飲み」等の私的費用を交際費処理している場合、税務調査の際にトラブルになります。

 社長の「1人飲み」行為が、得意先を接待するための準備行為なのか、あるいは、「1人飲み」をした社長が会社の経費を単に私的に流用したのかで判断が分かれ、その判断によって、その「1人飲み」に要した費用の損金性の判断が分かれることになるかと思います。

 過去の裁判例・裁決例でも、このような「1人飲み」の費用が会社の交際費か個人的支出(賞与又は貸付金)かで争われたことは幾度かあります。

 ただし、実際問題、「1人飲み」をする場合、クラブ等にお気に入りのホステスがいる等の理由により飲みに行っており、得意先を接待するための準備行為とはいえないようなことが、ほとんどでしょう。

 そのような場合は、過去の事例からいって、「交際費」とはならず、「役員貸付金」または「役員賞与」となるということです。

 役員貸付金となった場合は、損金となりません。また、役員への貸付金なので認定利息計上する必要があります。

 一方、役員賞与となった場合も、臨時の給与なので損金となりません。また、役員への賞与なので源泉徴収等所得税もかかります。 会社で法人税がかかり、社長自身も所得税がかかるというダブルで税金がかかり、ダブルパンチといわれています。

 通常、役員貸付金となるより、役員賞与となったほうが税負担は大きいです。ですから、税務調査が入った際に、交際費として処理をしていたものを社長の私的費用と認定された場合、会社側とすれば、役員貸付金としてする修正申告となるように、調査官と交渉をすることが多いのです。

 そして、もう一つ、重要なことは、交際費処理をしていたが、役員貸付金、役員賞与として修正申告をする場合に、過少申告加算税ですむのか、それとも、それに代えて重加算税となってしまうのかということです。

 従前は、過少申告加算税ですんでいたような案件でも、最近では、課税庁側が重加算税を主張してくるケースが多いです。よって、気を付ける必要があります。

 本来は、当初申告の時点で、交際費ではなく役員貸付金処理していれば、このような問題は生じないのですが、ばれないと思って、私的費用を交際費処理している中小企業が多いということです。

東京地裁令和2年3月26日判決(平成30年(行ウ)第112号他)

(1)事案の概要

 原告A社らは、甲が代表者あるいは実質的な経営者として経営する会社であるところ、甲が複数の接待飲食店(本件各クラブ)を利用した際の代金をA社らの業務のための交際費として支出したとして、それぞれ、法人税等の確定申告において、上記支出額を損金の額に算入して申告した。しかし、その後に受けた税務調査において、上記支出額には甲の個人的な飲食代金の金額が含まれているのではないかとの指摘を受けたことから、A社らは、指摘に係る支出額の相当部分(本件各支出額)を損金算入せず、甲への貸付金とする旨の法人税等の修正申告を行った。所轄税務署長は、本件各支出額について、A社らが取引先等を接待した事実がないにもかかわらず、これを交際費として総勘定元帳に記載していたことなどが、国税通則法68条1項の「事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し」たことに当たるとして、A社らに対し、本件各修正申告に係る重加算税の各賦課決定処分をした。

 本件は、A社らが、本件各支出額はあくまで取引先等の接待のために要した交際費であるから本件各賦課決定処分は課税要件を欠くなどと主張して、本件各賦課決定処分の各取消し等を求めた事案である。

 なお、A社らの請求は棄却され控訴したが、控訴審(東京高裁令和3年1月28日判決・令和2年(行コ)第139号他)においても請求棄却された。

〇原告A社らの状況
 A社(原告)は、パチンコ店を経営する株式会社であり、B社(同)は,労働者派遣業等を目的とする株式会社であり、C社 (同)は、飲食店を経営する有限会社(上記3社を以下「A社ら」という。)であるが、いずれも甲を代表取締役又は実質経営者とし、甲の妻乙を取締役等とし、資本金1億円以下である。

本件各支出額の各社の支出額は、次のとおりである。
 A社 = 5 期分合計3285万円余、 B社 = 5 期分合計2199万円余、 C社 = 5 期分合計1122万円余

(2)判決要旨(請求棄却)
① 本件各クラブの利用1回当たりの平均代金額は約20万円余であり、1か月当たりの平均利用回数は4.9回である。かかる高額な代金を支払って本件各クラブを利用し、高い頻度で接待等を行うことが、A社らの業務との関係で必要であったとする合理的な説明はない。しかも、本件各クラブは、いずれも甲がひいきにしていたホステスTが勤務していた店であり、甲は、ホステスTが移籍するたびにその移籍先のクラブを利用していた上、その利用の際には本件ホステスTと頻繁に同伴出勤やアフターをし、その際に高級な飲食店で同人と飲食を共にすることもしばしばあったのであるから、本件各クラブの利用の多くは、A社らの事業関係者に対する接待等を目的とするものではなく、甲の個人的な目的によるものであったことが強く疑われる状況であったといえる。

② 本件税務調査における本件各クラブに対する反面調査では、F店及びG店については、営業日ごとに作成された売上集計表(本件各集計表)が提供され、これによれば、甲は、ほとんどの場合においてこれらのクラブを1人で利用していたことが認められる。

③ 甲が、(1)本件ドラフト(顧問税理士が作成した甲の個人的な飲食代金の金額と考えられるものを抽出した書面)に関する顧問税理士の報告に対し異論を述べていないこと、(2)所轄税務署職員による質問調査において本件各クラブに係る支出が自己の個人的な利用に係るものであることを認める供述をしていること等をも考慮すれば、反面調査により本件各集計表が得られたF店及びG店だけでなく、本件各支出額として抽出されたものは、甲がこれらのクラブをA社らの事業関係者の接待等のためではなく個人的な目的で利用した代金であることが推認されるというべきである。

④ 本件各修正申告においては、本件各支出額がA社らの甲に対する貸付金であることを前提に、その貸付けによって生じた本件各利息額が雑収入として益金の額に算入されているところ、A社らは、本件各当初申告において、本件各支出額がA社らの交際費であるかのように仮装することにより、上記貸付金を貸借対照表の資産の部に計上せず、その結果、貸付金に係る本件各利息額を隠ぺいしたものである。そして、A社らは、このように隠ぺい、仮装したところに基づき、本件各利息額を益金の額に算入することなく、本件各事業年度の法人税等の各確定申告書を所轄税務署長に提出したのだから、本件各当初申告において、法人税等の課税標準の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい、仮装し、その隠ぺいし仮装したところに基づき納税申告書を提出したというべきである。