高級車

社用車とする場合

 2,700万円のイタリア製の2人乗りの排気量4.94リットルのスポーツカータイプの乗用車(フェラーリ)を社用車とし経費(減価償却費)にしたことに対して税務署が否認したが、結果的に認められた事例(平成7年10月12日裁決・熊裁(法・諸)平7第2号)があります。

 上記の事例で認められた判断基準は以下の通りです。
〇社長が通勤及び支店を巡回指導する際の交通手段として使用しており、運転記録からも会社の事業の用に供していたことがわかる
〇この車とは別に外国製の車両3台を会長(本件フェラーリは、使用する社長が会長と同居しているため会長の自宅の車庫に保管していた)が個人的に所有しており、それについては会社の減価償却資産とはしていなかった
〇社長の出張旅費の支給実績を検討したところ、交通実費は支給されていたが、交通費は支給されていなかった

 ただし、この事例をもって、絶対に否認されないというものではなくリスクはあると思いますので注意をしてください。

 なお、この事例では他に、取得価額2735万円余、総トン数8.5トン、最大搭載人員12名のプレジャーモーターボートについて、取引金融機関上層部の接待や従業員の福利厚生の一環として利用するなど、会社の事業の用に供している資産であるとの理由により資産計上、減価償却していたことに対して税務署が否認して争われたのですが、プレジャーモーターボートについては事業用資産ではなく会長の個人的資産であるとして、その船舶の取得のために支出された金員については、会長に対する臨時的に支給した給与(賞与)と判断されました。

平成7年10月12日裁決・熊裁(法・諸)平7第2号における判断(要旨)

 審査請求人X(納税者である消費者金融業を営む株式会社)は、本件車両は、通勤及び出張する際の交通手段として使用するなど、Xの事業の用に供している資産である旨主張するので検討したところ、次のとおりである。

(イ) X提出資料、原処分関係資料及び当審判所が調査したところによれば、次の事実が認められる。
A 本件車両は、平成3年7月に2,700万円で取得したもので、イタリア製の2人乗りの排気量4.94リットルのスポーツカータイプの乗用車(フェラーリ)であること。
B Xは、本件車両の取得に当たって162万円の消費税を支払い、Xの租税公課勘定に計上していること。
C 本件車両は、道路運送車両法に基づく車両の検査(以下「車検」という。)記録によると、平成6年7月に車検を受けるまでの3年間に、7,598キロメートル走行していること。
D Xは、本件車両のほか、会長及び役員用の乗用車としてロールスロイス及びベンツを所有していること。また、これらの車両は、使用する役員自身が運転し、車両の運転記録を作成していないこと。
E Xの出張旅費規定によると、旅費は、交通費、宿泊料及び日当に区分され、社用車による日帰り出張の場合は旅費は支給しないことになっていること。また、Xが作成している旅費精算書によると、社長が出張した際は、交通実費としての通行料、宿泊料及び日当が支給されているが、交通費は支給されていないこと。

(ロ) 社長は、当審判所に対し次のとおり答述している。
A 本件車両は、通勤及び支店を巡回指導する際の交通手段として使用していること。
B Xが本件車両を選定した理由は、本件車両は、排気量が大きく堅固であるので、遠方の支店に出張する際は、安全性もあり、運転が楽であること、中古車として売却する際の価値もあることのほか本件車両を主として使用する社長の個人的な趣味もあったこと。
C 会長は、外国製の車両3台を個人的に所有していること。

(ハ) 以上の事実に基づいて判断すると、次のとおりである。
 Xは、本件車両を社長の通勤及び支店を巡回指導する際の交通手段として使用するなどXの事業の用に供している旨主張する。上記(イ)のD及びEのとおり、本件車両の車検記録を調査したところ、本件車両を取得してから3年間に7,598キロメートル走行していることが認められ、また、社長に対する旅費及び通勤手当の支給状況をみると交通費及び通勤手当は支給されておらず、本件車両をXの事業の用に使用したものと推認することができる。
 原処分庁は、本件車両は事業の用に供された実績が明らかでなく、イタリア製の高級スポーツカーで一般社会常識から見ても個人的趣味の範囲内のものであり、同族会社ゆえにできる行為であると主張する。しかしながら、上記(イ)のA及び(ロ)のBのとおり本件車両が、主として使用する社長の個人的趣味によって選定された外国製のスポーツカータイプの乗用車であるとしても、前記のとおり現実にXの事業の用に使用されていることが推認できる以上は、原処分庁の主張を採用することはできない。

(ニ) 以上のとおり、本件車両は、Xの事業の用に供されたことが推認できること、また、会長がXとは別に外国製の車両3台を個人的に所有しており、Xの減価償却資産とはしていないことを併せ考えると、Xが本件車両をXの資産として計上していることを不相当とする理由は認められない。したがって、本件車両を会長個人の資産として本件車両に係る減価償却費及び本件車両の取得に係る消費税額に相当する租税公課を、Xの所得の金額の計算上損金の額から減算した原処分並びに本件車両の取得費及び本件車両の取得に係る消費税に相当する金員を、会長に対する賞与と認定した原処分はいずれも取り消すのが相当である。

フェラーリを社用車ではなく趣味等で個人所有の場合の税務リスク