車両運搬具

概要

 自動車を売却した場合の税金ですが、自家用、事業用で変わってきます。また、自家用であっても生活に通常必要な動産(所法9 ① 九、所令25)か、あるいは、生活に通常必要でない資産(所法62、所令 178 ①)であるかによって変わってきます。

 なお、いわゆるサラリーマンマイカー訴訟(神戸地裁昭和61年9月24日判決・訟月33巻55号1251頁、大阪高裁昭和63年9月27日判決・訟月35巻4号754頁、最高裁第二小法廷平成2年3月23日判決・集民159号339頁)では、レジャーに使われていたサラリーマンの自家用車は、生活に通常必要でない資産と判示されています(今日でも、そうであるかは疑問がありますが)。

自家用自動車の売却

生活に通常必要な動産を譲渡した場合

 生活に通常必要な動産を譲渡した場合には、譲渡益が非課税とされます(所法9 ① 九、所令25)。また、その反面、譲渡損失が生じてもその損失はないものとみなされます(所法9②一)。サラリーマンの通勤用自動車や、買い物や子供の学校の送迎など専ら生活維持用の自動車が、これに該当すると考えられています。

生活に通常必要でない資産を譲渡した場合

 生活に通常必要でない資産の売却に係る譲渡所得(総合課税)の計算は、特別控除(最高50万円)の適用があるほか、所有期間が5年超の場合には課税対象が1/2となります(所法33)。なお、他の各種所得の損失と損益通算は可能です(所法69①、所令198)。

 譲渡所得の金額= 譲渡価額-(取得費(注1)+譲渡費用(注2))-50万円

(注1)取得費とは、一般に購入代金のことです。このほか、購入手数料や設備費、改良費なども含まれます。なお、使用したり、期間が経過することによって減価する資産(所法38②)にあっては、減価償却費相当額を控除した金額となります。
(注2)譲渡費用とは、売るために直接かかった費用のことです。

 一方、譲渡損失の場合は、他に生活に通常必要でない資産に係る譲渡所得がある場合にはその譲渡所得から控除することができますが、計算上生じた譲渡損失は生じなかったものとみなされますので、他の各種所得の金額と損益通算することはできません(所法69②、所令200、178)。レジャー用の自動車や、スポーツカーなど専ら趣味娯楽のために所有する自動車が、これに該当すると考えられています。

交通事故により自動車に損害を受け、保険金等で補填しきれなかった損失の金額

 生活に通常必要な動産である自動車の交通事故による損失は雑損控除の対象となるものと考えられます。

 一方、趣味娯楽のために所有する自動車の災害等による損失は、生活に通常必要でない資産の災害等による損失であり、雑損控除の対象にはなりません。その損失はその年分または翌年分の譲渡所得から差し引くことになります(所法62①)。

まとめ

 自家用自動車の売却の場合、「生活に通常必要な動産」あるいは「生活に通常必要でない資産」によって、取り扱いが違うことになりますが、用途、使用状況、車種、所有台数等の事情を総合勘案して判断することとなります。

譲渡課税損益通算
生活に通常必要な自動車譲渡益非課税
譲渡損生じなかったものとみなす不可
生活に通常必要でない自動車譲渡益課税
譲渡損生じなかったものとみなす不可

フェラーリを売却した場合は?

 個人所有のフェラーリを売却した場合は、生活に通常必要でない資産を譲渡した場合 に該当するので、譲渡所得(総合課税)が生じます。

 例えば、5000万円で購入したフェラーリを、数年後、同額の5000万円で売却したとしても譲渡所得が生じます。

 「譲渡所得の金額= 譲渡価額-(取得費+譲渡費用)」となります。この算式における「取得費」は購入した金額をベースにして算定されますが、減価償却費相当額を控除した金額となります。

 つまり、最初に購入した時から売却時点までの減価償却費相当額を控除した金額が取得費となりますので、購入した金額が5000万円であったとしても、例えば、減価償却費相当額を控除した金額が2000万円であれば、それを取得費として譲渡所得を計算するということになります。

 減価償却費相当額がいくらになるのかは、耐用年数等により決まりますが、減価償却資産の耐用年数等に関する省令によれば、新車のフェラーリを購入した場合の耐用年数は6年です。つまり、6年で償却済となります。ただし、これは業務用で経費計算する場合の耐用年数で、非業務用であれば1.5倍(所令85①)の9年となります。

 つまり、9年経過してしまえば、減価償却費相当額を差し引いた後の取得費は1円(備忘価額)となってしまいます。ただし、実際の譲渡所得の計算にあたっては概算取得費が使えますが(所基通38-16)。

 なお、古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないものとして、「時の経過によりその価値の減少しない資産」は減価償却資産に該当しないこととされています(所基通2-14)が、フェラーリでは、これに該当しないでしょう。

 令和2年3月10日裁決(東裁(所)令元第84号)では、請求人が個人所有のフェラーリ4台の売却に当たって、このフェラーリ4台について「時の経過によりその価値の減少しない資産」と主張しましたが、裁決では以下のように判断し否定しました。

① 本件車両Aについては同種の車両が349台、本件車両Bについては同種の車両が2,261台生産されており、また、本件車両A及び本件車両Bのいずれも、生産開始後間もなく購入されたものであり、それぞれの売却時点においても生産されてから20年程度経過したにすぎないものであるから、一般の車両に比して入手しにくい車両であることを踏まえたとしても、本件車両A及び本件車両Bが歴史的価値又は希少価値を有して代替性のないものであるとまではいえない。次に、本件車両C及び本件車両Dについてみても、これらと同種の車両の販売台数がいずれも不明であることや生産開始後間もなく購入されたものであり、売却時点においても生産開始から10年ないし20年程度経過したにすぎないものであることからすれば、本件車両A及び本件車両Bと同様に歴史的価値又は希少価値を有して代替性のないものであるとはいえない。
 そして、当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件各車両が「時の経過によりその価値の減少しないもの」であることをうかがわせるような事情は認められず、他方で、本件各車両が、道路運送車両法上の登録をされ、自動車登録番号標を表示して公道を走行していたことからすれば、これらが車両として使用する目的で購入されたことが認められるから、かえって「時の経過によりその価値の減少しないもの」に該当するとはいえない事情が存在することになる。

② 以上によれば、本件各車両は、「時の経過によりその価値の減少しないもの」として減価償却資産から除外される資産に該当するとは認められないから、所得税法38条2項に規定する「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当する。

事業用自動車の売却

 事業用の資産の譲渡による所得であっても、棚卸資産の譲渡や営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡に該当しない場合には、譲渡所得となります(所法33)。

 したがって、通常使用していた事業用自動車の売却損失は事業所得に係る損失ではなく、譲渡所得の損失として取り扱われることとなります。下取りによつて生じた事業用自動車の損失も、譲渡所得の損失額として取り扱われることになります。

 そして、この譲渡所得の損失は、損益通算により、事業所得等の他の黒字の所得から控除されることとなつています(所法69、所令198~200)。

 なお、事故等による事業用自動車の処分損(所基通51‐2)や、スクラップ化していた事業用自動車の譲渡損失(所基通51‐4)は事業所得の必要経費に算入されます。

東京国税局課税第一部個人課税課、課税第二部消費税課の所得税消費税誤りやすい事例集(令和2年12月)より

(誤りやすい事例)
 事業用車両の売却(下取り)損を事業所得の必要経費としている。
(解説)
 事業用の資産の譲渡による所得であっても、棚卸資産の譲渡や営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡に該当しない場合には、譲渡所得となる(所法33)。