概要
上場株式の配当金には、主に4つの受取方法があります。どの方法を選ぶかは、受け取る場所だけでなく、NISAの非課税や、特定口座内での損益通算にも関係します。
特に、NISAで保有する国内上場株式の配当金を非課税で受け取るには、「株式数比例配分方式」を選択しておく必要があります。NISAで株式を購入しただけで、どの受取方法でも配当金が非課税になるわけではありません(措法9の8、国税庁タックスアンサーNo.1535)。
以下では、日本の居住者である個人が保有する国内企業の上場株式を中心に、国内ETF・国内上場REITの分配金も含めて説明します。大口株主等に関する特例や、外国株式・外国ETFの受取実務は別途確認が必要です。
配当金の受取方法は4種類
| 受取方式 | 受取方法 | NISAで保有する株式の配当金 |
|---|---|---|
| 配当金領収証方式 | 郵送された配当金領収証を、ゆうちょ銀行等の指定金融機関の窓口で換金する | 原則20.315%課税 |
| 個別銘柄指定方式 | 銘柄ごとに指定した銀行等の口座で受け取る | 原則20.315%課税 |
| 登録配当金受領口座方式 | 保有するすべての対象銘柄の配当金を、指定した1つの銀行等の口座で受け取る | 原則20.315%課税 |
| 株式数比例配分方式 | 各証券会社で保有する株式数等に応じて、それぞれの証券口座で受け取る | NISAの非課税要件を満たすものは非課税 |
上記の取扱いは、国内ETF・国内上場REITの分配金についても同様です。また、配当金の受取方法にかかわらず、NISAの非課税要件を満たす株式等の売却益は非課税となります(日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」Q18~20、措法37の14①)。
なお、証券会社によっては、口座開設時に株式数比例配分方式で登録される場合があります。自分で変更を申し込んだ記憶がない場合も、現在の登録内容を証券会社の画面などで確認してください(松井証券「配当金」)。
個別銘柄指定方式と登録配当金受領口座方式の違い
個別銘柄指定方式では、例えばA社の配当金はX銀行、B社の配当金はY銀行というように、銘柄ごとに受取口座を指定できます。一方、登録配当金受領口座方式では、対象となるすべての銘柄について、受取口座を1つにまとめます。
どちらも銀行等の口座で受け取る方法ですが、NISAで保有する国内上場株式の配当金を非課税にするための受取方法には該当しません。
株式数比例配分方式の具体例
同じ銘柄をA証券のNISA口座で100株、B証券の特定口座で200株保有し、1株当たり50円の配当がある場合は、次のように配分されます。
- A証券:100株×50円=5,000円。NISAの非課税要件を満たす配当金は非課税
- B証券:200株×50円=10,000円。特定口座の配当金は課税対象
このように、同じ株主が同じ銘柄を保有していても、各証券会社の保有株式数に応じて配当金が分かれます。株式数比例配分方式を選択しても、特定口座や一般口座で保有する株式の配当金まで非課税になるわけではありません。
受取方法の変更は配当基準日より前に確認する
NISAで保有する国内上場株式の配当金を株式数比例配分方式で受け取るには、その銘柄の配当基準日までに変更手続を完了しておく必要があります。配当金が実際に支払われる日までに変更すればよい、ということではありません。
例えば、配当基準日が3月31日の銘柄であれば、その日までに証券会社を通じて証券保管振替機構へ取り次がれる必要があります。ただし、証券会社の申込期限はそれより前に設定されるため、3月31日に申し込めば間に合うとは限りません。余裕をもって証券会社に確認してください(日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」Q18)。
変更が他の銘柄・他の証券会社にも及ぶ場合
株式数比例配分方式は、NISA口座の株式だけを対象に指定する方法ではありません。1社で選択すると、他の証券会社で保有するものを含め、対象となるすべての銘柄に適用されます。証券会社ごと、銘柄ごとに、株式数比例配分方式と別の方式を使い分けることはできません。
登録配当金受領口座方式も、他の証券会社で保有する銘柄を含め、対象銘柄の受取方法が一括して変更されます。一方、個別銘柄指定方式は銘柄ごとの指定です。どの方式への変更でも、すべての銘柄が一律に同じ方式へ変更される、と理解しないようにしてください(日本証券業協会「株式配当金領収証の削減に向けた取組み」)。
新たな証券口座の開設時などに受取方法が変更される場合もあります。複数の証券会社を利用している場合は、変更後の登録内容も確認しておくと安心です。
「特別口座」があると株式数比例配分方式を利用できない場合がある
信託銀行等の「特別口座」に1銘柄でも株式を保有している場合などは、株式数比例配分方式を利用できません。
特別口座とは、株券電子化の際などに、証券会社に株券を預けていなかった株主の権利を保護するため、発行会社が株主名簿管理人である信託銀行等に開設した口座です。「特定口座」とは異なります。
この場合は、特別口座にある株式の証券口座への移管や特別口座の閉鎖など、必要な手続を確認したうえで、改めて株式数比例配分方式を申し込みます。特別口座の開設先が分からない場合も、取引先の証券会社に相談してください(証券保管振替機構FAQ No.1132、同機構等の配当金受取方法に関する共同リーフレット)。
NISAの配当金が課税された場合の取扱い
確定申告でNISAの非課税に変更することはできない
NISAで保有する国内上場株式の配当金を、配当金領収証方式、個別銘柄指定方式又は登録配当金受領口座方式で受け取ると、原則として20.315%の税率で源泉徴収等が行われます。
受取方式の選択漏れによって課税された場合、確定申告をしても、その配当金をNISAの非課税所得に変更することはできません(日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」Q18注)。
通常の課税配当として申告を検討できる
NISAの非課税に変更できない場合でも、通常の課税配当として、次の取扱いを検討できます。
- 申告不要制度を選択し、その配当金を確定申告に含めない
- 総合課税で申告し、対象となる配当金について配当控除を受ける
- 申告分離課税で申告し、一定の上場株式等の譲渡損失との損益通算や、繰り越された譲渡損失の控除を受ける
ただし、総合課税で申告すれば、どの配当金・分配金でも配当控除を受けられるわけではありません。例えば、REITの分配金は配当控除の対象外です。また、申告分離課税を選択した配当所得には、配当控除を適用できません(所法92①、措法8の4、37の12の2、国税庁タックスアンサーNo.1250・1331・1474)。
なお、NISA口座内で生じた株式等の売却損は、上記の課税配当や、特定口座・一般口座の売却益と損益通算できません(措法37の14、国税庁タックスアンサーNo.1535)。
申告することによる税負担の増減に加え、扶養判定や国民健康保険料等への影響が生じる場合もあるため、申告の有利・不利は全体で判断します(墨田区「令和6年度以降の上場株式等に係る配当所得等及び譲渡所得等の申告」)。
非上場の公募株式投資信託の分配金は別の取扱い
NISAで保有する非上場の公募株式投資信託については、販売会社である証券会社や銀行等を通じて分配金が支払われるため、普通分配金を非課税にするために、株式数比例配分方式を選択する手続は必要ありません。
また、元本払戻金(特別分配金)は、投資した元本の一部の払戻しに当たるため、NISA口座か課税口座かにかかわらず、そもそも課税対象ではありません(日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」Q21)。
この説明と、株式数比例配分方式の選択が必要な国内ETFの分配金とを混同しないようにしてください。
特定口座内で配当金と譲渡損失を自動的に通算するには
源泉徴収ありの特定口座に受け入れた配当金等は、その特定口座内の上場株式等の譲渡損失と、証券会社が自動的に損益通算します。
国内上場株式等の配当金について、この取扱いを受けるには、株式数比例配分方式を選択したうえで、源泉徴収ありの特定口座に配当金を受け入れる手続が必要です。株式数比例配分方式の選択と、特定口座への配当金の受入手続は、確認すべき事項が異なります。
具体的には、証券会社への「源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書」の提出等が必要となるため、既に手続が済んでいるかを確認してください(措法37の11の6②、措令25の10の13②、国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」267頁)。
なお、同じ証券会社の一般口座で保有する上場株式等の配当金も、その証券会社の源泉徴収ありの特定口座に受け入れることができます。他の証券会社の口座との損益通算や、過年度から繰り越した譲渡損失の控除を受ける場合は、確定申告が必要です(国税庁タックスアンサーNo.1476)。
参考資料・根拠
- 租税特別措置法:9の8、8の4、37の11の6、37の12の2、37の14
- 国税庁タックスアンサーNo.1535「NISA制度」
- 国税庁タックスアンサーNo.1476「特定口座制度」
- 国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」第9・267頁
- 国税庁タックスアンサーNo.1250「配当所得があるとき(配当控除)」
- 国税庁タックスアンサーNo.1331「上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
- 国税庁タックスアンサーNo.1474「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
- 日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」Q18~21・Q30
- 日本証券業協会「株式配当金領収証の削減に向けた取組み」
- 証券保管振替機構等「配当金領収証と引き換えに株式の配当金をお受け取りの株主様へ」
- 証券保管振替機構FAQ No.1132
- 松井証券「配当金」〔初期設定の例〕
- 墨田区「令和6年度以降の上場株式等に係る配当所得等及び譲渡所得等の申告」
※令和8年11月3日現在の法令・公表資料に基づきます。令和9年1月1日以後に生ずる所得については、防衛特別所得税の導入と復興特別所得税の税率引下げがありますが、上記の配当金に係る合計税率20.315%に変更はありません(国税庁タックスアンサーNo.1331)。


