概要

 課税処分取消訴訟は、課税処分の適否について争われるから、主要事実(課税処分の根拠となる事実)の存否についての立証責任(挙証責任)は、原則として国側が負うことになります。

 したがって、国側は、主要事実を裁判所に認定される程度の証拠を提出する必要があります。

 この点については、最高裁判所昭和38年3月3日第三小法廷判決(訟務月報9巻5号668頁)において、「所得の存在及びその金額について決定庁が立証責任を負うことはいうまでもないところである。」と判示されており、多くの裁判例や学説も、原則として国側に立証責任(挙証責任)があるものと解しています。

 一方、納税者側は、国側が主張する主要事実を否認する証拠(反証)を提出し、これにより裁判所の心証を、その主要事実が存在するとも存在しないとも分からない程度の状態に至らせば、立証責任(挙証責任)の原則により、当該課税処分の根拠となる事実が存在しないことになります。つまり、納税者側の「勝ち」となります。

 なお、課税処分取消訴訟における立証責任(挙証責任)は、原則として国側にありますが、税法上、納税者が優遇されているような場合は、納税者側に立証責任があります。

 例えば、以下に関するものは納税者側に立証責任があります。

東京地裁平成15年5月15日判決(訟月51巻7号1926頁)(一部取消し)(控訴)

(1)事案の概要

① 原告は、大学(医学部)及び附属病院などを経営する学校法人Xであり、製薬会社等からの委託に基づいて治験等を実施し、寄附金(以下「本件寄附金」という。)を受領していた。
② 国側当事者である被告税務署長Yは、Xが平成2年3月期の法人税の確定申告をしていないことから調査に着手したところ、Xが指摘事項の一部については期限後申告に応じたものの、本件寄附金については申告に応じなかったことから、更正処分等を行った。
③ Xは、これを不服として本訴に及んだ。Xの主張は以下である。
(イ)本件寄附金は、「純粋な寄附」による寄附金であって、治験等の役務提供の対価として支払われたものではないから、収益事業(請負業)に係る収入には該当しない。
(ロ)X所属のA教授が、医師、教授等や製薬会社に直接確認した調査結果によれば、本件寄附金は治験等の対価とは認められない。

(2)本件の主な争点

 本件寄附金が、Xの実施した治験等に係る役務提供の対価として支払われたものか否かである。

(3)判決要旨(一部取消し)(控訴)

① 本件寄附金のうちの個々の寄附金の一つ一つについて、それが治験等に係る役務提供の対価と認められるか否かを判断するについては、当該寄附の起因、目的、経緯、金額、寄附を行った者、寄附の受入先及び寄附を行った者との関係、役務の内容、役務提供の有無等、当該寄附に関する諸般の事情を総合考慮して判断することが相当というべきである。
② 本件寄附金のうち、治験等に係る役務提供の対価として支払われたことを認めるに足りる具体的な主張、立証がないものや、X所属のA教授の供述を覆すに足りる証拠がないものは、治験等に係る役務提供の対価と認めることはできない。
③ 本件寄附金のうち、治験等に係る役務提供の対価として支払われたことが認められるものについては、法人税法施行令5条1項10号に規定する収益事業(請負業)に係る収入に該当する。