概要

 インターネットによる宣伝や売買取引等を行なうために、ホームページやランディングページ(LP)を制作することは、事業者にとっては、もはや一般常識となっています。

 ホームページといっても、その内容や制作金額に相当差があるため、その制作費用の税務上の取扱いに悩む方は多いでしょう。

国税庁タックスアンサー(旧)

 以前、国税庁タックスアンサーの「No.5461 ソフトウェアの取得価額と耐用年数」の中のQAで「ホームページの制作費用について」という記事がありました(現在は削除されています)。

ホームページの制作費用について

Q1
 インターネット上に広告宣伝用のホームページを開設しました。その制作のために業者に委託した費用は、広告宣伝費等として一時の損金にするのでしょうか。それとも、繰延資産として償却するのでしょうか。

A1
 通常、ホームページは企業や新製品のPRのために制作されるものであり、その内容は頻繁に更新されるため、開設の際の制作費用の支出の効果が1年以上には及ばないと考えられますので、ホームページの制作費用は、原則として、その支出時の損金として取り扱うのが相当であると考えられます。
 ただし、ホームページの内容が更新されないまま使用期間が1年を超える場合には、その制作費用はその使用期間に応じて償却します。
 また、制作費用の中にプログラムの作成費用(ソフトウェアの開発費用)が含まれるようなホームページについては、その制作費用のうちプログラムの作成費用に相当する金額は無形減価償却資産(ソフトウェア)として耐用年数「5年」を適用して償却することとなります。
(法令13、耐令別表第三)

ホームページの制作費用

 上記からわかることは、以下ということになります。

(1)原則

 ホームページの制作費用は、原則として、その支出時に損金とします。つまり、支出時に「広告宣伝費」として処理するということになります。

 自社制作の場合であっても、ホームページ制作業者に外注した場合であっても、原則として、支出時に「広告宣伝費」として処理するということになります。

 ここでのポイントは、次の2点です。

(イ)ホームページ開設の際の制作費用の支出の効果が1年以上には及ばない場合ということになります。ここでいう「支出の効果が1年以上」とは、ホームページを開設をしてから1年以上更新をせず、公開のみ行っている場合を意味します。よって、ホームページ開設してから1年内に更新をしていれば、「広告宣伝費」となります。

(ロ)ホームページの完成前に前金(内金)として、例えば、半額払うようなこともあるでしょう。その場合は、お金を払ってはいますが、ホームページが稼働しているわけではないので、その場合は「前払金」として処理するのが適切だと思います。

(2)ホームページが更新されない場合

 ホームページが更新されずに使用期間が1年を超える場合には、その制作費用は税務上の繰延資産として、その使用期間に応じて償却します(法令14①六ホ)。

 ただし、支出する金額が20万円未満であり、その支出する日の属する事業年度において全額損金経理をしたときは、支出事業年度の損金の額に算入できます(法令134)。

 ホームページを制作したが、全く更新をしない場合も実際には結構あると思います。ホームページを制作したが、忙しかったり、あるいは業者に丸め込まれて制作したがホームページに興味がなく全く更新をしない方は結構いるでしょう。

 しかしながら、税務調査で、この「(2)ホームページが更新されない場合」に該当すると指摘されたという話は聞いたことがありません。

 ですから、実務的には、「(1)原則」なのか、次に説明する「(3)制作費用の中にプログラムの作成費用(ソフトウェアの開発費用)が含まれる場合」なのかを注意すればよいかと思います。

(3)制作費用の中にプログラムの作成費用(ソフトウェアの開発費用)が含まれる場合

 ECサイトなどホームページにおいて商品検索機能やオンラインショッピング機能などプログラムの作成費用(ソフトウェアの開発費用)が付いているような場合は、ホームページの制作費用のうちこの分の費用については無形減価償却資産のソフトウェアに該当します(法令13八リ)。

 「複写して販売するための原本」または「研究開発用のもの」ではないため、耐用年数5年(月割計算なので60か月)で定額法による減価償却を行います(耐令別表第三、六)。

 つまり、ホームページの制作費用のうち、検索機能などのプログラム機能についてはソフトウエアに該当し、その他の部分は原則として広告宣伝費になるということですが、それぞれの費用が区分できない場合には、全体をソフトウエアとして資産計上する必要があります。

 ですから、ホームページ制作を外注する際には、費用区分して領収書等をもらうようにしてください。

 お問い合わせフォームや資料請求フォームのように、見込み客等が名前等の各項目を入力してクリックし、単純に自社にメールが送られる程度の機能である場合は、広告宣伝目的等の一環であると考えられ、ソフトウエアではなく広告宣伝費として一般的に取り扱われています。

 なお、中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)は、ソフトウエアにも適用されます。

ランディングページ(LP)の制作費用

 ランディングページ(LP)の場合は、通常のホームページと違い、広告宣伝の目的が高いといえますので、原則として「広告宣伝費」の処理となるでしょう。

 ただし、プログラムの作成費用(ソフトウェアの開発費用)が付いているような場合は、上記「ホームページの制作費用」と同様、注意をしてください。

google広告、SEO対策費用

 google広告、SEO対策費用は広告目的が主といえ、原則として「広告宣伝費」としての処理となるでしょう。

 ただし、お金を払ったが、広告として利用されていない分であり、かつ、それが返金される可能性があるものは「前払金」として処理するのが適切だと思います。

サーバー代、ドメイン代

 サーバー代、ドメイン代は、広告宣伝費、通信費などの勘定科目が一般的に使われています。