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不動産所得の事業的規模とは?5棟10室基準と青色申告特別控除75万円・65万円の関係

不動産所得は「事業的規模」かどうかで税務上の取扱いが変わる

 アパート、マンション、貸家、貸地などの賃貸による所得は、原則として不動産所得となります。

 ただし、その不動産貸付けが「事業として行われている」、いわゆる事業的規模に該当するかどうかによって、所得税法上の取扱いが異なります。

 例えば、青色申告特別控除、賃貸用固定資産の取壊し・除却・滅失等による資産損失、未収家賃等の貸倒損失、青色事業専従者給与などについて違いが生じます(所法51、57、64、措法25の2)。

 特に、令和8年度税制改正により、令和9年分から青色申告特別控除の最高額が75万円となるため、不動産所得者にとって「事業的規模」に該当するかどうかは重要な判断事項となります。

事業的規模は本来「社会通念」により判定する

 不動産貸付けが事業的規模に該当するかどうかについて、所得税法には「何棟以上」「何室以上」という直接の規定はありません。

 建物の貸付けについて、所得税基本通達26-9は、まず「社会通念上事業と称するに至る程度の規模」で行われているかどうかによって判定することとしています。

 その上で、次のいずれかに該当する場合、又は賃貸料の収入状況、貸付資産の管理状況等からこれらに準ずる事情がある場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとしています(所基通26-9)。

・貸間、アパート等について、貸与することができる独立した室数がおおむね10室以上

・独立家屋の貸付けについて、おおむね5棟以上

 これが、一般に「5棟10室基準」と呼ばれているものです。

5棟10室基準は絶対的な必要条件ではない

 5棟10室基準については、その位置付けを正確に理解する必要があります。

 平成16年9月27日裁決(裁事68集59頁)は、所得税基本通達26-9について、5棟10室基準を満たせば事業として行われているものとするという「十分条件」を定めたものにすぎず、この基準を満たさなかったからといって、直ちに事業に該当しないとはいえないと判断しています。

 平成19年12月4日裁決(裁事74集37頁)も、同様の考え方を示しています。

 したがって、例えば貸室が9室であるという理由だけで、必ず事業的規模ではないと判断されるわけではありません。

 一方、所得税基本通達26-9は、5棟又は10室に達している場合についても「特に反証がない限り」としています。

 つまり、5棟10室は実務上非常に重要な判定基準ですが、本来の判定は、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによります(所基通26-9)。

5棟10室未満の場合は貸付けの実態を総合して判断する

 平成16年9月27日裁決(裁事68集59頁)及び平成19年12月4日裁決(裁事74集37頁)では、不動産貸付けが事業に該当するかについて、おおむね次のような事情を総合的に検討しています。

・営利性・有償性があるか

・継続性・反復性があるか

・自己の危険と計算において事業を行っているか

・貸付けに費やす精神的・肉体的労力の程度

・人的・物的設備の有無

・取引の目的

・貸主の職歴、社会的地位、生活状況など

 したがって、室数や棟数だけでなく、不動産貸付けの実態全体を見る必要があります。

一戸建て1棟をアパート2室に置き換えて判定しない

 「5棟」と「10室」という数字から、一戸建て1棟をアパート2室として換算し、両者を合算すればよいと思われることがあります。

 しかし、国税庁税務大学校「所得税法(令和8年度版)」28頁では、5棟10室のカウントについて、「1棟を2室と置き換えての判定はしない」と説明されています。

 したがって、例えば一戸建てとアパートを併せて貸し付けている場合に、一戸建て1棟を機械的に2室へ換算し、「換算後の室数が10室以上だから事業的規模」と判定する方法は採りません。

 形式基準だけで結論を出せない組合せの場合には、賃貸料の収入状況、貸付資産の管理状況その他の事情も含め、社会通念上事業と称するに至る程度の規模かどうかを検討することになります。

共有不動産は共有持分で室数や棟数を按分しない

 賃貸不動産を夫婦や親子などで共有している場合にも注意が必要です。

 例えば、12室のアパートを夫婦が2分の1ずつ共有しているからといって、それぞれ「6室」として事業的規模を判定するわけではありません。

 東京国税局の「所得税・消費税誤りやすい事例集(令和7年12月)」では、貸付け用不動産が2人以上の共有である場合でも、事業的規模かどうかについては共有持分で按分せず、その不動産全体の貸付規模で判定するとされています。

 したがって、12室のアパートを2人で共有している場合には、原則として12室の貸付けとして事業的規模を判定します。

貸地がある場合は「おおむね5件=貸室1室相当」が実務上の目安

 所得税基本通達26-9の5棟10室基準は、文言上は建物の貸付けについて定められたものです。

 一方、土地の貸付けについては、国税庁税務大学校「所得税法(令和8年度版)」28頁において、実務上、建物貸付けの形式基準を参考として、1室の貸付けに相当する土地の貸付件数を「おおむね5」として判定すると説明されています。

 同教材では、貸室8室と貸地10件がある場合について、貸地10件を貸室2室相当として、合わせて貸室10室相当となり、事業として行われているものと判定する例が示されています。

 したがって、土地の貸付けについては、土地の面積ではなく「貸付件数」が重要となります。

青空駐車場は「おおむね50台」が一つの目安

 駐車場について、「駐車可能台数5台につき貸室1室」と単純に換算するのは適切ではありません。

 国税庁「東日本大震災により損害を受けた場合の所得税の取扱い(情報)」Ⅱ質疑応答編・第2・20「災害関連支出(青空駐車場の土盛り費用)」52頁では、青空駐車場について、まず社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって判定するとしています。

 そして、その判定が困難な場合には、おおむね50台を貸し付けている場合を事業的規模の貸付けと考える取扱いが示されています。

 さらに、同一の賃借人に対して駐車場を2台分以上貸し付けている場合には、事業的規模の判定上は1台分として判定するとされています。

 したがって、単に「50台駐車できる土地を所有している」というだけではなく、実際に何台分を誰に貸し付けているのかにも注意する必要があります。

 なお、この「おおむね50台」という目安は、東日本大震災の場合だけに適用される特別な判定基準として設けられたものではありません。この質疑応答事例では、所得税基本通達26-9を踏まえ、青空駐車場について通常の所得税における事業的規模の判定方法を説明しています。

駐車場収入が必ず不動産所得になるわけではない

 駐車場については、その所得区分にも注意が必要です。

 所得税基本通達27-2では、自己の責任において他人の物を保管する場合の所得は事業所得又は雑所得に該当し、単なる土地等の貸付けと認められる場合には不動産所得になるとされています(所基通27-2)。

 したがって、駐車場について事業的規模を検討する場合には、まず、その駐車場収入が不動産所得に該当するかどうかを確認する必要があります。

事業的規模かどうかで所得税の取扱いはどう変わる?

 主な違いを整理すると、次のとおりです。

項目事業的規模事業的規模でない
賃貸用固定資産の取壊し・除却・滅失等による資産損失原則として損失額の全額を必要経費に算入資産損失控除前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入
未収家賃等の貸倒れ貸倒れとなった年分の必要経費原則として収入計上した年分まで遡って処理
青色申告特別控除一定の要件により令和8年分までは最高65万円、令和9年分以後は最高75万円不動産所得のみの場合は原則最高10万円
青色事業専従者給与要件を満たせば適用可能適用不可
白色申告の事業専従者控除要件を満たせば適用可能適用不可

 ただし、事業的規模であることだけで、これらの制度が自動的に適用されるわけではありません。それぞれの制度固有の要件を満たす必要があります。

建物等の資産損失については別記事で詳しく解説

 賃貸用建物などの取壊し・除却・滅失等による資産損失については、不動産貸付けが事業的規模かどうかによって、必要経費に算入できる金額が異なります(所法51①④)。

 事業的規模の場合には、原則として資産損失の全額を必要経費に算入できますが、事業的規模でない場合には、その年分の資産損失控除前の不動産所得の金額が限度となります。

 また、建物自体について生ずる資産損失と、解体業者等へ支払う取壊し費用は区別して考える必要があります。

 詳しい要件、具体的な計算方法、裁決例については、別記事「不動産所得が事業的規模であるか否かで、建物等の資産損失(取壊し、除却、滅失等)の必要経費の取扱いが違ってきます」で解説しています。

青色事業専従者給与は事業的規模であることが前提

 不動産所得について青色事業専従者給与を必要経費に算入するためには、不動産貸付けが事業として行われていることが必要です(所法57①)。

 しかし、事業的規模であれば、家族へ支払った給与が当然に必要経費になるわけではありません。

 事業に専ら従事していること、届出書を期限内に提出していること、給与額が労務の対価として相当であることなど、青色事業専従者給与固有の要件も満たす必要があります。

 不動産所得における青色事業専従者給与の適正額や具体的な裁決例については、別記事「不動産所得における青色事業専従者給与の適正額とは」で詳しく解説しています。

令和8年分までの青色申告特別控除

 令和8年分までは、不動産貸付けが事業的規模であり、正規の簿記の原則による記帳、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内申告等の要件を満たす場合、最高55万円の青色申告特別控除を受けることができます。

 さらに、優良な電子帳簿の保存又はe-Taxによる電子申告のいずれかの要件を満たした場合には、最高65万円となります。

 一方、不動産貸付けが事業的規模でなく、他に事業所得を生ずべき事業も営んでいない場合には、原則として最高10万円です。

令和9年分からは事業的規模なら最高75万円

 令和8年度税制改正により、令和9年分以後の青色申告特別控除は大きく変わります。

 不動産貸付けが事業的規模である場合、主な控除額は次のようになります。

控除額令和9年分以後の主な要件
75万円正規の簿記+貸借対照表・損益計算書等+期限内e-Tax+優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存
65万円正規の簿記+貸借対照表・損益計算書等+期限内e-Tax
10万円65万円・75万円の要件を満たさない青色申告者。ただし一定の簡易簿記事業者は対象外

 したがって、令和9年分から、事業的規模であるというだけで75万円控除を受けられるわけではありません。

 事業的規模であることに加え、正規の簿記、貸借対照表・損益計算書等、期限内e-Taxなど65万円控除の要件を満たし、さらに優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存の要件を満たす必要があります(措法25の2)。

 75万円・65万円・10万円の具体的な要件、届出書、優良な電子帳簿、デジタルシームレス保存については、別記事「青色申告特別控除は令和9年分から最大75万円に|65万円・10万円の要件も改正」で詳しく解説しています。

事業的規模でない不動産貸付けは令和9年分以後も原則10万円

 令和9年分以後についても、不動産貸付けが事業的規模でなく、他に事業所得を生ずべき事業を営んでいない場合には、原則として最高10万円の青色申告特別控除となります。

 令和8年度税制改正では、簡易な簿記の方法により記帳している一定の事業者について、前々年分の不動産所得又は事業所得に係る収入金額が1,000万円を超える場合には、10万円控除の対象から除外する改正が行われました(措法25の2②)。

 しかし、不動産所得についてこの適用除外の対象となるのは、「不動産所得を生ずべき事業を営む者」です。

 そのため、事業といえない程度の小規模な不動産貸付けについては、前々年分の不動産所得に係る収入金額が1,000万円を超えていたとしても、この1,000万円基準による10万円控除の適用除外の対象とはされません。

 なお、事業的規模の不動産貸付けで前々年分の収入金額が1,000万円を超えていたとしても、それだけで65万円・75万円控除を受けられなくなるわけではありません。

 1,000万円基準は、簡易簿記による10万円控除の適用除外に関する基準です。

不動産貸付けは小規模でも、別に事業所得があれば65万円・75万円控除を受けられる場合がある

 不動産貸付け自体が事業的規模でなくても、別に事業所得を生ずべき事業を営んでいる場合には取扱いが異なります。

 例えば、小規模なアパートから生ずる不動産所得のほかに個人事業による事業所得があり、その事業について正規の簿記などの要件を満たしている場合には、不動産貸付け自体が事業的規模でなくても、令和8年分までは最高55万円又は65万円の青色申告特別控除を受けられる場合があります。

 令和9年分以後についても、事業所得を生ずべき事業について所定の要件を満たせば、最高65万円又は75万円の青色申告特別控除の対象となり得ます(措法25の2)。

 この場合の青色申告特別控除は、不動産所得の金額、事業所得の金額の順に控除します。

事業的規模でなくても不動産所得の赤字は原則として損益通算できる

 不動産貸付けが事業的規模であるかどうかは、不動産所得の赤字を給与所得などと損益通算できるかどうかを直接左右するものではありません。

 不動産所得に損失が生じた場合には、原則として他の所得と損益通算することができます(所法69①)。

 ただし、不動産所得の損失のうち、土地等を取得するための負債の利子に相当する部分などについては、損益通算できない場合があります。

 また、一定の組合事業等から生ずる不動産所得の損失や、国外中古建物に係る一定の損失についても、別途、損益通算の制限があります。

 したがって、「不動産貸付けが事業的規模でなければ損益通算できない」という理解は誤りです。

裁決例からみる事業的規模の判定

平成8年7月31日裁決(裁事52集41頁)

 賃貸料収入が年間1,500万円を超えていた事例ですが、貸付物件が建物1棟のみで貸付先も1社のみであったこと、貸主側の役務提供が極めて少なかったことなどから、事業的規模ではないと判断されています。

 この裁決からも、賃料収入が多額であるという事実だけで事業的規模になるわけではないことが分かります。

平成16年9月27日裁決(裁事68集59頁)

 この裁決は、5棟10室基準について、基準を満たせば事業として取り扱うための十分条件にすぎず、満たさない場合でも直ちに事業ではないとはいえないとしています。

 その上で、営利性・有償性、継続性・反復性、自己の危険と計算、労力、人的・物的設備、取引目的、本人の職歴・社会的地位・生活状況等を総合して判断するとしています。

 本件では、貸主としての維持管理業務が少なく、事業遂行上の企画性や危険負担も乏しいことなどから、事業的規模ではないと判断されました。

平成19年12月4日裁決(裁事74集37頁)

 この裁決でも、5棟10室基準は十分条件であり、基準に達しないからといって直ちに事業性が否定されるものではないとの考え方が示されています。

 その上で、貸付物件が建物1棟及び駐車場2台分程度で、貸付先が本人の同族会社や親族に限定され、貸主として行う維持管理等の労務も少ないことなどを総合して、事業的規模ではないと判断されています。

まとめ

 不動産貸付けが事業的規模であるかどうかは、本来、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって実質的に判断します。

 貸間・アパート等がおおむね10室以上、独立家屋がおおむね5棟以上であれば、特に反証がない限り事業として扱われますが、この5棟10室基準は絶対的な必要条件ではありません(所基通26-9)。

 また、一戸建て1棟を単純にアパート2室へ置き換えて5棟10室基準を判定する方法は採りません。一方、土地貸付けについては、実務上、おおむね5件を貸室1室相当として判定する取扱いが示されています。

 青空駐車場については、社会通念による判定が困難な場合、おおむね50台を貸し付けていることが事業的規模の一つの目安とされています。ただし、同一の賃借人に複数区画を貸している場合には1台分として判定するため、単純に駐車可能台数だけで判断するものではありません。

 事業的規模に該当するかどうかによって、資産損失、貸倒損失、青色事業専従者給与、青色申告特別控除などの所得税上の取扱いが変わります。

 特に令和9年分以後は、事業的規模の不動産所得について、正規の簿記と期限内e-Tax等の要件を満たせば最高65万円、さらに優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存の要件を満たせば最高75万円の青色申告特別控除を受けられる制度となります。

 一方、事業的規模でない不動産貸付けについては、他に事業所得を生ずべき事業を営んでいない場合、原則として最高10万円です。

 したがって、不動産所得の申告では、単に「何室あるか」だけで判断するのではなく、貸付物件の種類、貸付件数、賃貸料の収入状況、管理状況、貸主が実際に行っている業務等を踏まえて、事業的規模に該当するかを検討することが重要です。

主な根拠法令・通達・公的資料

・所得税法26条、51条、57条、64条、69条

・租税特別措置法25条の2、41条の4

・所得税基本通達26-9、27-2

・国税庁タックスアンサーNo.1373「事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」

・国税庁税務大学校「所得税法(令和8年度版)」28頁

・国税庁「東日本大震災により損害を受けた場合の所得税の取扱い(情報)」Ⅱ質疑応答編・第2・20「災害関連支出(青空駐車場の土盛り費用)」52頁

・国税庁「簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ」

・国税庁「優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存により75万円の青色申告特別控除を適用しましょう!」

・財務省「令和8年度税制改正の解説」425~429頁

参考資料

・『令和8年版 所得税基本通達逐条解説』143~144頁(所得税基本通達26-9関係)

・東京国税局「所得税・消費税誤りやすい事例集(令和7年12月)」

関連する公表裁決例

昭和52年1月27日裁決(裁事13集1頁)要旨

 貸付不動産は遠隔地に散在し、賃貸料についても固定資産税、管理費、減価償却費等所要の経費を賄ってなお相当の利益が生ずるようになっており、賃貸料の集金、名義書換え及び契約更新の交渉等についても長年の経験と知識をもって専従者(母)が行っており、かつ、毎月収支明細表を作成し、資金の収支を整然めいりょうに記載する等財産的管理が十分に行われている状況からみて、不動産の貸付けが事業として行われているとみるのが相当である。
 したがって、請求人の不動産所得の金額の計算上、青色事業専従者給与の金額の必要経費算入を否認した原処分は取り消すべきである。

昭和54年9月26日裁決(裁事18集51頁)要旨

 請求人は、某会社に勤務しながらアパートを所有し、その賃貸に係る不動産所得について青色申告書の提出をしているが、1)本件アパートは、請求人の住居と同一の敷地内にあり、その規模は独立した部屋数が4で、入居契約者も3名程度の小規模な貸付であること、2)その貸付から生ずる賃貸料は、固定資産税、管理費、減価償却費等所要の経費にも満たない金額であること、3)請求人は某会社に勤務して安定収入を得、生活費の資の大部分は給与収入によってまかなっており、本件アパートの貸付は、社会通念上事業と称するに至る程度の規模とは認められず、従って、本件アパートの貸付による不動産所得の計算上、請求人が青色事業専従者として請求人の妻に支払ったとする給与の額は、所得税法57条の規定による青色事業専従者給与の額に該当せず、必要経費に算入することはできない。

平成7年5月30日裁決(裁事49集76頁)要旨

 請求人は、青色申告者で不動産貸付業及び理容業を営み、その妻が[1]不動産管理台帳の記載、[2]賃貸料の受領及び領収書の発行、[3]賃貸料未納者に対する督促及び集金、[4]現金領収した賃貸料の預金への預入れ、[5]賃借人との使用契約書の作成、[6]無断駐車の有無の見回り、[7]駐車場の草取り、[8]理容業用タオルの洗濯及び床清掃などの業務に従事しているから、その妻は青色事業専従者に該当する旨主張する。しかしながら、[1]駐車場の駐車可能台数(1月当たり多くても54台分)、[2]賃貸料の銀行振込みの数、[3]賃貸料の現金領収の数(平成3年分32.3台及び平成4年分15.8台)、[4]賃借人の交替した数(平成3年分が12人(13台分)、平成4年分が5人(15台分))、[5]無断駐車の見回りの回数(月5回程度行ったとしても、各駐車場が近所であるから時間的には短時間で済む)、[6]駐車場の路面の状況、[7]理容店の客数などからみると、その妻が請求人が主張するような業務に現に従事し、又は従事していたとしても、その事務量は僅少であると認められ、請求人の事業に専ら従事していたとはいえないから、その妻は青色事業専従者の要件を満たしていない。

平成8年7月31日裁決(裁事52集41頁)要旨

 請求人は、本件建物の貸付けは、賃借人は1社のみであるが、1,500万円以上の収入があり、当該建物の2階部分も賃貸すれば、3,000万円を超える収入を得られる可能性があり、2階部分の修復、維持管理のため等に従事している専従者に支払つた給与は必要経費に算入されるべきである旨主張する。
 しかしながら、1)貸付物件は、本件建物のみで、当該建物の貸付けに係る請求人等の役務の提供は極めて僅少であると認められること、2)本件建物の1階部分の修理等は賃借人が行つていること等を総合的に判断すると、賃貸料収入が1,500万円であつたとしても、社会通念上事業と称するに至る程度のものとは認められないとみるのが相当である。
 したがつて、本件建物の貸付けは、所得税法57条1項に規定する不動産所得を生ずべき「事業」に該当しないから、専従者給与の額を必要経費に算入することはできない。

平成16年9月27日裁決(裁事68集59頁)要旨

 事業性については、[1]営利性・有償性の有無、[2]継続性・反復性の有無、[3]自己の危険と計算における事業遂行性の有無、[4]取引に費やした精神的肉体的労力の程度、[5]人的・物的設備の有無、[6]取引の目的、[7]事業を営む者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を総合勘案して判断されるべきところ、本件貸付けについては、不動産貸付けの目的、営利性、継続性などを部分部分としてみた場合においては、直ちに事業ではないということはできない要素も認められる。
 しかしながら、本件貸付けは、請求人が代表取締役社長を務める同族会社F社への専属的な貸付けのみであり、事務所の修理等は専ら賃借人である同社が主導的に行い、賃借料の決定は同社の業績が優先的に考慮されていることから、請求人における事業遂行上その企画性は乏しく、危険負担も少ないと認められる。また、事務所は、F社が利用しやすいようF社が所有する事務所の1階とワンフロアで一体的に利用できるよう改造されており、その構造からみて他に賃貸等が可能である等の汎用性がないなど、これらの点における請求人の自己の危険と計算における事業遂行性は希薄であると認められる。
 さらに、請求人の配偶者Gが大半の時間を費やして行っている清掃などには、本来F社がその業務として行うべきものが含まれており、GがF社の取締役に就任していることに照らすと、本件貸付けにおいて貸主として本来行うべき維持管理業務の程度は、実質的には相当低いことが認められる。
 これらの諸点を総合して勘案すると、本件貸付けは、社会通念上事業と称するに至る程度のものとは認められないと判断するのが相当である。

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