クラウド会計対応 月額5,500円からの顧問料 東京都豊島区池袋の格安顧問料の税理士です

青色申告特別控除は令和9年分から最大75万円に|65万円・10万円の要件も改正

青色申告特別控除は令和9年分から最大75万円に

 令和8年度税制改正により、青色申告特別控除の最高額が65万円から75万円へ引き上げられることになりました。

 ただし、これまで65万円控除を受けていた人が、令和9年分から自動的に75万円控除になるわけではありません。

 今回の改正では、75万円控除への引上げだけでなく、従来の55万円控除が65万円控除へ組み替えられ、65万円控除にはe-Taxによる期限内申告が必須となります。

 さらに、簡易簿記による10万円控除についても、一定の事業者は対象から除外されます。

 したがって、今回の改正は単なる「65万円から75万円への10万円増額」ではなく、10万円・65万円・75万円という青色申告特別控除の体系全体を見直す改正として理解する必要があります(措法25の2)。

75万円控除になるのは令和9年分から

 「令和8年度税制改正」という名称であっても、令和8年分の確定申告から75万円控除になるわけではありません。

 今回の青色申告特別控除の改正は、令和9年分以後の所得税について適用され、令和8年分以前については従前の制度が適用されます(令和8年改正法附則33)。

所得税の年分青色申告特別控除の最高額
令和8年分まで65万円
令和9年分以後75万円

 令和9年分とは、原則として令和9年1月1日から12月31日までの所得をいい、その確定申告を行うのは令和10年です。

令和9年分からは10万円・65万円・75万円が基本

 令和9年分以後の主な控除額と要件を簡略化すると、次のようになります。

控除額主な要件
75万円正規の簿記+貸借対照表・損益計算書等+期限内e-Tax+優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存
65万円正規の簿記+貸借対照表・損益計算書等+期限内e-Tax
10万円65万円・75万円控除の要件を満たさない青色申告者。ただし一定の簡易簿記事業者等は対象外

 特に注意したいのは、e-Taxを利用するだけでは75万円控除にならないことです。

 75万円控除を受けるためには、まず65万円控除の要件を満たした上で、「優良な電子帳簿の保存」又は「デジタルシームレス保存」のいずれかの要件を追加して満たす必要があります(措法25の2④⑤⑦、措規9の6)。

今回の改正の目的は帳簿・申告のデジタル化

 財務省の「令和8年度税制改正の解説」では、今回の見直しについて、適正な申告を確保するため、取引から会計・税務までシームレスにデジタルデータで処理される仕組みや、トレーサビリティが確保された帳簿書類の利用を促進する観点から行ったと説明されています。

 つまり、75万円への引上げは単なる控除額の増額ではありません。

 取引データ、帳簿、確定申告までのデジタル化を進め、取引から申告までの追跡可能性を高めた事業者について、より大きな青色申告特別控除を認める制度へ移行するというのが、今回の改正の大きな方向性です。

令和9年分から65万円控除にはe-Taxが必須

 令和8年分までは、正規の簿記の原則により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表・損益計算書等を添付して期限内申告をすれば55万円控除を受けることができます。

 さらに、優良な電子帳簿の保存又はe-Taxによる電子申告のいずれかの要件を満たせば、65万円控除を受けることができます。

 これが令和9年分から大きく変わります。

 従来の55万円控除は65万円へ引き上げられる一方、確定申告書及び青色申告決算書(貸借対照表を含みます。)のデータを、確定申告期限までにe-Taxで送信することが65万円控除の必須要件となります(措法25の2④⑦、措規9の6⑪)。

 したがって、令和8年分までは書面申告でも55万円控除を受けることができますが、令和9年分から書面申告を続けた場合には、原則として青色申告特別控除の上限は10万円となります。

 ただし、後述する簡易簿記による10万円控除の適用除外に該当する場合には、その10万円控除も受けることができません。

還付申告でも期限内のe-Taxが必要

 65万円又は75万円の青色申告特別控除を受ける場合には、還付申告となる場合であっても、確定申告期限までにe-Taxで申告する必要があります。

 還付申告は一般に5年間提出することができますが、「還付だから後で申告すればよい」と考えて期限後に申告すると、65万円又は75万円の青色申告特別控除の要件を満たさなくなるため注意が必要です。

75万円控除は「65万円控除+電子保存」の制度

 75万円控除を受けるためには、まず65万円控除の要件を満たす必要があります。

  • 青色申告の承認を受けていること
  • 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること
  • 原則として正規の簿記の原則に従って記帳していること
  • 貸借対照表・損益計算書等を作成していること
  • 確定申告期限までに確定申告書及び青色申告決算書等のデータをe-Taxで送信していること

 その上で、次のいずれかを満たします。

  1. 優良な電子帳簿を保存する
  2. デジタルシームレス保存を行う

 つまり、75万円控除は、「65万円控除の要件+優良な電子帳簿の保存」又は「65万円控除の要件+デジタルシームレス保存」という制度です(措法25の2⑤⑦)。

75万円控除の方法① 優良な電子帳簿を保存する

 1つ目は、その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳を「優良な電子帳簿」として保存する方法です。

 仕訳帳及び総勘定元帳について、原則として課税期間の最初から優良な電子帳簿の要件を満たして電子データによる備付け及び保存を行う必要があります。

 優良な電子帳簿については、通常の電子帳簿を保存するための要件に加えて、主に次の要件を満たす必要があります。

  • 訂正・削除・追加等の履歴が残ること
  • 帳簿相互間の関連性を確認できること
  • 取引年月日、金額、取引先等による検索ができること

 したがって、単に会計ソフトを利用して仕訳を入力しているだけで、当然に優良な電子帳簿になるわけではありません。

 利用する会計システムと実際の保存方法の双方が、電子帳簿保存法上の要件を満たしているか確認する必要があります(電帳法8④)。

優良な電子帳簿は令和9年1月1日からの対応が重要

 既に事業を営んでいる人が令和9年分について優良な電子帳簿の保存により75万円控除を受けようとする場合には、令和9年1月1日から要件を満たして仕訳帳・総勘定元帳を保存する必要があります。

 令和9年の途中になってから優良な電子帳簿へ切り替えるのでは、原則として令和9年分についてこの要件を満たすことができません。

 そのため、令和8年中に会計ソフトや記帳方法を確認し、令和9年1月1日から要件を満たした保存を開始できるよう準備しておくことが重要です。

優良な電子帳簿による75万円控除には届出書が必要

 優良な電子帳簿の保存により75万円控除を受けるためには、所定の届出書を適用を受けようとする年分の確定申告期限までに所轄税務署へ提出する必要があります。

 国税庁では、次のいずれかの届出書を提出することとしています。

  • 「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る75万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書」
  • 「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書」

 後者は届出書の名称に「75万円の青色申告特別控除」と入っていませんが、この過少申告加算税の特例に係る届出書を提出している場合にも、75万円控除に必要な届出要件を満たすことができます。

 これは、優良な電子帳簿について過少申告加算税の軽減措置を受けるための届出と、青色申告特別控除における優良な電子帳簿の届出が共通する仕組みとなっているためです。

 ただし、「過少申告加算税の特例」の届出書さえ提出すれば75万円控除を受けられるという意味ではありません。

 所得税に係る仕訳帳及び総勘定元帳について優良な電子帳簿の要件を満たして保存していることに加え、正規の簿記、貸借対照表・損益計算書等の作成、期限内e-Taxといった75万円控除の他の要件もすべて満たす必要があります(措法25の2⑤⑦)。

 したがって、例えば他の税目について過少申告加算税の特例の届出をしているだけで、所得税について必要な優良な電子帳簿を保存していない場合まで75万円控除を受けられるわけではありません。

 令和9年分から75万円控除を受ける場合、これらの届出書の提出期限は、原則として令和10年3月15日までとなります。

 ただし、届出書を令和10年3月15日までに提出すれば、それだけで令和9年分に遡って優良な電子帳簿になるわけではありません。既存の事業者については、令和9年1月1日から要件を満たした帳簿の備付け・保存を行っておく必要があります。

 なお、既に優良な電子帳簿の保存によって65万円の青色申告特別控除を受けており、必要な届出書を提出済みの人については、75万円への変更に伴って改めて同趣旨の届出書を提出する必要はないと国税庁から案内されています。

75万円控除の方法② デジタルシームレス保存

 もう1つの方法が「デジタルシームレス保存」です。

 デジタルシームレス保存では、電子取引データについて、国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使用した上で、一定の要件を満たしてデータの送受信・保存を行う必要があります(電帳法8⑤)。

 国税庁長官が定める基準に適合するシステムとは、一定のデジタルインボイス又は預貯金口座における決済データについて、所定の要件に従って電子取引データを保存できるシステムをいいます。

 主に次の要件が求められます。

  • 改ざん防止が確保されていること
  • 記帳の適正性が確保されていること
  • 電子取引データと電子帳簿との関連性を相互に確認できること

クラウド会計を使っていれば75万円になるわけではない

 銀行口座やクレジットカードをクラウド会計ソフトに連携しているというだけで、当然にデジタルシームレス保存の要件を満たすわけではありません。

 国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使用し、対象となる電子取引データを所定の要件に従って送受信・保存することが必要です。

 国税庁は、法的要件を満たした会計ソフトを探す際の参考としてJIIMA認証情報リストを案内しています。

デジタルシームレス保存による場合にも届出書が必要

 デジタルシームレス保存によって75万円控除を受ける場合には、

「電子取引の取引情報に係る電磁的記録に係る重加算税の加重措置の不適用の特例及び75万円の青色申告特別控除(個人事業者)の適用を受ける旨の届出書」

を、適用を受けようとする年分の確定申告期限までに所轄税務署へ提出する必要があります。

 したがって、令和9年分から適用を受ける場合には、原則として令和10年3月15日までに提出します。

令和9年中に新規開業した人はどうなる?

 令和9年1月1日時点では事業を行っておらず、令和9年中に新しく事業を開始した人でも、その令和9年分から75万円控除を受けることは可能です。

 ただし、新規開業者の場合には、①青色申告の承認、②65万円控除の要件、③75万円控除の追加要件を、それぞれ区別して考える必要があります。

まず青色申告承認申請書を期限内に提出する

 令和9年1月16日以後に新たに事業を開始した人が、その令和9年分から青色申告をするためには、原則として業務を開始した日から2か月以内に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

 なお、1月1日から1月15日までに開業した場合には、原則として3月15日までに提出します。

 この青色申告承認申請書の提出期限と、75万円控除に係る届出書の提出期限は別です。

優良な電子帳簿は新規開業なら「業務を開始した日」から

 既存事業者が令和9年分から優良な電子帳簿による75万円控除を受ける場合には、令和9年1月1日から要件を満たす必要があります。

 一方、その年の途中で新たに業務を開始した人については、その業務を開始した日から引き続き優良な電子帳簿の要件を満たして保存すればよいとされています(電帳法取扱通達8-1)。

 したがって、例えば令和9年7月1日に新たに業務を開始した場合、令和9年1月1日まで遡って帳簿を作成する必要はありません。

 もっとも、開業前の準備に係る支出などをその年分の事業の帳簿に記録する場合には、電子帳簿について「最初の記録段階から一貫して」電子計算機を使用して作成・保存するという要件にも注意する必要があります。

デジタルシームレス保存は対象となる電子取引データを適正に保存する

 デジタルシームレス保存については、優良な電子帳簿と同じ意味で単純に「開業日から保存を開始する」と考えるのではなく、開業後、その年に対象となる電子取引を行った場合に、その電子取引データを国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使用して所定の要件に従って送受信・保存することが必要です。

 新規開業者が75万円控除を目指す場合には、事業開始当初から利用する会計・請求・決済システムがデジタルシームレス保存に対応しているか確認しておいた方がよいでしょう。

75万円控除の届出書は新規開業でも確定申告期限まで

 新規開業だからといって、75万円控除に関する届出書まで「開業から2か月以内」に提出しなければならないわけではありません。

 令和9年分から75万円控除を受ける場合には、優良な電子帳簿による方法、デジタルシームレス保存による方法のいずれについても、75万円控除に関する所定の届出書は、原則として令和10年3月15日までに提出します。

手続・要件令和9年中に新規開業した場合
青色申告承認申請書1月16日以後の開業なら原則として業務開始日から2か月以内
優良な電子帳簿原則として業務開始日から引き続き要件を満たして保存
デジタルシームレス保存開業後の対象電子取引データを所定の要件に従って送受信・保存
75万円控除関係の届出書令和9年分の確定申告期限まで
確定申告書・青色申告決算書のe-Tax送信令和9年分の確定申告期限まで

 青色申告承認申請書の期限と、75万円控除に関する届出書の期限を混同しないことが重要です。

デジタルシームレス保存は令和7年度改正で先に整備された

 デジタルシームレス保存による青色申告特別控除の仕組みは、令和8年度税制改正で突然設けられたものではありません。

 令和7年度税制改正では、取引に係るやり取りから会計・税務までのデジタル化に対応するため、一定の電子取引データを適正に送受信・保存する仕組みが整備されました。

 その後、この制度が令和9年分から実際に適用される前に、令和8年度税制改正によって青色申告特別控除の体系そのものが再編されました。

 その結果、令和9年分からデジタルシームレス保存は、65万円控除から75万円控除へ控除額を引き上げるための追加要件の一つとして機能することになります。

簡易簿記の10万円控除も改正―一定の事業者は対象外に

 今回の改正では、10万円という青色申告特別控除の金額自体は変わりません。

 しかし、令和9年分から、一定の事業者が簡易な簿記の方法による記帳を続けている場合には、10万円控除を受けることができなくなります(措法25の2②)。

所得の種類10万円控除の適用除外となる基準
事業所得前々年分の事業所得に係る収入金額が1,000万円を超える
不動産所得不動産貸付けが事業的規模であり、前々年分の不動産所得に係る収入金額が1,000万円を超える

 ここで判定するのは、必要経費を差し引いた後の「所得金額」ではありません。

 「収入金額」が1,000万円を超えるかどうかで判定します。

1,000万円基準は65万円・75万円控除にはない

 この1,000万円基準については、特に誤解しないよう注意が必要です。

 前々年分の収入金額が1,000万円を超えても、それを理由として65万円控除や75万円控除を受けられなくなるわけではありません。

 1,000万円基準は、正規の簿記の原則に従わず、簡易な簿記の方法により記帳している一定の事業者を10万円控除の対象から除外するための基準です。

 65万円控除・75万円控除について、収入金額が1,000万円以下でなければならないという要件は設けられていません。

 したがって、事業所得に係る収入金額が1,000万円を超えている人であっても、正規の簿記の原則に従って記帳し、期限内にe-Taxで申告するなどの要件を満たせば65万円控除を受けることができます。

 さらに、優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存の要件まで満たせば、75万円控除を受けることができます(措法25の2④⑤⑦)。

 つまり、今回の1,000万円基準は、「売上が1,000万円を超えると青色申告特別控除が受けられなくなる」という制度ではありません。

 正しくは、「前々年分の収入金額が1,000万円を超える一定の事業者等については、簡易簿記のままでは10万円控除を受けられなくなる」という改正です。

令和9年分なら令和7年分の収入金額で判定

 判定に用いるのは「前々年分」の収入金額です。

 例えば、令和9年分の青色申告特別控除について判定する場合には、令和9年の売上ではなく、前々年である令和7年分の事業所得又は不動産所得に係る収入金額を確認します。

 簡易簿記による10万円控除を受けている人で、令和7年分の収入金額が1,000万円を超えている場合には、令和9年分から正規の簿記の原則による記帳への移行を検討する必要があります。

1,000万円を超えても正規の簿記なら10万円控除まで失うわけではない

 前々年分の収入金額が1,000万円を超えていても、正規の簿記の原則に従って記帳している場合まで10万円控除から除外されるわけではありません。

 今回対象外になるのは、一定の事業者等が簡易な簿記の方法で記帳している場合です。

 正規の簿記の原則に従って記帳すれば10万円控除の対象となり得ますし、期限内e-Tax等の要件を満たせば65万円、優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存の追加要件まで満たせば75万円控除を受けることができます。

不動産所得の場合は「事業的規模」に注意

 不動産所得については、不動産貸付けが事業的規模で行われているかどうかによって青色申告特別控除の取扱いが異なります。

 65万円・75万円の青色申告特別控除を受けるためには、不動産所得を生ずべき事業を営んでいることが必要です。

 また、令和9年分からの簡易簿記による10万円控除の1,000万円基準についても、事業的規模でない不動産貸付けは適用除外の対象とはされません。

 不動産所得の事業的規模の判定、いわゆる「5棟10室基準」、共有不動産や貸地等がある場合の取扱いについては、別記事「不動産所得の事業的規模とは?5棟10室基準と青色申告特別控除75万円・65万円の関係」で詳しく解説しています。

現在の申告方法によって令和9年分からどう変わるか

現在の状況令和9年分から
e-Taxで65万円控除を受けているが、優良な電子帳簿等は利用していない原則65万円。75万円には優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存を追加
優良な電子帳簿によって65万円控除を受けているが、申告は書面e-Taxを追加すれば75万円を目指せる。書面のままでは65万円・75万円は不可
正規の簿記+書面申告で55万円控除e-Taxを追加すれば65万円。さらに電子保存要件を満たせば75万円
簡易簿記で10万円控除、前々年の収入金額が1,000万円以下原則として引き続き10万円
簡易簿記で10万円控除、前々年の収入金額が1,000万円超の一定の事業者等簡易簿記のままでは0円

 特に注意したいのは、現在、優良な電子帳簿の保存だけを理由として65万円控除を受け、確定申告自体は書面で行っている人です。

 令和8年分までは、「優良な電子帳簿の保存」又は「e-Tax」のいずれかによって65万円控除を受けることができます。

 しかし、令和9年分からはe-Taxが65万円・75万円控除の共通の必須要件となります。

 したがって、優良な電子帳簿を保存していたとしても、書面申告を続ければ65万円・75万円控除を受けることはできません。

 一方、既に優良な電子帳簿の要件を満たしている人がe-Taxによる期限内申告も行えば、75万円控除を受けられる可能性があります。

現金主義の特例を適用している場合

 青色申告者であれば誰でも65万円又は75万円控除を受けられるわけではありません。

 所得税法67条の現金主義による所得計算の特例を適用している人については、65万円及び75万円の青色申告特別控除を受けることはできません。

 この場合には、一定の要件の下で10万円の青色申告特別控除の対象となります。

75万円控除だから税金が10万円減るわけではない

 65万円控除から75万円控除になると控除可能額は最大10万円増えますが、税金がそのまま10万円少なくなるわけではありません。

 青色申告特別控除は「税額控除」ではなく、事業所得や不動産所得の金額を計算する際に所得金額から控除する制度です。

 したがって、65万円から75万円への変更による税負担の減少額は、増加した最大10万円の控除額に、その人に適用される所得税率等を反映した金額となります。

 また、75万円はあくまで最高額であり、青色申告特別控除前の対象となる所得金額が75万円未満であれば、その所得金額が控除の限度となります。

令和8年中に確認しておきたいこと

 令和9年分からの改正については、令和10年の確定申告時期になって初めて検討するのでは遅い場合があります。

 特に次の点を令和8年中に確認しておくとよいでしょう。

  • 現在、10万円・55万円・65万円のどの青色申告特別控除を受けているか
  • 令和9年分から確定申告書及び青色申告決算書を期限内にe-Taxで送信できるか
  • 75万円控除を目指す場合、優良な電子帳簿の保存とデジタルシームレス保存のどちらを利用するか
  • 使用している会計ソフトが必要な電子帳簿・電子取引保存の要件に対応しているか
  • 優良な電子帳簿を利用する場合、令和9年1月1日から要件を満たした仕訳帳・総勘定元帳を作成・保存できるか
  • 75万円控除に必要な届出書又は過少申告加算税の特例に係る届出書が既に提出されているか
  • 簡易簿記で10万円控除を受けている場合、令和7年分の事業所得又は事業的規模の不動産所得に係る収入金額が1,000万円を超えていないか

 特に、簡易簿記による10万円控除を受けている事業者で、令和7年分の収入金額が1,000万円を超えている場合には、令和9年分から簡易簿記のままでは10万円控除が使えなくなる可能性があります。

 また、75万円控除については、届出書の提出期限が令和10年の確定申告期限だからといって、令和9年末まで何もしなくてよいわけではありません。

 既存事業者が優良な電子帳簿による75万円控除を選択する場合には、令和9年1月1日から要件を満たして帳簿を保存する必要があるため、令和8年中の準備が重要です。

まとめ

 令和8年度税制改正により、青色申告特別控除は令和9年分から最高75万円へ引き上げられます。

 しかし、今回の改正で重要なのは「控除額が10万円増えた」という点だけではありません。

 令和9年分からは、正規の簿記と期限内e-Taxを基本として65万円、さらに優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存まで行えば75万円という制度に再編されます。

 一方、従来55万円控除を受けていた書面申告者が書面申告を続ける場合には、原則として最高10万円となります。また、従来、優良な電子帳簿の保存によって65万円控除を受けながら書面申告をしていた人についても、令和9年分からはe-Taxによる期限内申告を行わなければ65万円・75万円控除を受けることができません。

 なお、前々年分の収入金額1,000万円超という基準は、簡易簿記による10万円控除の適用除外のための基準であり、65万円・75万円控除に収入金額の上限が設けられたわけではありません。

 75万円控除を利用する場合には、確定申告時の手続だけでなく、その年を通じた記帳・保存方法が重要です。

 既存事業者は令和8年中に、新規開業者は事業を開始するときから、会計ソフト、記帳方法、e-Tax、電子帳簿保存等の状況を確認しておくことをおすすめします。

主な根拠法令・公的資料

  • 租税特別措置法25条の2
  • 租税特別措置法施行規則9条の6
  • 所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)附則33条
  • 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律4条・8条
  • 同法施行規則
  • 電子帳簿保存法取扱通達8-1
  • 財務省「令和8年度税制改正の解説」425~429頁
  • 財務省「令和7年度税制改正の解説」
  • 国税庁「優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存により75万円の青色申告特別控除を適用しましょう!」
  • 国税庁「簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ」
  • 国税庁「所得税の青色申告承認申請手続」
  • 国税庁「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出手続」

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry

error: Content is protected !!