概要
上場株式が相対取引によって市場価格を上回る価格で譲渡された場合において、その譲渡対価の性質については、当該上場株式の市場価格、取引の動機・目的、価格決定の経緯、価格の合理性などの諸点を考慮して判断する必要がありますが、一般的には以下のように取り扱われます。
個人が法人へ上場株式を高額譲渡した場合、「売り手」である個人には、上場株式の時価を譲渡収入とし譲渡所得課税の対象となり、時価を超える売却金額部分は法人と個人間に雇用関係等(従業員・役員)があれば「給与所得」になり、雇用関係がなければ「一時所得」となります。
相対取引の場合における上場株式の時価は、その相対取引日の市場における終値となります。
一方、買い手である法人側は次のように考えます。
資産を時価よりも不当に高い値段で買い、かつ、贈与したと認められる金額がある場合には、「買い手」である法人の資産の取得価額は時価となります(法基通7-3-1)。時価を超える部分は、寄付金等になります。法人と個人間に雇用関係等(従業員・役員)があれば「賞与・役員賞与」(法基通9-2-9(3))になり、雇用関係がなければ「寄付金」となります。
仕訳は以下の通りになります。
有価証券(時価) ××× 現預金(売買価格) ×××
寄付金等 ×××
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関連会社に対する株式の譲渡が高額譲渡とされ、取引金額と評価額の差額は一時所得に該当するとされた事例-東京地裁平成25年9月27日判決(税資263号-174(順号12298))、東京高裁平成26年5月19日判決(税資264号-92(順号12473))、最高裁第三小法廷平成27年3月31日決定(税資265号-61(順号12644))(棄却・不受理)(確定)
(1)事案の概要
本件の事案の概要は、次のとおりである。
① X(原告、控訴人、上告人)は、Z社の設立当初から代表取締役又は取締役を務めていたところ、平成20年に取締役を辞任したが、平成23年に取締役、平成24年には代表取締役に就任した。
なお、Xは、Z社の実質的なオーナーとして、取締役退任中も経営に関与し、経営上の意思決定に強い影響力を有していた。
② X(取締役退任中)はZ社に対し、平成21年3月にA社株式112万株を、同年11月にA社株式31万株を、いずれも市場外における相対取引により1株当たり550円で譲渡した(以下、平成21年3月の譲渡を「本件3月譲渡」、同年11月の譲渡を「本件11月譲渡」、併せて「本件譲渡」という。)。
A社株式は上場株式であるところ、本件譲渡が行われた日の同市場における終値(以下「本件市場単価」という。)は、本件3月譲渡時点で290円、本件11月譲渡時点で426円であった。
③ XがZ社に譲渡したA社株式の譲渡額を1株当たり550円として平成21年分の所得税の確定申告を行った。
④ これに対し、課税庁は、本件譲渡に係る収入金額とA社株式の本件市場単価を基に算出した株式の評価額との差額(以下「本件差額」という。)はZ社からXに贈与されたものであり、Xの一時所得に該当するとして、更正処分等を行った。
⑤ Xは、その取消しを求めた。
(2)争点
株式が高額譲渡された場合の所得区分であり、具体的には、本件差額を譲渡所得と一時所得のいずれとすべきなのかである。
(3)一審判決要旨(棄却)(控訴)
① 個人がその有する資産を法人に対して有償で譲渡した場合における課税関係は、当該譲渡価額が、当該資産の譲渡の「対価」たる性格を有する限りにおいて、譲渡所得に係る収入金額として課税されるが、当該譲渡価額中に当該資産の譲渡の「対価」たる性格を有しておらず、法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの及び継続的に受けるものを除く。)としての性格を有する部分があると認められるときは、当該部分の金額については、一時所得に係る収入金額として課税されるべきこととなる。そして、譲渡する資産が上場株式であるときは、その譲渡価額がその資産の譲渡の「対価」たる性格を有しているかどうかは、当該上場株式の市場価格、当該取引の動機ないし目的、当該取引における価格の決定の経緯、当該価格の合理性などの諸点に照らして判断すべきものと解される。
② (イ)本件市場単価は、本件3月譲渡時が290円、本件11月譲渡時が426円であったこと、(ロ)Xは、自己の借入債務の解消及び相続税の納付に必要な資金を調達するという目的を実現するために本件譲渡を企図したこと、(ハ)Xは、A社株式に係る市場価格が安すぎるとして、当初1株1,000円での譲渡を希望したが、税理士から市場価格を大きく上回る価格での譲渡には課税上問題がある旨を指摘されたことから、(措置法37条の11の2第1項の規定により算定した)本件株式のみなし取得価額(568円)を基準として本件取引単価を550円と決定したものであり、本件取引単価によっても上記(ロ)の目的を実現するに足りる資金調達が可能であったことが認められる。さらに、(ニ)Xは、Z社の実質的なオーナーとして、同社の経営上の意思決定に強い影響力を有していたことからすると、Z社における本件株式の価格決定にはXの意向が強く反映されたことが推認される。他方、(ホ)当時債務超過の状態にあったZ社に、多額の借入れをしてまで市場価格よりも高い価格で本件株式を購入すべき事情があったとは認められない。これらの点を総合勘案すれば、Xは、自己の借入金の返済及び相続税の納付のために必要な一定規模の資金を調達するという目的を達成するための手段として、本件譲渡時におけるA社株式の市場価格の水準(本件市場単価)をあえて無視して、本件市場単価に一定の金額を上乗せして本件取引単価を設定し、本件譲渡を行ったものと認めることができる。そして、以上のような本件株式の市場価格、本件譲渡の動機ないし目的、本件譲渡における価格の決定の経緯、当該価格の合理性などの諸点に照らせば、本件譲渡における本件株式の譲渡の対価たる性格を有するのは、本件取引単価のうち、本件市場単価の部分に限られると解される。そうすると、本件市場単価と本件取引単価との差額部分である本件差額は、本件株式の譲渡の対価たる性格を有するとはいえず、法人であるZ社から贈与された金員としての性格を有するものというべきである。
③ 以上のとおり、本件差額は、本件株式の譲渡の対価たる性質を有しているとはいえず、所得税法34条所定の一時所得となるというべきである。
(4)控訴審判決要旨(棄却)(上告・上告受理申立て)
一審本判決を引用した上で、有償の譲渡が行われる場合において、譲渡所得として課税される対象は、専ら所得税法33条1項の「資産の譲渡による所得」の解釈により決定されるところ、当該資産のすべてが譲渡の対価たる性格を有するとはいえないときに、その部分は増加益が具体化したものとはいえないから、譲渡所得の対象とならないのは、事柄の性質上、当然であると判示。
(5)上告審決定要旨(棄却・不受理)(確定)
本件上告を棄却する。本件を上告審として受理しない。




