法人が受け取る配当等の所得税額控除とは
法人が配当や利子等を受け取る際に課される所得税・復興特別所得税は、所定の計算により法人税から控除できます。これを所得税額控除といいます(法法68①)。本稿では、一般の内国法人が受け取る通常の株式配当と株式投資信託等の収益分配を中心に、個別法と銘柄別簡便法の計算を説明します。
通常の株式配当等については、源泉所得税等の全額が常に控除されるわけではありません。配当等の計算期間のうち、その元本を所有していた期間に対応する部分が控除の対象になります(法令140の2①一)。
受取配当等の益金不算入と所得税額控除は別の制度です。配当の全部又は一部が益金不算入となっても、日本の所得税等が課されていれば、所得税額控除の適用を検討します。
先に源泉徴収の対象かを確認する
令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当等について、一定の内国法人が自己名義で保有する完全子法人株式等や、基準日等において直接保有割合が3分の1を超える他の内国法人の株式等に係る配当等は、所得税が課されず、源泉徴収も行われません。受領法人・支払法人の範囲等に要件があるため、持株割合だけで判断しないようにします(所法177、所令301)。
源泉徴収が行われない配当には、控除する源泉所得税等もありません。また、受取配当等の益金不算入における「関連法人株式等」の保有期間要件と、源泉徴収の対象外となる要件は区別して確認します。
個別法と銘柄別簡便法の選択単位
所有期間に対応する所得税額の計算には、実際の所有期間を用いる個別法と、配当等の計算期首・計算期末の所有元本数を用いる銘柄別簡便法があります(法令140の2②③)。
方法を選ぶ単位は、原則として、次の4区分です。
| 元本の区分 | 配当等の計算期間 | 選択の単位 |
|---|---|---|
| 株式・出資 | 1年以下 | この区分に属するすべての元本 |
| 株式・出資 | 1年超 | この区分に属するすべての元本 |
| 集団投資信託の受益権 | 1年以下 | この区分に属するすべての元本 |
| 集団投資信託の受益権 | 1年超 | この区分に属するすべての元本 |
同じ区分の中で、A社は個別法、B社は銘柄別簡便法というように、銘柄ごとに有利な方法を使い分けることはできません。区分ごとに両方法の控除税額を合計して比較します。
継続適用の要件はなく、事業年度ごとに方法を選べます。ただし、国内で発行された追加型証券投資信託には、その他のものと別に方法を選択できる取扱いがあるため、投資信託の種類も確認します(法基通16-2-8)。
配当等の計算期間は、法人の事業年度と区別する
通常の株式配当では、原則として、直前の実際の配当等の支払に係る基準日等の翌日から、今回の配当等の支払に係る基準日等までが計算期間になります。前回の基準日等が今回の基準日等の1年前の日より前である場合には、原則として今回の基準日等の1年前の日の翌日から計算します(法令140の2②)。
配当を受け取る法人の事業年度や、配当を支払う法人の決算期間を、そのまま配当の計算期間にするわけではありません。
中間配当と期末配当がある場合も、それぞれについて、前回と今回の基準日等を確認します。「中間配当だから6か月」「期末配当だから1年」と一律に決めることはできません。
設立後初めての配当、設立から1年以内の配当、発行法人から直接取得した株式に係る初回配当等には、計算期間について特則があります。株式を他の株主から買ったというだけでは、配当の計算期間の初日が取得日に変わるわけではありません。
個別法の計算
個別法では、銘柄ごと、所有期間の月数ごとに、次の計算をします。
控除所得税額=配当等に対する所得税等の額×所有期間割合
所有期間割合=配当等の計算期間内の元本所有月数÷配当等の計算期間の月数
月数は暦に従って計算し、1月未満の端数は1月に切り上げます。また、所有期間割合は小数点以下3位未満の端数を切り上げます。例えば、7か月÷12か月は0.584、4か月÷12か月は0.334です(法令140の2②⑥)。
同じ銘柄を異なる時期に取得した場合は、所有月数が異なる取得分を分けて計算します。源泉所得税等を配分する際は、配分後の合計が元の源泉所得税等と一致することを確認します。
銘柄別簡便法の計算
銘柄別簡便法では、配当等の計算期間の開始時と終了時に所有していた元本数を使います。以下では、開始時の元本数をA、終了時の元本数をBとし、Bが0を超える通常のケースを説明します。
| 配当等の計算期間 | 所有期間割合の計算式 |
|---|---|
| 1年以下 | [A+(B-A)×1/2]÷B |
| 1年超 | [A+(B-A)×1/12]÷B |
計算した所有期間割合は小数点以下3位未満の端数を切り上げ、1を超える場合は1とします。控除所得税額は、この割合を配当等に対する所得税等の額に乗じて計算します(法令140の2③)。
計算期末の元本数が、計算期首以下の場合
BがA以下で、Bが0を超える場合は、所有期間割合が1となり、その配当等に係る所得税等の全額が控除対象になります。
銘柄別簡便法は期首・期末の元本数を用いるため、実際の売買履歴から計算する個別法と結果が異なることがあります。
計算期首の元本数が0の場合
Aが0でBが0を超える場合、計算期間が1年以下なら所有期間割合は0.500ですが、1年超なら1/12を小数点以下3位未満で切り上げた0.084です。
したがって、「期首の所有元本数が0なら常に2分の1控除」とはなりません。また、増加元本を計算期間の中間に取得したものとみる説明は、1年以下の区分の説明です。1年超の区分には1/12を用います。
計算例:個別法と銘柄別簡便法を比較する
設例の前提
X社の事業年度は、令和7年6月1日から令和8年5月31日までです。以下の配当・分配金は、いずれも当期に受領したものとします。対象となる銘柄は表の3つだけとし、A社・B社は国内上場会社、両社の配当について源泉徴収の対象外となる持株割合等の要件は満たしていないものとします。
C投資信託は国内の単位型公募株式投資信託とし、分配金は通常の収益分配で、元本払戻金及び分配時調整外国税相当額はないものとします。以下の「所得税等」は、所得税と復興特別所得税の合計額です。
| 項目 | A社株式 | B社株式 | C投資信託 |
|---|---|---|---|
| 配当等の計算期間 | 令和7年4月1日~令和8年3月31日 | 令和6年10月1日~令和7年9月30日 | 令和7年1月1日~12月31日 |
| 計算期首の所有元本数 | 0株 | 1,000株 | 20,000口 |
| 計算期末の所有元本数 | 7,000株 | 4,000株 | 15,000口 |
| 配当・分配金の額 | 180,000円 | 110,000円 | 300,000円 |
| 所得税等の額 | 27,567円 | 16,846円 | 45,945円 |
| 取得・売却の状況 | 令和7年9月10日に7,000株取得し、その後継続保有 | 期首の1,000株は継続保有し、令和7年6月14日に3,000株を買い増して継続保有 | 期首の20,000口のうち5,000口を令和7年10月15日に売却。買増しはなく、残る15,000口は計算期間を通じて継続保有 |
A社・B社については、表の計算期間となる前回・今回の配当基準日等を確認済みとします。C投資信託についても、表の期間が今回の収益分配の計算期間であるものとします。
A社・B社を個別法で計算する
A社株式の所有期間は、令和7年9月10日から令和8年3月31日までです。1月未満の端数を切り上げると7か月となり、所有期間割合は7/12を切り上げた0.584です。
A社の控除所得税額=27,567円×0.584=16,099円(1円未満切捨て)
B社株式は、期首から保有していた1,000株と、令和7年6月14日に取得した3,000株を分けます。既存分の所有期間割合は1.000、買増分は4/12を切り上げた0.334です。
本設例では、B社の所得税等16,846円を株数比で配分する際、既存分を4,212円、買増分を12,634円として計算します。配分後の合計は16,846円と一致します。これは本設例の配分前提です。
| B社株式の取得区分 | 配分した所得税等 | 所有月数 | 所有期間割合 | 控除所得税額 |
|---|---|---|---|---|
| 既存の1,000株 | 4,212円 | 12か月 | 1.000 | 4,212円 |
| 買増した3,000株 | 12,634円 | 4か月 | 0.334 | 4,219円 |
| 合計 | 16,846円 | - | - | 8,431円 |
A社・B社の個別法による控除所得税額の合計は、16,099円+8,431円=24,530円です。
A社・B社を銘柄別簡便法で計算する
両社とも配当の計算期間は1年以下なので、増加元本数に1/2を乗じます。
| 銘柄 | 所有期間割合の計算 | 所有期間割合 | 控除所得税額(1円未満切捨て) |
|---|---|---|---|
| A社 | [0+(7,000-0)×1/2]÷7,000 | 0.500 | 27,567円×0.500=13,783円 |
| B社 | [1,000+(4,000-1,000)×1/2]÷4,000 | 0.625 | 16,846円×0.625=10,528円 |
| 合計 | - | - | 24,311円 |
A社・B社は、ともに「株式・出資/計算期間1年以下」の区分に属するため、同じ方法を適用します。本設例では、区分合計が219円多い個別法を選びます。
C投資信託の計算
C投資信託は、銘柄別簡便法では計算期末の15,000口が計算期首の20,000口以下なので、所有期間割合は1.000となり、45,945円の全額が控除対象です。
本設例では、分配対象となる残りの15,000口を計算期間を通じて保有しているため、個別法でも45,945円の全額が控除対象になります。
C投資信託は「集団投資信託の受益権/計算期間1年以下」の区分に属し、A社・B社とは別に方法を選べます。本設例では、この区分に銘柄別簡便法を適用します。
控除所得税額の合計
| 区分 | 選択する方法 | 控除所得税額 |
|---|---|---|
| A社・B社株式 | 個別法 | 24,530円 |
| C投資信託 | 銘柄別簡便法 | 45,945円 |
| 合計 | - | 70,475円 |
別表六(一)の記載と損金処理
所得税額控除の計算は、法人税申告書の別表六(一)「所得税額の控除に関する明細書」に記載します。事業年度欄は、X社の令和7年6月1日から令和8年5月31日までとし、配当の計算期間と混同しないようにします。
個別法の明細欄は、次のようになります。B社の配当額も株数比で既存分27,500円、買増分82,500円に分けています。
| 銘柄・取得区分 | 収入金額 | 所得税等 | 計算期間 | 元本所有期間 | 所有期間割合 | 控除所得税額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A社 | 180,000円 | 27,567円 | 12か月 | 7か月 | 0.584 | 16,099円 |
| B社・既存分 | 27,500円 | 4,212円 | 12か月 | 12か月 | 1.000 | 4,212円 |
| B社・買増分 | 82,500円 | 12,634円 | 12か月 | 4か月 | 0.334 | 4,219円 |
| 合計 | 290,000円 | 44,413円 | - | - | - | 24,530円 |
銘柄別簡便法の明細欄には、C投資信託の収入金額300,000円、所得税等45,945円、計算期末15,000口、計算期首20,000口、所有期間割合1.000、控除所得税額45,945円を記載します。
別表六(一)の上段には、次の金額を集計します。
| 区分 | 収入金額 | 課される所得税等 | 控除を受ける所得税額 |
|---|---|---|---|
| 剰余金の配当等 | 290,000円 | 44,413円 | 24,530円 |
| 集団投資信託の収益の分配 | 300,000円 | 45,945円 | 45,945円 |
| 計 | 590,000円 | 90,358円 | 70,475円 |
収入金額は源泉徴収前の金額です。入金額だけを配当・分配金として集計すると、収入金額と源泉所得税等の両方を誤るおそれがあります。
所得税額控除又は還付を受ける金額は、損金に算入できません。本設例で90,358円の全額を費用処理している場合、控除対象の70,475円を申告上加算します。所有期間按分により控除対象にならない19,883円は、原則として損金算入の対象です(法法40)。
控除対象の所得税等が当期の法人税額を上回る場合、その控除しきれない額は還付されます。一方、所有期間按分により控除対象にならなかった19,883円は、この還付の対象ではありません(法法78①)。
適用には、確定申告書、修正申告書又は更正請求書への計算明細の添付が必要です。当初申告で計算を誤った場合等は、現行の法法68④と更正の請求等の要件に従って対応します。
所得税額控除に関する裁判例・裁決例
銘柄別簡便法の株数を誤記した事例
最高裁第二小法廷平成21年7月10日判決(民集63巻6号1092頁)は、配当等の計算期間と、配当を受け取る法人の事業年度を取り違えた事例です。法人は全銘柄の配当額・所得税額を別表六(一)に記載していましたが、銘柄別簡便法で使う計算期首・計算期末の所有株式数の欄に、誤って自社の事業年度の期首・期末の所有株式数を記載し、控除所得税額を過少に計算していました。
最高裁は、全銘柄について法令に従って計算される所得税額の全部を控除する意思が明らかであり、この誤りの是正は所得税額控除の適用範囲を後から拡張するものではないとして、更正の請求による是正を認めました。
この判決は、改正前の当初申告要件に関する判断です。現行法では、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に控除金額と計算明細を記載した書類の添付が必要で、控除額は記載した金額を限度とします(法法68④)。誤りに気付いたときは、更正の請求等の要件・期限を確認します。申告時には、別表六(一)の事業年度欄と、各銘柄の配当計算期間に対応する所有株式数を区別して確認することが大切です。
「中間配当」の計算期間が争われた事例
平成29年1月26日裁決(裁事106集)では、設立から1年以上経過した会社の全株式を個人株主から平成26年3月18日に取得し、同年9月18日を基準日とする設立後初めての「中間配当」を受けた事例について、配当の計算期間と所有期間が争われました。
国税不服審判所は、初回配当についての当時の法令の定めに従い、配当の計算期間を平成25年9月19日から平成26年9月18日までの12か月としました。株式の所有期間は平成26年3月18日から同年9月18日までで、1月未満の端数を切り上げて7か月となり、所有期間割合は7/12を小数点以下3位未満で切り上げた0.584と判断しました。
この裁決は、「中間配当」という名称だけで計算期間を6か月と決めたり、株式の取得日をそのまま計算期間の初日としたりすることが適切でないことを示しています。前回の実際の配当基準日等、初回配当の特則及び取得・保有履歴を確認して計算します(法令140の2②)。
なお、この裁決は平成26年の配当に係るものです。現在、同様の内国法人間配当を検討する場合には、先に所法177による源泉徴収の対象外となる要件を確認します。
投資信託・外国税・その他の利子等の注意点
投資信託は、国内・国外、単位型・追加型、公社債投資信託等の区分によって扱いが異なります。追加型証券投資信託では、その受益権の元本設定日(追加設定日を含みます。)を基礎に収益分配の計算期間を判定します。取得に伴って設定された受益権では、計算期間と保有期間が一致し、通常の収益分配に対する所得税等が全額控除となるケースがあります。日々決算を行い、その都度決算収益の全額を未払収益分配金に振り替える投資信託の収益分配には、常に全額を控除対象とする取扱いがあります(法基通16-2-8)。
外国株式や国外投資信託について、国内の支払の取扱者等を通じて課される日本の所得税等は、所有期間に対応する所得税額控除を検討します。外国で徴収された外国税は、日本の所得税等にそのまま合算せず、外国税額控除等の適用を別途検討します(法基通16-2-5、法法69)。
投資信託等の分配時調整外国税相当額は、所得税額控除の計算対象から除きます。支払通知書等の税額の内訳を確認し、分配時調整外国税相当額控除と重複させないようにします(法法68①、69の2、法基通16-2-11)。
預金利子、公社債利子、公社債投資信託の収益分配等に課される所得税等は、原則として全額が控除対象となり、通常の株式配当と同じ所有期間按分は不要です。ただし、一定の割引債の償還差益には別の規定があるため、「株式配当以外はすべて按分不要」とは判断できません(法令140の2①二、措令26の11①)。
未収配当等は、収益計上年度と控除年度の確認も必要です。確定した決算で収益計上した未収配当等について、支払のために通常要する期間内に支払を受けることが見込まれる場合等には、所得税額控除が認められる取扱いがあります。未収であれば一律に控除できるわけではありません(法基通16-2-2)。
株式配当と投資信託の収益分配は、消費税の扱いが異なる
通常の株式配当は、株主として受け取るものであり、資産の譲渡等の対価ではありません。消費税の課税対象外で、課税売上割合の分子・分母のいずれにも含めません(消基通5-2-8)。
一方、国内の集団投資信託の通常の収益分配は、消費税の非課税取引に該当し、課税売上割合の分母に算入します。算入するのは、原則として源泉徴収前の収益分配金額で、所得税額控除の計算後の金額ではありません(消法6①、別表第二三、30⑥、消令10③二、48①)。
本設例では、A社・B社の通常の株式配当290,000円は課税売上割合の分母に含めず、C投資信託の収益分配300,000円は非課税売上として分母に含めます。所得税等が源泉徴収されることだけを理由に、両者を同じ消費税区分にしないようにします。
所得税額控除や所得税等の還付そのものは、資産の譲渡等の対価に当たらず、消費税の課税対象外です。
令和8年・令和9年の制度変更との関係
防衛特別法人税は、原則として令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。その基準法人税額は、所得税額控除等を適用する前の法人税額を基礎に計算するため、所得税額控除後の法人税額をそのまま使わないようにします。本設例は令和7年6月1日開始事業年度なので、この適用開始前です(防衛財源確保法10一、11)。
また、令和9年1月1日以後に生ずる所得については、防衛特別所得税が創設され、復興特別所得税の税率が引き下げられます。所得税額に対する付加税率の合計は2.1%で変わらないため、所得税率15%の場合の合計源泉徴収税率は15.315%のままです。法人に課される防衛特別所得税も、所得税とみなして法人税の所得税額控除の対象となります(防衛財源確保法5の31②)。
所得税額控除は、配当等の区分、計算期間、保有履歴を確認したうえで、適用可能な方法を区分ごとに比較することが大切です。支払通知書・配当基準日等の資料・証券取引の履歴をそろえ、対象事業年度の別表六(一)と記載要領に従って申告します。
主な根拠・参考資料
法人税法(法法40、68、78)/法人税法施行令(法令140の2)/所得税法(所法177)
国税庁:所得税額控除(No.5760)/法人税基本通達・所得税額の控除
国税庁:令和8年4月1日以後終了事業年度分の申告書別表・記載要領/消費税基本通達5-2-8
国税庁:防衛特別法人税のあらまし/源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)
法令・公表資料の確認日:令和8年10月12日
