全くの第三者である個人・法人間で行う合同会社の持分の譲渡において、さんざん交渉した末の売買価額であれば、原則として、贈与や寄付金等の問題は生じません。ただし、通常、全くの第三者との取引はほとんどないため、個人・法人間で行う合同会社の持分の譲渡が時価相当額でない、つまり、低額譲渡、高額譲渡である場合は大きな課税問題が原則として生じます。なお、この場合における持分の時価は、原則として、個人側は所得税上の時価となり、法人側は法人税上の時価となります。
 法人から個人への譲渡の場合と、個人から法人への譲渡の場合の2つのパターンが考えられます。以下で詳しく解説します。

法人から個人への譲渡

●(「売り手」である法人)
 「売り手」である法人は、いくらで持分を売却したとしても、持分を時価で売却したとして法人税がかかります。仕訳は以下の通りになります。貸方(右側)は、時価と取得価額との差額が「売却益」となります。

 取得価額300万円(時価1,000万円)の持分を1,000万円で売却した。
 現預金   1,000万円    有価証券(持分) 300万円
                売却益     700万円

 なお、恣意性が介入し、時価より安く売っている場合は、借方(左側)は、時価と売買価格の差額は、寄付金等になります。法人と個人間に雇用関係等(従業員・役員)があれば「賞与・役員賞与(給与)」になり、雇用関係がなければ「寄付金」となります。
 取得価額300万円(時価1,000万円)の持分を600万円で売却した。
 現預金   600万円     有価証券(持分)   300万円
 寄付金等  400万円     売却益        700万円

 また、恣意性が介入し、時価より高く売っている場合は、時価で売却したと取り扱います。売却価額と時価との差額は受贈益になります。仕訳は以下の通りになります。
 取得価額300万円(時価400万円)の持分を1,000万円で売却した。
 現預金  1,000万円    有価証券(持分)  300万円
               売却益      100万円
               受贈益      600万円

●(「買い手」である個人)
 適正時価で買い取れば、買い手の個人に課税はありません。

 なお、恣意性が介入し、時価より安く買っている場合は、「買い手」である個人には、時価との差額に対して所得税がかかります。法人と個人間に雇用関係等(従業員・役員)があれば「給与所得」になり、雇用関係がなければ「一時所得(法人からの贈与)」となります。

 また、恣意性が介入し、時価より高く買っている場合は、購入時点では課税関係は生じません。ただし、その高額購入した持分を、将来、売却した場合は、問題が生じる場合もあると思われます。

個人から法人への譲渡

●(「売り手」である個人)
「売り手」である個人が、持分を適正な時価で売却した場合は、その売却価額と取得価額によって株式等の譲渡所得(未上場株式等の売却損益)を計算することになり、所得税、住民税がかかります。未上場株式等の売却益は、税率20.315%による申告分離課税の対象となり、また、未上場株式等の売却損は未上場株式等の売却益とは相殺できますが、上場株式等の売却益とは相殺できません。また、未上場株式等の売却損は上場株式等の売却損のように翌年以後に繰越すようなことはできません。

 なお、「売り手」である個人が、持分を所得税上の時価の2分の1未満で売却した場合、「みなし譲渡所得課税」がかかります(所法59①二、所令169)。「みなし譲渡所得課税」とは、文字どおり譲渡所得があったとみなして、税金をかけるということです。持分を時価で売却し収入があったとみなし、その持分の取得価額などを差し引いた所得に対して所得税、住民税がかかります。そのため、含み益がある持分を、法人に売った場合、持分を売った個人にも税金がかかることになります。
 また、時価の2分の1以上の対価による法人に対する譲渡であっても、その譲渡が「同族会社等の行為又は計算の否認」(所法157)の規定に該当する場合には、「みなし譲渡所得課税」がかかります(所基通59-3)。

 また、「売り手」である個人が、持分を時価より高額で売却した場合は、時価で売却したと取り扱います。売却価額と時価との差額は法人と個人間に雇用関係等(従業員・役員)があれば「給与所得」になり、雇用関係がなければ「一時所得(法人からの贈与)」となります。

●(「買い手」である法人)
 適正時価で買い取れば、買い手の法人に課税はありません。

 なお、恣意性が介入し、時価より安く買っている場合は、「買い手」である法人には、法人税がかかります。持分の取得価額は時価となり、時価と売買価格の差額は、受贈益になるからです(法法22②)。仕訳は以下の通りになります。
 時価1,000万円の持分を300万円で購入した。
 有価証券(持分)  1,000万円    現預金  300万円
                   受贈益  700万円

 また、恣意性が介入し、時価より高く買っている場合は、「買い手」である法人の持分の取得価額は時価となり、時価と売買価格の差額は寄付金等になります。法人と個人間に雇用関係等(従業員・役員)があれば「賞与・役員賞与(給与)」になり、雇用関係がなければ「寄付金」となります。
 時価300万円の持分を1,000万円で購入した。
 有価証券(持分)   300万円   現預金  1,000万円
 寄付金等       700万円

●(同族会社の株主や社員)
 個人が同族会社(株式会社、合同会社を問わず)に、合同会社の持分を時価より著しい低額譲渡した場合で、株式や持分の価額が増加したならば、増加した部分に相当する金額を株主や社員は贈与されたとされます(相基通9-2(4))。よって、「売り手」と「買い手」に税金がかかるだけではなく、その同族会社の株主や社員にも贈与税がかかることになります。なお、中小企業のほとんどは同族会社です。

その他