子供名義で登録された車両は、父親がその資金の全額を拠出しており、贈与に当たるとして行われた贈与税の決定処分について、子供に対する贈与の事実はないとして、贈与税の決定処分の全部を取り消した平成27年9月1日裁決(裁事100集)があります

 ただし、原則、名義人と実際にお金を支払った人が違う場合、名義貸しをした合理的理由等がないと贈与税の対象となります(相基通9-9)。

平成27年9月1日裁決(裁事100集)判断要旨

 原処分庁は、請求人の父(父)が請求人の名義で新たに購入した車両(本件車両)は、相続税法基本通達(相基通)9-9《財産の名義変更があった場合》により、原則として贈与として取り扱われるべきものである旨、及び本件車両の名義を請求人として登録したことが過誤に基づき、又は軽率にされたものであり、かつ、それが取得者等の年齢その他により当該事実を確認できるに足る証拠は認められないから、昭和39年5月23日付直審(資)22、直資68「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」(本件通達)の5を適用することはできない旨主張する。

 しかしながら、相基通9-9は、反証があれば、贈与として取り扱わない場合があるところ、本件においては、父は購入特典の利用のために、請求人の名義を使用したことが認められ、これに加えて、①父が本件車両を請求人に贈与する動機はなかったと認められること、②請求人への贈与の事実を疑わせる事情が存在すること、③父は、本件車両の取得資金を出捐し、売却に際してはその売却代金を自ら受領・費消するとともに、その間本件車両に係る維持管理費用を全て負担していたことなどの諸事情を総合すると、本件車両の贈与の不存在について反証がされているといえる。

 したがって、請求人は本件車両の贈与を受けたとは認められない。なお、本件通達は、相基通9-9の要件を満たしているにも関わらず課税庁の立場から贈与として取り扱わない場合を類型化したものにすぎず、相手方による反証はこれに限定されるものではないところ、本件においてはその反証がされている。

相続税法基本通達9-9(財産の名義変更があった場合)

 不動産、株式等の名義の変更があった場合において対価の授受が行われていないとき又は他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合においては、これらの行為は、原則として贈与として取り扱うものとする。

「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」の5 (過誤等により取得財産を他人名義とした場合等の取扱い)

 「1」又は「2」に該当しない場合においても、他人名義により不動産、船舶、自動車又は有価証券の取得、建築又は建造の登記、登録又は登載等をしたことが過誤に基づき、又は軽率にされたものであり、かつ、それが取得者等の年齢その他により確認できるときは、これらの財産に係る最初の贈与税の申告若しくは決定又は更正(これらの財産の価額がその計算の基礎に算入されている課税価格又は税額の更正を除く。)の日前にこれらの財産の名義を取得者等の名義とした場合に限り、これらの財産については、贈与がなかったものとして取り扱う。
 自己の有していた不動産、船舶、自動車又は有価証券の名義を他の者の名義に名義変更の登記、登録又は登載をした場合において、それが過誤に基づき、又は軽率に行われた場合においても、また同様とする。
 「3」の取扱いは、これらの場合について準用する。