
概要
暗号資産のマイニング(採掘)とは、取引データ等のブロックチェーンへの記録・検証作業を行い、その報酬として暗号資産を取得する行為を指します。
マイニングにより暗号資産を取得した場合、その取得に伴い生ずる利益は所得税又は法人税の課税対象となります。
暗号資産の取得時点の価額(時価)については所得の金額の計算上総収入金額(法人税においては益金の額)に算入され、マイニング等に要した費用については所得の金額の計算上必要経費(法人税においては損金の額)に算入されることになります。
なお、個人によるマイニングに係る所得は事業所得ではなく雑所得に該当すると判断された令和4年1月7日裁決(大裁(所)令3第28号)、大阪地裁令和6年10月30日判決(令和4年(行ウ)104号)があります。
現時点で、個人がマイニングをしても儲かるような環境でなく、かつ、節税商品とならないため、されている方は以前に比べ少ないと思いますが、事業所得とする場合は注意が必要です。
マイニングマシンが節税商品として売られていた過去
実務上、マイニングマシンの購入は純粋な報酬獲得を目的とする以上に、租税回避ないし節税を目的とした投資商品としての性格を強く有していました。
かつて、マイニングマシンの取得に際しては、中小企業等経営強化法に基づく「中小企業経営強化税制」の適用により、即時償却または10%の税額控除(個人事業主の場合)が可能でした。
これを利用し、即時償却によって事業所得を意図的に赤字化させ、給与所得等との損益通算を行うスキームが散見されました。
しかし、こうした節税目的の利用を抑制するため、令和5年の中小企業等経営強化法施行規則の改正により、暗号資産マイニング業(主要な事業であるものを除く)の用に供する設備等のうち、その管理の概ね全部を他者に委託するものは、同税制の対象資産から除外されるに至りました(令和5年4月1日施行)。
令和4年1月7日裁決・大裁(所)令3第28号判断要旨
請求人は、請求人が行う仮想通貨のマイニング(本件マイニング)に係る所得は、本件マイニングについて、①人的・物的設備を備え、②自己の危険と計算による企画遂行を行い、③精神的・肉体的労力を費やしていることなどから事業性が認められ、また、本件マイニングの開始に当たり、マイニングマシンを経営力向上設備等とする経営力向上計画について中小企業等経営強化法の認定を受けていることから、中小企業経営強化税制の目的に鑑みても、事業所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件マイニングは、①マイニングマシンの購入代金の完済を停止条件として当該マイニングマシンの販売元の会社(N社)にマイニングの業務委託が行われ、②本件マイニングの収益において最も重要な仮想通貨の種別の選択権や市況環境を踏まえての停止や種別変更の判断も全てN社に委ねられ、請求人には異議を述べる権限もうかがわれないし、③請求人は本件マイニングに係る損失も負担せず、その運営経費の内容・金額についても不知であることからすると、請求人が行う本件マイニングは、請求人がマイニングマシンの取得費用の限度で危険を負担してN社が主体となって行う本件マイニングから生じる利益の分配を受けるというものに等しく、その経済的実質はN社が行うマイニングへの投資に等しいといえるから、客観的、実質的にみて、請求人の計算と危険において独立して営まれる業務であるとはいえない。
また、中小企業等経営強化法における経営力向上計画の認定を受けただけでは、租税特別措置法第10条の5の3《特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除》第1項に規定する特定経営力向上設備等を「事業の用に供した」ことを充足することにはならない。
以上のことを踏まえると、本件マイニングに係る所得は事業所得ではなく雑所得に該当する。
暗号資産のマイニング業務に係る所得は雑所得とであるとされた事例-大阪地裁令和6年10月30日判決(令和4年(行ウ)104号)(棄却)(控訴)
(1)事案の概要
本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 投資コンサルタント会社Q社の代表取締役である原告Xは、個人としても、不動産賃料収入を得ていたほか投資コンサルティング業を営んでいた。
② Xは、A社から買い受ける予定であった仮想通貨のマイニングマシン100台(以下「本件マイニングマシン」という。)に係る投資計画につき、経済産業大臣に対し、中小企業等経営強化法の経営力向上設備等のうち収益力強化設備に関する投資計画の確認申請をし、その確認を受けた。
そして、Xは、K経済産業局長に対し、上記経営力向上設備等に係る経営力向上計画について同法13条1項に基づく認定の申請をし、その認定を受けた。K経済産業局長に提出した経営力向上計画に係る認定申請書には、A社に対して本件マイニングマシンの運用を全面的に委託することは一切記載されていなかった。
③ Xは、平成30年12月27日、A社から本件マイニングマシンを購入(100台。1台38万8800円であり、合計3888万円)し、同日、A社との間で以下の内容を含む業務委託契約(以下「本件業務委託契約」という。)を締結し、マイニング業(以下「本件マイニング業」という。)を開始した。
(ア)基本合意 Xは、本件マイニングマシンに関し、仮想通貨のマイニング業務をA社に委託する。また、同社が本件マイニングマシンによりマイニングする仮想通貨の種別については、同社が決定する。
(イ)契約期間 本件マイニングマシンの運用開始日から起算して4年が経過する日まで
(ウ)運用業務委託の承諾 Xは、A社が、契約期間中、本件マイニングマシンを、仮想通貨のマイニングの最大効率化を目的として、同社が相当と認める設置場所への移設、又は第三者に運用業務を委託することを予め包括的に承諾する。また、その内容については、同社が自由に決定できるものとする。
(エ)収益の送付
a A社は、毎月末締めの翌月10日に、当該月にマイニングされた仮想通貨の総額から、当該月に発生した同社が定める費用を除いた仮想通貨の量(以下「本件業務収益」という。)を、同社がマイニングすると決定した種類の仮想通貨でXに送付する。
b 当月の本件業務収益がマイナスとなる場合には、本件業務収益は送付されないが、その場合にも、同社はXに対して何らの請求を行わない。
c A社は、市況環境に鑑み、分配仮想通貨総量がゼロないしマイナスになると判断した場合、本件マイニングマシン及びその設置場所に対してメンテナンスが必要であると判断し、当該メンテナンスのためにマイニング作業を停止することが必要な場合には、Xへの予告なくマイニング作業を停止することができる。
(オ) 修繕その他の維持管理
a A社は、契約期間中に本件マイニングマシンに故障及び破損その他修繕の必要が生じた場合、修復不可能な故障が発生した場合を除き、自らの費用で修繕を行う。
b A社は、契約期間中、本件マイニングマシンにインストールされるソフトウェアのアップデート、セキュリティ対策その他本件マイニングマシンをマイニングに用いるために必要な維持・管理は、全て、自らの費用で行う。
④ Xの本件マイニング業による収益は、以下のとおりである。
| 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 |
|---|---|---|---|
| 16万円余 | 1,847万円余 | 279万円余 | 1,001万円余 |
⑤ Xは、所轄税務署長に対し、平成30年分の所得税等に係る確定申告書を法定申告期限内に提出し申告した。確定申告書においては、本件マイニング業に係る所得は事業所得とされていた。
⑥ 所轄税務署長から、本件マイニング業に係る所得は雑所得に該当することを前提とする更正処分等を受け、Xは、処分の取消しを求めた。
(2)本件の主な争点
本件マイニング業に係る所得は、所得税法上、事業所得又は雑所得のいずれに該当するかである。
(3)判決要旨(棄却)(控訴)
① ある所得が所得税法27条1項にいう事業所得に該当するか否かは、「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」であるか否かによって判断すべきである(最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決・民集35巻3号672頁参照)。
そして、同法27条1項にいう事業(同法施行令63条12号にいう「対価を得て継続的に行う事業」)に該当するかどうかを社会通念に従って判定する場合には、(イ)営利性、有償性の有無、(ロ)継続性・反復性の有無、(ハ)自己の危険と計算による企画遂行性の有無、(ニ)その取引に費やした精神的あるいは肉体的労力の程度、(ホ)人的・物的設備の有無、(ヘ)その取引の目的、(ト)その者の職業・社会的地位・生活状況などの諸要素を総合的に検討し、社会通念に照らして判断するのが相当である。
② 本件マイニング業については、営利性、有償性及び反復継続性が認められることは当事者間に争いがない。そして、Xは、本件マイニング業が開始される以前の企画立案段階においては、本件マイニング業のスキームの構築に関しては一定の関与をしていたことが認められる。しかし、本件マイニング業の遂行段階(平成30年12月27日以降)においては、Xは、本件マイニングマシンの購入資金に自己資金を充てたほかに追加で経費等を負担したり、本件マイニング業の遂行のための人的・物的設備を備えたりしていたとは認められない。
③ また、本件業務委託契約においては、マイニングする仮想通貨の種別はA社が決定するとされていること、月間の収支がマイナスとなる場合は、Xに対する収益の送付がなくなるだけで、A社からXに対して当該月にマイニングされた仮想通貨の総額から控除された金額以上の損失補てん等を請求することはできないとされていること、市況環境等に鑑み分配仮想通貨総量がゼロないしマイナスになる場合にマイニング作業を停止する権限をA社が有していること、本件マイニングマシンの故障等の修繕費用やソフトウェアのアップデート等の維持管理費はA社が負担するとされていることなどからすれば、Xが初期投資以上の費用や損失を負担することは予定されていなかったものと認められる。
④ 加えて、本件業務委託契約の内容はXと他の投資家との間で異なるところはなく、Xが本件業務委託契約締結の後に本件マイニング業の収益の増加のために何らかの行為をすることもなかったことからすれば、Xは、本件マイニング業の遂行段階において、A社と実質的な共同事業者としての立場にあったということはできず、A社に対してマイニング業務を委託し、同社から収益の送付を受ける一般投資家と同様の立場にあったにとどまる。そうすると、Xについて、本件マイニング業において自己の危険と計算による企画遂行性があったと評価することはできない。また、Xは、Q社代表取締役としての報酬や不動産賃料収入等を得ていたことが認められるから、本件マイニング業による収入は、Xの資産運用の目的にとどまるものであったというべきである。
⑤ 本件マイニング業に係る所得は、所得税法27条1項所定の事業所得には当たらないものと認められ、同法35条1項所定の雑所得に当たるものと認められる。



