概要

 発行会社の破産等により個人が所有する株式または公社債(以下「株式等」といいます。)の価値が失われたとしても、その損失は株式等を譲渡したことにより生じたものではないため、原則として他の株式等の譲渡益との通算等を行うことはできません。

 ただし、特例として、一定の要件を満たす場合には、その価値が失われた株式等の取得価額相当額(無価値化損失相当)を上場株式等の譲渡損とみなし、その譲渡損と同一年の上場株式等の譲渡益との通算(措法37の11)、その譲渡損と上場株式等の配当等との損益通算および3年間の繰越控除ができます(措法37の11の2、37の12の2)。

 なお、平成27年12月31日以前においては、同一年の上場株式等の譲渡益との通算においてのみ考慮されており、上場株式等の配当等との損益通算および3年間の繰越控除は認められていませんでした。

一定の要件

株式等の要件

 次のいずれかに該当する株式または公社債であること

(1)特定管理株式等(措法37の11の2①)
 特定口座で管理されていた内国法人の上場株式または特定公社債(注)で、上場廃止となった日以後、引続き、その特定口座を開設している金融商品取引業者等に開設される特定管理口座で管理されているその株式または公社債

 なお、特定管理口座とは、上場株式等に該当しないこととなった株式について、特定口座からの移管により保管の委託がされることその他一定の要件を満たす口座をいいます。

(注)特定管理株式等の対象となる特定口座内保管上場株式等からは、次のものが除かれます(措令25の9の2①、措規18の10の2①、措達37の11の2-1)。
① 非課税口座(NISA口座)内上場株式等又は未成年者口座(ジュニアNISA口座)内上場株式等のうち、金融商品取引所への上場を廃止することが決定された銘柄(整理銘柄)又は上場を廃止するおそれのある銘柄(監理銘柄)として指定されている期間内に、非課税口座又は未成年者口座から特定口座に移管がされたもの。
② 非課税口座内上場株式等又は未成年者口座内上場株式等のうち、店頭管理銘柄株式として指定されている期間内に、非課税口座又は未成年者口座から特定口座に移管がされたもの。

(2)特定口座内公社債(措法37の11の2①)
 特定口座で管理されている内国法人が発行した公社債

(3)特定保有株式
 平成21年(2009年)1月4日において特定管理株式等であった株式で同年1月5日(株券電子化の日)に特定管理口座から払い出されたもののうち、同日以後その株式と同一銘柄の株式の取得及び譲渡をしていないものであることにつき一定の証明がされたものをいいます。ただし、これについては令和3年分以後、本特例の適用対象から除外されています。

 令和3年度税制改正大綱(令和2年12月21日)
 特定管理株式等が価値を失った場合の株式等に係る譲渡所得等の課税の特例の適用対象から、特定保有株式を除外する。

価値を失ったことによる損失が生じた場合とされる「一定の事実」

 株式又は公社債として価値を失ったことによる損失が生じた場合とされる「一定の事実」は、次に掲げることをいいます(措法37の11の2①、措令25の9の2③)。

(1)特定管理株式等である株式
 上記株式を発行した法人について発生した次に掲げる事実
・解散(合併による解散を除く)をし、清算結了
・破産手続開始の決定
・更生計画(会社更生法)や再生計画(民事再生法)に基づく100%無償減資の実行
・預金保険法による特別危機管理開始決定(銀行の国有化)

(2)特定管理株式等である公社債または特定口座内公社債
 上記公社債を発行した法人について発生した次に掲げる事実
・解散(合併による解散を除く)をし、清算結了
・破産手続廃止または終結の決定
・更生計画(会社更生法)や再生計画(民事再生法)に基づく社債無償消滅

上場株式等の譲渡をしたことにより生じた損失とみなされる「損失の金額」

 この特例の適用を受ける場合の「損失の金額」は、次のとおりとなります(措令25の9の2②)。

(1)特定管理株式等
 「一定の事実」が発生した日における特定管理株式等に係る1株又は1単位当たりの金額(いわゆる取得価額)に、その事実の発生の直前において有するその特定管理株式等の数を乗じて計算した金額

(2)特定口座内公社債
 「一定の事実」が発生した日における特定口座内公社債に係る1単位当たりの金額(いわゆる取得価額)に、その事実の発生の直前において有するその特定口座内公社債の数を乗じて計算した金額

「特定管理口座開設届出書」の提出

 この特例の適用を受けようとする居住者等は、最初に特定管理口座に上場株式等に該当しなくなった株式等を受け入れる時までに、特定口座を開設している金融商品取引業者等の営業所長に対し、「特定管理口座開設届出書」を提出して、特定管理口座を開設しなければなりません(措令25の9の2⑧)。

 特定管理口座とは、特定口座に保管している内国法人の株式等が上場株式等に該当しないこととなったときに、その株式等をその特定口座からの移管により保管の委託がされることなど一定の要件を満たす口座をいいます。

 なお、異なる金融商品取引業者等の間において特定口座から特定管理口座への受入れはできません。

確定申告手続き

 この特例は、「(価値を失ったことによる損失が生じた場合とされる)一定の事実」が発生した日の属する年分の確定申告書に、この特例の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、①金融商品取引業者等の営業所の長が発行する「価値喪失株式等に係る証明書」及び②特例の対象となる価値喪失株式等とそれ以外の株式等とを区分して記載された「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の添付がある場合に限り適用されます(措法37の11の2③、措令25の9の2⑦、措規18の10の2④、措達37の11の2-2)。

 ただし、この特例については、いわゆる宥恕規定が設けられています(措法37の11の2④)。

 なお、「価値喪失株式等」とは、価値を失ったことによる損失が生じた場合とされる一定の事実が発生した特定管理株式等又は特定口座内公社債をいいます(措規18の10の2④一)。

特定口座以外で保有する株式等が価値を失った場合の損失の取扱い

 特定口座以外(非課税口座及び未成年者口座を除く。)で保有する株式又は公社債について、上記「価値を失ったことによる損失が生じた場合とされる一定の事実」の発生により、株式又は公社債としての価値を失ったことによる損失が生じた場合の取扱いは次のとおりとなります。

(1)その株式又は公社債が事業所得の基因となるものであるときは、売上原価の計算を通じて自動的にその株式又は公社債の取得価額相当額がその損失の発生した年分の一般株式等又は上場株式等の譲渡に係る事業所得の金額の計算上必要経費に算入されます(所法37、48)。

(2)その株式又は公社債が雑所得の基因となるものであるときは、その損失の金額は、その損失の金額を必要経費に算入しないで計算した株式等の譲渡に係る雑所得の金額を限度として、その損失が発生した年分の一般株式等又は上場株式等の譲渡に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入されます(所法51④)。

(3)その株式又は公社債が上記(1)及び(2)以外のもの(譲渡所得の基因となるもの)であるときは、その損失は所得金額の計算上一切考慮されません。

 したがって、特定口座以外(非課税口座及び未成年者口座を除く。)で保有していた株式又は公社債であっても、事業所得又は雑所得の基因となるものであるときは、その損失の生じた日の属する年分の一般株式等又は上場株式等の譲渡に係る事業所得又は雑所得の金額を限度として必要経費に算入できることとなります。

 ただし、措置法37条の12の2第1項に規定する「上場株式等に係る譲渡損失の金額」に該当しないことから、「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の適用はできません。

上場廃止が見込まれる場合

 上場株式について、上場廃止したのみでは株式としての価値を失ったことによる損失が生じた場合には該当しませんが、税法上の区分が「上場株式等」から「一般株式等」になります。

 また、金融商品取引業者等によっては、特定管理口座を取り扱っていない場合もあります。

 よって、上場廃止が見込まれる場合には、上場している間に売却をすることを検討したり、取引をしている金融商品取引業者等に特定管理口座の取扱いの有無を確認するとよいでしょう。