概要

弔慰金と相続税の関係

 被相続人の死亡によって相続人等が受け取る弔慰金や花輪代、葬祭料などについては、通常、相続税の対象になることはありません。

 死亡弔慰金は、以下のように一定額まで非課税となります(相基通3-20)。
 被相続人の死亡が
①業務上の死亡であれば、被相続人の死亡時の賞与以外の普通月額給与×3年分
②その他の死亡であれば、被相続人の死亡時の賞与以外の普通月額給与×6ヶ月分
 まで非課税となります。非課税枠を超える部分の金額は、死亡退職金として相続税の対象となります。

 この算定に当たっては、弔慰金の支払を行う雇用主ごとに行うこととされていますので、複数の法人の役員等を兼務しており複数の弔慰金を受給したような場合には、それぞれごとに非課税限度額を算定することとなります。

弔慰金と所得税の関係

 法人から弔慰金を支給された場合には、原則として、一時所得に該当することになります。ただし、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者である法人との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、所得税は課税されないこととされています(所令30、所基通9-23)。

法人税法上の退職給与との関係

 相続税の取扱いにおいては、死亡退職が業務上のものであるか否かによって、普通給与の6か月分ないし3年分の弔慰金等の金額が非課税財産とされます。

 かくして、この相続税のうえで非課税とされる弔慰金等を、法人税法上の退職給与に含めるべきか否かが問題のあるところですが、退職給与の額から控除として取り扱った裁判例があります(長野地裁昭和62年4月16日判決・税資158号104頁、福島地裁平成8年3月18日判決・税資215号891頁、仙台高裁平成10年4月7日判決・税資231号470頁等)。

 その中で、福島地裁平成8年3月18日判決(税資215号891頁)では、不動産の管理及び賃貸等を目的とする原告法人の創業者にして代表取締役であったYが、原告所有のビルの屋上において、水漏れの点検作業中に誤って地上へ転落して死亡し、弔慰金の損金性等が問題となった事案につき、次のとおり判示しています。

 「法人が業務上の事故死を原因として支出した金員の損金性を考えるうえでも、右にいう普通給与の3年分というのは基本的な指標として参酌するに値するものであり、少なくとも本件のように純然たる弔慰金的性質だけに止まると認められる場合には、右の基準をもつて判断することに合理性を否定すべき理由はない。よつて、本件退職金のうち、Yの業務上の事故死に対する給付金的な性質の金員として、Yの最終月額報酬50万円に3年分を乗じた額である1,800万円については損金算入を認めることができる。」

 死亡した役員に対して支給される弔慰金について、社会通念上相当な額で退職給与に該当するものでなければ、福利厚生費として取り扱われます。

評価会社が支払った弔慰金についての純資産価額の計算上の取扱い

 被相続人の死亡に伴い評価会社が相続人に対して支払った弔慰金については、相続税の対象外となり二重課税にはなりませんので、純資産価額の計算上負債に該当しません。

 なお、名目は「弔慰金」であるが、課税上は、死亡退職手当金として相続税の課税対象とされている場合には、株式評価上、債務として負債に計上することができます。