(1)事案の概要

 本件は、審査請求人Xが、家屋及びその敷地の用に供されている土地を譲渡し、当該譲渡に係る譲渡所得について、措置法35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》1項に規定する特例を適用して所得税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該家屋はXが居住の用に供している家屋ではないから本件特例を適用することはできず、また、Xは、当該家屋に居住していたかのような外形を作出したとして、更正処分及び重加算税の賦課決定処分をしたのに対し、Xが、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

○本件における事実等は、次のとおりである。
① Xは、昭和56年3月25日に、〇〇〇所在の肩書地(以下「本件肩書地」という。)を住所とした。
② 平成22年譲渡
Xは、平成19年に競売により取得した△△△所在の土地及び建物について、平成22年3月28日に売買契約を締結し、当該土地及び建物を譲渡(以下「本件22年譲渡」という。)した。Xは、本件22年譲渡につき、措置法35条1項に規定する居住用財産の譲渡所得の特別控除の規定を適用して、平成22年分の所得税の確定申告をした。Xは、上記の確定申告に係る申告書に、平成22年1月19日に本件肩書地から△△△所在の土地及び建物の所在地に転入し、同年4月1日に再び本件肩書地に転出した旨が記載された住民票(除票)の写しを添付した。
③ 平成26年譲渡
 Xは、平成25年4月5日に売買により取得した×××所在の土地及び建物について、平成26年8月3日に売買契約を締結し、当該土地及び建物を譲渡(以下「本件26年譲渡」という。)した。Xは、本件26年譲渡につき、措置法35条1項に規定する居住用財産の譲渡所得の特別控除の規定を適用して、平成26年分の所得税の確定申告をした。Xは、上記の確定申告に係る申告書に、平成26年5月14日に本件肩書地から×××所在の土地及び建物の所在地に転入し、同年7月31日に再び本件肩書地に転出した旨が記載された住民票(除票)の写しを添付した。
④ 原処分庁は、上記③に対し、本件特例を適用することはできず、また、Xは本件家屋に居住していたかのような外形を作出したとして、平成29年6月9日付で、平成26年分の所得税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分をした。

(2)裁決要旨(棄却)

① 措置法35条1項に規定する居住の用に供している家屋とは、本件特例の適用を受けるために、短期間臨時にあるいは仮住まいとして起居していたというのみでは足りず、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていた家屋をいうものと解される。そして、譲渡資産がこれに該当するか否かについては、当該譲渡者及び家族の日常生活の状況やその家屋の利用の実態、その家屋の入居目的、その家屋の構造及び設備の状況等の諸事情を総合的に考慮し、社会通念に従って判断するのが相当である。
② Xは、本件家屋への住民票の住所変更の手続を行ったものの、それ以外の住所変更に伴う諸手続である運転免許証等の変更手続や郵便物の転送手続はしなかった。また、本件家屋の水道の使用期間からすると、Xが本件家屋を利用していた可能性のある期間は、約3週間とごく短期間であると認められる。そして、近隣住民からはXが本件家屋に入居したと気付かれないような使用の仕方であったことを自認している。以上からすれば、Xが本件家屋を使用していたとしても、その使用の態様をみると、一時的に出入りしていたことは認められるとしても、ある程度の期間継続して生活の拠点として使用していたとは認め難い使用状況であったといえる。
③ Xが子に同居の話を持ちかけていたとしても、Xは、同居の同意が確実に得られるものではないことはもとより、むしろ同意が得られる可能性はほぼないものと理解していたと考えるのが相当である。加えて、その他の事実も併せ考慮すれば、Xが子と本件家屋に同居するという現実的な見通しはなかったものといわざるを得ない。したがって、Xが子と同居する目的であったことをもってXに居住の意思があったと認めることも困難である。
④ 以上によれば、Xは、本件家屋について、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていたことはないと認められるから、本件特例を適用することはできない。Xは、本件特例の適用を受けるために、住民票上の住所を本件家屋に異動するなどして、本件家屋が「居住の用に供している家屋」であるかのように居住事実の外形を作出し、あたかも本件家屋が生活の拠点であるかのように装ったものと認められる。よって、本件申告は、通則法68条1項に規定する重加算税の賦課要件を満たす。