(1)事案の概要
 本件は、審査請求人X(以下「X」という。)が、平成26年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、国外財産に関して生ずる所得の申告漏れ等があったとして自主的に修正申告書を提出した後に国外財産調書を提出したところ、原処分庁が、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(以下「国送法」という。)6条2項の規定を根拠に過少申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、Xが、当該規定は自主的に修正申告書を提出した場合には適用されず、過少申告加算税は課されないなどとして、同処分の全部の取消しを求めた事案である。

○本件における基礎事実等は、次のとおりである。
① Xは、平成26年分の所得税等の確定申告書を原処分庁に提出し、法定申告期限(平成27年3月16日)までに申告した。
② 平成27年8月31日、Xは、平成26年分の所得税等について、H国において生じた預金利子(利子所得)及び株式貸付料(雑所得)の申告漏れ等を理由として、原処分庁に対し、修正申告書(以下「本件修正申告書」という。)を提出した。本件修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものではない。
③ 平成27年9月14日、Xは、原処分庁に対し、本件修正申告書の提出の基因となる国外財産が記載された平成26年12月31日分の国外財産調書(提出期限は平成27年3月16日。以下「本件国外財産調書」という。)を提出した。
 
○関係法令の要旨は、次のとおりである。
(1) 国税通則法(平成28年法律15号による改正前のもの。以下「通則法」という。)
① 通則法65条1項
期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出があったときは、当該納税者に対し、その修正申告に基づき納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。
② 通則法65条5項
同条第1項の規定は、修正申告書の提出があった場合において、その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、適用しない。
(2) 国送法
① 国送法5条1項
居住者は、その年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合には、国外財産調書を、その年の翌年の3月15日までに、所得税の納税地の所轄税務署長等に提出しなければならない。
② 国送法6条2項
国外財産に係る所得税に関し修正申告等があり、通則法65条の規定の適用がある場合において、前条1項の規定により税務署長に提出すべき国外財産調書について提出期限内に提出がないときは、同法65条の規定による過少申告加算税の額は、この規定にかかわらず、この規定により計算した金額に、当該過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
 
(2)裁決要旨
 Xは、国送法6条2項の規定は、通則法65条5項の規定が適用されるXの修正申告書(本件修正申告書)には適用されない旨主張する。しかしながら、国送法6条2項は、通則法65条の規定の適用がある場合に過少申告加算税を加重する旨規定しており、同条5項の規定の適用がある場合を除く旨規定しているものではない上、同項の規定の適用がある修正申告書にも国送法6条2項の適用があると解することは、同条第1項及び第2項の規定の趣旨とも整合する。したがって、国送法6条2項の規定は、通則法65条5項の規定の適用がある修正申告書にも適用されると解するのが相当であるから、本件修正申告書についても国送法6条2項の規定は適用される。