(1)事案の概要
 本件は、不動産賃貸業を営む審査請求人Xが、不動産所得の金額の計算上、Xの親族が役員を務める法人A社に外注費として支払った金員を必要経費に算入して所得税等の確定申告をしたところ、原処分庁から、当該金員は不動産所得を生ずべき業務について生じた費用に該当せず、必要経費に算入することはできないなどとして更正処分等を受けたため、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

○本件における事実等は、次のとおりである。
① Xは、不動産賃貸業を営む青色申告の承認を受けた個人事業者である。Xの妻Wに対し青色事業専従者給与を、Xの子Sに対し給与を支払っていた。
② 法人A社は同族会社であり、土地、建物の賃借の代理若しくは媒介等を目的とする青色申告の承認を受けた法人である。Wは、代表取締役であり、S及びその妻Qは、いずれも取締役であった。
③ Xは、平成26~28年分(以下、これらの年分を併せて「本件各年分」という。)において、A社に対する外注費として総勘定元帳の「摘要」欄に「アパート管理料」等と記入した上で、各2,400,000円(以下「本件各金員」という。)を本件各年分の所得税等の不動産所得の金額の計算上、必要経費にそれぞれ算入した。
                
(2)裁決要旨(棄却)
① 不動産所得の金額の計算上必要経費が総収入金額から控除されることの趣旨は、投下資本の回収部分に課税が及ぶことを避けることにあると解されるところ、ある支出が所得税法37条1項の必要経費に該当するというためには、納税者が、不動産賃貸業に関連するもの、あるいは不動産賃貸業の遂行に資するものと主観的に判断して、その支出がされたというだけでは足りず、その支出をするに至った経緯、趣旨及び目的等の諸般の事情を総合的に考慮し、客観的にみて、それが当該不動産賃貸業の業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要な支出であることを要するものと解される。
② 不動産賃貸業に係る管理業務は多岐にわたっていることから、その性質上、管理者と委託者の間において、委託業務の範囲を確定し、管理者は委託者に対して管理業務に関する報告をすることが一般的である。これらのことからすれば、委託の範囲や委託業務の遂行状況を明らかにするためにも、青色申告の個人事業者であるX及び青色申告法人であるA社において、本件委託業務に係る何らかの書類が作成されてしかるべきであるが、X及びA社は、契約書等の合意文書、A社が本件委託業務に従事したことを証する業務日誌等の報告書のほか、本件委託業務に係る請求書及び領収証などをいずれも作成していない。このことは、W、S及びQがA社の役員を務めていることを考慮しても不自然である。
③ W及びQが行っている賃料等の管理業務及び記帳業務については、本件委託業務に係る合意が明示的にされていたとは認め難いことに加えて、Wは青色事業専従者として従事していた者であること並びに当該業務に要すると推測される労力等からすれば、Wが行った管理業務及び記帳業務は、Xの青色事業従者として行ったものと認めるのが相当である。また、Wが高齢であったことなどから、平成27年8月からはSが業務を分担し、Qはこれを補助するようになったと認めるのが相当である。以上によれば、W及びQが行った業務は、A社の業務として行われたものとは認められない。したがって、A社に外注費として支払った金員は、所得税法37条1項に規定する必要経費に該当しない。