概要

 合同会社は、損失のてん補のために、その資本金の額を減少することができます(会社法620①)。

 減少させることができる資本金の額は限度額が定められており、次に掲げる額のうちいずれか少ない額となります(会社法620②、会計規162)。

(1)0から資本金の額を減少する日における資本剰余金の額及び利益剰余金の額の合計額を減じて得た額(0未満であるときは、0)
(2)資本金の額を減少する日における資本金の額

 つまり、資本剰余金の額及び利益剰余金の額の合計額がマイナスなら、そのマイナスの範囲なら資本金の額を減少させることができます。ただし、減少させた後の資本金の額がマイナスになることはできません。

減少させることができる資本金の限度額

(Q1)

 純資産の部が以下の場合の、減少させることができる資本金の限度額はいくらなのか?

 資本金   100万円
 資本剰余金 100万円
 利益剰余金 -150万円

(1)0-(資本剰余金+利益剰余金)=0-(100万円-150万円)=50万円
(2)100万円

(1)50万円<(2)100万円のため、50万円

(Q2)

 純資産の部が以下の場合の、減少させることができる資本金の限度額はいくらなのか?

 資本金   100万円
 資本剰余金 100万円
 利益剰余金 -250万円

(1)0-(資本剰余金+利益剰余金)=0-(100万円-250万円)=150万円
(2)100万円

(1)150万円>(2)100万円のため、100万円

資本金を減少した場合の会計・税務処理

 減少された資本金の額は資本剰余金の額となります(会計規31①四)。

「620条に規定する損失のてん補とは、一般的な用語法とは異なり、株式会社の場合と同様に、社員に払戻し可能な財源を回復するという意味以上のものではなく、合同会社の出資の払戻しまたは持分の払戻しに関連してのみ意味を有する概念である。
 他方、持分会社の損失を、過去の拠出資本をもって埋め合わせるという意味での、表示上の損失のてん補については、会社法では、直接の規定が設けられておらず、資本剰余金を減少させ、かつ、利益剰余金を増加させることが適切な場合(略)の一場合として整理されることとなる。
 この場合、利益剰余金に振り替えられた資本剰余金部分については、社員は、出資の払戻しとしては財産の払戻しを受けられなくなることから、表示上の振替えという効果のほか、社員の出資財産の放棄という効果も生ずることとなる。」(「論点解説 新・会社法」593頁/相澤哲ほか編著/商事法務)。

 合同会社は、適切な場合には、資本剰余金を減少させ、かつ、利益剰余金を増加させることができます(会計規31②六、32①三)。よって、損失のてん補をする場合には、このようなことができると考えます。

純資産の部が以下の場合だとします。
 資本金   100万円
 資本剰余金 100万円
 利益剰余金 -150万円

資本金50万円を減少するとします。

(会計上の仕訳)
資本金 50万円 資本剰余金 50万円

結果、純資産の部は以下となります。
 資本金   50万円
 資本剰余金 150万円
 利益剰余金 -150万円

次に、資本剰余金150万円を減少させ、かつ、利益剰余金150万円を増加します。

(会計上の仕訳)
資本剰余金 150万円 利益剰余金 150万円

結果、純資産の部は以下となります。
 資本金   50万円
 資本剰余金 0円
 利益剰余金 0円

税務

 税務上、無償減資においては資本金等の額の減少は発生しません。また、資本剰余金を減少し、同額の利益剰余金のマイナスをてん補(損失のてん補)しても利益積立金額に変動は生じません。別表5(1)において申告調整します。

合同会社で無償減資をして欠損填補を行った場合の法人住民税均等割

手続き

 資本金の額を減少する場合には、定款に別段の定めがなければ業務執行社員の過半数により決定します。

 官報公告などによって債権者に異議を述べる機会を与えなければならないこととされており、債権者保護手続が要求されています(会社法627)。

 また、資本金の額が変わるため、2週間以内に変更の登記をしなければなりません(会社法915①)。登録免許税は3万円です(登税法別表一24(一)ツ)。