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中古住宅買取再販売業者が土地付き中古住宅の仕入をし、建物(中古住宅)にリフォームを施し売却する場合は、消費税の算出方法に注意をする(カチタス事件)

概要

 土地と建物をまとめて売却するとき、契約書に土地代金、建物代金、消費税等の額を記載していても、その区分が税務上そのまま認められるとは限りません。

 中古住宅の買取再販事業を営むカチタスの事件では、販売時の土地・建物の価額区分について合理性が否定され、課税庁が行った消費税等の更正処分等が維持されました。令和7年5月9日には最高裁が上告審として受理しない旨の決定をし、会社の敗訴が確定しています。

 この事件で重要なのは、契約書の内訳をどう決めたか、リフォームによる価値の増加をどのように反映したかという点です。固定資産税評価額を使ったことだけが問題とされた事件でも、すべての不動産売買について特定の原価按分を義務付けた事件でもありません。

 この記事では、カチタス事件固有の算定方法と、地裁・高裁の判断、最高裁決定の位置付けを解説します。一般的な按分方法は土地・建物の売買価額の区分に関する総合解説、税込総額の計算や固定資産税等の精算金は土地・建物を一括売却したときの価額区分と消費税をご覧ください。

カチタス事件の裁判経過と結論

 この事件は、平成28年3月期から平成31年3月期までの4課税期間に係る消費税及び地方消費税の更正処分と、過少申告加算税の賦課決定処分を巡るものです。

裁判結論
東京地裁令和5年5月25日判決(税資273号、順号13853)会社の請求を棄却
東京高裁令和6年5月30日判決(税資274号、順号13994)会社の控訴を棄却
最高裁令和7年5月9日第二小法廷決定(TAINS Z888-2796)上告審として受理しない旨の決定。会社の敗訴が確定

 最高裁の決定は、上告審として受理しないという手続上の決定です。最高裁が、土地・建物の按分方法について独自の実体判断を示した判決ではありません。 判断内容を検討するときは、地裁・高裁の判示と、不受理による確定とを区別する必要があります。

 同社も、令和7年5月13日付の適時開示で、同月12日に決定書の送達を受け、控訴審判決が確定したことを公表しています。

会社は、仕入時と販売時で異なる方法を使っていた

取引の中心は、リフォームによって中古住宅を再生する事業

 会社は、築年数が経過し、そのままでは一般の中古住宅市場で流通しにくい物件を仕入れ、リフォームを施して販売していました。仕入れから売却までの期間は平均約5か月で、主な販売先は、自宅として購入する個人でした。

 リフォームには土地に関する工事も含まれていましたが、その中心は、水回り設備の交換、内装の更新など建物に関するものでした。裁判所は、この事業が、主として建物の交換価値(市場での取引上の価値)を高めて販売するものである点を重視しています。

仕入時は、個々の物件の評価額を基に区分

 会社は、仕入時には、個々の物件について、その仕入年度の土地・建物の固定資産税評価額の比率を基に代金を区分していました。競売で仕入れた物件については、鑑定評価額が用いられていました。

 つまり、仕入れの段階では、それぞれの物件についての評価資料に基づく区分をしていたことになります。

販売時は、過去の平均値から設定した係数で消費税等を算出

 これに対し、販売時の消費税等は、次の方法で算出していました。

物件の種類販売時の消費税等の算出方法
戸建住宅税込売買代金総額×2.7%。1万円未満を切り捨て
集合住宅税込売買代金総額×5.4%。1万円未満を切り捨て

 戸建住宅の2.7%は、平成25年4月から9月までに仕入れた戸建住宅について、評価額に占める建物の割合の平均値が約34%であったことから、これに当時の消費税等の税率8%を乗じて設定したものでした。集合住宅の5.4%は、戸建住宅の係数を2倍にしたものです。

 2.7%・5.4%は、建物代金の配分割合ではありません。売買代金総額から消費税等を算出するための係数です。 また、これらは本件当時の事実であり、現在の取引に適用する税率や計算基準を示すものではありません。

 会社は、この方法で求めた消費税等の額を8%で除して建物代金を求め、総額から建物代金と消費税等を差し引いて土地代金を求めていました。

 契約書には、土地代金・建物代金・消費税等を記載する書式と、総額及び消費税等だけを記載する書式がありましたが、いずれも各金額の算出には上記の方法が使われていました。

争点①――契約書に内訳があっても、消費税法施行令45条3項を適用できるか

会社の主張

 会社は、消費税の課税標準となる対価の額は、当事者が授受することに合意した金額であり、土地・建物の金額を区分して合意している以上、その合意額によるべきだと主張しました。

 これに対し、課税庁は、当事者間で金額を区分していても、その区分が合理的でない場合には、消令45③による按分が必要であるとしました。

地裁の判断

 地裁は、土地・建物の一括譲渡では、総額について合意していても、内訳が便宜的に定められている場合があり、契約書の記載だけで建物の対価が客観的に明らかになるとは限らないと判断しました。

 買主が最終消費者である場合、買主は購入総額には強い関心を持つ一方、土地と建物の内訳には同じ程度の関心を持つとは限りません。そのため、当事者の合意を常に優先すると、建物への配分を低くすることによって、消費税の負担を不当に減らす余地が生じます。

 地裁は、契約書で金額を区分していても、合理的な区分でなければ消令45③が適用され得ると判断しました。本件は、契約書の内訳が存在するかだけでなく、その内訳の合理性を審査できるかが争われた事件です。

争点②――会社の区分は、なぜ合理的でないと判断されたか

過去の仕入物件の平均値では、販売物件のリフォームを反映できていなかった

 地裁は、会社が建物を中心にリフォームを行い、物件の交換価値を高めていたにもかかわらず、販売時の建物代金を、過去に仕入れた戸建住宅の建物割合の平均値を基に算定していた点を問題としました。

 問題は、単に仕入時と販売時の方法が違うということではありません。販売した個々の物件について、リフォームにより高めた価値が、建物の対価に適切に反映されていなかったことです。

土地に利益が集中し、建物は原価割れとなっていた

 判決が認定した戸建住宅の平均値をみると、会社の方法による区分は次のようになっていました。

項目土地建物
仕入金額の平均値(税抜)約400万円約180万円
会社の方法による販売金額の平均値(税抜)約870万5,000円約462万5,000円

 建物には、仕入金額約180万円に加え、リフォーム費用等が平均約330万円かかっていました。これらを合計すると約510万円となり、会社の方法で算定した建物の販売金額は、その合計を下回っていました。

 一方、土地の販売金額は仕入金額の2倍以上でした。裁判所は、土地価格の変動が少ない地域を中心に、平均約5か月で販売する事業であることなども踏まえ、土地に大きな利益が生じる一方、リフォームで価値を高めた建物は原価割れとなる区分を、事業の実態に合っていないと評価しました。

 裁判所は、営業利益が増加する中で、合計約12億円に上る消費税等の還付申告となっていたことも判断事情に挙げています。ただし、利益が出ている事業者に還付が生じること自体が、直ちに違法となるわけではありません。本件では、改修内容や販売損益の配分などと併せて、区分の合理性が判断されています。

固定資産税評価額が変わらない工事でも、取引上の価値は増え得る

 会社は、実施したリフォームは固定資産税評価額の再評価対象となる程度のものではないことなども主張しました。

 しかし、地裁は、固定資産税の評価替えの対象とならなかったとしても、リフォームによる交換価値の増加が否定されるわけではないとしました。内装や設備の更新が、実際の不動産市場での評価に影響することはあり得るためです。

 したがって、「工事後も固定資産税評価額が同じだから、販売時の区分もそのままでよい」と判断することはできません。

争点③――課税庁の「仕入代金にリフォーム費用等を加える方法」は認められるか

課税庁が採用した算定方法

 課税庁は、各物件の売上原価を、会社が会計システムで付した消費税区分等を用いて土地と建物に分け、その比率を基に建物の譲渡対価を算定しました。価額比を求める考え方は、次のように整理できます。

費用等の内容本件での配分の考え方
土地・建物の仕入代金各物件の仕入時の評価額比を基にした支払代金額を基礎とする
建物に対応するリフォーム費用等建物側に加える
土地に対応する費用等土地側に加える
土地・建物に共通する費用等仕入時の支払代金額の比率で配分し、それぞれに加える

 このようにして求めた土地・建物の価額比を用いて、売買代金総額から建物部分を算定する方法でした。

地裁が合理的と判断した理由

 地裁は、消令45③にいう価額による按分について、時価には幅があり、適切な価額比から課税標準を導けること、すべての物件について不動産鑑定を求めることは過大な負担になることなどを指摘しました。

 そのうえで、本件では、仕入時の評価資料を基礎とし、そこにリフォーム等による交換価値の増加を反映する課税庁の方法には合理性があるとして、適法と判断しました。

 これは、リフォーム費用を加えた原価が、どのような場合でも市場での取引価額と一致するという判断ではありません。本件の取引実態の下で、合理的な価額比を導く方法として認められたという位置付けです。

控訴審は、法律の委任の範囲をどう判断したか

一括譲渡の総額から、課税資産に対応する範囲を求める規定

 控訴審で会社は、当事者が合意した対価と異なる金額を消令45③によって課税標準とすることは、法律が政令に委任した範囲を超えると主張しました。

 東京高裁は、土地・建物を一括譲渡した場合、その総額のうち、どの範囲を建物の譲渡に係る消費支出とみるかを定めることは、課税標準の算定方法を定めるものであり、消法28⑤が委任する計算の細目に含まれると判断しました。

 当事者間に区分の合意があっても、その合意に絶対的な拘束力を認めることまでは、消法28①の趣旨から求められないとしたものです。

地裁の理由付けには、一部補正がある

 高裁は、会社の区分が合理的でないことと、課税庁の算定方法が相当であることについて、地裁の判断を基本的に維持しました。また、消令45③にいう価額が、譲渡時の時価を意味することを明示しています。

 一方、地裁が、建物の対価には土地部分を時価より高く売却できる経済的利益を含むと述べた一部の説示は、引用から削除しています。結論が維持されたことと、地裁の理由付けのすべてがそのまま引用されたことは同じではありません。

 このため、本件を説明する際には、地裁判決だけでなく、控訴審による補正も踏まえる必要があります。

この事件を実務に当てはめるときの注意点

固定資産税評価額による按分が、一律に否定されたわけではない

 本件では、仕入時の固定資産税評価額等を基にした価額が、課税庁の算定方法でも出発点とされています。固定資産税評価額という資料そのものを排除した判断ではありません。

 販売した物件にどのような改修を行い、その価値がどう変わったかを踏まえて、採用する評価資料や比率の合理性を確認する必要があります。過去の物件の平均値に基づく係数と、販売対象の個々の物件に関する評価資料は、区別して検討します。

原価按分が、すべての取引で必須になったわけではない

 本件で認められたのは、会社の事業実態や保有期間、改修内容、仕入時の評価資料等を踏まえた算定方法です。長期間保有した物件や、地価が大きく変動した物件などについても、同じ方法をそのまま使えばよいとはいえません。

 また、購入時と売却時の比率が必ず異ならなければならないという形式的なルールを示したものでもありません。大切なのは、販売時の区分について、その物件の事情に即した説明ができることです。

販売時の見積りと、後から確定した費用との差も区別する

 会社は、仕入れ直後から販売を始めるため、価格決定時にはリフォーム費用が確定していないことや、計算を簡易・一律にする必要性も主張しました。

 地裁は、会社の施工管理や実績等から、見積ったリフォーム費用を基に区分することは可能だったとしています。その一方で、販売時点と事後の課税庁の検証時点では情報量が異なるため、実際の費用による区分と違っただけで、直ちに合理性を失うものではないとも述べています。

 後から確定した費用との完全な一致と、販売時点の区分の合理性は、分けて考える必要があります。 簡易化を図る場合にも、見積りの根拠と、その時点で把握していた事情を残すことが重要です。

買取再販の価額区分では、物件ごとの改修と価格決定の根拠を残す

 本件を踏まえると、買取再販事業では、土地・建物の仕入時の区分資料に加え、工事の指示書・見積書・請求書、建物と土地のどちらに対応する費用かを整理した記録、販売価格の決定資料などが重要になります。

 特に、建物の設備や内装を更新して販売する場合には、その内容が販売時の建物価額にどのように反映されているかを説明できるようにします。共通費用の配分や見積額の変更についても、採用した基準と経緯を保存します。

 なお、本件はインボイス制度導入前の課税期間に関する事件です。当時の仕入税額控除の扱いを、現在の個人等からの仕入れにそのまま当てはめることはできません。取得時の価額区分と仕入税額控除に関する確認事項は、土地・建物を一括取得したときの取得価額の按分と裁判例をご覧ください。

 売却時の税込・税抜の整理、消費税等の計算、固定資産税等の精算金の取扱いは、土地・建物を一括売却したときの価額区分と消費税で解説しています。

参考資料

  • 東京地裁令和5年5月25日判決(税資273号、順号13853)
  • 東京高裁令和6年5月30日判決(税資274号、順号13994)
  • 最高裁令和7年5月9日第二小法廷決定(TAINS Z888-2796、情報公開により開示された決定書)
  • 株式会社カチタス:当社が提起していた消費税の更正処分等の取消請求訴訟に係る上告不受理の決定に関するお知らせ(令和7年5月13日)
  • 国税庁:消費税基本通達10-1-1・10-1-5
  • 『令和6年版 消費税法基本通達逐条解説』10-1-5関係

土地建物一括譲渡における売買契約書に記載された価額比率が不合理であり消費税額が過少とされた事例-東京地裁令和5年5月25日判決(令和3(行ウ)123号)、東京高裁令和6年5月30日判決(令和5(行コ)176号)、最高裁令和7年5月9日第二小法廷決定(TAINS Z888-2796)(上告不受理)(確定)

(1)事案の概要

 本件の事案の概要は、次のとおりである。
① X(原告、控訴人、上告人)は、土地付き中古住宅買取再販事業を営んでいる法人であり、主に築年数の経過した物件を仕入れて、当該物件に必要な修繕等(リフォーム)を施し当該物件の価値を増加させた上で、顧客に対して販売するというビジネスモデルを採用している。Xが仕入れる物件は、築年数が古く内外装が傷んでいるなど、一般の中古住宅市場では流通しにくいものが多く、その約9割は個人から、残りの約1割は競売により仕入れている。なお、Xが仕入れる物件の約9割は戸建住宅であり、また、仕入れた物件の約6割ないし7割は空き家である。Xの主要顧客は、地方都市に在住する世帯年収が200万円~500万円、年齢が30歳~50歳のファミリー世代であって、2LDKや3DKで50㎡程度といった賃貸住宅に居住しており、家族3、4人で住むには手狭になってきたことから、今支払っている家賃と同程度かそれより低い経済的負担で購入することができる安価な物件を求めている者である。Xは、物件を仕入れた時点で将来的な販売金額を決定し、仕入れた直後から自社ホームページ上に物件を掲載して売出しを行い、仕入れから平均約5か月間という短期間で売却していた。

② Xは、物件を仕入れる際、土地及び建物を一括で取得しており、また、物件を販売する際にも、土地及び建物を一括譲渡しているところ、Xによる物件の仕入れ時及び販売時の消費税額の算出方法等は、それぞれ以下のとおりである。
イ 物件の仕入れ時の消費税額の算出方法
 Xは、売主から物件を仕入れた際の建物に係る消費税額(消費税法30条1項による控除の対象となる。)を計算するに当たっては、当該物件に係る売買代金総額(消費税額を含む。以下同じ。)を、当該物件を仕入れた年度における土地及び建物それぞれについての固定資産税の課税標準である固定資産の価格(地方税法380条1項。以下単に「固定資産税評価額」という。)の比で按分する方法により算出している。つまり、土地の支払対価の額は、売買代金総額に、土地及び建物の固定資産税評価額の合計金額のうち土地の固定資産税評価額が占める割合を乗じて算出し、建物の支払対価の額は、売買代金総額に、土地及び建物の固定資産税評価額の合計金額のうち建物の固定資産税評価額が占める割合を乗じた金額に、更に108分の100(編注:当時の税率)を乗じて(すなわち、消費税額相当額を除いて)算出している。なお、競売により仕入れた物件の場合には、固定資産税評価額に代えて、不動産鑑定士による鑑定評価額(以下、固定資産税評価額と併せて「固定資産税評価額等」という。)により、上記と同様の計算を行っている。
ロ 物件の販売時の消費税額の算出方法(以下「本件X算出方法」という。)
 Xは、物件を販売する際の消費税額について、戸建住宅の場合には売買代金総額に2.7%を乗じた金額(1万円未満切捨て)とし、集合住宅の場合には売買代金総額に5.4%を乗じた金額(1万円未満切捨て)としていた。
 戸建住宅の計算で用いる2.7%は、Xが過去(平成25年4月1日から同年9月30日までの6か月間)に仕入れた戸建住宅物件について、個々の物件の固定資産税評価額等の合計額に建物の固定資産税評価額等が占める割合(以下「建物割合」という。)の平均値が約34%(以下「X建物按分率」という。)であったことから、これに消費税等の税率8%を乗じて算出したものである。集合住宅の計算で用いる5.4%は、戸建住宅の2.7%を2倍した割合である。
 また、Xは、上記のとおり算出した消費税額を100分の8で除した金額を建物の譲渡の対価の額(建物代金額)とし、売買代金総額から当該建物の譲渡の対価の額及び消費税額を除いた金額を土地の譲渡の対価の額(土地代金額)としていた。

③ Xは、顧客から物件の購入の申込みを受け、最終的に顧客との間で契約内容について合意に至った場合、顧客との間で売買契約書を作成している。Xが用いている売買契約書の書式には、売買代金として、(イ)売買代金総額並びにその内訳として土地代金額、建物代金額及び消費税額が記載されているものと、(ロ)売買代金総額及び当該金額に含まれる消費税額のみが記載されており、土地代金額及び建物代金額の記載はないものとがある。もっとも、いずれの書式を用いる場合であっても、売買契約書に記載する消費税額等の各金額の算出方法は本件X算出方法のとおりであった。

④ Xは、本件X算出方法により算出した建物の譲渡の対価の額は消費税法28条1項における課税資産の譲渡の対価の額であるとし、同様に算出した土地の譲渡の対価の額は非課税資産の譲渡の対価の額であるとして、平成28年3月期から平成31年3月期までの各課税期間(以下「本件各課税期間」という。)における消費税等の申告(還付申告)を行った。

⑤ 処分行政庁は、令和2年4月28日、本件各課税期間にXが販売した物件のうち、販売時の消費税額を売買代金総額に2.7%又は5.4%を乗じて算出しているものの譲渡の対価の額については、消費税法施行令45条3項に規定する「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」に該当し、本件各物件に係る課税資産(建物)の譲渡に係る消費税の課税標準は、Y(被告、被控訴人)が「Y算出方法」で算出した金額であるとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件更正処分等」という。)を行った。
 「Y算出方法」とは、本件各物件の建物と土地の価額について、建物と土地の各仕入れ時の支払代金額(これらの代金額の比率は仕入れ時の固定資産税評価額等の比率に応じたものとなっている。)を基礎とし、これらに、Xが行ったリフォーム等の費用のうち建物に係るものは建物の価額として、土地に係るものは土地の価額として、両者に共通するものは仕入れ時の支払代金額の比率で按分したものをそれぞれの価額として付加することにより算出した額をもって、消費税法施行令45条3項の「価額」とするものである。

⑥ Xは、処分行政庁が行った本件更正処分等は違法であるとして、その取消しを求めた。

(2)本件の主な争点

 本件の争点は、本件更正処分等の適法性であるが、具体的には、以下の3点である。
①土地及び建物の一括譲渡に当たり、売買契約書において土地の代価及び建物の代価が区分されている場合に、消費税法施行令45条3項を適用することができるか否か(争点1)

②(上記①で適用を肯定する場合)本件各物件の譲渡が、消費税法施行令45条3項に規定する「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」に該当するか否か(争点2)

③(上記②で該当性を肯定する場合)本件更正処分等において算定された建物の譲渡に係る消費税の課税標準は、消費税法施行令45条3項所定の方法によって算定されたものといえるか否か(争点3)

(3)一審判決要旨(棄却)(控訴)-東京地裁令和5年5月25日判決(令和3(行ウ)123号)

(争点1)
① 消費税法施行令45条3項は、消費税法28条5項の委任を受けて、一括譲渡の場合の課税資産の譲渡の対価の額の計算の細目を定めるものとして、当該譲渡の当事者間において課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とを合理的に区分しているときはその額によることとし、合理的に区分していないときは、当該課税資産及び非課税資産の各価額(時価)の比で按分する方法で計算した金額とすることを定めたものといえる。
② Xは、一括譲渡の場合であっても、当該譲渡の当事者間で課税資産の譲渡の対価の額を、非課税資産の譲渡の対価の額と区分して合意したときは、当該合意した額が「課税資産の譲渡等の対価の額」であり、課税標準の額を算定するための別途の計算は不要であるから、消費税法28条5項及びその委任を受けた消費税法施行令45条3項が適用される余地はない旨を主張する。しかしながら、消費税法28条1項本文の文理上、一括譲渡の場合の課税標準の算定に当たって、当事者間で明示的に合意した金銭による対価の額(以下「対価の金額」ということがある。)の区分に常に従わなければならないことが明らかにされているとはいえない。
③ 一括譲渡の場合において、当該譲渡の相手方が最終消費者であるときは、当該相手方としてはその代金総額が幾らになるかについては強い関心があるとしても、課税資産と非課税資産の内訳についてはそこまでの関心があるとはいえず、むしろ消費税額の実質的な負担を最小化する観点からは、当事者双方にとって、代金総額に占める課税資産に係る対価の金額の割合を小さくすることのメリットが大きいともいえる。
④ 土地及び建物の一括譲渡の場合の課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準の額を計算するに当たっては、売買契約書において土地の代価及び建物の代価が仮に金額面において区分されていたとしても、消費税法施行令45条3項が適用され得るものというべきである。

(争点2)
⑤ 一括譲渡の場合において、当該譲渡の当事者間で、課税資産の対価の金額と非課税資産の対価の金額を区分して合意していたときに、消費税法施行令45条3項所定の「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」に該当するか否かを判断するに当たっては、同項が「合理的に区分されていないとき」としている趣旨が、事業者が恣意的に課税資産の譲渡の対価の金額を設定して納税義務を免れようとする事態を防止するところにもあることに鑑みれば、Xが指摘するような合意の形成過程に合理性があるかどうかに限らず、当該課税資産及び非課税資産のそれぞれの本来的な価額の比率や、これらを仕入れた際のそれぞれの対価の額の比率との比較において、課税資産の対価の額の割合が過少になっていないかどうかなどの事情をも考慮すべきものと解するのが相当である。
⑥ Xは、一般の中古住宅市場では流通しにくい中古物件を仕入れて、リフォーム等を施してその価値を高めて販売するというビジネスモデルを採用しており、リフォーム等の費用の大部分は建物に係るものが占めていたものと認められるのであり、当該リフォームによって建物を中心にその交換価値を高めていたものと評価し得る。そうであるにもかかわらず、Xは、上記のようなリフォームを経た本件各物件の販売時において、売買代金総額に占める建物の代金額を、専ら、過去に仕入れた戸建住宅物件の建物割合の平均値であるX建物按分率に基づく本件X算出方法により算出していたものである。このように、物件の販売時に本件X算出方法によって売買代金総額に占める建物の代金額を算出した場合には、リフォームによって高めた交換価値が売買代金総額に占める建物の代金額の比率に適切に反映されないことは明らかである。加えて、Xは、本件各物件を仕入れた際には、売買代金総額に占める建物の代金額を、個々の物件の固定資産税評価額等の合計額に建物の固定資産税評価額等が占める割合(建物割合)に基づき算出していたことから、Xが扱った本件各物件の仕入れ時及び販売時の土地及び建物の代金額をみると、全体的な傾向として、本件各物件が位置する地方都市においては土地価格の変動が本来少ないはずであるにもかかわらず短期間の間に土地の価値が急騰したような形になる一方、建物の価値は下落して建物単体でみると損失が生じた形になっている上、Xは、本件各課税期間において、輸出免税取引や赤字決算のような事情が見当たらず、むしろ、営業利益が年々上昇していたにもかかわらず、合計約12億円もの消費税の還付申告を行っている。
⑦ 本件X算出方法は、リフォームにより高めた本件各物件の交換価値を建物の対価の額に適切に反映したものということはできず、その結果としてXが高額の消費税の還付を受けることになっていることも踏まえると、売買代金総額に占める課税資産である建物の対価の額が、非課税資産である土地の対価の額に比して著しく過少に区分されていたものといわざるを得ない(上記建物の対価の額は、売買契約におけるその対価の金額のみならず、これと一括譲渡される土地部分をその時価よりも高く売却することができるというXにとっての経済的利益を含むものとみるほかはない)から、前記⑤のような消費税法施行令45条3項の趣旨に照らしても、不合理なものであることは明らかである。そうすると、Xによる本件各物件の譲渡は、同項に規定する「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」に該当するものというべきであるから、本件各物件の譲渡に係る消費税の課税標準は、同項所定の方法によって算定されるべきである。

(争点3)
⑧ Y算出方法は、本件各物件の建物と土地の価額について、建物と土地の各仕入れ時の支払代金額(これらの代金額の比率は仕入れ時の固定資産税評価額等の比率に応じたものとなっている。)を基礎とし、これらに、Xが行ったリフォーム等の費用のうち建物に係るものは建物の価額として、土地に係るものは土地の価額として、両者に共通するものは仕入れ時の支払代金額の比率で按分したものをそれぞれの価額として付加することにより算出した額をもって、消費税法施行令45条3項の「価額」とするものである。
 まず、建物と土地の各仕入れ時の支払代金額を基礎とした点については、これらの代金額の比率は各仕入れ時における固定資産税評価額又は不動産鑑定士による鑑定評価額の比率に応じたものとなっているところ、固定資産税評価額は、当該資産の客観的な交換価値を上回らない価額と推認されるものであり(平成25年最判参照)、固定資産税評価額と不動産鑑定評価額のいずれの場合であっても、上記支払代金額を消費税法施行令45条3項の価額の基礎とすることは相当と認められる(Xの主張によれば、Xにおいても仕入れ時の支払代金額の比率を用いること自体について異論はないものと解される。)。
 もっとも、本件においては、支払代金額の比率(すなわち固定資産税評価額等の比率)をそのまま用いた場合、リフォームによる土地・建物の交換価値の増加が適切に反映されないという問題が生ずる。そこで、Y算出方法においては、Xが行ったリフォーム等の費用について、Xが土地と建物のいずれの売上原価として扱っているかに応じてそれぞれの支払代金額に加算し、最終的な価額を求めているものと解されるところ、一般に、費用を掛けてリフォーム等を施せば、その分、当該不動産の交換価値は高まるはずである〔事業者は、一般的に、売上原価を回収して利益が見込める程度の販売価格を設定するのが通常と解される。
⑨ Y算出方法は、価額による按分を定めた消費税法施行令45条3項に従った方法として、適法なものというべきである。

(4)控訴審判決要旨(棄却)(上告受理申立て)-東京高裁令和6年5月30日判決(令和5(行コ)176号)

 一審と同旨で、Xの控訴を棄却

(5)上告審決定要旨(上告不受理)(確定)-最高裁令和7年5月9日第二小法廷決定(TAINS Z888-2796)

 Xの上告受理申立ては、受理しない旨の決定。確定

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