利益配当に関する制限
合同会社では有限責任社員しかいないため、債権者保護のため、特則が設けられ、利益配当に関する制限がされています(会社法628)。
合同会社は、利益の配当額が配当をする日における利益額を超える場合には、利益の配当をすることはできないのですが、ここでいう利益額とは、次に掲げる額のうちいずれか少ない額となります(会計規163)。
(イ)合同会社全体における利益額
利益の配当をした日における利益剰余金の額
(ロ)請求をした社員ごとの利益額
既に分配された利益の額-(既に分配された損失の額+既に利益配当された額)
「(イ)合同会社全体における利益額(利益剰余金の額)」の制限があるのは、会社債権者を害することをないようにするためである。「(ロ)請求をした社員ごとの利益額」の制限があるのは、他の社員を害することをないようにするためです。
なお、株式会社の配当のように純資産額が300万円を下回る場合には行えないという規定(会社法458)はなく、配当する場合における資本準備金又は利益準備金を計上する規定(会社法445④)もありません。
違法配当
合同会社における違法配当の問題は、「(イ)合同会社全体における利益額」を超えて配当する場合の問題と「(ロ)請求をした社員ごとの利益額」を超えて配当する場合の問題という2つの問題があります。
合同会社が社員に違法配当をした場合には、その配当に関する業務を執行した社員は、合同会社に対し、配当を受けた社員と連帯して、配当額に相当する金銭を支払う義務を負います(会社法629①)。
ただし、業務を執行した社員がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、義務を負いません(会社法629①但し書き)。
この支払義務は、基本的に、総社員の同意がある場合は免除されますが、「(イ)合同会社全体における利益額」を超える部分については、総社員の同意があっても免除することはできません(会社法629②)。
また、違法配当を受けた社員は、合同会社に対し、連帯して、配当額に相当する金銭を支払う義務を負います(会社法623①)。なお、ここにおける「連帯して」とは、違法配当を受けた社員が複数存する場合における連帯責任についてです。