切手

概要

 貯蔵品となるものは未使用であることが前提ですが、その種類じたいはとても多く、切手・事務用品・消耗品・見本品・広告宣伝物・収入印紙などの未使用分となり、商品のように事業と直接関係あるものでないような物品が該当します。

 多種類の貯蔵品がありますが、法人税・所得税・消費税の処理においては2種類に分けて考えればよく、消耗品費等か、そうでないか(金銭等価物等)となります。

消耗品費等の貯蔵品のポイント

 消耗品費等の貯蔵品とは、消耗品(事務用消耗品、作業用消耗品など)をはじめ包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産となります。

●(法人税の取扱い)
 原則:購入時ではなく、実際に使用した時に損金算入するため、未使用分は貯蔵品処理をします。
 容認:次の3つ要件をすべて満たせば、購入時に損金算入が認められ在庫計上を省略できます(法基通2-2-15)。
 ①各事業年度ごとに、おおむね一定数量取得する
 ②経常的に消費する
 ③継続して取得(購入)時に損金算入をしている。
 したがって、各期末の在庫量に相当な増減があったり、期末直前に大量な購入をするような場合や、事業年度によって処理方法を変えるような場合は、認められません。

●(所得税の取扱い)
 上記、法人税の取扱いと基本同じです(所基通37-30の3)。
 
●(消費税の取扱い)
 法人税の取扱い関係なく、購入時に課税仕入となります。よって、法人税で原則的な取り扱いをした場合、消費税と法人税では異なった処理を行わなければならないので注意が必要です。
 
●(仕訳例)88円の消しゴムを1,000個購入したが、使用したのは100個で、未使用が900個である。
 原則:
 ①購入時  事務用品費  80,000円    現金     88,000円
      仮払消費税等   8,000円
 ②期末時  貯蔵品    72,000円    事務用品費  72,000円
 ③翌期首 事務用品費  72,000円     貯蔵品   72,000円

 容認:
 ①購入時  事務用品費  80,000円    現金     88,000円
      仮払消費税等   8,000円
 ②期末時  なし
 ③翌期首 なし

内部文章 法事例0713 損金算入可能な消耗品等の範囲

〔問〕 消耗品その他これに準ずる棚卸資産については、各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものである限り、取得時に損金算入してよいことになっているが、作業用消耗品には、少額(10万円未満)の工具等が含まれると解してよいか。また、「包装材料」には製品梱包用のダンボール箱や木枠等が含まれるか。製品の1個ごとに使用されるびん等のように直接製品原価を構成するものはどうか。

〔答〕 少額の工具等は、本来固定資産であるから使用可能期間の短いものを除いて作業用消耗品とすることはできない。また、製品の1個ごとに使用されるびん等も、作業用消耗品とは解すことはできない。期末に棚卸をすべきものである。
 作業用消耗品というのは、工場等で作業をする際に消耗品として用いられる物品をいうから、手袋、タオル、潤滑油等その消耗状況からみて一般に消耗品として認識されている棚卸資産がこれに該当することになる。
 これに対し、作業用の工具器具等はもともと固定資産であり、棚卸資産ではないから、たとえその取得価額が10万円未満の少額なものであっても、基本的にはここでいう作業用消耗品に含まれないが、性格的には固定資産であっても、その使用可能期間が通常1年未満の物品、例えば作業靴、懐中電灯、研究作業用ガラス器具等は作業用消耗品として取り扱う余地がある。
 また、釘、ボルト、ナット等の補修用の資材も、本来はここでいう作業用消耗品ではないが、その金額が少額で、かつ保有数量が多量でないものについては、作業用消耗品に準じて処理することが認められる。
 包装材料も同様に考えてよい。なお、包装材料には、販売に際して用いられる包装紙、ヒモ等のほか、製品等の搬送又は保管のために行う箱詰、梱包等に用いられるダンボール、木枠等を含める。
 これに対し、びん製品のびん、化粧箱入り製品の化粧箱、製品のパック用ビニール袋、電気製品の化粧ダンボール箱等のように製品の最終形態の一部を形成する容器等は製品原価を構成する補助原材料であるから、ここでいう包装材料には含まれない。
〔法法22(3),法基通2-2-15〕

内部文章 法事例0755 事務用消耗品等の取得事業年度における損金算入

〔問〕 未使用の事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産は、取得時に損金算入できるか。

〔答〕 一定条件に該当すれば、取得時に損金算入できる。
 消耗品その他これらに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が本問に掲げてある棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続して、その取得をした日の属する事業年度の損金の額(製造費用に該当するものは製造原価)に算入している場合には、これを認める。〔法基通2-2-15〕
 これらの消耗品等を具体的に示すと、次のようなものがある。
1 作業用消耗品‥‥手袋、タオル、ウエス、ブラシ、磨粉、グリス、潤滑油など
 作業用の工具、器具備品は、もともと固定資産であって棚卸資産ではないことから、たとえその取得価額が10万円未満の少額なものであっても、ここでいう作業用消耗品には含まれない。しかし、その使用可能期間が通常1年未満の作業服、作業靴、作業帽子、懐中電灯、試験研究用ガラス器具等や、保有数量が多量でない少額な補修用資材の釘、針金、塩ビ管、ボルト、ナット等については、作業用消耗品に準じて取り扱われる。
2 包装材料‥‥製品や商品の販売に際して用いられる包装紙、ひも、シール、製品等の搬送又は箱詰、梱包等に用いられるダンボール、木枠など
 瓶詰め製品の瓶、化粧箱入り製品の化粧箱、製品のパック用ビニール袋、その他製品の最終形態の一部を形成する容器等は、ここでいう包装材料には含まれない。
3 広告宣伝用印刷物‥‥ポスター、ちらし、パンフレット、カタログ、カレンダー等で、得意先、一般消費者等に配布するもの。
4 見本品‥‥専ら広告宣伝を目的としてメーカーが小売店を通じて消費者に無償で配付するサンプル、試供品など
 医薬品メーカー等がいわゆる添付品として医師等に配付する試供薬のように実質的に有償で頒布することを目的としているものは、ここでいう見本品には含まれない。
〔法法22,法令10〕

金銭等価物等の貯蔵品のポイント

 金銭等価物等とは、お金に換えることができるものです。具体的にいうと、郵便切手・レターパック・物品切手(商品券、アマゾンギフト券、クオカード、鉄道等のプリペイドカード等等)・収入印紙など、金銭と同じものと考えられるものです。もっとわかりやすく言うと、金券ショップ等で扱われるようなものになります。

 この場合は、(1)自社で使用する金銭等価物の場合と(2)贈答品などの他社で使用予定である金銭等価物の場合とに分けて考える必要があります。
 
(1)自社で使用する金銭等価物等の場合
●(法人税の取扱い)
 購入時ではなく、実際に使用した時に損金算入します。在庫品が僅少であっても、在庫計上省略が認められないため貯蔵品処理をします。なお、実務的には、実際に使用するたびに仕訳(経理処理)をするのは手間なので、購入時に損金算入し、期末未使用分を貯蔵品として処理します。結果、同じ、損金の額となります。

●(所得税の取扱い)
 上記、法人税の取扱いと基本同じです。
 
●(消費税の取扱い)
 原則:郵便切手や物品切手等は、法人税と同じ取り扱いになります。購入した時ではなく、実際に使用した時に課税仕入として仕入税額控除の対象になります。例えば、郵便局から郵便切手を購入した段階では非課税ですが、それを郵便物に貼付し投函して郵便サービスの提供を受けた時に課税されるというわけです。
 なお、収入印紙は税金(「租税公課」処理)ですので課税仕入に該当しません。
 容認:会社が自ら使用する切手・物品切手等は、継続適用を条件として、購入したときに課税仕入とすることが認められています(消基通11ー3ー7)。この場合、消費税と法人税では異なった処理を行わなければならないので注意が必要です。なお、収入印紙は課税仕入に該当しません。
 
●(仕訳例)切手を88,000円分購入したが、使用したのは8,800円分で、未使用が79,200円分である。
 原則:
 ①購入時  通信費     80,000円    現金     88,000円
      仮払消費税等   8,000円
 ②期末時  貯蔵品     79,200円    通信費    72,000円
                      仮払消費税等   7,200円
 ③翌期首 通信費     72,000円     貯蔵品   79,200円    
      仮払消費税等   7,200円
 容認:
 ①購入時  通信費     80,000円    現金     88,000円
      仮払消費税等   8,000円
 ②期末時  貯蔵品     72,000円    通信費     72,000円
 ③翌期首 通信費     72,000円     貯蔵品     72,000円
 
(2)贈答品などの、他社で使用予定である金銭等価物等(広告宣伝用のクオカードなど)の場合
●(法人税の取扱い)
 購入時ではなく、実際に贈答・配布した時に交際費等で損金算入します。在庫品が僅少であっても、在庫計上省略が認められないため貯蔵品処理をします。

●(所得税の取扱い)
 上記、法人税の取扱いと基本同じです。
 
●(消費税の取扱い)
 物品切手等の譲渡は、消費税が非課税であるため、購入者はカード購入時点では課税仕入とすることはできません。物品切手を使用した者が、品物等と引き換え給付(役務の提供)をうけた時点で課税仕入れがあったこととなります。例えば、広告宣伝のために、プリペイドカードを得意先に配布した場合は、配布は無償の譲渡であり、役務の提供を受けるのはカードを贈与された者であるので、購入者サイドでは課税仕入とすることはできないということです。ただし、社名入りのプリペイドカードを製作した場合、カードの譲渡そのものは非課税ですが、製作業者に支払った印刷費は課税仕入となります(カード代金と印刷費が明確に区分されている場合)。

所得税基本通達37-30の3(消耗品費等)

 消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する年分の必要経費に算入するのであるが、その者が、事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各年ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する年分の必要経費に算入している場合には、これを認める。
(注) この取扱いにより必要経費に算入する金額が製品の製造等のために要する費用としての性質を有する場合には、当該金額は製造原価に算入するのであるから留意する。

法人税法基本通達2-2-15(消耗品費等)

 消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。
(注) この取扱いにより損金の額に算入する金額が製品の製造等のために要する費用としての性質を有する場合には、当該金額は製造原価に算入するのであるから留意する。

消費税法基本通達11-3-7(郵便切手類又は物品切手等の引換給付に係る課税仕入れの時期)

 法別表第一第4号イ又はハ《郵便切手類等の非課税》に規定する郵便切手類又は物品切手等は、購入時においては課税仕入れには該当せず、役務又は物品の引換給付を受けた時に当該引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなるのであるが、郵便切手類又は物品切手等を購入した事業者が、当該購入した郵便切手類又は物品切手等のうち、自ら引換給付を受けるものにつき、継続して当該郵便切手類又は物品切手等の対価を支払った日の属する課税期間の課税仕入れとしている場合には、これを認める。