輸出物品販売場の免税制度とは
輸出物品販売場(免税店)では、外国人旅行者などの免税購入対象者が、所定の方法で購入した物品を国外へ持ち出すことを前提に、消費税が免除されます。国内での販売であっても、実質的に輸出に当たることを踏まえた制度です(消費税法8条)。
そのため、旅券情報上の購入者と実際の買主が違う、購入した物品が国内で転売される、あるいは存在しない仕入れと免税売上げを計上するといった事案では、免税や仕入税額控除の可否が問題になります。税務上の結論は、購入記録の形式だけでなく、取引と物品の実態によって決まります。
以下は2026年9月28日現在の法令・公表資料に基づく説明です。2026年10月31日までの販売と、11月1日以後の販売とで、適用される制度を分けて確認してください。
2026年10月31日までの免税要件
免税購入対象者には、一定の在留資格を有する外国籍の非居住者などが該当します。2023年4月以後、外国籍の方は原則として「短期滞在」「外交」「公用」の在留資格を有する方などに限られています。日本国籍の非居住者については、国外に引き続き2年以上住所または居所があることを、所定の在留証明または戸籍の附票の写しで確認する必要があります。
免税対象となるのは、輸出するために購入される「通常生活の用に供する物品」です。国外で事業に使うため、または販売するために購入されることが明らかな物品は対象になりません。金または白金の地金も対象外です。購入者の資格だけでなく、物品の用途と実際の取引内容を確認する必要があります。
同一の購入者が同一の販売場で同じ日に購入する場合、販売価額の合計額は次の基準で判定します。いずれも税抜価額です。
・一般物品(家電、バッグ、衣料品など):5,000円以上
・消耗品(飲食料品、医薬品、化粧品など):5,000円以上50万円以下
一般物品と消耗品を合算して5,000円以上とする場合には、一般物品も指定された方法で包装し、消耗品として取り扱います。この場合の合計額にも50万円以下という上限が適用されます。一般物品と消耗品を組み合わせて一つの商品にしている場合などは、商品の構成に応じた判定が必要です(消費税法基本通達8-1-3)。
金製の腕時計や工芸品は、「金を使用している」という理由だけで金地金と同じ扱いになるわけではありません。他方、装飾品という名称なら必ず免税になるわけでもありません。物品の実際の性質、購入目的、買主、国外への持出しを確認します。
国税庁が公表した不正事例
国税庁は、高額な腕時計の架空仕入れと外国人旅行者への架空免税売上げを組み合わせ、不正に消費税の還付を受けようとした査察事例を公表しています。また、来店していない外国人の旅券を流用し、国内事業者への課税売上げを旅行者への免税売上げに装った調査事例も公表しています。
2021事務年度には、免税購入品の国内転売などに係る即時徴収事案について30件の実地調査が行われ、1件当たりの追徴税額は4,143万円と公表されました。これは調査対象となった事案の数字であり、全ての免税店や免税販売に占める不正の割合を示すものではありません。
2024年4月からの仕入税額控除の制限
免税店で消費税の免除を受けて購入された物品が、国内で別の事業者へ転売されることがあります。2024年4月1日以後に国内で行う課税仕入れについては、仕入れる事業者が、その物品は輸出物品販売場制度により消費税が免除された物品であると仕入れ時点で知っていた場合、当該仕入れの仕入税額控除は認められません(消費税法30条12項)。
免税店で販売された種類の商品を仕入れた、というだけで直ちに「知っていた」と決まるわけではありません。売主とのやり取り、本人確認の状況、仕入れの数量・頻度など、具体的な事実から判断されます。仕入先と物品の来歴を確認し、取引記録を残すことが重要です。
裁判例
裁判例1:大量の家電販売と「通常生活の用」
山口地裁平成25年4月10日判決(税務訴訟資料263号-70・順号12194)は、旅行者らに対する家電製品の販売について、販売回数、数量、金額、代金の支払方法などを検討しました。その結果、当時の制度における「通常生活の用に供する物品」の販売とは認めず、免税を否定しました。広島高裁平成25年10月17日判決(同263号-185・順号12309)も控訴を棄却しています。
この判決は、購入目的を物品の名称だけで決めず、販売状況などの事実から判断した事例です。ただし、「通常生活の用」という要件自体は2026年11月から廃止されます。改正後の事業用・販売用物品の扱いを、この判決だけで判断することはできません。
裁判例2:旅行者名義で販売した金工芸品
東京地裁令和2年6月19日判決(税務訴訟資料270号-55・順号13415)では、金工芸品を外国人旅行者名義で販売したとする取引が争われました。代金や物品の授受、名義人の来店状況などを踏まえ、名義上の旅行者を実際の買主とは認めず、免税売上げとしての処理が否定されました。東京高裁令和3年9月2日判決(同271号-97・順号13599)は控訴を棄却しています。
旅行者名義の書類があっても、その旅行者が実際に購入したことまで証明できるとは限りません。この判決は取引の相手方を事実に基づいて判断したものであり、金工芸品一般が免税対象外だとした判決ではありません。
裁判例3:旧制度の旅券写しと仕入先の名義
東京地裁令和4年1月21日判決(税務訴訟資料272号・順号13662)は、時計の販売と仕入れを巡る事案です。対象となった2014~2018年の取引について、当時必要だった旅券写しの提出を受けていない販売の免税が否定されました。また、実際の時計の売主と異なる者を仕入先として記載した書類などを巡り、仕入税額控除の要件も争われました。
この事件の旅券写しは、当時の販売手続に固有の要件です。現在の免税販売は購入記録情報を電子的に提供する仕組みであり、旧制度の旅券写しの提出義務を現在の要件として案内することはできません。一方、販売先や仕入先の名義と取引実態を一致させる重要性は、現在の取引を確認する際にも参考になります。
2026年11月1日からのリファンド方式
2025年度税制改正により、2026年11月1日以後に免税店が行う物品の譲渡から、リファンド方式が始まります。2026年10月31日までに販売した物品には、出国が11月以後でも従前の制度が適用されます。適用制度を分ける基準は出国日ではなく販売日です。
新制度では、店は購入者に税込価格で販売し、購入記録情報を国税庁へ提供します。購入者は購入日から90日以内の出国時に対象物品を所持し、国外へ持ち出すことについて税関の確認を受けます。店は税関確認情報を取得し、購入記録情報とともに保存したうえで、消費税相当額を購入者に返金します。購入者に返金する主体は免税店側です。
税関で持出し確認を受けられなければ、その販売について店は免税の適用を受けられません。物品を預け入れ荷物に入れる場合も、預け入れ前に税関の確認を受ける必要があります。店は購入記録情報と税関確認情報を所定の期間、7年間保存します。
改正後は事業用・販売用物品も対象になり得る
リファンド方式への移行に伴い、一般物品と消耗品の区分、消耗品の税抜50万円という上限、特殊包装、「通常生活の用に供する物品」という要件は廃止されます。購入下限額である、同一の購入者・同一の販売場・同一日の税抜5,000円以上という基準は残ります。
改正後は、事業用または販売用に購入するという用途だけでは対象外になりません。ただし、購入者本人が対象物品の全てを出国時に所持して持ち出せる数量であり、税関確認を受けることが必要です。国内で第三者に渡したり、出国時に所持していなかったりすれば、その物品について確認を受けられません。
金・白金の地金、金貨・白金貨、消費税が非課税とされる物品は、改正後も免税店制度の対象外です。店自身が商品を海外へ輸出する取引は、要件を満たせば消費税法7条の輸出免税を検討する別の問題になります。
免税店・買取事業者が確認したいこと
・旅券等で免税購入対象者に該当するか確認する。
・名義人が実際の買主か、代金を負担し物品を受け取るのは誰か確認する。
・販売日を基準に、改正前と改正後の要件を取り違えない。
・購入記録情報を正確に提供し、改正後は税関確認情報の取得と保存を確認してから返金する。
・免税購入品を国内で仕入れる場合は、仕入れ時点で把握していた事実と、実際の売主を記録する。
免税の可否は、高額な商品であることや旅行者名義の記録があることだけでは決まりません。適用される時期の法令を確認し、実際の買主、物品の移動、必要な記録を取引ごとに検討する必要があります。
主な参照資料
・国税庁タックスアンサーNo.6559「外国人旅行者等の免税購入対象者」(2026年4月1日現在)
・国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式)」(2026年7月)問1、6、7、16ほか
・財務省「令和7年度税制改正の解説」847~857頁
・財務省「令和6年度税制改正の解説」804~805頁
輸出物品販売場における販売手続において非居住者による名義貸しが行われており、当該非居住者は実際の購入者でないことから、輸出免税の対象とすることはできないとされた東京地裁令和2年6月19日判決(税資270号-55(順号13415))・東京高裁令和3年9月2日判決(棄却)(控訴)
(1)事案の概要
① 原告X社は、昭和36年に設立された、ラジオ、テレビジョン及び電化器具等の販売業並びに金地金、宝石及び貴金属製品等の輸出入及び販売業等を目的とする株式会社であるが、平成28年4月以降、東京都千代田区所在の輸出物品販売場(以下「本件販売場」という。)において、約1kgの金工芸品(大判、皿、猿の置物、タンブラー、刀のつば等)を1個当たり450万円程度の金額で譲渡するようになった。
② X社の消費税の課税期間は1か月であるが、平成28年4月から平成29年2月の各課税期間(本件各課税期間)におけるX社の本件販売場での金工芸品の譲渡(以下「本件各譲渡」という。)は、香港の旅行会社B社の従業員とされる者、韓国の旅行会社C社の従業員とされる者及び韓国の旅行会社D社の従業員とされる者(以下「各コーディネーター」という。)のいずれかが関与して行われており、本件各譲渡の際には、X社に対して、外国人旅行者の名義で作成された購入者誓約書(以下「本件各購入者誓約書」という。)及び当該外国人旅行者の旅券の写しが提出された(以下、当該外国人旅行者を「本件各名義人」という。)。
③ (イ)複数の各名義人が、金工芸品を購入した事実はなく、旅券を貸与し、購入者誓約書に署名しただけであると供述していること(「秋葉原駅で先方に旅券を渡し、5~10分後に返してもらい、アルバイト料として2万円を受け取った」等と証言している)、(ロ)複数の各名義人が、旅行日程からして、金工芸品の購入日に販売場に来店することが事実上不可能であったこと、(ハ)D社コーディネーターが、金工芸品が外国人旅行者に引き渡されておらず、代金が非居住者から支払われていない旨供述していること、(ニ)東京税関が出国者から回収した購入記録票のうち本件各譲渡に係るものは、平成28年8月分には1枚も存在しなかったこと。
④ X社は、本件各課税期間(11か月)中の金工芸品免税売上高は約1,050億円であるとし、その金工芸品の仕入れに係る約87億8,000万円の消費税等の還付申告を行った。
⑤ 所轄税務署長が、X社の金工芸品の譲渡は消費税法8条1項に規定する非居住者に対する譲渡とは認められないとして、消費税等の更正処分と重加算税の賦課決定処分をしたことから、X社がこれらの取消しを求めた。
(2)本件の主な争点
① 本件各譲渡は消費税法8条1項に規定する非居住者に対する譲渡に該当するか
② X社に通則法68条1項に規定する隠蔽又は仮装の行為があったといえるか
(3)一審判決要旨(棄却)(控訴)
① 消費税法8条1項にいう非居住者に対する譲渡といえるためには、譲渡によって免税対象物品の所有権が非居住者に移転することを要すると解すべきであり、消費税法施行令18条2項等の定める免税販売手続において非居住者による名義貸しが行われ、当該非居住者が実際の購入者でない場合には、免税対象物品の所有権が当該非居住者に移転するとはいえず、消費税法8条1項の非居住者に対する譲渡とはいえないと解するのが相当である。
② 本件各譲渡については、外国人旅行者である各名義人を購入者とする購入者誓約書が作成されている。しかしながら、本件各譲渡における金工芸品と代金の授受は、通常、X社と各コーディネーターとの間で行われていたところ、次のとおり、いずれの譲渡においても、非居住者による名義貸しが行われ、当該非居住者が実際の購入者でないといえ、消費税法8条1項の非居住者に対する譲渡ということはできない。
③ 本件各譲渡は、のべ7000人以上の名義人に対して行われたとされているが、いずれも現金取引で、ほとんどが販売価額1000万円を超える高額のものであるにもかかわらず、代金及び金工芸品の授受は、X社と各コーディネーターとの間でされており、代金が支払われる前に各名義人が現物を確認することはなく、現物を確認したい旨の要望があってX社が対応したような事情も見当たらない。これらの点については、各名義人が実際の購入者であるとしたときに不自然であることが否めないといえる。
④ 各名義人については、譲渡日に販売場を訪れていない者が複数名おり、また、キャンセルがあった当日に新たに購入者となった者や、旅券貸与又は購入代行のアルバイトとして各譲渡に関与した者が複数名いるところ、これらの譲渡については、名義貸しが行われ、これらの者が実際の購入者ということはできない(X社は、キャンセルがあった当日に新たな購入者となった者がいることについて、翌日以降に仲介する予定であった外国人旅行者について日程を繰り上げて手配するものと考えていたと主張するが、各譲渡が高額の現金取引であったこと等を踏まえると、合理的な主張とはいい難い。)。
⑤ X社は、各譲渡の当初から、名義貸しが行われ、各名義人が実際の購入者ではないことを認識していたものといえるところ、その上で、X社は、各名義人に係る各購入者誓約書の作成に関与し、その売上げを免税売上高として帳簿に記載し、各確定申告をしていたものであり、これらの行為は、各譲渡を消費税法8条1項に規定する非居住者に対する譲渡として装うもので、通則法68条1項の規定する「その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当する。
(4)控訴審判決要旨(棄却)(控訴)
1審判決を補正又は引用するほか、以下のとおり判示し、X社の控訴を棄却した。
① 消費税法8条1項に規定する非居住者に対する譲渡は、輸出物品販売場において物品を購入した非居住者が国外に持ち出すことを前提とした譲渡であり、購入した物品は国内において費消されないものであるから、輸出取引と同様に消費税を課税しないという趣旨のものである。
② 上記の趣旨や消費税法8条1項の「輸出するため」との文言に照らせば、同項により消費税が免除されるためには、譲渡対象物品が、非居住者が輸出するために購入する物品であることを要すると解すべきであり、同条3項も、輸出するために物品を購入した非居住者が本邦から出国する日までに当該物品を輸出しなかった場合の規定と解されるから、事業者は非居住者から購入誓約書の提出を受けたというだけでは消費税の免除を受けられない。
③ 売買契約における買主が誰であるかは、売買契約書等の関係書類の買主名義のほか、売買手続に関与した者、売買代金の出損者(ママ)や売買の目的物を取得して管理・処分している者が誰か等の諸般の事情を考慮して判断すべきものであって、買主について名義貸しがあった場合に、当然に名義人が買主となるわけではない。
輸出物品販売場における免税販売の手続を定めた政令の規定は、消費税法8条1項の委任を受けて定められた有効なものであるとされた東京地裁令和4年1月21日判決(令和2年(行ウ)198号)(棄却)(控訴)
(1)事案の概要
① X(原告会社)が経営する輸出物品販売場(本件販売場)では、外国籍の者に対して時計を販売(本件各譲渡)する際、輸出するものとして購入し日本で処分しない旨を記載した購入者誓約書は作成されていたが、その者から旅券等の写しの提出を受けていなかった。
② 本件販売場では、Xが時計の買取りをする際、買取申込者が同行者を連れて来店し、買取申込者ではなく当該同行者が買取承諾書に記載するなどして、時計の買取り(本件各仕入れ)が行われることが度々あった。
③ Y(課税庁)は、(イ)本件各譲渡については、非居住者から旅券の写しの提出を受けていないことから、消費税法施行令18条2項1号ハが規定する「その所持する旅券等の写しを輸出物品販売場を経営する事業者に提出すること」の要件を満たさないため、輸出免税の対象とならないとして、(ロ)本件各仕入れに係る買取承諾書には、真実と異なる仕入先が記載されていることから、消費税法30条7項所定の帳簿及び請求書等を保存していたとは認められないため、仕入税額控除の対象とならないとして、消費税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をしたため、Xは、当該各処分の取消しを求めて提訴した。
(2)本件の主な争点
① 本件各譲渡は、輸出免税の要件を満たすか否か
② 本件各仕入れは、仕入税額控除の要件を満たすか否か
(3)判決要旨(棄却)(控訴)
① 課税要件等に係る基本的事項については、法律において定めることを要し、政令その他の下位法令に委任することが許されるのは、その技術的細目的事項に限られる。消費税法8条1項は、輸出するために購入される物品の譲渡であるという消費税を免除するための要件の基本的事項を定めた上で、輸出取引と同等と認めるに足りる方法としての手続事項を同法施行令18条2項1号が定めているものであって、同号は、同号ハも含めて上記基本的事項を前提とした技術的かつ細目的な事項を規定したものであり、同法8条1項による委任を受けて定められた有効なものである。
Xは、本件各評渡における購入者から旅券等の提出を受けていないため、本件各譲渡は、消費税法施行令18条2項1号ハ所定の要件を満たしておらず、同法8条1項に基づき消費税を免除することはできない。
② 仕入税額控除の要件として保存が要求される帳簿及び請求書等においては、課税仕入れの年月日、課税仕入れに係る資産又は役務の提供の内容及び支払対価の額、さらには仕入先の氏名又は名称の記載が真実であることを要し、それらの各記載が真実でない場合には仕入税額控除が認められないことになると解される。
本件各仕入れに係る買取承諾書には、真実と異なる仕入先が記載されていることから、帳簿及び請求書等を保存しない場合に当たるというべきであり、消費税法30条1項所定の仕入税額控除を認めることはできない。

