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源泉所得税の納期の特例はどの報酬まで対象?税理士は年2回、デザイン料は翌月10日

納期の特例の承認を受けていても、すべて年2回になるわけではない

 給与の支給人員が常時10人未満の会社などは、税務署長の承認を受けることにより、一定の源泉所得税等を原則年2回にまとめて納付することができます。これが「源泉所得税の納期の特例」です(所法216、217)。

 納期の特例の承認を受けている会社であっても、その会社が源泉徴収するすべての税金を年2回にまとめて納付できるわけではありません。

 例えば、個人税理士に支払った一定の報酬について源泉徴収した税額は納期の特例の対象となります。

 一方、個人デザイナーへの源泉徴収対象となるデザイン料は納期の特例の対象にならず、原則として支払月の翌月10日までに納付しなければなりません。

 ※本稿は令和8年8月24日現在の法令・通達・国税庁公表資料等に基づいています。

報酬について納期の特例になるのは204条1項2号だけ

 所得税法216条が納期の特例の対象としているのは、給与等、退職手当等のほか、所得税法204条1項2号に掲げる報酬・料金から源泉徴収した所得税等です(所法216)。

 つまり、所得税法204条1項に規定されている報酬すべてが対象なのではありません。

所得税法204条1項主な報酬・料金等納期の特例
1号原稿料、講演料、デザイン料、翻訳料等対象外
2号弁護士、税理士、司法書士等の一定の報酬対象
3号一定の社会保険診療報酬対象外
4号プロスポーツ選手、モデル、外交員等の報酬対象外
5号芸能人等の出演料等対象外
6号ホステス、コンパニオン等の報酬対象外
7号プロ野球選手等の一定の契約金対象外
8号広告宣伝のための賞金、一定の競馬の賞金等対象外

 「源泉徴収が必要な報酬」と「納期の特例の対象となる報酬」は同じ範囲ではありません。

税理士報酬は納期の特例の対象

 個人税理士に税理士業務に関する報酬を支払う場合、その報酬は所得税法204条1項2号に該当します(所法204①二)。

 したがって、会社が納期の特例の適用を受けている場合には、税理士報酬から源泉徴収した税額も半年分まとめて納付することができます(所法216)。

支払期間納付期限
1月から6月7月10日
7月から12月翌年1月20日

司法書士報酬も納期の特例の対象

 個人司法書士に会社設立、役員変更、本店移転、不動産登記などを依頼し、司法書士報酬を支払った場合も同様です。

 司法書士業務に関する報酬は所得税法204条1項2号の報酬ですから、納期の特例の対象となります(所法204①二、216)。

 例えば、納期の特例の適用を受けている会社が令和8年8月に個人司法書士へ役員変更登記の報酬を支払い、源泉徴収をした場合には、その源泉徴収税額の納付期限は原則として令和9年1月20日です。

 司法書士報酬の源泉徴収税額の計算方法については、別記事「中小企業でよくある源泉徴収しなくてはいけないもの」で詳しく解説しています。

弁護士や社会保険労務士等も対象

 所得税法204条1項2号及び所得税法施行令320条2項に該当する報酬であれば、同様に納期の特例の対象となります。

支払先納期の特例
弁護士対象
税理士対象
公認会計士対象
司法書士対象
社会保険労務士対象
弁理士対象
土地家屋調査士対象
海事代理士対象
測量士対象
建築士対象
不動産鑑定士対象
技術士対象
企業診断員に該当する者対象

 実際には所得税法施行令320条2項等による細かな規定があるため、名称だけでは判断できない場合があります。

デザイン料は納期の特例の対象外

 特に間違いやすいのがデザイン料です。

 個人デザイナーに支払う一定のデザイン報酬は、所得税法204条1項1号に該当し、源泉徴収の対象となります。

 所得税基本通達204-7では、工業デザイン、クラフトデザイン、グラフィックデザイン、パッケージデザイン、広告デザイン、インテリアデザイン、ディスプレイ、服飾デザインなどが「デザイン」の例として掲げられています(所基通204-7)。

 しかし、これらは所得税法204条1項1号の報酬です。

 デザイン料は源泉徴収の対象であっても、納期の特例の対象ではありません(所法204①一、216)。

 例えば、8月に個人デザイナーへ源泉徴収対象となるデザイン料を支払った場合には、会社が納期の特例の承認を受けていても、原則として9月10日までに源泉徴収税額を納付します(所法220)。

原稿料・講演料も翌月10日

 個人に支払う原稿料や講演料も、一定の場合には所得税法204条1項1号により源泉徴収の対象となります。

 しかし、204条1項2号には該当しないため、納期の特例の対象ではありません。

 国税庁タックスアンサーNo.2795でも、原稿料や講演料について、納期の特例の対象とはならないことが明示されています(所法204①一、216、220)。

外交員等への報酬も対象外

 外交員、集金人又は電力量計の検針人に支払う一定の報酬は所得税法204条1項4号に該当します。

 源泉徴収の対象となりますが、納期の特例の対象ではありません(所法204①四、216)。

ホステス・コンパニオン等への報酬も対象外

 ホステス、バンケットホステス、コンパニオン等に支払う一定の報酬についても、源泉徴収の対象となりますが、所得税法204条1項6号に該当するため納期の特例の対象にはなりません(所法204①六、216)。

「士業だから対象」と判断してはいけない

 税理士、司法書士、弁護士などが納期の特例の対象となるため、「士業への報酬ならすべて納期の特例の対象」と誤解されることがあります。

 士業という肩書ではなく、所得税法204条1項2号に該当する報酬かどうかで判断します。

 例えば、一般的な行政書士業務に関する報酬は、原則として所得税法204条1項に規定する報酬には該当しません。

 したがって、通常の行政書士報酬は、納期の特例の対象かどうか以前に、原則として源泉徴収自体が必要ありません。

 ただし、行政書士に依頼した業務が建築に関する一定の申請・届出書類の作成など、所得税法施行令320条2項に規定する建築代理士の業務に含まれる場合には、所得税法204条1項2号に該当することがあります(所法204①二、所令320②)。

経営コンサルタントも業務内容で判断

 「経営コンサルタント」についても名称だけでは判断できません。

 所得税基本通達204-15では、所得税法施行令320条2項の企業診断員について、中小企業診断士だけでなく、直接企業の求めに応じ、企業の状況について調査・診断を行ったり、企業経営の改善・向上のための指導を行ったりする者も含むとされています。

 そのため、実際の業務が企業診断員の業務に該当する場合には、所得税法204条1項2号の報酬となり、納期の特例の対象にもなります(所法204①二、216、所令320②、所基通204-15)。

法人へ支払う場合はまず源泉徴収の要否を確認

 ここまでの説明は主として居住者である個人に報酬を支払う場合を前提としています。

 例えば個人税理士への税理士報酬は源泉徴収の対象ですが、内国法人である税理士法人に通常の税理士報酬を支払う場合には、所得税法204条による源泉徴収は必要ありません(所法174、204、212)。

 納期の特例を考える前に、そもそもその支払について源泉徴収が必要なのかを確認する必要があります。

納付書を見ると区別しやすい

 納期の特例の対象となる税理士、弁護士、司法書士等の所得税法204条1項2号の報酬については、給与や退職手当と同じ「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」を使用します。

 一方、原稿料、講演料、デザイン料などの報酬については、「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」を使用します。

支払内容主な所得税徴収高計算書
給与、退職手当、204条1項2号の税理士等の報酬給与所得・退職所得等
原稿料、講演料、デザイン料等報酬・料金等

判断の順序

 報酬を支払う場合には、次の順序で考えると整理しやすくなります。

  1. 支払先は個人か法人か
  2. その報酬はそもそも源泉徴収の対象か
  3. 所得税法204条1項に該当する場合、何号に該当するか
  4. 2号であれば、納期の特例の適用を受けているか
  5. 2号以外であれば、原則として支払月の翌月10日までに納付する

 「納期の特例の承認を受けている会社だから、源泉所得税は全部年2回」と考えないことが最も重要です。

令和9年1月以後も対象範囲は変わらない

 令和9年1月1日以後に生ずる所得については、防衛特別所得税が創設され、復興特別所得税率が引き下げられます。

 しかし、防衛特別所得税と復興特別所得税を合わせた付加税率は従来と同じ2.1%です。

 「給与・退職手当+204条1項2号の一定の報酬」という納期の特例の対象範囲にも変更はありません。

まとめ

 源泉所得税の納期の特例の承認を受けている会社であっても、すべての報酬について源泉徴収税額を半年分まとめて納付できるわけではありません。

 税理士、弁護士、司法書士等に支払う所得税法204条1項2号の報酬については納期の特例の対象となり、1月から6月分は7月10日、7月から12月分は翌年1月20日までに納付します。

 一方、原稿料、講演料、デザイン料、外交員報酬、芸能関係報酬、ホステス等の報酬などは、源泉徴収の対象であっても納期の特例の対象ではなく、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。

 実務では「源泉徴収するかどうか」と「納期の特例が使えるかどうか」を二段階に分けて考え、納期の特例については所得税法204条1項2号に該当するかを確認することがポイントです。

 納期の特例そのものの申請方法、適用開始時期、新設法人の注意点、e-Taxによる納付方法については、別記事「1年で2回の納付ですむ『源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書』とは」で詳しく解説しています。

主な根拠法令・通達・公的資料

  • 所得税法204条、205条、216条、217条、220条
  • 所得税法施行令320条、322条
  • 所得税基本通達204-7、204-11~204-15
  • 国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」
  • 国税庁タックスアンサーNo.2505
  • 国税庁タックスアンサーNo.2792
  • 国税庁タックスアンサーNo.2795
  • 国税庁タックスアンサーNo.2798
  • 国税庁タックスアンサーNo.2801
  • 国税庁タックスアンサーNo.2804
  • 国税庁タックスアンサーNo.2807
  • 国税庁質疑応答事例「行政書士に報酬を支払った場合」
  • 国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし」

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