概要
中小企業の社長や個人事業主の方から、
「小規模企業共済とiDeCo(イデコ)は、どちらに入った方がよいですか?」
と聞かれることがあります。
小規模企業共済もiDeCoも、支払った掛金は原則としてその全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。したがって、所得税・住民税の負担を軽減しながら、将来のための資金を積み立てられるという点では共通しています(所法75①②)。
資金に十分な余裕があれば、両方を利用することも有力な選択肢です。
しかし、すべての経営者が両制度に満額を拠出できるわけではありません。
また、「所得控除になるから、できるだけ多く掛ければよい」という考え方も適切とは限りません。
小規模企業共済とiDeCoでは、資金の性格がかなり異なります。
特に中小企業のオーナー社長や個人事業主の場合には、
・節税効果
・将来期待できる運用収益
・インフレへの対応
・事業の資金繰り
・途中で資金が必要になった場合
・退職・廃業時の受取方法
・受取時の所得税
・役員退職金との関係
まで考えて選ぶ必要があります。
この記事では、2026年8月25日現在の制度を前提に、2026年12月1日から施行されるiDeCoの拠出限度額引上げも含めて、小規模企業共済とiDeCoのどちらを優先すべきかを考えます。
この記事でいう「中小企業の社長」
本記事では、主として自社株式を保有し、自ら会社を経営している中小企業のオーナー社長を想定しています。
なお、「中小企業の社長」であれば誰でも小規模企業共済に加入できるわけではありません。
例えば、会社役員の場合、建設業、製造業、運輸業、不動産業などでは常時使用する従業員が20人以下、卸売業・小売業や一定のサービス業では5人以下などの加入要件があります。
したがって、本記事でいう中小企業の社長とは、原則として小規模企業共済の加入資格を満たす会社の代表者をいいます(小規模企業共済法、中小企業基盤整備機構「加入資格」)。
小規模企業共済とiDeCoは、どちらも掛金が全額所得控除になる
まず税金の面では、両制度はよく似ています。
小規模企業共済の掛金とiDeCoの個人型年金加入者掛金はいずれも「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、その年に支払った掛金の全額を所得から控除できます(所法75①②、国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」)。
生命保険料控除のように、支払額に対して所得控除額の上限が設定されているわけではなく、制度上認められた範囲で実際に支払った掛金が原則として全額控除されます。
ただし、所得控除ですから、税金が掛金と同額戻ってくるわけではありません。
実際の節税額は、その人の課税所得や所得税率、住民税率などによって変わります。
また、小規模企業共済もiDeCoも、「掛けるとき非課税、受け取るときも非課税」という制度ではありません。
掛金拠出時には所得控除がありますが、将来受け取る際には、受取方法などに応じて退職所得、雑所得、一時所得などとして課税関係が生じます。
まず両制度の違いを比較
| 項目 | 小規模企業共済 | iDeCo |
|---|---|---|
| 主な目的 | 小規模企業経営者等の退職金準備 | 老後の資産形成 |
| 掛金 | 月1,000円~7万円 | 加入区分等により異なる |
| 掛金の税務 | 全額所得控除 | 全額所得控除 |
| 運用 | 制度に基づいて共済金を算定 | 自分で運用商品を選択 |
| 運用益 | 共済金制度に反映 | 制度内の運用益は非課税 |
| 元本割れリスク | 任意解約ではあり | 運用商品によってあり |
| 原則60歳までの資金拘束 | なし | あり |
| 契約者貸付 | あり | なし |
| インフレ対応 | 相対的に弱い | 運用商品によって対応可能 |
| 一括受取時 | 原則として退職所得となる場合が多いが、任意解約等は異なる | 老齢一時金は退職所得 |
| 年金受取時 | 公的年金等に係る雑所得 | 公的年金等に係る雑所得 |
この表を見ると分かるように、両制度は「節税しながら老後資金を積み立てる制度」という点では似ていますが、実際にはかなり性格が異なります。
小規模企業共済は月7万円まで掛けられる
小規模企業共済の掛金は、月額1,000円から7万円まで、500円単位で設定できます。
したがって、最大では、
月額7万円×12か月=年間84万円
を所得控除できます。
掛金は途中で増額・減額することもできます。
なお、小規模企業共済の掛金は社長個人の所得控除であり、会社の損金となるものではありません(中小企業基盤整備機構「小規模企業共済の掛金」)。
iDeCoの掛金上限は2026年12月から大きく変わる
iDeCoについては、2026年12月1日から拠出限度額が大幅に引き上げられます。
中小企業の社長の場合
企業年金のない会社の社長など国民年金第2号被保険者については、2026年11月までは原則として月額2万3,000円が上限です。
しかし、2026年12月1日からは、企業年金等との共通限度額が月額6万2,000円に引き上げられます。
企業年金のない会社の社長であれば、原則として月額6万2,000円までiDeCoに拠出できることになります。
したがって、小規模企業共済と合わせれば、
小規模企業共済 月7万円
iDeCo 月6万2,000円
合計 月13万2,000円
となり、年間では158万4,000円に達します。
もっとも、企業型DCや確定給付企業年金などがある場合には、その掛金等との関係でiDeCoに拠出できる金額が変わります(確定拠出年金法、確定拠出年金法施行令36、厚生労働省「2025年の制度改正」)。
個人事業主の場合
個人事業主など国民年金第1号被保険者については、2026年11月までは、iDeCoと国民年金基金等を合わせて月額6万8,000円が上限です。
2026年12月1日からは、この共通限度額が月額7万5,000円に引き上げられます。
国民年金基金等を利用していない個人事業主であれば、小規模企業共済と合わせて最大で、
小規模企業共済 月7万円
iDeCo 月7万5,000円
合計 月14万5,000円
となり、年間174万円となります。
2026年12月以後は、これまで以上に「控除できるのだから満額掛けよう」と考えたくなる制度になります。
しかし、年間150万円を超える金額を老後資金等として積み立てることが、本当にその経営者にとって最適なのかは別問題です。
利回りだけを考えればiDeCoなのか
iDeCoには定期預金などの元本確保型商品だけでなく、国内外の株式や債券等に投資する投資信託などがあります。
例えば、長期的に世界株式等に分散投資し、その運用が順調に推移すれば、小規模企業共済を上回る収益を得られる可能性があります。
さらに、iDeCoの制度内で生じた運用益には、運用中は原則として所得税・住民税が課税されません。
この点は長期運用では大きなメリットです(厚生労働省「iDeCoの概要」)。
ただし、「iDeCoの方が利回りが高い」と断定することはできません。
iDeCoは制度そのものに一定の利回りがあるのではなく、加入者自身が運用商品を選択します。
株式投資信託を選べば大きく値上がりすることもありますが、大きく値下がりすることもあります。
逆に、元本確保型の商品だけを選択すれば、期待できる収益は低くなる可能性があります。
つまり、正確には、
「iDeCoでは、価格変動リスクを負うことによって、小規模企業共済より高い運用収益を目指すことができる」
ということになります。
小規模企業共済の「予定利率1%」の意味には注意
小規模企業共済については、現在の予定利率は1.0%とされています。
しかし、これは銀行預金のように、支払った掛金の残高に毎年1%の利息がそのまま付くという意味ではありません。
小規模企業共済の共済金は、「基本共済金」と、毎年度の運用収入等に応じて算定される「付加共済金」によって構成されています。
基本共済金について、中小企業基盤整備機構は、共済金Aについては概ね25年目までは掛金を約1.5%で複利運用した元利合計額に見合う水準、共済金Bについては概ね1.0%で複利運用した元利合計額に見合う水準と説明しています。
したがって、「小規模企業共済は利回り1%の商品」と単純に考えるのも正確ではありません(中小企業基盤整備機構「共済金の額の算定方法」)。
インフレが続く場合、小規模企業共済だけでよいのか
今後の資産形成を考えるうえで、もう一つ考えておきたいのがインフレです。
仮に物価が毎年2%ずつ上昇すると、20年後の100万円の実質的な購買力は、現在価値に換算すれば約67万円です。
毎年3%なら約55万円です。
もちろん、将来の物価上昇率が何%になるかを正確に予想することはできません。
しかし、老後まで20年、30年という時間がある人の場合、預金や低い名目収益しか期待できない資産だけを持つことは、それ自体がインフレリスクを負うことになります。
その意味では、株式などの成長資産を組み入れることのできるiDeCoには、小規模企業共済にはないメリットがあります。
ただし、株式が必ずインフレ率以上に上昇するという保証はありません。
iDeCoを利用する場合には、インフレリスクを抑えるために価格変動リスクを引き受ける、という側面があることも理解しておく必要があります。
それでも小規模企業共済には大きな強みがある
では、長期の期待収益を考えてiDeCoを優先すればよいのでしょうか。
中小企業の社長や個人事業主の場合、そう単純ではありません。
小規模企業共済には、iDeCoにはない非常に重要な制度があります。
それが「契約者貸付制度」です。
小規模企業共済は、いざというときに借入れができる
小規模企業共済の一般貸付制度では、一定の要件を満たせば、納付した掛金から算定した貸付限度額の範囲内で資金を借りることができます。
一般貸付の貸付限度額は、掛金納付月数などに応じて、原則として掛金の7割から9割の範囲で、10万円以上2,000万円以内です。
2026年8月現在の一般貸付の利率は年1.5%で、担保・保証人は不要です。
加入後、貸付資格判定時までに12か月以上掛金を納付していることなどの要件はありますが、申込みは随時受け付けられています。
さらに、売上減少によって資金繰りが著しく困難となった場合の「緊急経営安定貸付け」など、一定の場合には年0.9%の特別貸付制度もあります(中小企業基盤整備機構「契約者貸付の概要」)。
これは中小企業の経営者にとって非常に大きな意味があります。
iDeCoの500万円は会社が苦しくなっても原則使えない
例えば、オーナー社長がiDeCoで500万円の資産を持っていたとします。
会社の売上が急減し、
「あと300万円あれば資金繰りを乗り切れる」
という状況になったとしても、iDeCoの資産を自由に引き出して会社へ貸すことは原則としてできません。
iDeCoは老後資金形成のための制度であるため、原則として60歳になるまで資産を引き出すことができないからです(確定拠出年金法、iDeCo公式サイト「iDeCoの特徴」)。
一方、小規模企業共済で相応の掛金を積み立てていれば、貸付資格や貸付限度額の範囲内ではありますが、その積立実績を背景として資金を借りられる可能性があります。
したがって、小規模企業共済は単なる老後資金ではなく、
「経営者の退職金準備+所得控除+非常時の資金調達手段」
という性格を持っています。
これは、サラリーマンと異なり、自ら事業リスクを負っているオーナー社長や個人事業主にとって大きなメリットです。
小規模企業共済も自由に解約すればよいわけではない
もっとも、「小規模企業共済なら必要になれば解約すればよい」と考えるのも危険です。
任意解約の場合、掛金納付月数が12か月未満であれば解約手当金は支給されません。
また、240か月、つまり20年未満で任意解約すると、解約手当金は掛金合計額を下回ります。
さらに、加入期間全体が20年以上であっても、途中で掛金を増額・減額している場合には、掛金区分ごとの納付月数によって、任意解約時の受取額が掛金合計額を下回ることがあります(小規模企業共済法施行令別表第二、中小企業基盤整備機構「解約手当金の額の算定方法」)。
したがって、資金繰りへの備えとして考える場合も、「必要になったら解約する」のではなく、「できるだけ共済契約を維持し、必要な場合には契約者貸付を利用する」という考え方が基本になります。
受け取るときの税金も両制度で重要
小規模企業共済もiDeCoも、掛金を支払ったときには所得控除があります。
しかし、受取時には課税関係が生じます。
小規模企業共済
小規模企業共済について、廃業や会社の解散、一定の役員退任などによる共済金を一括で受け取る場合には、原則として退職所得として取り扱われます。
分割で受け取る共済金は、公的年金等に係る雑所得として取り扱われます。
注意が必要なのは任意解約です。
65歳以上で任意解約した場合には退職所得ですが、65歳未満で任意解約した場合の解約手当金は一時所得となります(所法31③、34、小規模企業共済法、中小企業基盤整備機構「共済金等請求・解約」)。
iDeCo
iDeCoについても、老齢給付金を一時金で受け取れば退職所得となり、年金で受け取れば公的年金等に係る雑所得となります。
したがって、両制度とも、「掛金を払った年の節税額」だけでなく、「将来どのように受け取るか」まで考える必要があります。
オーナー社長は役員退職金との関係が特に重要
中小企業のオーナー社長の場合、個人事業主とは異なる重要な問題があります。
会社から役員退職金を受け取る可能性があることです。
そのため、将来、
・会社からの役員退職金
・小規模企業共済の一括受取
・iDeCoの老齢一時金
という3種類の退職所得を受け取る可能性があります。
ここで重要になるのが退職所得控除の重複調整です。
2026年からiDeCo一時金と他の退職金の「9年ルール」に注意
2026年1月1日から退職所得課税のルールが改正されています。
iDeCoの老齢一時金を先に受け取り、その後に会社からの役員退職金や退職所得となる小規模企業共済の共済金などを受け取る場合、後の退職手当等を受け取る年の前年以前9年内にiDeCoの老齢一時金を受け取っていると、勤続期間等が重複する部分について退職所得控除額の調整が行われることがあります。
従来より調整対象となる期間が長くなりました(国税庁「令和7年度の税制改正により、令和8年以後適用されるもの」、所令70等)。
したがって、オーナー社長については、「小規模企業共済とiDeCoのどちらが節税になるか」だけでは不十分で、役員退職金を含めて、何歳で何を受け取るかという出口戦略まで考える必要があります。
中小企業のオーナー社長はどちらを優先すべきか
では、中小企業のオーナー社長の場合、どちらを優先すべきでしょうか。
一律の答えはありません。
資金繰りへの備えを重視するなら小規模企業共済
会社の業績変動が大きい、取引先の倒産リスクがある、銀行借入に余裕がない、といった場合には、小規模企業共済の契約者貸付制度は大きな意味を持ちます。
特に中小企業の場合、「業績のよいときには銀行がお金を貸してくれるが、本当に苦しくなったときには貸してくれない」ということもあります。
その意味では、小規模企業共済に積み立てておくことは、老後資金準備だけでなく、将来の資金調達余力を作ることにもつながります。
長期の資産形成・インフレ対応を重視するならiDeCo
一方、会社・個人とも十分な現預金があり、事業の資金繰りにも余裕があるのであれば、iDeCoを利用して株式等を含む長期分散投資を行う意味は大きくなります。
特に老後まで20年、30年という期間がある若い経営者の場合には、インフレによる購買力低下も考える必要があります。
オーナー社長は役員退職金も含めて考える
さらに、オーナー社長の場合には、将来会社からいくら役員退職金を受け取る予定なのかも重要です。
多額の役員退職金が見込まれる人が、iDeCoと小規模企業共済もすべて一時金で受け取る場合には、退職所得控除の重複調整まで検討する必要があります。
したがって、オーナー社長の場合は、「現在の所得税をいくら減らせるか」ではなく、「会社と個人を合わせた生涯のキャッシュフローと税負担」で考えるべきです。
個人事業主はどちらを優先すべきか
個人事業主は、オーナー社長とは事情が少し異なります。
法人から役員退職金を受け取るという選択肢がないからです。
そのため、小規模企業共済は個人事業主自身の「退職金」として、より重要な意味を持ちます。
例えば、将来事業を廃業したときに一括で共済金を受け取れば、一定の場合には退職所得として取り扱われます。
一方、長期的な資産形成という面では、iDeCoも有力です。
したがって、個人事業主についても、
・事業の資金繰りが不安定
→小規模企業共済の重要性が高い
・十分な預貯金があり、老後まで長期間ある
→iDeCoによる長期運用の重要性が高い
という考え方ができます。
「両方満額」が必ず一番よいわけではない
小規模企業共済とiDeCoは、税制上非常に有利な制度です。
そのため、「余裕があるなら両方満額掛けるのが一番得」と思われるかもしれません。
しかし、必ずしもそうとは限りません。
例えば、2026年12月以後、企業年金のないオーナー社長なら、小規模企業共済とiDeCoだけで年間158万4,000円を拠出できます。
個人事業主であれば、条件によっては年間174万円です。
毎年これだけの資金を長期的な制度に入れた結果、
・会社の運転資金が不足した
・個人の生活防衛資金がなくなった
・高い金利で借入れをすることになった
・住宅取得や教育資金に使えるお金がなくなった
ということであれば、本末転倒です。
特にiDeCoは原則60歳まで引き出せません。
所得税を減らすために資金を拠出し、その結果として資金繰りに困って高金利の借入れをするのであれば、節税メリットが消えてしまう可能性もあります。
NISAも含めて考える
小規模企業共済とiDeCoを比較する場合、NISAも無視できません。
NISAには掛金の所得控除はありません。
したがって、積み立てた年に所得税や住民税が安くなるわけではありません。
しかし、NISA口座内で生じた一定の運用益は非課税であり、保有商品は必要に応じて売却できます。
この流動性は、原則60歳まで引き出せないiDeCoとの大きな違いです(金融庁「NISAを知る」)。
そのため、
小規模企業共済
=退職金+資金繰りへの備え
iDeCo
=税制優遇を受けながら老後まで長期運用する資金
NISA
=運用しながら必要に応じて換金できる資金
現預金
=事業・生活上いつでも使える資金
というように、役割を分けて考える方法があります。
税理士として考える小規模企業共済とiDeCoの選び方
私自身は、小規模企業共済とiDeCoについて、「どちらの節税額が大きいか」だけで選ぶべきではないと考えています。
両制度とも、拠出した掛金が所得控除になるという入口部分はよく似ています。
しかし、その後の性格が全く違うからです。
経営者のお金を大きく分けると、
①事業や生活でいつでも使えるお金
②万一のときの資金繰りにも利用できるお金
③60歳まで使わなくてもよい老後資金
④インフレに負けないよう長期運用するお金
に分けることができます。
このうち、
小規模企業共済は②と退職金準備、
iDeCoは③④、
NISAは①と④の中間、
現預金は①、
というように、それぞれ役割が異なります。
節税制度を選ぶのではなく、「自分のお金にどの役割を持たせるのか」を先に考えることが重要です。
本人以外の掛金を払っても自分の所得控除にはならない
なお、小規模企業共済等掛金控除については、掛金の負担者にも注意が必要です。
過去の公表裁決では、個人事業主が青色事業専従者を共済契約者とする小規模企業共済掛金を支払っていたとしても、その個人事業主自身の小規模企業共済等掛金控除の対象にはならないと判断されています。
所得税法75条の控除は、原則として自己が契約した共済契約に基づく掛金について認められるものだからです(平成15年1月28日裁決・裁事65集268頁)。
まとめ
小規模企業共済とiDeCoは、どちらも優れた税制優遇制度です。
しかし、「どちらも所得控除になるから、利回りの高そうなiDeCoを選ぶ」という考え方だけでは不十分です。
iDeCoは、投資商品によっては高い収益を目指すことができ、インフレへの対応という点でも魅力があります。
一方で、原則60歳まで資金を引き出せません。
小規模企業共済は、高い運用収益を追求する制度ではありませんが、一定の要件のもと契約者貸付を利用できるという、経営者にとって大きな特徴があります。
また、オーナー社長の場合には、会社からの役員退職金、小規模企業共済、iDeCo一時金という複数の退職所得が将来発生する可能性があります。
そのため、
中小企業のオーナー社長は「会社の資金繰り+個人の資産形成+役員退職金」まで含めて考える。
個人事業主は、
「事業資金への備え+自分自身の退職金+長期資産形成」を組み合わせて考える。
これが小規模企業共済とiDeCoを選ぶ際の基本だと思います。
2026年12月からiDeCoの拠出限度額が大きく引き上げられるため、今後は「どこまで所得控除を使えるか」以上に、「老後まで拘束する資金をどこまで増やすのか」が重要になります。
小規模企業共済、iDeCo、NISA、預貯金、そしてオーナー社長の場合には役員退職金まで含めて、全体としてバランスを考えることが大切です。
主な根拠資料
・所得税法75条(小規模企業共済等掛金控除)
・所得税法31条、34条
・小規模企業共済法、小規模企業共済法施行令
・確定拠出年金法、確定拠出年金法施行令
・国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」
・国税庁「令和7年度の税制改正により、令和8年以後適用されるもの」
・厚生労働省「iDeCoの概要」
・厚生労働省「2025年の制度改正」
・中小企業基盤整備機構「小規模企業共済の掛金」
・中小企業基盤整備機構「契約者貸付の概要」
・中小企業基盤整備機構「共済金の額の算定方法」
・中小企業基盤整備機構「解約手当金の額の算定方法」
・金融庁「NISAを知る」
・平成15年1月28日裁決(裁事65集268頁)
