概要
簡易課税制度を適用している課税事業者が、事業に使用していた車、機械、建物などを売却した場合、その売却は、本業の種類にかかわらず第四種事業に区分します(消令57⑤六、消基通13-2-9)。
消費税の対象となるのは、売却による利益ではなく、原則として売却金額です。標準税率10%の取引について、第四種事業のみなし仕入率60%で計算する場合、その売却に対応する消費税・地方消費税の納付税額は、原則として税抜売却金額の4%相当となります(消法28①、37①一、消令57②四)。
ただし、土地などの非課税資産の売却や、事業に使用せず商品として転売した場合まで、すべて第四種事業になるわけではありません。まず課税取引かどうかを確認し、その上で売却した資産の取得目的や使用状況から事業区分を判断します。
以下では、2026年10月15日現在の制度に基づき、国内で行う固定資産等の売却と、転売・贈与などの注意点を解説します。
事業に使用していた固定資産の売却は第四種事業
簡易課税の事業区分は、会社や個人事業者の本業だけで一括して決めるものではなく、原則として、課税資産の譲渡等ごとに判定します(消基通13-2-1)。
そのため、卸売業者が商品を販売した場合と、営業に使っていた車を売却した場合では、適用する事業区分が異なります。商品の卸売は第一種事業ですが、営業車の売却は第四種事業です(消令57⑤一・六、⑥、消基通13-2-9)。
| 売却の例 | 固定資産の売却に係る事業区分 |
|---|---|
| 卸売業者が使用していた配送用トラックを売却 | 第四種事業 |
| 小売店が使用していた店舗設備を売却 | 第四種事業 |
| 製造業者が使用していた工作機械を売却 | 第四種事業 |
| 不動産賃貸業者が賃貸に使用していた建物を売却 | 第四種事業 |
これらは、国内の課税取引に該当し、売却した資産を自己の事業に使用していた場合の例です。売却先が中古車販売業者や不動産業者などの事業者であっても、自己使用していた固定資産の売却が、それだけで第一種事業になることはありません。
建物や車だけでなく、無形固定資産なども含まれる
対象となる固定資産等には、建物、建物附属設備、構築物、機械装置、車両、工具器具備品などのほか、無形固定資産やゴルフ場利用株式等も含まれます(国税庁「簡易課税制度の事業区分」Q2、消基通13-2-9)。
例えば、法人が事業用に使用していたゴルフ会員権を売却した場合も、第四種事業に該当します。株式形態・預託金形態のゴルフ会員権は、通常の株式や金銭債権とは異なり、有価証券等の譲渡に係る非課税の対象から除かれているためです(消法6①・別表第二二、消令9、消基通6-2-2、国税庁「ゴルフ会員権」)。
土地や借地権の売却は非課税
土地や借地権などの土地の上に存する権利の譲渡は、原則として非課税です。固定資産として事業に使用していたとしても、第四種事業の課税売上げには含めません(消法6①・別表第二一)。
土地と建物を一括して売却した場合は、土地部分と建物部分の対価を合理的に区分し、建物部分について事業区分を判定します(消令45③、消基通10-1-5、13-2-9)。
また、個人事業者が生活用の自家用車などを売却する場合は、そもそも「事業として」の取引に該当するかを確認する必要があります。私生活用の資産の売却は、事業用固定資産の売却とは取扱いが異なります(消基通5-1-1注1、5-1-8)。
売却損が出ても、原則として売却代金を課税売上げに含める
消費税は、原則として、固定資産の売却益ではなく、売却の対価を基礎として計算します。帳簿上、固定資産売却益や固定資産売却損だけを損益計算書に計上している場合でも、消費税の課税売上高をその損益の金額で計算するものではありません(消法28①)。
例えば、帳簿価額120万円の機械を税抜100万円で売却し、20万円の売却損が生じたとしても、原則として税抜100万円を第四種事業の課税売上高に含めます。役員への著しい低額譲渡など、時価による計算が必要になる場合は別途確認が必要です(消法28①)。
車などを買い替える際に下取りに出した場合も、旧資産の譲渡と新資産の購入は、それぞれ別の取引です。購入代金から下取額を差し引いた支払額だけで処理して、旧資産の課税売上げを落とさないよう注意します(消基通10-1-17)。
第四種事業なら、納付税額は原則として税抜売却金額の4%
固定資産の売却が第四種事業に該当し、標準税率10%・みなし仕入率60%で計算する場合、その売却に対応する消費税・地方消費税の納付税額は、原則として税抜売却金額の4%相当となります(消法37①一、消令57②四)。
計算は「税抜売却金額×10%×(1-60%)=税抜売却金額×4%」です。売却時の税率が4%になるのではなく、10%の消費税等から、みなし仕入率による控除額を差し引いた結果が4%相当になります。
税抜100万円で売却した場合の計算例
帳簿価額80万円の機械を税抜100万円(税込110万円)で売却したとします。売却益は20万円ですが、計算の基礎となるのは税抜売却金額100万円です。
| 項目 | 計算・金額 |
|---|---|
| 税抜売却金額 | 100万円 |
| 売却益 | 100万円-80万円=20万円 |
| 売上げに係る消費税等 | 100万円×10%=10万円 |
| みなし仕入率による控除額相当 | 10万円×60%=6万円 |
| この売却に対応する納付税額 | 10万円-6万円=4万円 |
売却益20万円の4%である8,000円ではなく、税抜売却金額100万円の4%である40,000円が、この売却に対応する納付税額となります。帳簿価額120万円で20万円の売却損が生じる場合も、税抜売却金額が100万円であれば、同じ計算となります。
上記の4%は、消費税と地方消費税の合計です。国税相当額は100万円×7.8%×40%=31,200円、地方消費税相当額は31,200円×22/78=8,800円となります。実際の申告では課税期間全体で計算し、端数処理や中間納付等を反映します(国税庁「消費税および地方消費税の税率」)。
固定資産の帳簿価額や、実際に支払った売却手数料を、その売却に係る消費税額から別途控除する計算ではありません(消法37①)。
75%以上の場合の特例計算では4%と異なることがある
2種類以上の事業を営み、そのうち1種類の事業に係る課税売上高が全体の75%以上を占める場合は、その事業のみなし仕入率を全体に適用できる特例があります(消令57③一)。
例えば、第一種事業の課税売上高が全体の75%以上であれば、特例を用いて、固定資産売却を含む全体に90%のみなし仕入率を適用できる場合があります。この場合、売却自体の事業区分は第四種事業ですが、納付税額は上記の4%による計算とは異なります。
また、3種類以上の事業を営む場合には、特定の2種類の事業に係る課税売上高の合計が全体の75%以上となる場合の特例もあります(消令57③二)。
事業に使用せず転売した場合は第一種・第二種事業となることがある
自己の事業に使用していた固定資産の売却と、商品として取得した資産の転売は区別します。
他の者から購入した商品を、その性質・形状を変更しないで販売する場合は、事業者への販売は第一種事業、消費者への販売は第二種事業の小売業に該当します(消令57⑤一・二イ、⑥)。
建物についても、自らが施主となって建築させたものではなく、他の者が建築した建物を購入してそのまま販売する場合は、第一種事業又は第二種事業となります。一方、自ら建築した建物の販売などは別の判定が必要です(消基通13-2-4注2)。
したがって、資産の種類が建物や車であることや、帳簿上の勘定科目だけで、第四種事業かどうかを決めることはできません。取得目的、自己使用の有無、販売までの経緯、加工の内容、販売先などを確認します。
建物の転売を第一種事業とした平成18年12月13日裁決
平成18年12月13日裁決では、人形卸売業を営む法人による建物の譲渡が、第一種事業に該当するか、第四種事業に該当するかが問題となりました。
この法人は、当初、不動産を賃貸する目的で取得契約をしましたが、資金調達ができなかったため転売することになり、平成15年10月29日に不動産を取得し、同日に譲渡したと認定されました。受領した利益相当額を預り金として処理していましたが、その処理は認められませんでした。
建物の事業区分について、原処分庁は固定資産の譲渡として第四種事業としました。しかし、審判所は、転売目的で取得・譲渡され、譲渡先が宅地建物取引業者であり、建物が取得時の現状のまま譲渡されていたことから、第一種事業に該当し、みなし仕入率は90%であると判断しました。これにより、消費税・地方消費税の更正処分等の一部が取り消されています(平成18年12月13日裁決・関裁〔法・諸〕平18第34号)。
この裁決は、「同じ日に売れば第一種事業になる」という基準を示したものではありません。本件では、転売目的、取得後の使用・加工の状況、譲渡先などの具体的事実が判断の基礎となっています。自己の事業で使用していた建物を売却する場合に、そのまま当てはめることはできません。
贈与や家事使用は、まず課税対象になるかを確認する
固定資産を無償で譲り渡した場合に、常に第四種事業の課税売上げが生じるわけではありません。対価のない単純な贈与は、原則として消費税の課税対象外です(消法2①八、消基通5-1-2、5-1-5注)。
ただし、法人が資産をその役員に贈与した場合や、個人事業者が事業用資産を家事のために消費・使用した場合は、対価を得て行った資産の譲渡とみなされます(消法4⑤)。
| 行為 | 消費税の基本的な取扱い |
|---|---|
| 法人が役員以外へ行う、負担や反対給付のない単純な贈与 | 原則として課税対象外 |
| 法人が役員へ事業用の車などを贈与 | みなし譲渡として課税対象 |
| 個人事業者が事業用の車などを家事用に転用 | みなし譲渡として課税対象 |
| 負担付き贈与 | 対価を得て行う資産の譲渡に該当 |
みなし譲渡に該当する場合、自己において使用していた課税対象の固定資産等については、第四種事業として扱い、原則としてその時の時価を基礎に計算します。負担付き贈与については、負担の内容などから対価の額を確認します(消法4⑤、28③、消令2①一、消基通13-2-9)。
不要になった段ボールや加工くずとの違い
卸売業や小売業から生じた不要な段ボールなどの譲渡は、原則として第四種事業に該当します。ただし、それらが生じた事業区分に属するものとして処理しているときは、その処理が認められます(消基通13-2-8)。
この簡便な取扱いからは、事業の用に供していた固定資産等が明確に除かれています。そのため、例えば、卸売業者が使用していた配送用トラックを売却する場合に、段ボールと同様に第一種事業として処理することはできません(消基通13-2-8、13-2-9)。
また、第三種事業に該当する製造業等の事業に伴って生じた加工くずや副産物等の譲渡は、第三種事業に該当します。不要物の売却を一律に第四種事業とするのも適切ではありません(消基通13-2-8)。
申告では本業の売上げと固定資産の売却を区分する
固定資産の売却があった場合は、帳簿や売買契約書、請求書などから、本業の売上げと固定資産売却の内容・金額を区分できるようにします。複数の事業区分に係る売上げを区分していない部分には、その区分していない事業のうち最も低いみなし仕入率が適用されます(消令57④、消基通13-3-1)。
また、固定資産売却に係る課税売上げも、簡易課税の適用判定に用いる基準期間の課税売上高に含まれます。売却した年の課税売上高が5,000万円を超えたことだけで、その年の簡易課税が直ちに使えなくなるものではありませんが、その年が基準期間となる課税期間の判定に影響します(消法9②、37①)。
簡易課税の事業区分全般については、関連記事「消費税における簡易課税制度の事業区分」もご参照ください。
主な根拠資料・参考資料
- 消法2①八、4⑤、6①、28①・③、37①、別表第二一・二、消令2①一、57②~⑥
- 国税庁「消費税法基本通達・第13章第2節」(13-2-1、13-2-4、13-2-8、13-2-9)
- 国税庁「簡易課税制度の事業区分」Q1・Q2
- 国税庁「簡易課税制度」
- 国税庁「法人の役員に対する贈与・低額譲渡の取扱い」
- 『令和6年版消費税法基本通達逐条解説』790~791頁(消基通13-2-8関係)、793~794頁(消基通13-2-9関係)
- 大阪国税局・国税内部資料『個人課税関係誤りやすい事例(消費税法関係)〔令和7年版〕』113頁・事例56
- 平成18年12月13日裁決(関裁〔法・諸〕平18第34号)
消費税法基本通達
13-2-8(廃材(品)、加工くず等の売却収入の事業区分)
第三種事業に該当する製造業等に係る事業に伴い生じた加工くず、副産物等の譲渡を行う事業は、第三種事業に該当するのであるから留意する。
なお、第一種事業又は第二種事業のうち小売業から生じた段ボール等の不要物品等(当該事業者が事業の用に供していた固定資産等を除く。以下13-2-8において「不要物品等」という。)の譲渡を行う事業は、第四種事業に該当するのであるが、当該事業者が当該不要物品等が生じた事業区分に属するものとして処理しているときには、これを認める。
13-2-9(固定資産等の売却収入の事業区分)
事業者が自己において使用していた固定資産等の譲渡を行う事業は、第四種事業に該当するのであるから留意する。
転売目的で固定資産等を取得し、性質及び形状を変更しないで他の事業者に販売した場合には、第四種事業に該当しないとされた事例-平成18年12月13日裁決(関裁(法・諸)平18第34号)(一部取消し)
(1)事案の概要
本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 審査請求人Xは、人形卸売業を営む同族会社(法人税法2条《定義》10号)であった。
Xは、簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した届出書を平成12年6月21日に原処分庁に提出した。
② Xは、いくつかの不動産(以下「本件各不動産」といい、これらのうち各建物を「本件各建物」という。)を賃貸する目的で取得契約をしたものの、資金の調達ができなかったことから、転売する(転売先は宅地建物取引業を営む事業者)こととし、取得日と同日である平成15年10月29日(以下「本件取引日」という。)にこれらの譲渡代金等及び取得代金その他の費用の精算が行われた。
Xは、本件各不動産の取引に関し受領した金員2,304万円余(以下「本件金員」という。)を平成15年5月1日から平成16年4月30日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)において「預り金」勘定に計上した。
③ 原処分庁は、Xが、本件各不動産を、取得し、譲渡したものであるとし、本件金員は、同譲渡に係る精算金で、これにより生じた利益相当額を受領したものであるなどとして、法人税の、また、本件各建物の譲渡は、課税資産の譲渡で、固定資産の譲渡であるから、第四種事業(消費税法施行令57条5項5号)に当たるとして消費税等の、それぞれ各更正処分等を行った。
④ Xがその全部の取消しを求めた。
(2)本件の主な争点
(争点1) 本件取引日において、本件各不動産の取得及び譲渡があったか否かである。
(争点2) 本件各建物の譲渡は消費税法の簡易課税制度において、第一種事業、第四種事業のどちらなのかである。
(3)判断要旨(一部取消し)
(争点1)
① Xは、本件各不動産を賃貸する目的で取得契約をしたものの、資金の調達ができなかったことから、転売することとし、本件取引日にこれらの譲渡代金等及び取得代金その他の費用の精算が行われたもので、本件金員は、Xの各不動産の譲渡による利益相当額として、受領したと見るのが相当であって、Xは、本件取引日に不動産を取得し、同日、これらを譲渡したというべきである。
(争点2)
② 原処分庁は、本件各建物の譲渡は固定資産の譲渡であるから、同譲渡は第四種事業に当たる旨主張するが、Xは、転売目的で本件各建物をその取引日に取得し、かつ、譲渡したものであり、さらに、当審判所の調査の結果によれば、譲渡先は宅地建物取引業を営む事業者で、本件各建物は取得時の現状のまま同社に譲渡されたことから、本件各建物の譲渡は、卸売業というべき「他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業」(消費税法施行令57条6項)に当たり、第一種事業に該当するから、同譲渡に係るみなし仕入率は100分の90である。
