概要
消費税の簡易課税制度において、課税売上高が事業の種類ごとに区分されていない場合には、その区分されていない課税売上高は、その課税期間の事業のうちの最も低いみなし仕入率の事業の課税売上高として、消費税額の計算を行うものとされています(消令57④)。
例えば、以下のようになります。
| 区分されていない事業 | 事業の判定 | 適用みなし仕入率 |
|---|---|---|
| 第一種事業と第二種事業 | 第二種事業 | 80% |
| 第一種事業又は第二種事業と第三種事業 | 第三種事業 | 70% |
| 第一種事業、第二種事業又は第三種事業と第四種事業 | 第四種事業 | 60% |
| 第一種事業、第二種事業、第三種事業又は第四種事業と第五種事業 | 第五種事業 | 50% |
つまり、事業の種類ごとに区分されていない場合には、区分されている場合と比べて、消費税の納税額が増えてしまうということになります。
よって、2種類以上の事業を営んでいて、簡易課税を選択している場合、日々の帳簿づけの段階で、請求書、納品書や帳簿(総勘定元帳)に「第〇種事業の売上」等のように明確に区分して記録しておくことが、最大の防御となります。
なお、複数の事業を行っている事業者が、その事業のうちの一種類の事業の課税売上高のみを区分していない場合は、課税売上高の総額から区分されている課税売上高を控除したその残額は区分されていない事業の課税売上高とすることができます。
例えば、第一種事業から第三種事業までの事業者を行う者が、第一種事業と第二種事業の課税売上高を区分している場合には、残りの課税売上高は第三種事業の課税売上高に区分しているということになります(消基通13-3-2)。
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最大の注意点
帳簿等で明確に事業の種類ごとに区分して記録する必要がありますが、最大の注意点は、事業者が区分している事業の種類の判断が正しいのかということです。
例えば、事業者が自分が営んでいる事業は第一種事業のみであると認識していて申告していたが、税務調査が入り、第一種事業ではなく、第二種事業及び第五種事業に該当すると指摘されたとします。
この場合、事業者は第一種事業のみであると認識していたため、通常、帳簿等において事業の種類ごと(第二種事業及び第五種事業)に区分していないでしょう。
結果、区分されていないということになり、事業のうちの最も低いみなし仕入率である第五種事業で消費税の納税金額が計算されてしまうということです。
理不尽とも言え、この点につき、平成23年6月30日裁決(裁事83集)において、納税者(審査請求人)は以下のように主張しました。
「本件事業は、第一種事業のみに該当し、本件各付随事業は、取引先ごとに区分されているので、本件事業等の各種事業に係る課税資産の譲渡等について、該当する事業の種類ごとに区分していないものはなかった。そもそも、有価物のすべてを業者に販売しているという認識である以上、複数の事業区分などあり得ようもなく、区分経理をしていないことを理由に高率の課税を行うことは、租税法律主義に違反する。」
これに対し、裁決は以下のように判断して、納税者の主張を切って捨てました。
「本件事業等の各種事業に係る課税売上高について、一部を除き、区分することができるものがあったとは認められないから、該当する事業の種類ごとに区分をしていないものがあったと認めるのが相当であり、請求人が複数の事業区分となることを認識しておらず、本件事業等の事業区分を第一種事業のみであるとして区分経理をしていなかったということを理由に、事業の種類ごとに区分していなかったとするものではない。また、事業の種類ごとに区分していなかった場合には、消費税法37条1項及びこれを受けた消費税法施行令57条4項の規定に基づき適用される事業区分によることとなるのは、まさしく租税法律主義の要請に基づくものである。したがって、請求人の主張には理由がない。」
つまり、大前提として、事業者は自分が営んでいる事業が、何種に該当するかの判断を誤ってはいけないということになります。
もっとも、事業によっては、この判断が難しいというのが悩ましいところでしょう。
消費税基本通達
13-3-1(事業の種類が区分されているかどうかの判定)
第一種事業から第六種事業のうち二以上の種類の事業を行っている事業者は、令第57条第2項又は第3項《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》の規定の適用に当たって課税資産の譲渡等につきこれらの事業の種類ごとに区分しなければならないが、この場合の区分方法としては、当該事業者の帳簿に事業の種類を記帳する方法のほか、次の方法によることとしても差し支えない。
(1) 取引の原始帳票等である納品書、請求書、売上伝票又はレジペーパー等に事業の種類又は事業の種類が区分できる資産の譲渡等の内容を記載する方法
(2) 事業場ごとに一の種類の事業のみを行っている事業者にあっては、当該事業場ごとに区分する方法
13-3-2(事業の種類の判定方法)
第一種事業から第六種事業までのうちいずれの事業に係るものであるかの区分は、課税資産の譲渡等ごとに行うのであるが、第一種事業から第六種事業のうち二以上の種類の事業を行っている事業者が、当該二以上の種類の事業のうち一の種類の事業に係る課税売上げのみを区分していない場合には、当該課税期間における課税売上高(令第57条第3項第1号《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》に規定する当該課税期間における課税売上高をいう。以下13-4-2までにおいて同じ。)から事業の種類を区分している事業に係る課税売上高の合計額を控除した残額を、当該区分していない種類の事業に係る課税売上高として取り扱って差し支えない。
例えば、第一種事業、第二種事業及び第三種事業を行っている事業者が、帳簿上、第一種事業と第二種事業に係る課税売上げを区分している場合には、区分していない残りの課税売上げは第三種事業として区分しているものとして取り扱うこととなる。
納税者が複数の事業をしていたが、各種事業に係る課税売上高について、該当する事業の種類ごとに区分をしていないとされた事例-平成23年6月30日裁決(裁事83集)
(1)事案の概要
本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 廃油回収業を営む審査請求人Xは、X及びH社の各契約先である各事業者が排出する動植物廃油を収集し(以下、Xが収集した廃油を「本件廃油」という。)、原則として、Xの契約先の廃油をJ社及びK社(以下、H社及びJ社と併せて「本件再生業者等」という。)に、H社の契約先の本件廃油をH社に、それぞれ販売する事業(以下「本件事業」という。)を行っており、ほかに、排出事業者の廃油用タンクを管理する事業及びバイオディーゼル燃料をK社へ販売する事業(以下、これらの各事業を併せて「本件各付随事業」といい、本件事業と併せて「本件事業等」という。)を行っていた。
② Xは、平成18年1月1日から平成18年12月31日まで、平成19年1月1日から平成19年12月31日まで及び平成20年1月1日から平成20年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成18年課税期間」、「平成19年課税期間」及び「平成20年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の当該廃油回収業はすべて消費税法37条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》1項及び消費税法施行令57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》1項に規定する第一種事業に該当するとして、課税仕入れに係る消費税額の控除額(以下「控除対象仕入税額」という。)を算定し、消費税等の申告をした。
③ これに対し、原処分庁は、当該廃油回収業は同法37条1項及び同施行令57条5項に規定する第一種事業、第四種事業及び第五種事業に該当するとして、控除対象仕入税額を算定し更正処分等を行った。
④ Xが、その全部の取消しを求めた。
(2)本件の主な争点
①(争点1)
本件事業の課税資産の譲渡等に係る取引は、消費税法施行令57条5項に規定するいずれの事業に該当するかである。
②(争点2)
(仮に、本件事業が消費税法施行令57条5項に規定する第一種事業以外の事業区分に該当するとされた場合に、)本件事業等の各種事業に係る課税売上高について、該当する事業の種類ごとに区分をしていないものがあったか否かである。
(3)判断要旨(棄却)
(争点1)
① Xは、廃油の回収形態(有償、無償及び処分料を受領の別)にとらわれず、物(廃油)の流れを重要視して事業区分を判断すべきであり、回収した廃油をそのままの状態で販売していることから、当該廃油を事業者に販売する本件事業は卸売業に該当する旨主張する。
しかしながら、Xの売上げに係る取引の形態に応じて事業区分を判断すると、本件事業のうち、処分料を徴して廃油を収集する取引及び廃油の収集・運搬業務の委託取引は、消費税法施行令57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》5項に規定する第五種事業に、無償又は処分料を徴して収集した廃油を販売する取引は、同項に規定する第四種事業に該当する。
(争点2)
② 消費税法施行令57条4項に規定する課税資産の譲渡等につきこれらの事業の種類ごとの区分をしていないものとは、簡易課税制度が事業者の選択により適用され、事業区分ごとの課税売上高にそれぞれのみなし仕入率を乗ずることにより課税仕入れに係る消費税額を算定する制度であることからすれば、事業者の帳簿、書類等に基づいて、当該事業者の行う事業の種類ごとの課税売上高の区分をすることができない場合をいうものと解される。
③ X提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A Xの帳簿、書類等の記載内容
(A) 総勘定元帳
本件各課税期間の総勘定元帳の「廃油売上」勘定には、本件事業等に係るすべての売上げについて、年月日、相手科目名、売上先名等、金額が記載されており、当該総勘定元帳がすべて保存されている。
(B) 請求書等
請求書には、商品名が「廃油回収」と記載され、ほかに、請求先名、年月日、伝票番号、数量、単価、金額が記載されており、平成20年課税期間の請求書の控えのみ保存されている。
また、「H社 月別精算表」と題する書面には、排出事業者の廃油用タンクを管理する事業に係る平成20年1月ないし同年9月の取引金額及び取引の相手方を「M」として記載されている。
(C) 領収証
領収証には、入金先名、年月日、金額のほか、ただし書きとして「廃油回収代金」又は「油代金」と記載されており、本件各課税期間の領収証の控えを保存している。
B 上記A以外の帳簿、書類の作成又は保存状況
上記A以外の帳簿、書類等は作成又は保存されておらず、本件廃油を収集する取引の形態ごとに区分して管理していたことが明らかとなる資料はなく、その数量の受払いを管理した書類も作成されていない。
④ 本件事業は、消費税法施行令57条5項1号に規定する第一種事業、同項4号に規定する第五種事業及び同項5号に規定する第四種事業に該当し、本件各付随事業のうち、排出事業者の廃油用タンクを管理する事業が第五種事業、バイオディーゼル燃料をK社へ販売する事業が第一種事業であるから、本件事業等は、第一種事業、第四種事業及び第五種事業に該当することとなるが、本件事業等の各種事業に係る課税売上高について、一部の帳簿、書類等以外に、区分することができるものがあったとは認められない。
したがって、本件事業等の各種事業に係る課税売上高について、該当する事業の種類ごとに区分をしていないものがあったと認めるのが相当である。
⑤ Xは、本件事業は、第一種事業のみに該当し、本件各付随事業は、取引先ごとに区分されているので、本件事業等の各種事業に係る課税資産の譲渡等について、該当する事業の種類ごとに区分していないものはなく、そもそも、有価物のすべてを業者に販売しているという認識である以上、複数の事業区分などあり得ようもなく、区分経理をしていないことを理由に高率の課税を行うことは、租税法律主義に違反する旨主張する。
しかしながら、上記②によれば、消費税法施行令57条4項に規定する課税資産の譲渡等につきこれらの事業の種類ごとの区分をしていないものとは、事業者の帳簿、書類等に基づいて、当該事業者の行う事業の種類ごとの課税売上高の区分をすることができない場合をいうものと解されるところ、上記④のとおり、本件事業等の各種事業に係る課税売上高について、一部を除き、区分することができるものがあったとは認められないから、該当する事業の種類ごとに区分をしていないものがあったと認めるのが相当であり、Xが複数の事業区分となることを認識しておらず、本件事業等の事業区分を第一種事業のみであるとして区分経理をしていなかったということを理由に、事業の種類ごとに区分していなかったとするものではない。また、事業の種類ごとに区分していなかった場合には、消費税法37条1項及びこれを受けた消費税法施行令57条4項の規定に基づき適用される事業区分によることとなるのは、まさしく租税法律主義の要請に基づくものである。
したがって、Xの主張には理由がない。
⑥ 本件事業等は、第一種事業、第四種事業及び第五種事業に該当することとなるが、廃油の収集運搬業取引(第五種事業)に係る課税売上高、また、平成20年課税期間については、廃油用タンクの管理事業(第五種事業)に係る課税売上高以外の本件事業等の各種事業に係る課税売上高を事業の種類ごとに区分することはできないので、消費税法施行令57条4項4号の規定により、その区分することのできない課税売上高をすべて第五種事業に係る課税売上高とすることとなる。

