概要
役員等に対し、機密費、交際費等の名目で金銭を支給した場合において、それが法人の業務上の交際、接待のため使用したことが明らかな場合には、法人の交際費等となります。また、支給された役員又は従業員も、この場合は給与課税されません(所基通28-4)。
一方、いわゆる渡し切り交際費のように支給したまま清算がないため、法人の業務のために使用したことが明らかでない金額がある場合には、支給された役員等が任意に処分できるものであることから給与と同様の経済的利益を供与したものと考えられ、その役員に対する給与として取り扱われます(法基通9-2-9(9))。
この場合、役員等に対する渡切交際費が、毎月定額により支給される場合には定期同額給与として取り扱われます(法基通9-2-11(3))。
逆に、毎月定額により支給されていない場合には、役員に対する渡切交際費が「事前確定届出給与」等の要件を満たさない臨時給与(賞与)とみなされると、会社側で損金(経費)として落とせなくなります。
なお、渡切交際費のための役員等の給与として処理すべきところ仮払金として処理していると、調査官の中には「使途秘匿金」と判断しがちな者もいるため、給与として経理処理をしてください。
また、給与であるため、渡切交際費の金額は、「給与所得の源泉徴収票」の「支払金額」欄に含めることになります(国税庁HP質疑応答事例-役員等に支給する渡切交際費がある場合の「給与所得の源泉徴収票」の記載方法)。
渡切交際費について、裁判まで争われない理由
渡切交際費について、税務調査レベルでの争いはあっても、裁判まで発展しないのは主に以下の理由からだと考えられます。
(1)通達で結論が完全に出切っているため
所得税基本通達28-4(および法人税基本通達9-2-9)において、「精算せず事績(領収書等)が明らかでない渡切り支給は給与とする」と明確に定められています。
税務調査で指摘された時点で会社側が対抗できる法理・証拠が存在しないため、裁判まで至らずに修正申告で終了してしまうということです。
(2)立証責任が会社側にあると考えられるため
「渡切交際費を交際費として認めさせる」ためには、会社側が「何月何日に誰と会食し、いくら使ったか」の裏付け(領収書等)を提出する必要があります。
しかし、そもそも「渡切り(精算なし)」で処理している以上、会社側は証拠を出せず、裁判で争っても100%負けることが目に見えているため、税務調査の段階で納得せざるを得ないのが実情です。
(3)渡切交際費という議論を超えて「使途秘匿金」や「裏金・簿外処理」として扱われる可能性があるため
渡切りで渡した資金が「誰に渡ったか言えない」というレベルになると、渡切交際費という議論を超えて「使途秘匿金(40%の追加課税)」や「重加算税対象の仮装隠蔽行為」として課税庁はとらえる可能性があるため、純粋な渡切交際費の可否が単独で裁判上の争点になりにくい構造となっています。
通達
所得税基本通達28-4
使用者から役員又は使用人に交際費、接待費等として支給される金品は、その支給を受ける者の給与等とする。ただし、使用者の業務のために使用すべきものとして支給されるもので、そのために使用したことの事績の明らかなものについては、課税しない。
法人税基本通達9-2-9(債務の免除による利益その他の経済的な利益)
法第34条第4項《役員給与》及び法第36条《過大な使用人給与の損金不算入》に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」とは、次に掲げるもののように、法人がこれらの行為をしたことにより実質的にその役員等(役員及び同条に規定する特殊の関係のある使用人をいう。以下9-2-10までにおいて同じ。)に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすもの(明らかに株主等の地位に基づいて取得したと認められるもの及び病気見舞、災害見舞等のような純然たる贈与と認められるものを除く。)をいう。
(1)~(8) 略
(9) 役員等に対して機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの
(10)~(12) 略
法人税基本通達9-2-11(継続的に供与される経済的利益の意義)
(1)~(2) 略
(3) 9-2-9の(9)に掲げる金額で毎月定額により支給される渡切交際費に係るもの
(4)~(5) 略
内部文章
法事例2031 役員に支給した使途不明の機密費
〔問〕 当社では事業年度を通じて毎月同額の役員給与を支給しているが、社長に対し機密費として毎月10万円を支給している。使途は得意先に対する特殊な費用であるが、内容を明らかにすると今後の取引に重大な影響があるので絶対に明らかにすることはできない。税務上は損金として認められるか。
〔答〕 法人が役員等に対して機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないものは、役員に対して給与を支給したものとして取り扱われる。〔法基通9-2-9(9)〕
本問の場合は、継続的に供与される経済的利益であり、毎月定額により支給される渡切交際費として役員に対する給与として取り扱い、定期同額給与とする。〔法基通9-2-11(3),法令69(1)二〕したがって、使途秘匿金にはならない。
なお、渡切交際費のための役員給与として処理すべきところ、仮払金として処理すると「使途秘匿金」として認定され、追加課税される可能性がある。
したがって、適切な役員給与(定期同額給与、事前確定届出給与等)として損金に算入し、所得税の源泉徴収をしなければならない。
〔法法34,法令70〕
法事例2147 使途不明交際費について
〔問〕 役員に対して支給した使途不明の交際費の税法上の取扱いはどうなるのか。
〔答〕 役員等に対して、機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないものは、実質的に役員等に対して給与を支給したと同様の経済的な利益となる。〔法基通9-2-9(9)〕
さらに、それが毎月定額により支給される渡切交際費である場合には役員給与となり、この金額を含めたところの役員給与の額が定期同額給与に該当する場合は、損金算入が認められ、また、その役員給与(定期同額給与の規定のあるものを除く。)が不相当に高額でなければ損金算入が認められる。〔法基通9-2-11(3),法令69(1)二〕
しかしながら、交際費等のうちで、役員に支給したものでもなく、どのような費途に使用されたものかも明らかでない費途不明交際費については、税務上損金として認めると、課税所得計算の正当性や客観性等を検証することができなくなり、課税の公平から損金に算入されないことになっている。〔法基通9-7-20〕
このことは、法人が使途不明金を仮払金として経理し、あるいは棚卸資産又は固定資産の取得価額に含めた場合でも同じである。
なお、費途不明の交際費は、租税特別措置法第61条の4に規定されている交際費とは異なり、法人税申告書の別表十五に記載するのではなく、別表四の空白欄に加算調整し、「その他社外流出」しなければならない。
〔法法34〕
役員等に支給する渡切交際費がある場合の「給与所得の源泉徴収票」の記載方法(国税庁HP質疑応答事例)
【照会要旨】
当社は、役員及び営業担当の使用人に対し交際費として毎月一定額の金銭を支給していますが、その精算は行っておりません。この金額は、「給与所得の源泉徴収票」の「支払金額」欄に含めなくて差し支えないでしょうか。
【回答要旨】
「給与所得の源泉徴収票」の「支払金額」欄に含めることになります。
「給与所得の源泉徴収票」は居住者に対し、国内において所得税法第28条第1項に規定する給与等を支払った場合に、税務署へ提出するとともに本人に交付することになります。
ここでいう「給与等」とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与をいいます。
使用者の業務のために使用すべきものとして支給されたものであっても、そのために使用したことの事績が明らかでないもの(いわゆる渡切交際費)については、その支給を受ける者の給与等に該当しますので、源泉徴収票の「支払金額」欄には、通常の給与に含めて記載する必要があります。
【関係法令通達】
所得税法第28条、第226条第1項、所得税法施行規則第93条、所得税基本通達28-4



