民泊収入は「不動産所得」とは限らない
自宅や所有している住宅を旅行者に貸して宿泊料を受け取ると、「不動産を貸しているのだから不動産所得ではないか」と考える方もいるでしょう。
しかし、住宅宿泊事業法に基づくいわゆる「民泊」について、国税庁は、自己が居住する住宅を利用して住宅宿泊事業を行う場合には、その所得を原則として雑所得に区分するとしています。
さらに現在の国税庁の確定申告関係資料(令和7年分 確定申告特集 こんな収入の申告漏れにご注意)では、民泊、カーシェアリング、自宅等の時間貸しなどによる収入について、原則として「事業所得又は雑所得(業務)」として申告することが示されています。
つまり、通常の民泊については、
事業として行っている場合 → 事業所得
事業とまではいえないものの、営利目的で継続的に行っている場合 → 雑所得(業務に係る雑所得)
と考えるのが基本です。
「雑所得」といっても、現在の所得税では「業務に係る雑所得」と「その他の雑所得」が区別されており、この違いは必要経費の範囲にも影響します。
この記事では、住宅宿泊事業法に基づく民泊を中心に、事業所得・雑所得・不動産所得の違い、雑所得の中の「業務」と「その他」の違い、必要経費、赤字が出た場合の取扱いなどについて解説します。
この記事の結論
住宅宿泊事業法に基づく民泊については、概ね次の順序で所得区分を検討すると分かりやすいでしょう。
| 民泊の実態 | 所得区分の基本的な考え方 |
|---|---|
| 社会通念上「事業」といえる規模・態様で行っている | 事業所得 |
| 事業所得とまではいえないが、営利目的で継続的に行っている通常の副業民泊 | 雑所得(業務) |
| 不動産賃貸業者が次の賃貸契約までの空室期間に一時的に民泊を行う一定のケース | 不動産所得に含めても差し支えない |
| 単なる不動産賃貸 | 不動産所得 |
国税庁の現在の資料では、民泊による収入は原則として「事業所得又は雑所得(業務)」とされています。
したがって、通常の住宅宿泊事業について「その他の雑所得」とすることは、一般的な取扱いとは考えにくいでしょう。
なぜ民泊は原則として不動産所得ではないのか
所得税法上、土地や建物などの不動産の貸付けによる所得は、原則として不動産所得です(所法26①)。
しかし、住宅宿泊事業法に基づく民泊は、単に建物を使用させるだけではありません。
国税庁は、民泊の宿泊料には、部屋の使用料だけでなく、例えば次のようなサービスの対価が含まれていると説明しています。
- 寝具等の利用
- クリーニング
- 水道光熱
- 室内清掃
- 日用品の提供
- 観光案内等の役務提供
さらに、住宅宿泊事業者には、宿泊者の衛生や安全の確保など一定の義務も課されています。
そのため、一般的な住宅の賃貸とは性質が異なります。
また、住宅宿泊事業法による民泊では、年間の宿泊日数が180日を超えないこととされています。
こうした住宅宿泊事業の性質、規模、期間などを踏まえ、国税庁は、自己が居住する住宅を利用して住宅宿泊事業を行うことによる所得について、原則として雑所得に区分するとしています。
現在の雑所得は「業務」と「その他」に分かれる
平成30年6月13日に国税庁が公表した「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」では、民泊所得について単に「雑所得」とされています。
しかし、この資料は平成30年当時の法令・通達を前提としたものです。
現在の所得税では、雑所得は大きく、
- 公的年金等に係る雑所得
- 業務に係る雑所得
- その他の雑所得
に分けて計算します。
このうち国税庁は「業務に係る雑所得」について、副業に係る収入のうち「営利を目的とした継続的なもの」と説明しています。
また、国税庁の現在の確定申告資料では、シェアリング・エコノミーによる副収入を業務に係る雑所得の例に挙げています。
民泊についても、国税庁の「令和7年分確定申告特集」では、民泊、カーシェアリング、自宅等の時間貸しなどの収入について、「原則、事業所得又は雑所得(業務)」として確定申告が必要であると明示されています。
したがって、通常の民泊については、事業所得に該当しない場合には、原則として「業務に係る雑所得」と考えるのが現在の取扱いに合っています。
民泊が「その他の雑所得」になることは通常考えにくい
所得税基本通達35-1では、「その他の雑所得」の例として、勤務先預け金の利子、還付加算金、一定の年金、一定の経済的利益などが挙げられています。
一方、所得税基本通達35-2では、事業所得と認められないものの、動産の貸付け、原稿料・講演料、金銭の貸付け、営利目的で継続的に行う資産譲渡など、一定の収益活動から生じる所得を「業務に係る雑所得」としています(所基通35-1、35-2)。
「令和8年版所得税基本通達逐条解説」でも、35-1は主として「その他雑所得」の例示、35-2は「業務に係る雑所得」の例示として整理されています。
通常の住宅宿泊事業は、宿泊料を得る目的で宿泊者を募集し、予約を受け付け、宿泊サービスを反復継続して提供する活動です。
したがって、事業所得に至らない場合でも、通常は「営利を目的とした継続的な活動」として、業務に係る雑所得に該当すると考えるのが適切です。
住宅宿泊事業法に基づく通常の民泊について、国税庁が「その他の雑所得」に分類した具体例は、現時点で確認できません。
民泊が事業所得になるのはどのような場合か
国税庁の平成30年6月13日付情報では、
「専ら住宅宿泊事業による所得により生計を立てているなど、その住宅宿泊事業が所得税法上の事業として行われていることが明らかな場合」
には、事業所得に該当するとしています。
ただし、「民泊だけで生活していなければ事業所得にならない」という意味ではありません。
この資料には「など」と書かれており、「生計を立てていること」は事業性を判断する一つの例です。
現在は、令和4年に改正された所得税基本通達35-2により、事業所得に該当するかどうかについて、その所得を得るための活動が「社会通念上事業と称するに至る程度」で行われているかどうかによって判断することが明示されています。
事業所得か雑所得(業務)かは総合的に判断する
事業所得に該当する「事業」の判断について、最高裁昭和56年4月24日判決では、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性・有償性を有し、反復継続して遂行する意思と社会的地位が客観的に認められる業務から生じる所得という考え方が示されています(最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決・昭和52年(行ツ)第12号・民集35巻3号672頁)。
民泊についても、例えば次のような事情を総合して判断する必要があります。
- 民泊を継続的・反復的に行っているか
- 営利を目的としているか
- 自己の計算と危険で運営しているか
- 売上高・利益の規模
- 宿泊施設や部屋数などの規模
- 人的・物的設備
- 民泊運営に投入している時間や労力
- 他に主たる職業があるか
- 帳簿書類を作成・保存しているか
- 赤字が続く場合に利益を出すための改善を行っているか
一つの項目だけで決まるものではありません。
帳簿を付けていれば必ず事業所得になるわけではない
所得税基本通達35-2では、事業所得か業務に係る雑所得かを判断する際、帳簿書類の保存も重要な判断材料とされています。
「令和8年版所得税基本通達逐条解説」では、取引に関する帳簿書類を保存している場合には、一般的に営利性、継続性、企画遂行性を有し、社会通念上事業所得に区分される場合が多いとの考え方が説明されています。
しかし、帳簿を保存していれば無条件で事業所得になるわけではありません。
同逐条解説では、例えば次のような場合には、帳簿書類を保存していても、事業所得に該当するかどうかを個別に判断するとしています。
- 収入金額が僅少と認められる場合
- その活動に営利性が認められない場合
例えば、例年の収入金額が300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満である場合や、例年赤字で、赤字を解消するための取組を行っていない場合などが例示されています。
民泊についても、形式的に帳簿を付けただけで事業所得になるわけではなく、実際の事業規模や営利性などを確認する必要があります。
「収入300万円を超えれば事業所得」ではない
事業所得と雑所得の判定について、「年間収入が300万円を超えれば事業所得になる」と理解されることがあります。
これは正しくありません。
事業所得に当たるかどうかの基本は、社会通念上事業と称するに至る程度で行われているかどうかです。
所得税基本通達35-2は、帳簿書類を保存していない場合には、原則として業務に係る雑所得に該当するとしつつ、収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を例外としています。
したがって、300万円は「300万円を超えれば自動的に事業所得」という基準ではありません。
「300万円」には別の帳簿保存ルールもあるので注意
もう一つ、業務に係る雑所得には「300万円」という数字が出てきます。
こちらは所得区分を決める300万円とは別の制度です。
その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合には、現金預金取引等関係書類を5年間保存する必要があります。
さらに、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える場合には、確定申告書に収支内訳書などの添付が必要です。
したがって、
「事業所得か雑所得かを考える際の300万円」
と、
「業務雑所得の書類保存義務に関する前々年300万円」
は全く別の話です。
混同しないよう注意しましょう。
不動産所得に含めても差し支えない場合もある
民泊は原則として不動産所得ではありませんが、国税庁は例外的な取扱いを示しています。
例えば、不動産賃貸業を営んでいる人が、賃貸契約の終了後、次の賃貸契約が締結されるまでの間だけ、その物件を一時的に住宅宿泊事業に利用する場合です。
このような場合に得る民泊所得については、雑所得とせず、不動産所得に含めても差し支えないとされています。
したがって、
「通常は賃貸マンションとして貸しており、次の入居者が決まるまでの空室期間だけ民泊に利用した」
というケースと、
「自宅の空き部屋を継続して民泊として提供している」
というケースでは、所得区分が同じとは限りません。
単に自己所有の建物を利用しているだけで、不動産所得にできるわけではない点には注意が必要です。
雑所得(業務)とその他雑所得では必要経費の範囲が違う
所得区分は、必要経費の範囲にも影響します。
所得税法37条1項では、必要経費として、
① 総収入金額を得るため直接に要した費用
② その年の販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用
を定めています(所法37①)。
国税庁は、令和7年12月改訂の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」で、この違いを具体的に説明しています。
暗号資産取引による所得が「その他の雑所得」である場合には、譲渡原価や売却手数料など、売却等に際して直接要した費用を必要経費とします。
一方、その所得が事業所得又は「業務に係る雑所得」に該当する場合には、それに加えて、その年の販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用も必要経費にできるとしています。
これは暗号資産に限った所得計算の考え方ではなく、所得税法37条の必要経費の構造によるものです。
通常の民泊では「業務雑所得」なので必要経費の範囲は比較的広い
現在の国税庁資料では、民泊収入は原則として事業所得又は雑所得(業務)とされています。
したがって、通常の副業民泊が事業所得に至らず「業務に係る雑所得」に該当する場合には、
民泊収入を得るため直接要した費用
だけではなく、
民泊業務に係る販売費、一般管理費その他の業務上の費用
も必要経費の対象となります(所法37①)。
これは、民泊について必要経費となる範囲を考えるうえで重要です。
民泊の必要経費になるもの
国税庁の平成30年6月13日付情報では、住宅宿泊事業の必要経費の具体例として次の費用が挙げられています。
- 住宅宿泊仲介業者に支払う仲介手数料
- 住宅宿泊管理業者に支払う管理費
- 広告宣伝費
- 水道光熱費
- 通信費
- 非常用照明器具の購入費・設置費
- 宿泊者用の日用品等の購入費
- 民泊に利用している家屋の減価償却費
- 固定資産税
- 住宅宿泊事業用資金の借入金利子
通常の住宅宿泊事業が事業所得又は業務に係る雑所得となる場合には、これらの費用について、民泊業務との関連性や家事按分などを確認したうえで必要経費を計算します。
もし「その他雑所得」なら同じ範囲で経費になるとは限らない
通常の住宅宿泊事業では「その他の雑所得」とすることは一般的ではありません。
しかし、仮に何らかの特殊な事情により所得がその他雑所得となる場合には、必要経費の範囲について注意が必要です。
例えば、
- 宿泊予約1件に直接対応するOTA手数料
- その宿泊客のための清掃費
- 宿泊客に提供した日用品
- 宿泊期間に明確に対応する水道光熱費
などは、宿泊収入を得るため直接要した費用と認められやすいでしょう。
一方、
- 年間を通じた広告宣伝費
- 予約の有無に関係なく発生する管理料
- 一般的な通信費
- 固定資産税
- 年間を通じた管理費用
などについては、特定の収入を得るため直接要した費用といえるかをより慎重に検討する必要があります。
ただし、住宅宿泊事業法に基づく通常の民泊については、現在の国税庁資料上、原則として事業所得又は業務に係る雑所得と整理されていますので、この問題が実際に生じる場面は限定的と考えられます。
自宅民泊では水道光熱費などを全額経費にはできない
自宅の一部を民泊として利用する場合、水道光熱費、通信費、固定資産税などには、
民泊業務のための費用
と
自分や家族の生活のための費用
が混在します。
生活費に当たる部分は必要経費にできません(所法45、所令96)。
民泊業務に直接必要な部分を合理的に区分する必要があります。
国税庁が示している水道光熱費の計算例
国税庁の平成30年6月13日付情報では、次の例が示されています。
年間水道光熱費 240,000円
住宅の総床面積 180㎡
主に民泊に利用する部分 60㎡
実際に宿泊者を宿泊させた日数 90日
この場合、
240,000円 × 60㎡ ÷ 180㎡ × 90日 ÷ 365日
= 19,727円
を必要経費に算入する例が示されています。
これはあくまで一つの合理的な按分方法の例です。
実際には、部屋の利用状況、宿泊日数、電気・水道の使用実態などに応じて合理的に区分します。
建物の減価償却費も一定部分は必要経費になる
自宅として使用している建物の一部を民泊に利用している場合には、一定の範囲で建物の減価償却費を必要経費に算入できます。
ただし、住宅の購入代金をその年に一括して経費にするわけではありません。
また、生活用として使用していた建物を途中から民泊業務に転用した場合には、業務用に転用した時点の未償却残高を計算する必要があります。
自宅全体を民泊に利用していない場合には、民泊に利用している床面積、利用期間などに基づいて合理的に区分します。
国税庁の平成30年6月13日付情報でも、取得価額1,800万円の木造住宅について、総床面積180㎡のうち60㎡を民泊に使用し、年間10か月民泊を行う設例により、減価償却費の区分計算方法を示しています。
家族に払った家賃はそのまま必要経費にはならない
生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃などは、原則として必要経費になりません(所法56)。
例えば、夫が所有する住宅を妻が民泊に利用し、同一生計の夫に家賃を支払ったとしても、その家賃をそのまま妻の必要経費にすることはできません。
家族間の支払いについては、通常の第三者との取引とは異なる所得税法上のルールがあるため注意が必要です。
雑所得の赤字は給与所得と損益通算できない
所得区分が重要な理由の一つが、赤字が出た場合です。
例えば、
民泊収入 100万円
必要経費 150万円
で、50万円の赤字になったとします。
民泊所得が業務に係る雑所得である場合、この赤字50万円を会社員としての給与所得から差し引くことはできません(所法69)。
つまり、
「副業民泊を赤字にすれば給与所得と相殺して税金を減らせる」
というわけではありません。
事業所得なら損益通算できる場合がある
一方、民泊が事業所得に該当する場合には、その事業所得の損失は一定の範囲で他の所得との損益通算の対象になります(所法69)。
また、青色申告の承認を受けて要件を満たしている場合には、純損失の繰越控除などの制度を利用できる場合があります。
このため、事業所得か雑所得かは、赤字が生じた場合に税額へ大きく影響することがあります。
雑所得なら青色申告特別控除は使えない
青色申告制度の対象となるのは、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行う人です(所法143)。
したがって、民泊所得が業務に係る雑所得である場合には、その民泊所得について青色申告特別控除を適用することはできません。
開業届を提出したことや、青色申告承認申請書を提出したことだけで、実態が雑所得である所得が事業所得に変わるわけではありません。
給与所得者は民泊所得20万円以下なら確定申告不要となる場合がある
会社員などの給与所得者については、一定の要件を満たす場合、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要となることがあります(所法121)。
ここでいう20万円は「売上」ではなく「所得」です。
例えば、
民泊収入 70万円
必要経費 55万円
民泊の雑所得 15万円
で、他に給与以外の所得がないなど一定の要件を満たす場合には、所得税について確定申告不要となる可能性があります。
ただし、医療費控除などを受けるため確定申告を行う場合には、原則として20万円以下の民泊所得についても申告する必要があります。
また、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要となる場合があります。
民泊に使っている自宅は住宅ローン控除にも注意
住宅ローン控除を受けている自宅の一部を民泊に使用する場合には、住宅ローン控除への影響にも注意が必要です。
住宅ローン控除の対象となる住宅については、原則として床面積の2分の1以上を自己の居住の用に供していることなどの要件があります(措法41)。
国税庁の平成30年6月13日付情報でも、自宅の一部を住宅宿泊事業に利用する場合には、生活用部分と業務用部分を区分して住宅ローン控除の対象額を計算する考え方が示されています。
ただし、住宅ローン控除はその後も制度改正が行われていますので、実際の適用に当たっては、その住宅を取得・居住した年に適用される現行制度を確認する必要があります。
民泊に使った自宅を売却すると3,000万円特別控除にも影響することがある
民泊に利用していた自宅を将来売却する場合には、居住用財産の3,000万円特別控除との関係にも注意が必要です。
家屋の中に居住用部分と民泊等の業務用部分がある場合、原則として居住用財産の特例の対象となるのは居住用部分です。
国税庁は店舗併用住宅等について、居住用部分がおおむね90%以上である場合には、家屋全体を居住用として取り扱うことができる取扱いも示しています。
自宅民泊では、毎年の所得税だけでなく、将来自宅を売却するときの譲渡所得にも影響する可能性があります。
民泊の宿泊料は消費税の課税対象
住宅宿泊事業法に基づく民泊で宿泊者から受け取る宿泊料は、ホテルや旅館と同様、原則として消費税の課税対象です。
ただし、実際に消費税を申告・納税する必要があるかどうかは、その民泊事業者が課税事業者か免税事業者かなどによって異なります。
また、国外事業者である海外OTAに予約手数料・掲載手数料を支払う場合には、消費税の「リバースチャージ方式」が問題になることがあります。
海外OTA手数料の消費税と具体的な仕訳については、別記事「民泊で海外OTAを利用した場合の消費税|手数料のリバースチャージと仕訳をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
民泊の所得区分を直接争った裁判例は確認できない
2026年8月現在、住宅宿泊事業法に基づく民泊所得について、事業所得・雑所得・不動産所得のいずれに該当するかを直接の争点として判断した裁判例又は国税不服審判所の公表裁決例は、確認できませんでした。
したがって、
「裁判所も民泊は雑所得と判断している」
という説明はできません。
現在の民泊の所得区分については、所得税法、所得税基本通達、国税庁の民泊に関する公表資料などを中心に判断する必要があります。
民宿を事業所得として扱った公表裁決はある
平成26年7月4日裁決では、平成元年頃から民宿兼居宅で民宿を営み、宿泊客用の食堂や複数の客室を備えた事案について、民宿業から生じる所得を事業所得として審理しています(平成26年7月4日裁決・国税不服審判所公表裁決)。
ただし、この裁決では、「民宿から生じる所得が事業所得か雑所得か」という所得区分そのものは争点となっていません。
主な争点は、青色申告承認取消しや推計課税の必要性・合理性などです。
したがって、この裁決だけを根拠として、
「民宿であれば事業所得になる」
と一般化することはできません。
住宅宿泊事業法上の民泊と簡易宿所・特区民泊は分けて考える
この記事で説明してきた「原則として雑所得」という国税庁の取扱いは、主として住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業についてのものです。
一般に「民泊」と呼ばれるものには、
- 住宅宿泊事業法に基づく民泊
- 旅館業法の許可を受けた簡易宿所
- 国家戦略特区法による特区民泊
などがあります。
これらは、営業日数、設備、人的役務、法的な位置付けなどが異なります。
そのため、「民泊」という名称だけで所得区分を一律に判断することはできません。
特に、旅館業法上の簡易宿所として相応の規模・設備を備え、年間を通じて反復継続して宿泊サービスを提供している場合などには、事業所得に該当する可能性があります。
まとめ
住宅宿泊事業法に基づく通常の民泊については、単なる不動産の貸付けとは異なり、宿泊者へのサービス提供を伴うため、原則として不動産所得ではありません。
国税庁の平成30年6月13日付情報では、自己が居住する住宅を利用して行う住宅宿泊事業の所得は、原則として雑所得とされています。
さらに現在の国税庁の確定申告資料では、民泊による所得について「原則、事業所得又は雑所得(業務)」と明示されています。
したがって、通常の民泊については、
社会通念上事業と称するに至る程度で行っている → 事業所得
そこまでの規模ではないが、営利目的で継続的に行っている → 業務に係る雑所得
という整理が基本となります。
通常の住宅宿泊事業について「その他の雑所得」とすることは一般的ではありません。
また、事業所得か業務に係る雑所得かによって、赤字の損益通算や青色申告の適用などに違いがあります。
雑所得についても「業務」と「その他」では必要経費の範囲が異なり、事業所得又は業務に係る雑所得であれば、民泊収入を得るため直接要した費用だけでなく、販売費、一般管理費その他民泊業務について生じた費用も必要経費の対象になります(所法37①)。
民泊の税務では、「民泊だから雑所得」「自分の建物だから不動産所得」「帳簿を付けているから事業所得」と形式だけで判断せず、営業形態、規模、継続性、営利性、帳簿書類などの実態を総合して判断することが重要です。
主な根拠法令・公表資料
- 所得税法26条、27条、35条、37条、45条、56条、69条、121条、143条
- 所得税法施行令96条
- 所得税基本通達35-1、35-2、45-1、45-2
- 国税庁個人課税課・資産課税課・消費税室「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」(個人課税課情報第6号・資産課税課情報第8号・消費税室情報第4号、平成30年6月13日)
- 国税庁タックスアンサーNo.1906「給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合」
- 国税庁タックスアンサーNo.1500「雑所得」
- 国税庁「令和7年分 確定申告特集 こんな収入の申告漏れにご注意」
- 国税庁「雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説」(令和4年10月7日)
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和7年12月最終改訂)2-3「暗号資産の必要経費」
- 国税庁タックスアンサーNo.2210「必要経費の知識」
- 国税庁タックスアンサーNo.2250「損益通算」
- 国税庁タックスアンサーNo.2108「中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却」
- 国税庁タックスアンサーNo.3452「店舗併用住宅を売ったときの特例」
- 平成26年7月4日裁決(国税不服審判所公表裁決)
- 最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(昭和52年(行ツ)第12号・民集35巻3号672頁)
参考資料
- 「令和8年版所得税基本通達逐条解説」263~266頁(所基通35-1、35-2関係)
- 松岡克俊「個人が行う民泊に関する所得税法上の諸問題」税務大学校論叢第96号(令和元年6月)
- 柿原勝一「所得税法における『業務』の範囲について」税務大学校論叢第102号
