民泊で海外OTAを利用するときは消費税の処理に注意
民泊を運営していると、Booking.com、Airbnb、Agoda、ExpediaなどのOTA(Online Travel Agent:オンライン旅行予約サイト)を利用することがあります。
このとき注意したいのが消費税です。
特に、国外事業者が運営する宿泊予約サイトに支払う掲載料や予約手数料については、「リバースチャージ方式」という、通常の国内取引とは異なる消費税の取扱いになることがあります。
国税庁は、住宅宿泊事業法が施行された平成30年の時点で、住宅宿泊事業者が国外事業者のウェブサイトに民泊物件を掲載するために掲載料を支払う場合について、リバースチャージ方式の取扱いを具体的に示しています。
さらに現在の国税庁の質疑応答事例でも、国外事業者が運営するインターネット宿泊予約サイトへの掲載手数料について、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当し、「特定課税仕入れ」となることが示されています。
また、OTAからは宿泊料金の総額ではなく、手数料を差し引いた後の金額だけが振り込まれることがあります。通帳への入金額をそのまま宿泊売上として処理すると、売上高を誤ることもあります。
この記事では、国内で民泊を運営している個人事業者・法人を対象として、海外OTAを利用した場合の消費税と仕訳を具体的に解説します。
なお、「海外OTA」というブランド名だけで消費税の取扱いを判断することはできません。実際の契約相手、手数料の請求主体、サービス内容などを確認したうえで判断する必要があります。
この記事の結論
海外OTAへの掲載料・予約手数料が「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当する場合の基本的な取扱いは、次のとおりです。
| 民泊事業者の状況 | 海外OTA手数料のリバースチャージ | 期限等 |
|---|---|---|
| 消費税の免税事業者 | 原則として消費税申告は不要 | 免税事業者である限り |
| 一般課税・課税売上割合95%以上 | リバースチャージ申告をせず、当該手数料の仕入税額控除もしない | 法律上「当分の間」。2026年8月現在、具体的な終了日なし |
| 簡易課税 | リバースチャージ申告をせず、当該手数料について実額の仕入税額控除もしない | 法律上「当分の間」。2026年8月現在、具体的な終了日なし |
| 2割特例 | 適用課税期間ではリバースチャージ申告をしない | 令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する一定の課税期間 |
| 3割特例 | 適用課税期間ではリバースチャージ申告をしない | 一定の個人事業者の令和9年分・令和10年分 |
| 一般課税・課税売上割合95%未満 | 原則としてリバースチャージによる申告が必要 | 上記の経過措置の対象外 |
つまり、海外OTAへの手数料が特定課税仕入れに該当しても、すべての民泊事業者が実際にリバースチャージによる申告をするわけではありません。
実際にリバースチャージ方式による申告が問題となるのは、原則として一般課税で、その課税期間の課税売上割合が95%未満の場合です。
民泊の宿泊料は消費税の課税対象
まず、民泊の宿泊料金そのものについて確認しておきましょう。
住宅宿泊事業法に基づく民泊で宿泊者から受け取る宿泊料は、ホテルや旅館の宿泊料と同様、原則として消費税の課税対象です。
国税庁も「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」において、住宅宿泊事業者が宿泊者から受領する宿泊料は、ホテルや旅館などと同様に消費税の課税対象になると明示しています。
また、宿泊客が外国人だからといって輸出免税になるわけではありません。
非居住者に対する役務の提供には輸出免税となるものがありますが、国内における宿泊は、その非居住者が国内で直接便益を受けるサービスであるため、輸出免税の対象から除外されています(消令17②七)。
したがって、外国人旅行者が日本国内の民泊施設に宿泊する場合でも、その宿泊料金は原則として消費税の課税売上げとなります。
ただし、宿泊サービスが消費税の課税対象であることと、民泊事業者自身に実際の消費税の申告・納税義務があるかどうかは別の問題です。
民泊事業者が免税事業者であれば、原則として消費税の確定申告・納税は必要ありません。
OTAから振り込まれた金額をそのまま売上にしない
民泊の経理では、OTAからの入金額と宿泊売上高との関係にも注意が必要です。
例えば、次のようなケースを考えてみます。
宿泊客が支払った宿泊料金 110,000円
OTA手数料 15,000円
民泊事業者への振込額 95,000円
通帳には95,000円しか入金されません。
しかし、宿泊客との宿泊契約の主体が民泊事業者であり、OTAが予約仲介や代金回収を行い、その対価として15,000円の手数料を差し引いているという契約関係であれば、基本的には宿泊売上を95,000円とするのではありません。
この場合には、
宿泊売上 110,000円
OTA手数料 15,000円
差引入金額 95,000円
と分けて考えます。
例えば、宿泊売上を計上するときは次のような仕訳になります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 110,000円 | 宿泊売上 | 110,000円 |
OTAから入金されたときは、例えば次のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 95,000円 | 売掛金 | 110,000円 |
| 支払手数料 | 15,000円 |
宿泊料金の総額とOTA手数料をそれぞれ把握することが重要です。
ただし、この仕訳は、宿泊契約の主体が民泊事業者で、OTAが仲介・決済等を行っているという契約関係を前提としています。
OTAとの契約内容によって取引関係が異なる場合には、売上高や手数料の計上方法が異なる可能性がありますので、精算明細だけでなく契約内容も確認する必要があります。
国税庁は民泊事業者の国外サイト掲載料についてリバースチャージを明示している
海外OTA手数料について重要なのが、国税庁が民泊事業者を直接対象とした取扱いを公表していることです。
国税庁は平成30年6月13日付「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」において、住宅宿泊事業者がウェブサイト上に民泊物件を掲載するため、そのウェブサイトの運営事業者に掲載料を支払う場合の消費税について説明しています。
その中では、国外事業者への掲載料について、
・一般課税で課税売上割合が95%以上の場合または簡易課税制度を適用している場合
と、
・一般課税で課税売上割合が95%未満の場合
とで取扱いが異なることが示されています。
一般課税・課税売上割合95%未満の場合には、掲載料について仕入税額控除を行うとともに、リバースチャージ方式によって申告・納税する必要があるとされています。
平成30年の資料は当時の法令等に基づくものですが、このリバースチャージの基本的な仕組みは現在も維持されています。
現在の国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A(令和8年6月改訂)」でも、一般課税・課税売上割合95%未満の場合を原則としてリバースチャージ申告の対象とし、95%以上、簡易課税、2割特例・3割特例の適用課税期間については特定課税仕入れをなかったものとする取扱いが確認されています。
海外OTAへの手数料はなぜリバースチャージの対象になるのか
通常の国内取引では、サービスを提供した事業者が消費税を申告・納税します。
これに対し、国外事業者から一定の「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合には、そのサービスを受けた国内事業者が消費税を申告・納税します。
これが「リバースチャージ方式」です。
消費税法では、国外事業者から受ける事業者向け電気通信利用役務の提供のうち一定のものを「特定課税仕入れ」とし、その役務の提供を受けた国内事業者に申告・納税義務を課しています(消法2①八の四、5①、28②)。
国税庁の令和8年6月改訂Q&Aでも、「電気通信利用役務の提供」の具体例として、
「インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)」
が挙げられています。
したがって、国外事業者が民泊事業者に提供する一定の宿泊予約・掲載サービスは、リバースチャージ方式を検討すべき典型的な取引となります。
海外OTAだから必ずリバースチャージになるわけではない
ここは重要です。
Booking.com、Airbnb、Agoda、Expediaなどの海外系OTAを利用しているからといって、そのブランド名だけで「リバースチャージ」と判断することはできません。
重要なのは、実際に誰から、どのようなサービスの提供を受けているかです。
実務では少なくとも次の点を確認します。
- 契約相手は誰か
- 手数料の請求主体は誰か
- その請求主体は国内事業者か国外事業者か
- 何の対価として手数料を支払っているのか
- サービスの性質や取引条件から「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するか
消費税法上の「事業者向け電気通信利用役務の提供」は、そのサービスの性質または取引条件等から、通常、その提供を受ける者が事業者に限られるものをいいます(消法2①八の四、消基通5-8-4)。
単に「利用者の多くが事業者だから」「海外企業だから」という理由だけで決まるものではありません。
OTAの運営会社、契約主体、請求主体は契約等によって異なる可能性がありますので、「このOTAなら必ずこの税区分」と機械的に処理しないことが大切です。
一般課税で課税売上割合が95%以上の場合
海外OTAへの手数料が特定課税仕入れに該当しても、その課税期間について一般課税で課税売上割合が95%以上の場合には、現在、経過措置があります。
法律上「当分の間」、その課税期間中に行った特定課税仕入れはなかったものとして消費税法を適用します(平成27年法律第9号附則42)。
したがって、
リバースチャージによる申告をしない
一方で、
その特定課税仕入れについて仕入税額控除もしない
という処理になります。
2026年8月現在、この「当分の間」という措置について、具体的な終了日は定められていません。
課税売上割合95%以上の場合の仕訳
例えば海外OTAへの手数料が15,000円であれば、基本的には次のような仕訳になります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 15,000円 | 売掛金等 | 15,000円 |
国外事業者との間では、日本の消費税を含む15,000円を支払っているわけではありません。
したがって、通常の国内事業者から受ける課税仕入れのように、15,000円の中から日本の消費税を抜き出して仮払消費税を計上するものではありません。
なお、「仕入税額控除をしない」ということは、OTA手数料そのものを所得税の必要経費や法人税の損金にできないという意味ではありません。
所得税・法人税の経費計算と、消費税の仕入税額控除は別の問題です。
会計ソフトで普通の「課税仕入10%」にしない
一般課税・課税売上割合95%以上の場合に特に注意したいのが、会計ソフトの税区分です。
海外OTA手数料を普通の国内取引と同じ「課税仕入10%」として入力すると、会計ソフトが通常の課税仕入れとして仕入税額控除の対象にしてしまう可能性があります。
しかし、このケースでは経過措置によって特定課税仕入れをなかったものとして扱うため、仕入税額控除を行いません。
使用している会計ソフトに「特定課税仕入れ」などの専用税区分がある場合には、そのソフトの仕様に従って処理します。
また、この取引を単に「不課税取引」と理解することも正確ではありません。
法的には特定課税仕入れに該当したうえで、経過措置によって消費税の計算上「なかったもの」とされているためです。
簡易課税の場合
簡易課税制度が適用される課税期間についても、法律上「当分の間」、特定課税仕入れはなかったものとして扱われます(平成27年法律第9号附則44②)。
したがって、海外OTAへの手数料が特定課税仕入れに該当しても、
リバースチャージによる申告をしない
一方で、
その手数料について実額による仕入税額控除もしない
という処理になります。
簡易課税制度では、実際の仕入れに含まれる消費税額を一つずつ積み上げるのではなく、売上税額に事業区分ごとのみなし仕入率を用いて仕入控除税額を計算するからです。
簡易課税の場合のこの措置についても、2026年8月現在、具体的な終了日は定められていません。
2割特例の場合
インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者となった一定の事業者については、2割特例を適用できる場合があります。
2割特例は、原則として令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間について、納付税額を売上税額の2割とすることができる経過措置です。
2割特例が適用される課税期間についても、事業者向け電気通信利用役務の提供はなかったものとして扱われます。
したがって、その課税期間については海外OTAへの特定課税仕入れについてリバースチャージによる申告を行わず、当該特定課税仕入れについて仕入税額控除も行いません。
2割特例は一定の要件を満たせば個人事業者だけでなく法人にも適用があります。
令和9年・10年分には一定の個人事業者を対象とする3割特例
令和8年度税制改正では、2割特例終了後の負担に配慮し、一定の個人事業者を対象とする「3割特例」が創設されました。
インボイス発行事業者の登録を受けたこと等によって免税事業者から課税事業者となった一定の個人事業者は、令和9年分・令和10年分の消費税について、納付税額を売上税額の3割とすることができます。
3割特例が適用される課税期間についても、特定課税仕入れはなかったものとして扱われます。
そのため、海外OTAへの手数料が特定課税仕入れに該当しても、その課税期間についてリバースチャージによる申告は行いません。
なお、2割特例と異なり、3割特例は個人事業者だけが対象です。
法人には3割特例は適用されません。法人は2割特例終了後、原則として一般課税または簡易課税によって申告することになります。
一般課税で課税売上割合が95%未満ならリバースチャージが必要
一般課税で、その課税期間の課税売上割合が95%未満の場合には取扱いが大きく変わります。
国税庁は、住宅宿泊事業者が国外事業者のウェブサイトに民泊物件を掲載するために支払う掲載料について、一般課税・課税売上割合95%未満の場合には、その掲載料を仕入税額控除の対象とするとともに、リバースチャージ方式によって申告・納税する必要があると説明しています。
現在の国税庁Q&Aでも、リバースチャージ方式による申告が必要となるのは、原則として一般課税で、その課税期間における課税売上割合が95%未満の事業者とされています。
例えば、海外OTAへの手数料が15,000円だったとします。
国外事業者との間で実際に授受する金額は15,000円です。
消費税申告上は、この15,000円を特定課税仕入れに係る支払対価としてリバースチャージの計算に取り込みます。
地方消費税を含む税率10%相当で単純化して考えると、
15,000円×10%=1,500円
相当の消費税等についてリバースチャージの計算を行うイメージです。
この場合、15,000円について、
15,000円×100/110
として税抜金額を求めるわけではありません。
国外事業者から「日本の消費税を含む15,000円」の請求を受けているわけではなく、特定課税仕入れに係る支払対価15,000円そのものを課税標準として計算するためです(消法28②)。
リバースチャージの場合の仕訳
国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」問43では、特定課税仕入れがある場合の経理処理が具体的に示されています。
国外事業者との取引時には、その国外事業者との間で特定課税仕入れに係る日本の消費税相当額を受け渡しているわけではありません。
したがって、例えば勘定科目を「支払手数料」とするのであれば、15,000円のOTA手数料について基本的には次のような仕訳になります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料(特定課税仕入れ) | 15,000円 | 売掛金等 | 15,000円 |
国税庁Q&Aでは、税抜経理方式で伝票会計等を行う事業者が、決算処理等の都合から消費税相当額を仮勘定で処理する場合には、次のような方法も認めています。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料(特定課税仕入れ) | 15,000円 | 売掛金等 | 15,000円 |
| 仮払金 | 1,500円 | 仮受金 | 1,500円 |
ただし、仮払金・仮受金による後者の処理を必ず行わなければならないわけではありません。
特に、会計ソフトで「特定課税仕入れ」の税区分を指定することによって消費税申告書へ自動反映される仕様の場合には、さらに仮払・仮受の仕訳まで手入力すると二重計上になる可能性があります。
使用している会計ソフトの仕様に応じて処理する必要があります。
課税売上割合95%未満でも手数料の10%がそのまま税負担になるとは限らない
リバースチャージについて誤解されやすいのが、この点です。
海外OTA手数料15,000円について10%相当の1,500円をリバースチャージの計算に入れるからといって、必ず1,500円だけ消費税の負担が増えるわけではありません。
リバースチャージでは、一方で特定課税仕入れに係る税額が納税側の計算に入りますが、他方で、その特定課税仕入れは原則として仕入税額控除の対象にもなります(消法30①)。
どれだけ控除できるかは、仕入税額控除の計算方法によって異なります。
一括比例配分方式の場合
例えば課税売上割合が80%で、一括比例配分方式を採用しているものとします。
地方消費税を含む10%相当額を使って単純化すると、
リバースチャージによる税額 1,500円
仕入税額控除 1,500円×80%=1,200円
差額 300円
というイメージになります。
国税庁の令和8年6月改訂Q&Aでも、課税売上割合80%・一括比例配分方式を前提とした計算イメージが示されています。
個別対応方式の場合
個別対応方式では、課税仕入れ等を、
- 課税売上げにのみ要するもの
- 非課税売上げにのみ要するもの
- 課税売上げと非課税売上げに共通して要するもの
に区分します(消法30②一)。
消費税基本通達11-2-10では、「課税資産に係る広告宣伝費、支払手数料」などを「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」の例として挙げています。
したがって、その海外OTA手数料が、消費税の課税売上げとなる民泊の宿泊売上げを得るためだけに支払われたものであることが事実関係から明確であり、個別対応方式を採用しているのであれば、その手数料に係る消費税額を全額仕入税額控除できる場合があります(消基通11-2-10)。
先ほどの例であれば、
リバースチャージによる税額 1,500円
仕入税額控除 1,500円
差額 0円
となる可能性があります。
したがって、
「課税売上割合が95%未満なら、海外OTA手数料の10%相当額がそのまま追加の税負担になる」
という理解は正確ではありません。
民泊をしていれば必ず課税売上割合95%以上になるわけではない
民泊の宿泊売上げは原則として課税売上げですので、民泊事業だけを行っている事業者では課税売上割合が高くなるケースが多いでしょう。
しかし、同じ個人や法人が、例えば、
民泊による短期宿泊
と
居住用マンション・アパートの長期賃貸
の両方を行っている場合には注意が必要です。
住宅の貸付けは原則として消費税の非課税売上げとなるため、こうした非課税売上げがあると課税売上割合が95%未満になる可能性があります。
海外OTA手数料についてリバースチャージが必要かどうかを判定するときは、民泊部門だけではなく、その事業者全体の課税売上割合を確認する必要があります。
特定課税仕入れは帳簿への記載にも注意
実際にリバースチャージ方式が適用される特定課税仕入れについて仕入税額控除を受ける場合には、帳簿への記載にも注意が必要です。
国税庁は、特定課税仕入れについて、帳簿に次の事項を記載することとしています。
- 特定課税仕入れの相手方の氏名または名称
- 特定課税仕入れを行った年月日
- 特定課税仕入れの内容
- 特定課税仕入れに係る支払対価の額
- 特定課税仕入れに係るものである旨
リバースチャージ方式の適用を受ける特定課税仕入れについては、これらの事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を行うことができます。
したがって、例えば会計ソフトの摘要欄にも、
「○○社 宿泊予約手数料 特定課税仕入れ」
など、特定課税仕入れであることを確認できる形で記録しておくとよいでしょう。
また、契約書、請求書、OTAの精算明細、管理画面からダウンロードした取引資料なども、契約主体・請求主体・サービス内容・支払額を確認するための資料として保存しておくことが重要です。
海外OTAのリバースチャージとプラットフォーム課税は別の制度
「OTAはインターネット上のプラットフォームだから、プラットフォーム課税の話ではないのか」と疑問に思うかもしれません。
しかし、この記事で説明している海外OTA手数料のリバースチャージと、令和7年4月から導入された消費税のプラットフォーム課税は別の制度です。
プラットフォーム課税は、一定のプラットフォームを介して国外事業者が国内の消費者に行う「消費者向け電気通信利用役務の提供」について、一定のプラットフォーム事業者に納税義務を転換する制度です。
一方、この記事で問題としているのは、民泊事業者が国外事業者であるOTAから宿泊予約・掲載サービスを受け、その対価として手数料を支払う取引です。
こちらは一定の事実関係の下で「事業者向け電気通信利用役務の提供」となり、特定課税仕入れとしてリバースチャージ方式を検討するものです。
「海外のプラットフォームを使った」という点だけで両制度を混同しないよう注意しましょう。
海外OTAを利用する民泊事業者のチェックポイント
- 宿泊客が支払った宿泊料金の総額を把握しているか
- OTAからの手取り入金額だけを宿泊売上にしていないか
- 宿泊契約の主体が誰なのか確認したか
- OTAとの契約相手・手数料の請求主体を確認したか
- 請求主体が国内事業者か国外事業者か確認したか
- 手数料の内容が「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するか確認したか
- 自社が免税事業者、一般課税、簡易課税、2割特例、3割特例のどれに該当するか確認したか
- 一般課税の場合、課税売上割合が95%以上か95%未満か確認したか
- 95%未満の場合、個別対応方式か一括比例配分方式か確認したか
- 個別対応方式の場合、そのOTA手数料がどの売上げに対応する費用なのか確認したか
- 会計ソフトで適切な「特定課税仕入れ」の税区分を使用しているか
- 契約書、請求書、精算明細等を保存しているか
- リバースチャージ対象の場合、「特定課税仕入れに係るものである旨」を帳簿に記載しているか
まとめ
海外OTAを利用した民泊の消費税では、「海外への支払いだから日本の消費税は関係ない」と考えるのは危険です。
国税庁は、住宅宿泊事業者が国外事業者のウェブサイトに民泊物件を掲載するために支払う掲載料について、リバースチャージ方式が問題となることを平成30年の民泊事業者向け資料で直接説明しています。
また、現在の国税庁の質疑応答事例・令和8年6月改訂Q&Aでも、国外事業者から受ける一定の宿泊予約・掲載サービスが「事業者向け電気通信利用役務の提供」となり、特定課税仕入れとしてリバースチャージ方式の対象になることが確認できます。
もっとも、一般課税で課税売上割合が95%以上である課税期間や、簡易課税制度が適用される課税期間については、法律上「当分の間」、特定課税仕入れをなかったものとして扱います。
2026年8月現在、この「当分の間」という措置について具体的な終了日は定められていません。
2割特例または3割特例が適用される課税期間についても、特定課税仕入れをなかったものとして扱います。ただし、2割特例・3割特例そのものには期限があり、3割特例は一定の個人事業者だけを対象とし、法人には適用されません。
一方、一般課税で課税売上割合が95%未満の場合には、原則としてリバースチャージ方式による申告が必要になります。
ただし、95%未満だからといって、海外OTA手数料の10%相当額がそのまま追加の消費税負担になるとは限りません。
個別対応方式を採用し、そのOTA手数料が課税となる民泊の宿泊売上げにのみ対応することが明確であれば、対応する消費税額を全額仕入税額控除できる場合もあります。
また、経理面では、OTAから振り込まれた「手取り額」と「宿泊売上高」を混同しないことも重要です。
海外OTAを利用している場合には、銀行への入金額だけを見るのではなく、宿泊料金の総額、OTA手数料、契約相手、請求主体、消費税の申告方法まで確認したうえで経理処理を行う必要があります。
主な根拠法令・資料
- 消費税法2条1項8号の3、8号の4、4条、5条1項、28条2項、30条
- 消費税法施行令17条2項7号
- 所得税法等の一部を改正する法律(平成27年法律第9号)附則42条、44条2項
- 所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)附則51条の2、51条の3
- 消費税基本通達5-8-3、5-8-4、11-2-10
- 国税庁個人課税課ほか「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」(個人課税課情報第6号・資産課税課情報第8号・消費税室情報第4号、平成30年6月13日)「7 消費税の課税関係」
- 国税庁「国外事業者に支払うインターネット宿泊予約サイトへの掲載手数料」
- 国税庁「事業者向け電気通信利用役務の提供の範囲」
- 国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」(平成27年5月・令和8年6月改訂)問2-1、問5、問43
- 国税庁タックスアンサーNo.6118「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係」
- 国税庁タックスアンサーNo.6497「仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項」
- 国税庁タックスアンサーNo.6567「非居住者に対する役務の提供」
- 国税庁「令和8年度税制改正特集」(3割特例)
- 財務省「平成27年度 税制改正の解説」『消費税法等の改正』829頁以下
- 財務省「令和8年度 税制改正の解説」『消費税法等の改正』846~847頁(3割特例関係)
- 『令和6年版消費税法基本通達逐条解説』(消基通5-8-4、11-2-10関係)
