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株式の概算取得費5%|同一銘柄・特定口座・更正の請求の注意点

株式の概算取得費5%|同一銘柄・特定口座・更正の請求の注意点

概要

 株式を売却したときの取得費は、原則として、購入代金や購入手数料などを基に計算します。ただし、個人の株式等の譲渡所得等については、売却代金の5%相当額を取得費とする取扱いがあります。

 この「概算取得費」は、取得費が分からない場合だけでなく、実際の取得費より有利になる場合にも利用できます。しかし、同一銘柄の株式の一部だけに適用する計算や、特定口座内で売却した株式への適用には注意が必要です。申告後に取得費を変更する場合も、変更の方向と根拠を分けて検討します。

株式の概算取得費5%とは

取得費が分からない場合と、実際の取得費が5%より少ない場合

 相続した株式や、古くから保有している株式などで取得費が分からない場合は、同一銘柄の株式等ごとに、売却代金の5%相当額を取得費として計算することが認められています。実際の取得費が分かっていても、その額が売却代金の5%相当額を下回る場合は、この取扱いを利用できます(措通37の10・37の11共-13)。

概算取得費=売却代金×5%

 例えば、売却代金が1,000万円であれば、概算取得費は50万円です。実際の取得費が30万円の場合には、50万円を取得費とする方が、譲渡所得の金額は少なくなります。

 この取扱いは、上場株式等に限らず、非上場株式などの一般株式等についても対象となります。ただし、特定口座内で売却した上場株式等については、後述する別の取扱いがあります。

売却手数料は、概算取得費とは別に控除する

 概算取得費の5%は、売却手数料を差し引く前の売却代金に掛けて計算します。売却のために実際に支払った委託手数料などは、概算取得費とは別に控除します。一方、購入手数料などの取得時の費用を、概算取得費に重ねて加算することはできません(所法33③、38①、措法37の10⑥、37の11⑥、措通37の10・37の11共-13)。

 例えば、売却代金が1,000万円、概算取得費が50万円、売却手数料が10万円であれば、他に調整項目がない場合の譲渡所得の金額は940万円です。

1,000万円-50万円-10万円=940万円

同一銘柄の株式の一部だけに5%を適用することはできない

 同じ取得費計算の対象となる同一銘柄の株式について、取得価額が分かる取得分と分からない取得分が混在していても、「分かる取得分は実額、分からない取得分は売却代金の5%」として組み合わせることはできません。

 実際の取得価額や合理的に把握した取得価額を基に全体の取得費を計算するか、その譲渡に係る同一銘柄の株式等について売却代金の5%を取得費として計算します。2回以上にわたって取得した株式の譲渡所得の取得費は、原則として総平均法に準ずる方法で求めた1株当たりの金額を基に計算します(所法48③、所令118①、措通37の10・37の11共-13)。

土地の共有持分は、取得持分ごとに併用できる場合がある

 一筆の土地については、別々に取得した共有持分に応じて、概算取得費と実額取得費を併用できる場合があります。この取扱いを示したものが、名古屋国税局の文書回答(平成24年12月11日)です。

 この事案では、父から相続した土地の持分3分の1は取得価額が不明でした。一方、兄から購入した残りの持分3分の2の購入代金は2,500万円でした。その後、土地全体を6,000万円で売却した場合の取得費について、次の計算が認められています。

取得した持分適用する取得費金額
相続した持分3分の1持分に対応する売却代金の5%6,000万円×1/3×5%=100万円
購入した持分3分の2実際の購入代金2,500万円
土地全体上記の合計2,600万円

 同じ人が最終的に土地の単独所有者となっても、別個の時期に相続と売買によって取得した持分について、それぞれの取得価額・取得時期を基に、各持分の所有期間中の増加益を把握するという考え方です。土地には、同一銘柄の株式のように、取得価額を平均化することを求める規定はありません(所法38①、60①、措法31の4、措通31の4-1、上記文書回答)。

 この文書回答は、相続と売買によって別々に取得した共有持分を区分する事案です。一度に取得した一筆の土地を任意の割合に分け、好きな部分だけ5%と実額を使い分けることを認めたものではありません。

株式は、取得分ごとではなく同一銘柄を単位に判断する

 株式にも所法38①の取得費の原則はありますが、2回以上にわたって取得した同一銘柄の株式については、所法48③・所令118①により、総平均法に準ずる方法で取得費を計算します。取得時期や購入価格が違っていても、同じ取得費計算の対象となる株式は、その取得価額を集約して1株当たりの金額を求めます。

 同一銘柄の株式は、購入価格が違っていても、1株当たりの権利内容は同じです。このため、どの購入分を売ったかによって取得費を選ぶのではなく、取得価額を平均化する仕組みになっています。

 さらに、5%の取扱いを定める措通37の10・37の11共-13も、譲渡した同一銘柄の株式等を対象としています。したがって、「相続した取得分には5%、購入した取得分には実額」として、それぞれ独立した取得費を計算し、合算することはできません。

比較点上記文書回答の土地同一銘柄の株式
取得費の把握別々に取得した共有持分ごとに把握する原則として取得価額を平均化する
5%と実額の使い分け相続した持分と購入した持分に応じた併用が認められる同じ計算対象の取得分ごとの併用はできない

 5%の概算取得費は、不明な取得分の過去の購入代金を推定して補充するための数字ではありません。例えば、取得費不明の株式に対応するとした売却代金の5%を取得価額として、判明している購入代金と一緒に平均計算する方法も認められません(東京国税局税務相談室「誤りやすい事例集(改訂版)」平成14年6月・所事例007401)。

 ここでの併用不可は、法律に「5%との部分併用を禁止する」という文言があるからではなく、法令による平均計算と、通達による5%の適用単位を踏まえた取扱いです。土地の文書回答を、そのまま同一銘柄の株式に当てはめることはできません。

 なお、不明な取得分があるだけで、必ず全体に5%を適用しなければならないわけではありません。判明している取得価額と、客観的資料から合理的に把握した不明部分の取得価額を基に、全体の取得費を計算する方法を検討します。実際の取得価額を合理的に推定することと、不明部分だけに5%を適用することは別の問題です。

一般口座と特定口座は分けて考える

 同一銘柄であっても、一般口座と特定口座の取得費は区分して計算します。一般口座の取得費を計算するときに、特定口座で保有している同一銘柄の株式の取得価額を混ぜることはできません。また、複数の特定口座がある場合は、特定口座ごとに計算します(措法37の11の3①、措令25の10の2①)。

 これに対し、複数の証券会社の一般口座に同一銘柄の株式を保有している場合は、証券会社が違うという理由だけで取得費計算を分けることはできません。特定口座との区分と、一般口座同士の取扱いを混同しないようにします。

概算取得費を使っても、残った株式の取得単価は書き換えない

 概算取得費は、売却した株式の譲渡所得等を計算するための取扱いです。実際の購入代金や、残った株式の取得単価を「売却代金の5%相当額」に置き換えるものではありません(国税庁課税部資産課税課「株式譲渡益課税のあらましQ&A」平成31年1月・問22)。

 例えば、一般口座で保有する同一銘柄の株式について、次のように取得し、その全てを売却したものとします。説明を簡単にするため、手数料は考慮しません。

取得分株数1株当たりの取得価額取得価額の合計
1回目10,000株50円500,000円
2回目1,000株600円600,000円
合計11,000株100円1,100,000円

 この11,000株を1株3,000円、合計3,300万円で売却した場合、実際の取得価額を基にした取得費は110万円、概算取得費は165万円です。

実額取得費:110万円

概算取得費:3,300万円×5%=165万円

 この場合は、165万円を取得費とすることができます。ただし、元の取得単価100円を150円に変更したことにはなりません。一部だけを売却した場合も、残株の取得費計算は、概算取得費の適用とは区別して管理します。

申告後に取得費を変更するときの更正の請求

 確定申告の税額が過大であった場合などには、更正の請求によって訂正を求めることができます。ただし、更正の請求は、単に別の計算の方が有利だったという理由だけで、どの制度についても認められるわけではありません。法律上の選択要件や当初申告要件の有無、計算の誤りの内容などを確認します(通法23①)。

概算取得費で申告した後、より高い実際の取得費が判明した場合

 取得費が分からず概算取得費で申告した後、取引報告書などが見つかり、実際の取得費の方が高かったことを証明できる場合は、取得費の計算を訂正する更正の請求を検討できます。

 例えば、売却代金1,000万円に対し、概算取得費50万円で申告していたところ、実際の取得費が300万円であったことを証明できた場合です。同一銘柄の株式を複数回取得しているときは、見つかった一つの購入代金だけで判断せず、売却分に対応する取得費を再計算します(所法38①、48③、所令118①、通法23①一)。

 相続・贈与により取得した株式は、原則として、被相続人・贈与者の取得費を引き継ぎます(限定承認に係る相続などを除きます)。相続税の申告に用いた評価額を、そのまま所得税の取得費にすることはできません。NISA口座から相続により払い出された株式などには別の取扱いがあるため、取得経緯も確認します(所法60①、国税庁タックスアンサーNo.1464)。

実額取得費で申告した後、5%の方が有利であると分かった場合

 この方向の変更については、結論の異なる国税内部資料があります。

国税内部資料示されている取扱い
大阪国税局資産課税課「資産税関係質疑応答事例集」平成23年6月24日・85頁実額で正しく計算している以上、取得費を収入金額の5%とする更正の請求は認められない
東京国税局課税第一部資産課税課・資産評価官「資産税審理研修資料」令和元年8月・256頁概算取得費の方が有利になることを理由に、実額から概算取得費へ変更する更正の請求は認められる

 東京国税局の資料は、申告時に概算取得費による計算を認めていることを踏まえ、更正の請求においてもこれを否認する必要はないと説明しています。

 したがって、「実額で申告した以上、5%への変更は必ず認められない」とするのは適切ではなく、東京国税局の資料を根拠として更正の請求を検討できます。

 ただし、これらは国税内部資料であり、法律や裁判所の判決ではありません。後年の東京国税局の資料だけで、過去の大阪国税局の取扱いが全国一律に変更・統一されたとまではいえません。個別の請求では、通法23①の要件にどう該当するかを整理し、対象年分、計算内容、適用根拠を示す必要があります。

更正の請求の期限と添付資料

 更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。確定申告の必要がない人が還付を受けるために申告した場合は、その申告書の提出日から5年以内となります。取得費の資料が後から見つかった場合も、通常は発見日から5年になるわけではありません(通法23①、国税庁「所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」)。

 請求に当たっては、取引報告書、顧客勘定元帳、取得価額の計算表など、請求理由の基礎となる事実を証明する資料を添付します。実額から5%への変更を求める場合は、売却代金と5%相当額の計算に加え、変更が認められると考える理由を説明します。

特定口座内で売却した株式に5%を適用することはできない

 特定口座内で売却した上場株式等について、証券会社が計算した取得費より5%の概算取得費の方が高いからといって、確定申告で概算取得費に置き換えることはできません。源泉徴収あり・なしを問わず、特定口座の所得計算の仕組みを前提に判断します(措法37の11の3①、措令25の10の2①、措通37の11の3-14)。

 令和6年4月22日裁決では、源泉徴収ありの特定口座で売却した株式について、実額取得費と概算取得費との差額を追加控除した申告が問題となりました。国税不服審判所は、特定口座の記録を基礎として証券会社が行う取得費計算の仕組みなどを踏まえ、概算取得費への置換えを認めませんでした(令和6年4月22日裁決・裁事135集)。

 この判断は、特定口座内で行われた売却についてのものです。一般口座における5%の取扱いや、その更正の請求の可否とは区別する必要があります。

取得費が分からなくても、直ちに5%と決めない

 取得費が不明な場合は、取引報告書、証券会社の顧客勘定元帳、預金通帳などの手控えを確認します。それでも確認できない場合には、名義書換日から取得時期を把握し、その時期の相場を基に取得価額を算定できることがあります(国税庁「上場株式等の取得価額の確認方法」)。

 令和元年11月28日裁決は、相続した一般口座内の上場株式の取得費が問題となった事案です。課税庁は概算取得費を用いましたが、国税不服審判所は、有償取得したと推認される株式について、被相続人への名義書換日とその日の終値による推定に合理性を認めました。一方、5%の方が高い銘柄や、最初の名義書換日が判明しない銘柄には、概算取得費を用いています(令和元年11月28日裁決・裁事117集)。

 この裁決は、取得経緯や客観的な資料を踏まえた個別判断です。任意の日の株価を取得費としてよいというものではなく、概算取得費で行った申告から実額へ変更する更正の請求の可否を直接判断したものでもありません。

 確認方法の詳細は、関連記事「上場株式等の取得費が分からない場合の確認方法」をご参照ください。

法人の株式売却には、そのまま適用できない

 ここまで説明した5%の取扱いは、個人の所得税に関するものです。法人が株式を売却した場合に、個人の所得税の通達を根拠として売却代金の5%を取得原価にすることはできません。

参考資料・根拠

法令・通達・国税庁公表資料

  • 所法33、38、48、60、所令109、118、措法31の4、37の10、37の11、37の11の3、措令25の10の2、通法23
  • 措通37の10・37の11共-13「株式等の取得価額」
  • 措通37の11の3-14「株式等に係る譲渡所得等の課税の特例に関する取扱い等の準用」
  • 国税庁タックスアンサーNo.1464「譲渡した株式等の取得費」
  • 国税庁タックスアンサーNo.1466「同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費」
  • 名古屋国税局文書回答(平成24年12月11日・一筆の土地の共有持分に応じた概算取得費と実額取得費の適用)
  • 国税庁「上場株式等の取得価額の確認方法」
  • 国税庁タックスアンサーNo.2026「確定申告を間違えたとき」
  • 国税庁「所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」

裁決例

  • 令和元年11月28日裁決(裁事117集)
  • 令和6年4月22日裁決(裁事135集)

国税内部資料・解説資料

  • 東京国税局税務相談室「誤りやすい事例集(改訂版)」平成14年6月・譲渡所得55「概算取得費(5%)の適用の可否」(TAINS収録の開示情報・所事例007401)
  • 国税庁課税部資産課税課「株式譲渡益課税のあらましQ&A」平成31年1月・問22「株式等の取得費と概算取得費(5%)との関係」61頁
  • 大阪国税局資産課税課「資産税関係質疑応答事例集」平成23年6月24日・85頁
  • 東京国税局課税第一部資産課税課・資産評価官「資産税審理研修資料」令和元年8月・256頁
  • 『令和7年版譲渡所得・山林所得・株式等の譲渡所得等関係租税特別措置法通達逐条解説』措通37の10・37の11共-13、924~925頁

関連記事

 ※本記事は、令和8年11月3日時点で確認した法令・公表資料等に基づいています。過年度の申告については、その年分に適用される法令等を確認してください。

株式の譲渡所得の計算上、同一銘柄で、取得価額が不明のものと明らかなものがある場合の概算取得費(5%)の適用の可否(所事例7401 税相版 誤りやすい事例集)

 同一銘柄で部分的に概算取得費(5%)を適用することはできないため、全部について5%とするか、取得価額を合理的に算出し、総平均法に準ずる方法によります。不明なものは5%、明らかなものは実際の取得価額をもとに総平均法に準ずる方法で取得費の計算をおこなうことはできません。

国税庁課税部資産課税課情報「株式譲渡益課税のあらましQ&A」(平成31年1月)問22「株式等の取得費と概算取得費(5%)との関係」より

 実際の取得価額を基に計算した株式等の取得費の金額(同一銘柄の株式等を2回以上にわたって取得している場合には、総平均法に準ずる方法により計算した金額)と概算取得費(譲渡価額の5%相当額)により計算した金額とを比較して、いずれか高い方をその株式等の取得費とすることができる(措通37の10・37の11共-13)。
 なお、概算取得費を選択した場合であっても、その個々の株式等の実際の取得価額を譲渡価額の5%相当額に置き換えるものではないことに留意する。

(設例)
【取得】 取得時期 株数(株) 単位(円) 取得価額
     S47・10 10,000    50    500,000
     H12・10 1,000    600    600,000
      (計) 11,000         1,100,000

【譲渡】 譲渡時期 株数(株) 単位(円) 譲渡価額
     H30・1  11,000    3,000  33,000,000

(実際の取得価額を基に計算した取得費)
1,100,000円(取得価額の合計額)÷11,000株(取得株数の合計)=100円(単価)
@100円(単価)×11,000株(譲渡株数)=1,100,000円

(概算取得費)
33,000,000(譲渡価額)×5%=1,650,000円(@150円)

(説明)
 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、総平均法に準じて計算した金額(@100円)と譲渡価額の5%(@150円)とを比較していずれか高い方(@150円)を取得費とすることができる。

株式等の譲渡所得等における概算取得費に係る更正の請求の適用可否-東京国税局 課税第一部 資産課税課/資産税審理研修資料(令和元年8月作成)

(質疑事項)
 甲は、平成30年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告において、株式等に係る譲渡所得の計算に際し、当該株式等の取得費を実額により計算していた。
 その後、甲は、当該株式等の譲渡所得の計算において、取得費を当該株式等の譲渡による収入金額の100分の5に相当する金額(以下「本件概算取得費」という。)に基づき計算した方が実額よりも有利になることから、本件概算取得費により取得費を計算する旨の更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)を行った。
 この場合、本件更正の請求は認められるのか。

(答)
 本件更正の請求は認められる。

(理由)
1 株式等の譲渡所得等に係る概算取得費の適用について
 株式等を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上、取得費に算入する金額は、実際の取得に要した金額に基づき計算するところ、当該株式等の譲渡による収入金額の100分の5に相当する金額を譲渡所得の計算上、収入金額から控除する取得費として計算しているときはこれを認めて差し支えないとされている(措通37の10・37の11共-13)。

2 当てはめ
 上記1のとおり、納税者が申告において、概算取得費に基づき取得費を計算した方が実額よりも有利になるとして株式等の譲渡所得の計算をしている場合には、概算取得費による当該譲渡所得の計算を認めていることからすれば、株式等の取得費を本件概算取得費とする旨の本件更正の請求を否認する必要性はない。
 したがって、本件更正の請求は認められる。

株式等の譲渡に係る取得費(実額)を収入金額の5%とすることを求める更正の請求の可否-大阪国税局 資産課税課「資産税関係質疑応答事例集」(平成23年6月24日)

(質疑事項)
 甲は、株式等の譲渡所得の金額の計算上、収入金額の5%に相当する金額に満たない金額(実額)を取得費として申告していた。
 この場合、甲は収入金額の5%に相当する金額を取得費として更正の請求をすることができるか。

(回答)
 取得費を収入金額の5%に相当する金額とする更正の請求は認められない。

(理由)
1 租税特別措置法通達37の10-14(現行通達は「37の10・37の11共-13」)では、「・・・譲渡をした同一銘柄の株式等について、当該株式等の譲渡による収入金額の100分の5に相当する金額を当該株式等の取得価額として事業所得の金額若しくは雑所得の金額を計算しているとき又は当該金額を譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費として計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする。」と定めている。
 この取扱いは、譲渡収入金額の5%相当額を取得価額として申告することとしてもこれを認めることを明らかにしたものであり、取得価額が明らかでないような場合に、課税当局において譲渡収入金額の5%相当額を取得費として認定するというものではない。

2 また、本件においては、株式等の譲渡所得の計算上収入金額から控除する取得費を実際の取得価額で計算していることから、国税通則法23条1項1号に規定する課税標準等若しくは税額等の誤りがあった場合に該当しない。

3 以上のことから、更正の請求において、株式等の譲渡所得の計算上控除する取得費を収入金額の5%に相当する金額とすることは認められない。

日本税理士会連合会機関紙「税理士界」1365号/平成30年-事例10

【譲渡所得の計算において概算取得費の適用を失念したため過大納付となった事例】東京海上日動火災保険株式会社

<事故概要>
 譲渡所得の計算において、収入金額から控除する取得費については、譲渡した資産を実際に取得するために要した金額ではなく、収入金額の5%相当額(以下「概算取得費」)とすることができる。
 譲渡所得の計算において、税理士は概算取得費の方が有利であったにもかかわらず、その適用を失念し、結果として過大納付所得税等が発生したことから、依頼者より損害賠償請求を受けた。

<コメント>
 税理士は誤りに気付き、すぐに所轄税務署に更正の請求を行ったが、更正事由に該当しないことから更正の請求は認められなかった。本件は、税理士が概算取得費の適用を失念したことが原因で過大納付税額が発生したことから、税理士に責任があると判断された。

上場株式の名義書換日を取得時期とし、その時期の相場(終値)によって算定することも合理的な取得費の推定方法であると判断された事例-令和元年11月28日裁決(裁事117集)(一部取消し)

(1)事案の概要

 本件は、原処分庁が、申告漏れとなっていた審査請求人X保有の一般口座内株式について概算取得費を用いて上場株式等の譲渡所得の金額を計算して、所得税等の更正処分等を行ったことから、Xがその処分の取消しを求めた事案である(その他、修正申告において、源泉徴収選択口座で生じた上場株式等の譲渡損失の金額等を新たに計上できるか否か等の争いがあるが省略)。

(2)裁決要旨(一部取消し)

① 株式等を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上、取得費に算入する金額は、金銭の払込みにより取得した株式等や購入した株式等については、その払込みをした金銭の額(取得のために要した費用を含む。)又はその購入の代価(購入手数料等を含む。)であるが、2回以上にわたって同一銘柄の株式等を取得している場合には、所得税法施行令105条1項1号に掲げる総平均法に準ずる方法によって算出した1単位当たりの金額に、譲渡した株数を乗じて計算した金額となる。
 そして、本件通達規定(租税特別措置法《株式等に係る譲渡所得等関係》の取扱いについて37の10・37の11共-13)は、納税者が、株式等を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額に関し、譲渡をした同一銘柄の株式等について、概算取得費を当該株式等に係る譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費として計算しているときは、これを認めて差し支えない旨定めていることからすれば、当該規定は、取得費の額について、納税者の利便性も考慮し、納税者の利益に反しない限り、簡便な計算方法によることを認める趣旨であり、当審判所においても相当と認められる。
 そうすると、原処分庁が課税処分を行うに当たって、Xに対する調査を含め、その調査を尽くしても取得時期及び取得価額が明らかにならない場合及び概算取得費を取得費の額とすることが納税者の利益と認められる場合において、概算取得費を用いることも相当である。

② 上記の総平均法に準ずる方法による株式等の取得費の算定に当たっては、当該株式等の取得価額が必要であるところ、これらの事項は、取引証券会社から交付される取引報告書や顧客勘定元帳などにより確認することが可能であり、これらによっても取得価額が明らかでない場合には、株式等の名義書換日を調べて取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも、明確かつ簡便な推定方法として合理的であると解される。
 本件においては、本件各株式の取得価額について、これらを直接的に立証する客観的な証拠資料等が確認できないところ、上記同様、本件各株式についてその名義書換日を調べて取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも、合理性を有する取得価額の把握方法であると解される。
 そして、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、本件各株式は本件被相続人が有償取得したものと推認され、また、本件各株式について、本件被相続人に係る顧客勘定元帳及び有価証券明細簿並びに本件各株式の名義書換代理人からの回答等を検討したところ、本件各株式のうち、J社、K社、L社、M社、N社、P社、Q社及びR社の各株式の名義書換日やその日の終値等の状況は、別表の「年月日」、「取引区分等」、「増加株数」、「減少株数」、「残株数」及び「備考」の各欄のとおりであった(以下、名義書換日が判明した銘柄の株式を「本件各判明分株式」という。)。なお、本件各株式のうち、S社、T社及びU社については、いずれも最初の名義書換日が判明しなかった。
 以上を前提とすれば、本件各判明分株式については、有償取得されたことを前提に、名義書換日の相場(終値)で取得価額を算定することも明確かつ簡便な推定方法として合理性を有する取得価額の把握方法であると解されることから、本件各判明分株式の取得費については、概算取得費によらず、総平均法に準ずる方法により算定することが相当である。

③ もっとも、本件各判明分株式のうち、P社及びQ社の各株式の取得費については、概算取得費により算定した金額が総平均法に準ずる方法により算定した金額を上回るため、概算取得費により算定するのが相当である。また、本件各株式のうち、S社、T社及びU社については、最初の名義書換日が判明しなかったのであるから、その取得費についても、概算取得費により算定するのが相当である。

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