クラウド会計対応 月額5,500円からの顧問料 東京都豊島区池袋の格安顧問料の税理士です

国内で登録を受けていない外国証券会社への売委託により生じた上場株式等の譲渡損失は、損益通算・繰越控除できるのか?

概要

 株式等の譲渡による事業所得、譲渡所得又は雑所得については、一般株式等に係る譲渡所得等と上場株式等に係る譲渡所得等とに区分して申告分離課税の対象となります(措法37の10、37の11、国税庁タックスアンサーNo.1463)。

 これらの区分ごとの計算上生じた損失は、原則として他の所得から控除することはできず、上場株式等に係る譲渡損失を一般株式等に係る譲渡所得等から控除することもできません(措法37の10、37の11)。

 なお、外国金融商品市場において売買されている株式等も「上場株式等」に含まれます。

 したがって、外国株式であること自体が以下の特例の適用を妨げるのではなく、その譲渡が法令に定める対象譲渡に該当するかどうかが問題となります(措法37の11、国税庁タックスアンサーNo.1463)。

 一定の要件を満たす場合には、上場株式等を金融商品取引業者等を通じて譲渡したこと等により生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額について、確定申告により、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得の金額及び配当所得の金額と損益通算することができます。

 ただし、上場株式等に係る配当所得については、申告分離課税を選択したものに限られます(措法37の12の2、措通37の12の2-2)。

 また、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、その年分の翌年以後3年間にわたり、確定申告により、上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除することができます(措法37の12の2)。

 上場株式等に係る譲渡損失を翌年以後に繰り越すためには、損失が生じた年分について必要な付表・明細書を添付した確定申告書を提出するとともに、その後の年分についても連続して確定申告書を提出する必要があります。

 株式等の譲渡がなかった年についても、その翌年以後に繰越控除を受けようとする場合には確定申告が必要です(措法37の12の2、措令25の11の2、措規18の14の2、国税庁タックスアンサーNo.1474)。

外国証券業者への売委託による譲渡損失

 いわゆる「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の特例の対象となる上場株式等の譲渡は、措法37条の12の2第2項に定める一定の譲渡に限られます(措法37の12の2②)。

 例えば、金融商品取引業者のうち第一種金融商品取引業を行う者又は登録金融機関への売委託により行う上場株式等の譲渡は対象となります(措法37の12の2②、国税庁「令和7年分 株式等の譲渡所得等の申告のしかた」Ⅳ2⑴①)。

 したがって、自己名義の国外証券口座を利用し、日本において第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者又は登録金融機関に該当しない外国証券業者へ直接売委託して行う譲渡については、措法37条の12の2第2項に定める他の対象譲渡にも該当しない限り、原則として本特例の対象とはなりません(措法37の12の2②)。

 ただし、外国証券業者が関与する譲渡であれば全て本特例の対象外になるわけではありません。

 信託会社(信託業務を営む金融機関を含みます。)の国内にある営業所に信託されている上場株式等を、その営業所を通じて外国証券業者への売委託により譲渡する場合又は外国証券業者に対して譲渡する場合は、本特例の対象となります(措法37の12の2②、国税庁「令和7年分 株式等の譲渡所得等の申告のしかた」Ⅳ2⑴⑩)。

 この取扱いは平成24年度税制改正により追加され、平成24年4月1日以後に行う上場株式等の譲渡から適用されています(平成24年法律第16号、同法附則14条)。

 また、上場株式等の譲渡であっても、相対取引など措法37条の12の2第2項に定める対象譲渡に該当しない取引によって生じた損失については、本特例による損益通算及び繰越控除を受けることはできません(措法37の12の2、国税庁タックスアンサーNo.1474)。

 国外出張や海外赴任などをきっかけに滞在国の証券業者に証券口座を開設し、日本へ帰国した後もその口座を利用し続けている方もいます。

 このような場合、その外国証券業者への直接の売委託が措法37条の12の2第2項に定める他の対象譲渡にも該当しないときは、その譲渡による損失について、上場株式等に係る配当所得等との損益通算及び翌年以後3年間の繰越控除を受けることはできません(措法37の12の2②)。

関連記事

金融商品取引業者等の登録状況の確認

 本特例の適否については、まず、その譲渡が措法37条の12の2第2項に定める対象譲渡のいずれかに該当するかを確認する必要があります。

 そのうち売委託先の登録が要件となる類型については、取引時点において、売委託先が第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者又は登録金融機関に該当していたかを確認する必要があります(金商法28①、29、33の2)。

 金融商品取引業者等の現在の登録状況は、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」又は「金融事業者一括検索機能」で確認することができます。

 もっとも、過去の取引について本特例の適否を判定する場合には、取引時点における登録状況を確認する必要があります。

 そのため、現在公表されている一覧のみでは確認できない場合には、所管の財務局又は取引業者への照会等により確認することになります。

国外の証券業者への売委託により生じた上場株式等の譲渡損失について、租税特別措置法37条の12の2が規定する特例を適用することはできないとされた事例-京都地裁平成27年7月3日判決(税資265号-106・順号12689)、大阪高裁平成28年3月17日判決(税資266号-48・順号12826)、最高裁第二小法廷平成28年9月30日決定(税資266号-132・順号12910) 

(1)事案の概要

 本件の事案の概要は、次のとおりである。
① X(原告、控訴人、上告人)は、国内に住所を有する青色申告者であるが、平成23年中に、米国に本店を置くA社(以下「本件外国証券業者」という。)への売委託により行った株式譲渡により、米国の金融商品市場において176万円余の損失を生じた(以下「本件損失」という。)。
② Xは、処分行政庁に対し、平成24年3月6日、本件損失について租税特別措置法37条の12の2が規定する特例(以下「本件特例」という。)が適用されることを前提として、「株式等の譲渡に係る譲渡所得等の金額(上場分)」欄に損失176万円余と、「翌年以後に繰り越す株式等に係る譲渡損失の金額」欄に3196万円余と、それぞれ記載した平成23年分に係る所得税の確定申告書を提出した。
 なお、本件特例は、平成21年分以降の各年分の上場株式等に係る譲渡損失の金額のうち、本件特例の対象業者への売委託により生じたものを、当該年分の分離課税の配当所得の金額を限度として当該年分の当該配当所得金額から控除(損益通算。租税特別措置法37条の12の2第1項)した上で、翌年以降にこれを繰り越し、その年の翌年以後3年以内の各年分の株式等に係る譲渡所得等の金額及び分離課税配当所得金額から控除する(繰越控除。同条第6項)というものである。
③ 処分行政庁は、Xに対し、平成24年11月28日付けで、本件外国証券業者への売委託により生じた株式等の譲渡損失の金額について本件特例の適用がなく、翌年以後に繰り越すことができないなどとして、本件損失に係る176万円余を「株式等の譲渡に係る譲渡所得等の金額(非公開分)」に計上し、「株式等の譲渡に係る譲渡所得等の金額(上場分)」を0円とした上で、「翌年以後に繰り越す株式等に係る譲渡損失の金額」を3196万円余から813万円余とする内容を含む更正処分(以下「本件更正処分」という。)をした。
 なお、本件外国証券業者は、本件特例の対象業者〔金融商品取引法(以下「金商法」という。)2条9項に規定する内閣総理大臣の登録を受けた金融商品取引業者であって同法28条1項に規定する第一種金融商品取引業を業として行う者又は同法2条11項に規定する登録金融機関(以下「本件特例対象業者」という。)〕に該当しない。
④ Xは、本件更正処分のうち上記更正に係る部分が違法であると、その取消しを求めた。

(2)本件の主な争点

 本件特例は、憲法13条ないし14条に違反するか否かである。

(3)一審判決要旨(棄却)(控訴)

① Xは、本件特例のうち、特例対象業者への売委託により生じた上場株式等に係る譲渡損失に限って繰越控除が認められており、その余の場合に繰越控除が認められていない点が、憲法13条ないし14条1項に違反する旨主張する。
② 本件特例の立法目的は、証券市場の活性化を図りつつ、株式等の取引に基づく譲渡所得について適正・公平な課税を実現することにあるものと解され、この立法目的は、正当なものであるといえる。そして、特例対象業者は、内閣総理大臣の登録を受けることを要するものであって、株式等の譲渡の対価の支払を受ける者の氏名、住所、その年中に支払の確定した上場株式等の譲渡の対価の額等を記載した支払調書の作成及び税務署長への提出を義務付けられているから、課税庁は、支払調書を通じて上場株式等の譲渡損失を正確に把握することが可能である一方、本件特例対象業者以外の業者は、これらの義務を負わず、課税庁は、これらの業者から納税者の上場株式等の譲渡損失を正確に把握できる保障がない。
③ 以上によれば、繰越控除制度の適用を特例対象業者への売委託により行う上場株式等の譲渡等に限定することは、立法目的のうち、特に適正・公平な課税を実現することに資するものであって、当該立法目的との関連で著しく不合理であることが明らかであるとはいえない。したがって、憲法14条1項に違反するものということはできない。また、そうである以上、本件特例が憲法13条に違反するとはいえない。
④ Xは、取引時においていずれの業者が本件特例対象業者であるか一意的に知ることは不可能であるから、課税要件明確主義に反し、憲法84条に違反する旨主張する。しかしながら、本件特例対象業者の登録簿は、公衆の縦覧に供されるものと法定されており、これを受けて、各財務局に備え置かれて公衆の縦覧に供されており、さらに、金融庁がインターネット上に開設するウェブサイトに掲載されるばかりか、本件特例対象業者は、その登録番号等の表示義務を負い、当該表示義務の履行は、刑事罰によって担保されているから、納税者は、当該業者が本件特例対象業者であるか否かを容易に確認することができるといえる。したがって、本件特例は、課税要件明確主義に適合するものであって、そのいずれにも違反するものではない。
⑤ 日米租税条約は、国際的な二重課税の排除及び両締約国間及び課税権の配分を目的とするところ、一方の締約国が法令によって租税の減免をすることをいかなる態様においても制限するものとは解されない。そうであれば、本件特例について、日米租税条約は、何らかの制限を加えることができるものとも解されない。したがって、本件特例は、日米租税条約に違反するものとはいえず、条約遵守義務を定めた憲法98条2項に違反するものでもない。
⑥ 処分行政庁は、Xの確定申告に対し、本件外国証券業者への売委託により生じた株式等の譲渡に係る損失の金額について本件特例の適用がなく、翌年以後に繰り越すことができないなどとして本件更正処分をしたものであって、処分行政庁による本件特例(租税特別措置法37条の12の2)の解釈及び適用に誤りはない。

(4)控訴審判決要旨(棄却)(上告・上告受理申立て)

 大阪高裁は、一審判決の判断を引用・補充し、Xの請求には理由がないとして控訴を棄却した。

(5)上告審決定要旨(棄却・不受理)(確定)

 最高裁では、本件特例の実体的な税法解釈について判断は示さなかった。

 最高裁第二小法廷は上告を棄却するとともに、本件を上告審として受理しない旨の決定をし、これにより事件は確定した。

(6)編注

 本件は平成23年中の譲渡に関する事案であり、平成24年法律第16号による改正前の措法37条の12の2が適用されている。

 前述したとおり、平成24年度税制改正では、平成24年4月1日以後の譲渡について、信託会社の国内営業所に信託されている上場株式等を、その営業所を通じて外国証券業者への売委託により譲渡する場合等が本特例の対象に追加されている。

 したがって、上記の裁判例は、現行法上、外国証券業者が関与する全ての譲渡について本特例の適用を否定したものではない(平成24年法律第16号、同法附則14条)。

令和元年6月3日裁決(大裁(所)平30第76号)

(1)事案の概要

 本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 審査請求人Xは、平成27年中に、アメリカ合衆国に本店を置く証券業者であるA社への売委託による株式の譲渡を行ったが、譲渡損失の金額(以下「平成27年分譲渡損失額」という。)が生じた。
 なお、A社は、平成27年中において、第一種金融商品取引業者又は登録金融機関(以下、第一種金融商品取引業者と登録金融機関とを併せて「本件特例対象業者」という。)として内閣総理大臣の登録を受けていなかった。
② Xは、平成27年分の所得税の確定申告書を法定申告期限までに原処分庁に提出した。
 その際、Xは、平成27年分譲渡損失額について、措置法37条の12の2に規定する上場株式等譲渡損失額の損益通算及び繰越控除に係る特例(以下「本件特例」という。)を適用し、平成27年中に生じた分離課税配当所得の金額と損益通算した。
③ 原処分庁は、平成30年3月12日付で、Xの平成27年分の所得税について更正処分をした。
 その際、原処分庁は、平成27年分譲渡損失額について、A社が本件特例対象業者に該当しないことから、本件特例が適用されないとして、平成27年中に生じた分離課税配当所得の金額と損益通算はできないとした。
④ 原処分庁が、当該譲渡は当該特例の対象となる上場株式等の譲渡に該当しないなどとして更正処分等を行ったことに対し、Xが、原処分の全部の取消しを求めた。

(2)本件の主な争点

 平成27年分譲渡損失額に本件特例が適用されるか否かである。

(3)裁決要旨(却下・棄却)

① 措置法第37条の10第1項は、居住者が平成16年1月1日以後に株式等の譲渡をした場合には、当該株式等の譲渡に係る譲渡所得については、他の所得と区分し、その年中の当該株式等に係る譲渡所得等の金額を計算し、その結果、損失の金額がある場合には、当該損失の金額は生じなかったものとみなす旨規定している。
 他方、平成21年分以後の各年分の上場株式等譲渡損失額については、本件特例により、当該年分の分離課税配当所得の金額を限度として、当該年分の当該分離課税配当所得の金額から控除することが認められている。
 そして、措置法第37条の12の2第2項は、本件特例の適用について、売委託により行う株式等の譲渡の場合は、本件特例対象業者への売委託により行う上場株式等の譲渡に係る損失の金額のみを対象とする旨規定している。
② これを本件についてみると、A社は、平成27年中において、本件特例対象業者として内閣総理大臣の登録を受けていなかった。
 したがって、平成27年譲渡は、本件特例対象業者への売委託により行う上場株式等の譲渡には該当せず、平成27年分譲渡損失額に本件特例は適用されない。
③ Xは、納税者が、確定申告の時点で、売委託を行った証券業者が本件特例対象業者に該当するか否かを正確に確認することができず、このような状況下で行った確定申告に対する更正処分は、通則法16条に規定する申告納税制度の趣旨に反し不当である旨主張する。
 しかしながら、本件特例対象業者の登録簿は、金融商品取引法29条の3の規定により公衆の縦覧に供されるものとされ、各財務局に備え置かれて公衆の縦覧に供されているほか、金融庁のホームページには平成19年9月30日以後に登録を受けた金融商品取引業者の登録年月日及び名称並びに業務の種別等が記載された登録一覧が記載されており、毎月末現在で更新されている。
 また、金融商品取引法37条《広告等の規制》1項の規定により、本件特例対象業者は、その登録番号等の表示義務を負い、同法205条10号及び207条1項6号の規定により、当該表示義務の履行は、刑事罰によって担保されているから、納税者は、取引時及び確定申告時のいずれにおいても、各財務局又は売委託を行った業者に問い合わせるなどすることで、当該業者が本件特例対象業者であるか否かを容易に確認することができる。
 そして、特定の本件特例対象業者が登録や登録抹消を頻繁に繰り返すことは一般的に想定し難い以上、納税者は、上記の公表制度の下において、自己が売委託をしようとしている業者が本件特例対象業者か否かを知ることが原則的に保障されているといえる。
 したがって、Xの主張は、その前提を欠き、採用することができない。
④ Xは、本件特例を適用しないとしてした原処分が、結果として適正・公正な課税の原則に反した差別を引き起こしているのであるから、かかる処分は不当である旨主張する。
 しかしながら、Xのこれらの主張は、結局、立法内容の不当性の主張又は立法政策に関する意見にすぎないところ、当審判所は、原処分庁が行った処分が国税に関する法令に反する違法又は不当なものであるか否かを判断する機関であって、その処分の基となった法令自体の適否又は合理性を判断することはその権限に属さないことである。
 よって、Xのこれらの主張については、審理の限りではない。

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry

error: Content is protected !!