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上場株式等の譲渡損失の繰越控除|連続申告要件と申告漏れ・更正の請求

概要

 上場株式等の売却で生じた損失を翌年以後に繰り越すには、損失が生じた年の確定申告だけでなく、その後も必要な書類を添付して確定申告を続ける必要があります。

 特に注意したいのは、後から申告書や明細書をそろえても、申告した順序などによっては繰越控除が認められないことです。この記事では、連続申告要件と、申告漏れ・更正の請求の取扱いを、実際の判決・裁決を踏まえて解説します。

上場株式等の譲渡損失は、一定の要件で3年間繰り越せます

 上場株式等の譲渡損失は、同じ年の他の上場株式等の譲渡益と差し引いて計算します。それでも残った損失を、給与所得や事業所得などと自由に損益通算することはできません(措法37の11①)。

 ただし、証券会社等への売委託など、法律で定められた譲渡によって生じた損失については、確定申告により、上場株式等の配当等に係る利子所得や、申告分離課税を選択した配当所得と損益通算できます。損益通算後も控除しきれない損失は、一定の要件の下で、翌年以後3年間の上場株式等の譲渡所得等や配当所得等から控除できます(措法8の4①、37の12の2①②⑤⑥)。

 総合課税で申告した配当所得や、申告不要とした配当等は、この損益通算・繰越控除の対象となる所得に含まれません。また、一般株式等の譲渡益から、この繰越損失を控除することもできません。

 上場株式等であっても、相対取引による損失などは、この特例の対象になりません。NISA口座内の売却損も対象外です(国税庁タックスアンサーNo.1474)。

繰越控除には、損失発生年からの連続申告が必要です

損失発生年・翌年以後・控除年の手続

 繰越控除を受けるためには、損失発生年分の申告、そこから続く年分の申告、実際に損失を控除する年分の申告について、それぞれ手続要件を満たす必要があります(措法37の12の2⑦)。

年分・状況主な手続
損失が生じた年損失額を記載した確定申告書付表と、株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書を添付して申告する
翌年以後、売却などの取引がなかった年繰り越す損失額を記載した確定申告書付表を添付して申告する
翌年以後、損失を控除する年控除額・繰越残額を記載した確定申告書付表を添付する。一般株式等又は上場株式等の譲渡所得等の金額がある場合は、計算明細書も添付して申告する

 上記の確定申告書付表の正式名称は「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」です。実際の申告では、申告対象年分に対応した様式を使用します(措規18の14の2③④、国税庁タックスアンサーNo.1474)。

取引がない年や、税金が発生しない年も申告を続けます

 例えば、令和5年に生じた損失は、要件を満たせば令和6年から令和8年までの所得から控除できます。令和6年に売却取引も配当等もなかったとしても、令和7年以後にその損失を使うためには、令和6年分について繰越しの申告をしておく必要があります。

 繰越控除の対象となる利益がない年でも、残っている損失額を明らかにして申告を続けることが大切です。売却しなかった年があっても、3年間という繰越期間が延びることはありません(措法37の12の2⑤⑦⑨、措令25の11の2⑪)。

給与や医療費控除の申告をしただけでは足りません

 毎年、何らかの確定申告書を提出していれば、当然に連続申告要件を満たすわけではありません。繰り越す損失額や控除額などを明らかにし、必要な付表・明細書を添付する必要があります。

 もっとも、繰越しの申告自体をしていなかった場合と、必要な申告をしていたものの損失額の計算に誤りがあった場合とでは、後から訂正できる範囲が異なります。

申告漏れがあった場合は、状況を分けて確認します

その年分の確定申告書をまだ提出していない場合

 この特例は、期限内申告だけを適用対象とする制度ではありません。提出できる期間内に、損失発生年分から後の年分へ順に、必要な書類を添付して期限後申告をすることで、適用を受けられる場合があります(措法37の12の2⑦⑨、通法18①)。

 ただし、後の年分の申告書を先に提出している場合には、提出順序が問題になります。また、期限後申告ができる期間にも限界があるため、何年前の損失でも後から申告できるわけではありません。

損失発生年分を申告済みですが、損失を申告していなかった場合

 一般口座などの譲渡損失を申告していなかった場合には、更正の請求に基づく更正によって新たに損失額が認められることで、損失発生年分の申告要件を満たすものとして取り扱われる場合があります(措通37の12の2-5)。

 ただし、この取扱いは、その後の年分についての連続申告要件まで免除するものではありません。既に後年分の申告書を提出している場合に、損失発生年分を後から更正すれば、当然に繰越控除ができるということにはなりません。

 更正の請求ができる期間は原則として法定申告期限から5年以内ですが、その期間内であることと、繰越控除の手続要件を満たすことは、別に確認する必要があります(通法23①、措法37の12の2⑦⑩)。

損失を適正に申告していましたが、金額が少な過ぎた場合

 損失発生年分について必要な明細書等を添付して申告し、損失額が過少であったために更正された場合には、更正後の損失額を基に繰越控除を計算する取扱いがあります(措通37の12の2-6)。

 例えば、繰越対象の損失を100万円と申告していたものの、取得費の計算誤りなどを訂正した結果、正しくは150万円であったと認められる場合です。その後の年分についても必要な申告を続けているかを確認した上で、更正後の金額を反映させます。

 このように、既に申告していた損失額の訂正と、損失を初めて申告する場合とは、区別する必要があります。

源泉徴収ありの特定口座を申告しなかった場合

 源泉徴収ありの特定口座について、既に提出した確定申告書でその口座の譲渡損益を申告せず、申告不要制度を適用した場合には、その後の更正の請求や修正申告で、当該口座の譲渡損益を追加することはできません。

 この場合は、一般口座の申告漏れとは取扱いが異なります。一方、その年分の確定申告書をまだ提出していない場合は、申告不要を選択した確定申告書を提出済みの場合と区別して検討します(措法37の11の5、国税庁「特定口座とは」「特定口座の上場株式等の配当等」)。

 また、源泉徴収ありの特定口座内の譲渡損失を申告するときは、その口座に受け入れた配当等も併せて申告する必要があります(国税庁タックスアンサーNo.1476)。

連続申告要件をめぐる裁判例・裁決例

大阪地裁令和元年10月18日判決

 この事件では、平成24年に上場株式等の譲渡損失が生じていましたが、納税者は、その年分の確定申告で損失を申告せず、必要な書類も添付していませんでした。

 その後、平成25年分などの申告を先に済ませた後、平成29年4月10日に、平成24年分の損失を明らかにする更正の請求をし、併せて後年分の更正の請求や期限後申告をしました。

 納税者は、更正の請求によって損失発生年分の要件を満たす場合には、連続申告要件を求めずに繰越控除を認めるべきだと主張しました。課税庁は、損失発生年分の要件と連続申告要件は別の要件であると主張しました。

 裁判所は、年ごとに繰越損失の計算を行って確定させる必要があるとして、連続申告要件は必要であると判断しました。本件では、損失発生年分の要件を満たした更正請求日より前に平成25年分の確定申告書を提出していたことなどから、繰越控除は認められませんでした。

 損失発生年分の更正が認められたとしても、既に提出していた後年分の申告が当然に連続申告の要件を満たすことにはならない点が重要です(大阪地裁令和元年10月18日判決・平成30年(行ウ)第190号、税資269号-104・順号13327。請求棄却・確定)。

令和3年5月20日裁決――損失を0円とした付表があった事例

 この事例では、納税者は平成29年分の確定申告書に付表を添付していましたが、繰り越す損失額を0円としていました。平成30年分についても、既に確定申告書を提出していました。

 その後、平成29年分について更正の請求をし、令和2年6月9日付けの更正処分で、新たに繰越対象の損失額が認められました。納税者は、当初から付表を添付していたため、損失発生年分の要件を満たしていたと主張しました。

 審判所は、本件の0円と記載した付表では、損失発生年分の要件を満たさないと判断しました。また、当該要件を満たす前に平成30年分の確定申告書を提出していたため、連続申告要件も満たさず、令和元年以後への繰越しは認められないとしました。

 この裁決は、付表を形式的に添付するだけでなく、繰越対象の損失額を明らかにする必要があることを示しています。なお、平成30年分の申告書記載要件も争点でしたが、審判所は、連続申告要件を満たさないため、その点を判断するまでもなく棄却しました(令和3年5月20日裁決・広裁(所)令2第10号)。

更正請求日と更正日を同一視しないことが必要です

 大阪地裁判決は、少なくとも更正の請求の後に、後年分の確定申告書を順次提出する必要があると述べています。一方、上記の令和3年5月20日裁決は、更正後の連続申告を要求する説明をしています。

 いずれも、更正の請求をする前に後年分の申告書を提出していた事案です。このため、両事例だけから、更正の請求を先にすれば、その後の申告の時期を問わず必ず要件を満たすと判断することはできません。申告書、更正請求書、更正通知書の各日付を区別して確認する必要があります。

平成28年3月7日裁決――後年分の申告を先にしていた事例

 この公表裁決でも、平成24年分の確定申告書を先に提出し、その後に平成22年分・平成23年分の確定申告書を提出していたため、提出の順序が問題になりました。

 審判所は、後から各年分の計算がつながる形にそろえるだけでは足りず、損失発生年分から後年分へ順に申告する必要があるとして、繰越控除を認めませんでした(平成28年3月7日裁決・裁事102集)。

令和4年1月12日裁決――期限後申告できる期間も問題になります

 この事例では、平成25年分の損失を繰り越すため、令和2年に平成25年分以後の期限後申告がされました。

 審判所は、本件では平成25年分の法定納期限から5年を経過し、期間を延長する事情も認められないとして、その年分の期限後申告はできず、損失を繰り越せないと判断しました。期限後申告が認められるかどうかは、対象年分や時効等の事情も含めて確認する必要があります(令和4年1月12日裁決・関栽(所)令3第13号)。

連続申告要件が設けられた趣旨

 大阪地裁令和元年10月18日判決(税資269号-104(順号13327))では、連続申告要件が設けられた趣旨について、以下のように判示しています。

「連続申告要件が設けられた趣旨は、所得税は、納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とする申告納税方式による国税であること(通則法16条1項1号)から、他の所得と区分して所得税が課される株式等に係る譲渡所得等の金額についても、連続した申告によって、その年ごとに、本件特例(編注、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除のこと)に基づく繰越控除の計算をし、これを確定する必要があることによるものと解される。すなわち、本件特例の適用を受けることとした場合、控除年分において本件特例に基づく繰越控除の計算をし、所得税が課される株式等に係る譲渡所得等の金額を確定させるためには、控除年分の前年以前3年内の各年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額が確定している必要があることから、措置法37条の12の2第8項(現行、第7項)は、損失発生年分の所得税につき損失発生年分添付書類の添付がある確定申告書を提出すること(損失発生年分申告要件)とは別に連続申告要件を設け、控除年分の確定申告書において必要な事項(措置法施行令25条の11の2第11項)を記載して翌年以後において本件特例の適用を受ける旨が明らかにされ、翌年以後において株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除することができる上場株式等に係る譲渡損失の金額が確定している場合に限って、本件特例の適用を認めたものと解される。」

現行制度と裁判例当時の制度を区別します

 平成27年分以前の制度には、申告書の提出や書類の添付がなかったことについて、やむを得ない事情がある場合の宥恕規定がありました。この規定は平成25年度税制改正で廃止され、平成28年分以後の所得税には適用されません(平成25年法律第5号附則46、財務省「平成25年度税制改正の解説」137頁)。

 大阪地裁令和元年10月18日判決で問題になった年分には旧制度が適用されていました。判決中に宥恕規定への言及があっても、現行制度にも同じ救済規定があるという意味ではありません。

 また、この判決の対象年分に適用された旧法では、繰越控除の本体規定は措法37の12の2⑥、連続申告等の規定は同⑧でした。現行の対応する規定は、それぞれ同⑤、同⑦です。

申告前に確認したいこと

  • 損失が、証券会社等への売委託など、この特例の対象となる譲渡によるものか
  • 損失発生年分から、必要な付表・明細書を添付して申告しているか
  • 取引がなかった年も、残っている損失額を明らかにして申告しているか
  • 損失発生年分より先に、後年分の申告書を提出していないか
  • 訂正する損失が、初めて申告するものか、既に申告した金額の訂正か
  • 源泉徴収ありの特定口座について、申告不要を選択した確定申告書を提出していないか
  • 更正の請求や期限後申告ができる期間内か

 繰越控除では、損失の金額だけでなく、各年分の申告内容と手続の順序が結論を左右します。申告漏れに気付いた場合は、過年度の申告書、付表、特定口座年間取引報告書、更正通知書などを年分ごとに並べて確認することが大切です。

関連記事・主な参考資料

  • 上場株式等の売却損と配当等との損益通算及び売却損の繰越控除
  • 国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
  • 国税庁「特定口座制度」
  • 国税庁・措通37の12の2-5、37の12の2-6
  • 大阪地裁令和元年10月18日判決
  • 平成28年3月7日裁決

 この記事は、令和8年11月2日現在の法令・公表資料等に基づいています。

関連記事

大阪地裁令和元年10月18日判決(税資269号-104(順号13327))(棄却)(確定)

(1)事案の概要

 本件の事案の概要は、次のとおりである。
① Xは、平成24年中に、1336万円余の上場株式等に係る譲渡損失の金額(以下「本件譲渡損失額」という。)があったところ、平成24年分所得税の確定申告書を平成25年3月15日に提出したが、当該確定申告書に、本件譲渡損失額を記載せず、損失発生年分添付書類の添付もしなかった。

② Xは、平成25年分の所得税等の確定申告書を平成26年3月17日に提出したが、当該確定申告書には、本件譲渡損失額の記載はなく、控除年分添付書類の添付もしなかった。また、Xは、平成26年分の所得税等の確定申告書を期限内に提出しなかった。

③ Xは、平成27年中に、998万円余の上場株式等に係る譲渡所得の金額(以下「本件譲渡所得額」という。)があったが、平成28年2月29日に提出した平成27年分確定申告書には、本件譲渡所得額及び本件譲渡損失額の記載はなく、控除年分添付書類の添付もなかった。

④ Xは、所轄税務署の調査担当職員から、平成27年分所得税等に係る所得税等について本件譲渡所得額の申告漏れの指摘を受け、平成28年12月5日、修正申告をした。

⑤ Xは、平成29年4月10日、平成24年分所得税並びに平成25年分及び平成27年分所得税等につき、本件譲渡損失額の申告漏れを理由として、更正の請求をした。当該更正の請求書には、平成24年分につき損失発生年分添付書類が、平成25年分及び平成27年分につき、控除年分添付書類がそれぞれ添付されていた。また、Xは、同日、平成26年分の所得税等につき期限後申告をした。当該期限後申告に係る申告書には、控除年分添付書類が添付されていた。

⑥ 所轄税務署長は、平成29年6月29日、次のとおり、各処分を行った。
 平成24年分更正請求に対し、本件譲渡損失の金額を翌年以後に繰り越す旨の更正処分をしたが、平成25年分更正請求に対し、平成25年分確定申告書において本件譲渡損失の金額について記載されていないことを理由として、更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。
 平成26年分所得税等について、平成25年分確定申告において本件譲渡損失の金額を翌年以後へ繰り越す旨の申告等をしていなかったことから、翌年以後に繰り越される株式等に係る譲渡損失の金額は0円であるとして更正処分をし、平成27年分更正請求に対し、更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。

⑦ Xは、上記各処分を不服として、本訴を提起した。

(2)本件の主な争点

 本件各年分の所得税において、本件譲渡損失額につき本件特例の適用を受けるためには、連続申告要件を要するか否かである。

(3)判決要旨(棄却)(確定)

① 租税特別措置法(以下「措置法」という。)37条の12の2第8項は、同条6項に規定する居住者が、(イ)損失発生年分の所得税につき損失発生年分添付書類の添付がある確定申告書を提出し(損失発生年分申告要件)、かつ、(ロ)その後において連続して確定申告書を提出している場合(連続申告要件)であって、(ハ)同項の確定申告書に控除年分添付書類の添付がある場合(控除年分申告要件)に限り、本件特例を適用する旨を規定する。そして、同条8項が「連続して確定申告書を提出している」と定めていることに鑑みれば、その文理上、本件特例の適用を受けるためには、控除年分の確定申告書の提出をした時点において、損失発生年分の所得税につき損失発生年分添付書類の添付がある確定申告書を提出した上、その後の年分について、連続した確定申告書の提出を完了していることを要することとしたものと解される。このことに加えて、同条6項は、その年の前年以前3年内の各年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額を有する場合に限って本件特例が適用される旨を規定しており、控除年分の前年以前において既に控除された上場株式等に係る譲渡損失の金額については、控除年分において控除する上場株式等に係る譲渡損失の金額の対象から除外していることも併せ鑑みれば、同条6項及び8項は、損失発生年分の所得税に係る確定申告書の提出後に、その後の年分の所得税につき、順次、当該年分の確定申告書を提出することを通じて、上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合には、措置法37条の10条1項に規定する株式等に係る譲渡所得等の金額等からこれを控除することを予定しているものと解される。

② 連続申告要件が設けられた趣旨は、所得税は、納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とする申告納税方式による国税であること(通則法16条1項1号)から、他の所得と区分して所得税が課される株式等に係る譲渡所得等の金額についても、連続した申告によって、その年ごとに、本件特例に基づく繰越控除の計算をし、これを確定する必要があることによるものと解される。すなわち、本件特例の適用を受けることとした場合、控除年分において本件特例に基づく繰越控除の計算をし、所得税が課される株式等に係る譲渡所得等の金額を確定させるためには、控除年分の前年以前3年内の各年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額が確定している必要があることから、措置法37条の12の2第8項は、損失発生年分の所得税につき損失発生年分添付書類の添付がある確定申告書を提出すること(損失発生年分申告要件)とは別に連続申告要件を設け、控除年分の確定申告書において必要な事項(措置法施行令25条の11の2第11項)を記載して翌年以後において本件特例の適用を受ける旨が明らかにされ、翌年以後において株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除することができる上場株式等に係る譲渡損失の金額が確定している場合に限って、本件特例の適用を認めたものと解される。

③ 他方で、措置法37条の12の2第8項は、本件特例の適用要件として、損失発生年分の所得税につき損失発生年分添付書類の添付がある確定申告書を提出すること(損失発生年分申告要件)を定めているところ、損失発生年分申告要件が設けられた趣旨は、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の対象となるのは、上場株式等に係る譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額に限られることから、当該損失の金額を申告上明らかにさせておく必要があるためであると解される。このような趣旨に鑑み、措置法通達は、損失発生年分の確定申告書に損失発生年分添付書類の添付がない場合であっても、更正の請求において当該損失の金額が明らかにされた場合には、確定申告書に損失発生年分添付書類が添付された場合と同様に取り扱う旨の運用を定めたものということができる。

④ 本件において、平成24年分の所得税につき損失発生年分添付書類の添付がある確定申告書の提出(損失発生年分申告要件の充足)があった日は、同年分の所得税の更正の請求をした平成29年4月10日であるのに対し、Xは、平成26年3月17日には、既に平成25年分の所得税等の確定申告書を提出している。そうすると、Xは、本件各年分のいずれについても、損失発生年分(平成24年分)の所得税につき損失発生年分添付書類の添付がある確定申告書を提出(本件では、前記更正の請求をしたことがこれに該当する。)した後において、損失発生年分の後の年分の所得税につき、順次、当該年分の確定申告書を提出していないから、本件各年分の所得税については、連続申告要件を充足しておらず、本件特例の適用はないというべきである。

令和3年5月20日裁決(広裁(所)令2第10号)(棄却)

(1)事案の概要

 本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 平成29年分の確定申告
 審査請求人Xは、平成30年3月15日、原処分庁に対して、平成29年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の確定申告書(以下「本件29年分確定申告書」という)を提出した。
 その際、Xは、本件29年分確定申告書に、譲渡損失計算明細書として、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」(以下「本件29年分確定申告書付表」という。)を添付した。確定申告書付表の「本年分の損益通算後の上場株式等に係る譲渡損失の金額」欄には零円と記載した。

② 平成30年分の確定申告
 Xは、平成31年3月14日、原処分庁に対して、平成30年分の所得税等の確定申告書(以下「本件30年分確定申告書」という。)を提出した。
 その際、Xは、本件30年分確定申告書に、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」を添付しなかった。

③ 平成29年分及び平成30年分の各更正の請求等(第一次)
 Xは、令和元年11月18日、原処分庁に対して、平成29年分及び平成30年分の所得税等につき、いずれも雑所得の金額が過大であったとして、国税通則法(以下「通則法」という。)23条1項の規定に基づき、各更正の請求書を提出した。
 原処分庁は、上記の各更正の請求に対して、令和元年11月21日付で、いずれも更正すべき理由があるとして各更正処分をした。

④ 平成29年分の更正の請求(第二次)
 Xは、令和2年1月31日、原処分庁に対して、平成29年分の所得税等につき、本件29年分確定申告書で申告した譲渡以外に、上場株式等の譲渡損失の金額が生じていたとして、当該譲渡損失の金額を含めて計算した上場株式等に係る譲渡損失の金額を平成30年以後に繰り越すことなどを求めて、通則法23条1項の規定に基づき、更正の請求書を提出した(以下、当該更正の請求書による更正の請求を「本件29年分更正請求」という。)。
 その際、Xは、上記の更正の請求書に、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」を添付した。

⑤ 平成30年分の更正の請求(第二次)
 Xは、令和2年3月25日、原処分庁に対して、平成30年分の所得税等につき、本件29年分更正請求により繰り越されることとなる上場株式等に係る譲渡損失の金額を令和元年以後に繰り越すこと及び不動産所得の金額の計算上事業税の額を必要経費に算入することを求めて、通則法23条1項の規定に基づき、更正の請求書を提出した。
 その際、Xは、上記の更正の請求書に、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」を添付した。

⑥ 平成29年分の更正処分(第二次)
 原処分庁は、本件29年分更正請求に対して、令和2年6月9日付で、本件29年分更正請求に係る上場株式等の譲渡損失の金額に誤りがあることなどから、これらを是正した上で、上場株式等に係る譲渡損失の金額を平成30年以後に繰り越すことになるなどとして、更正処分をした。

⑦ 平成30年分の更正処分(第二次)
 原処分庁は、上記⑤の更正の請求に対して、令和2年6月9日付で、不動産所得の金額の計算上事業税の額を必要経費に算入することには更正すべき理由が認められるものの、上記⑥の更正処分により平成30年に繰り越された上場株式等に係る譲渡損失の金額については、Xが本件29年分更正請求の前に本件30年分確定申告書を提出していたから、令和元年以後に繰り越すことはできないとして、更正処分(以下「本件更正処分」という。)をした。

⑧ 審査請求Xは、令和2年8月28日、本件更正処分を不服として審査請求をした。

(2)本件の主な争点

 Xが本件30年分確定申告書を提出したことについて、連続申告要件を満たすか否かである。

(2)裁決要旨(棄却)

① 措置法37条の12の2第5項の規定の適用は、同条6項に規定する上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税につき同条7項に規定する確定申告書を提出し(損失発生年分要件)、その後において同項に規定する確定申告書を連続して提出している(連続申告要件)ことが要件とされるところ、この連続申告要件については、同項が「その後において連続して確定申告書を提出している場合」と規定している以上、損失発生年分要件を満たした後に、連続して確定申告書が提出されなければならないことは文理上明らかである。

② 措置法通達37の12の2-5(以下「本件通達」という。)は、損失発生年分要件を満たさない確定申告書が提出された場合であっても、通則法23条に規定する更正の請求に基づく更正により、新たに上場株式等に係る譲渡損失の金額があることとなったときは、損失発生年分要件を満たす旨定めているところ、措置法37条の12の2第5項の規定の対象が上場株式等の譲渡により生じた損失の金額に限られることから、当該損失の金額を確定申告上明らかにさせる必要があるという損失発生年分要件の趣旨に沿うものであり、当審判所も相当と認める。
 以上のことからすると、本件通達の定めが適用される場合であっても、上記更正の後に、その後の年分の確定申告書が順次連続して提出されない場合には、連続申告要件は満たされないと解される。

③ Xは、損失が発生した本件29年分確定申告書による申告に際し、本件29年分確定申告書付表の「翌年以後に繰り越される上場株式等に係る譲渡損失の金額」欄に零円と記載し、譲渡損失の金額を記載しなかったのであるから、Xが、本件29年分確定申告書に措置法施行規則18条の14の2第3項の規定による読替え後の同条2項1号が規定する譲渡損失計算明細書を添付したとは認められない。そうすると、Xが本件29年分確定申告書を提出したことについて、損失発生年分要件を満たしているとはいえない。
 そして、Xは、その後の令和2年6月9日付でされた更正処分(本件29年分更正請求に基づく更正)により、損失発生年分要件を満たすことになったところ、Xは、損失発生年分要件を満たす前の平成31年3月14日に本件30年分確定申告書を提出していたのであるから、Xが本件30年分確定申告書を提出したことについて、連続申告要件を満たしていないことは明らかである。

④ Xは、平成30年3月15日、措置法37条の12の2第6項に規定する上場株式等に係る譲渡損失の金額が零円である旨記載した本件29年分確定申告書付表を本件29年分確定申告書に添付して提出したから、同日、損失発生年分要件を満たした上で、その後において連続して本件30年分確定申告書を提出したから、連続申告要件を満たしている旨主張する。
 しかしながら、そもそも本件29年分確定申告書付表の添付がある本件29年分確定申告書を提出したことについて損失発生年分要件を満たしておらず、よって、本件30年分確定申告書を提出したことについて連続申告要件を満たしていない。

⑤ Xの平成30年分の所得税につき、連続申告要件を満たしておらず、更正処分により平成30年に繰り越された上場株式等に係る譲渡損失の金額を令和元年以後に繰り越すことはできない。

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