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役員給与はいつから変更できる?定時株主総会の日・支給日と定期同額給与の3か月ルール

役員給与の「3か月ルール」は支給日のルールではない

 定期同額給与について、「役員給与は事業年度開始から3か月以内なら変更できる」と説明されることがあります。

 この説明は大筋では間違いではありませんが、実際に役員給与を変更するときには、「3か月以内」という言葉だけでは、新しい給与をいつから支給すればよいのかまでは分かりません。

 例えば、同じ3月末決算の会社でも、定時株主総会を4月25日に開催する会社と5月25日に開催する会社があります。また、役員給与の支給日についても、毎月20日、毎月末日など会社によって異なります。

 この問題を正確に理解するためには、次の3つを区別する必要があります。

・定期給与の額をいつ「改定」したのか
・その改定がどの職務執行期間に係る給与を定めたものなのか
・「給与改定後の最初の支給時期」がいつなのか

 定期同額給与そのものの基本的な仕組みについては、「役員給与(報酬)は、定期同額給与が利用しやすい」で詳しく解説しています。

「3月経過日等」までに必要なのは新額の支給ではなく給与額の改定

 定期同額給与の通常改定については、原則として、その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日である「3月経過日等」までに、定期給与の額の改定がされる必要があります(法令69①一イ)。

 ここで重要なのは、3月経過日等までに必要なのは、新しい給与額を実際に支給することではなく、「定期給与の額の改定」がされることです。

 一方、給与額の改定が行われた場合の定期同額給与への該当性については、「給与改定前の最後の支給時期」と「給与改定後の最初の支給時期」を基準として期間を区分し、それぞれの期間の各支給時期における支給額が同額であるかどうかを判定します(法令69①一)。

 したがって、「3月経過日等までに給与額を改定したか」という問題と、「改定後の新しい給与額をどの支給時期から適用するか」という問題は、分けて考える必要があります。

法人税基本通達逐条解説も「改定」と「支給時期」を区別している

 法人税基本通達9-2-12に関する逐条解説でも、定期給与について通常改定が行われた場合には、3月経過日等までに「改定」が行われていることと、その改定前後の各「支給時期」における給与額がそれぞれ同額であることを区別して説明しています。

 また、法人税基本通達9-2-12の2では、3月経過日等後の通常改定が認められる「特別の事情」の例として、親会社の定時株主総会終了後でなければ、その法人の役員の「定期給与の額の改定に係る決議」ができない場合が挙げられています(法基通9-2-12の2)。

 したがって、「3月経過日等まで」という期限を、改定後の新しい給与の支給期限と理解するのは適切ではありません。

国税庁Q&A Q2がこの問題を具体的に説明している

 役員給与の改定日と支給時期との関係について、特に重要な一次資料が国税庁「役員給与に関するQ&A」Q2です。

 このQ&Aでは、3月決算法人が6月25日の定時株主総会で、役員給与を月額50万円から60万円へ増額改定することを決議したケースが取り上げられています。

 この法人の役員給与の支給日は毎月末日ですが、新しい60万円を総会直後の6月30日から支給するのではなく、7月31日支給分から適用することとしています。

 国税庁は、この場合、4月から6月までの各支給額が同額で、7月から翌年3月までの各支給額が同額であれば、それぞれ定期同額給与に該当するとしています(国税庁「役員給与に関するQ&A」Q2)。

6月25日に改定して7月31日から新額でもよい理由

 国税庁Q&A Q2では、その理由も説明されています。

 役員の職務執行期間は、一般に定時株主総会の開催日から翌年の定時株主総会の開催日までであると解され、定時株主総会における定期給与の額の改定は、その定時株主総会開催日から開始する新たな職務執行期間に係る給与額を定めるものと考えられています。

 その上で国税庁は、6月25日から開始する新たな職務執行期間に係る最初の給与支給時期を、定時株主総会直後に到来する6月30日ではなく、その翌月の7月31日とする定めも一般的であるとしています(国税庁「役員給与に関するQ&A」Q2)。

 したがって、定時株主総会の後に最初に到来する給与支給日から、必ず新しい給与額を支給しなければならないわけではありません。

国税庁Q&Aでは6月30日から新額とする方法も認めている

 さらに重要なのは、国税庁Q&A Q2が、7月31日から新額とするケースだけを認めているのではないという点です。

 同Q&Aは、6月25日の定時株主総会の決議に基づいて6月30日支給分から増額する場合についても、4月及び5月の支給額が同額で、6月から翌年3月までの支給額が同額であれば、それぞれ定期同額給与に該当すると明記しています。

 つまり、国税庁Q&A Q2では、6月25日の定時株主総会で給与額を改定する毎月末日払いの法人について、次の2つの取扱いが明確に認められています。

新額の適用開始取扱い
6月30日から新額定期同額給与となり得る
6月30日は旧額、7月31日から新額定期同額給与となり得る

 この2つの取扱いについては、いずれも国税庁Q&A Q2に明示されています。

「月末払いだから2つ選べる」という一般ルールではない

 ここで注意しなければならないのは、「毎月末日払いなら、新額を適用する月を2つから自由に選べる」という法令上の一般ルールが存在するわけではないということです。

 法人税法や法人税法施行令には、「月末払いの場合には、定時株主総会直後の月末又は翌月末のいずれから新額を適用してもよい」という規定はありません。

 月末払いについて6月30日開始と7月31日開始の双方が認められると判断できるのは、国税庁「役員給与に関するQ&A」Q2が、この具体的な事例について両方の取扱いを明示的に認めているためです。

 したがって、「月末払いには一般に2つの選択肢がある」と理解するのではなく、「国税庁Q&A Q2では、6月25日総会・毎月末日払いという具体例について、6月30日開始と7月31日開始の双方が認められている」と理解するのが正確です。

毎月20日払いについて国税庁Q&Aが示している取扱い

 同じ国税庁Q&A Q2では、毎月20日に役員給与を支給している3月決算法人の例も示されています。

 6月25日に定時株主総会で給与額を改定した場合について、

4月20日
5月20日
6月20日

を改定前の各支給時期とし、

7月20日
8月20日
その後翌年3月20日まで

を改定後の各支給時期としています。

 つまり、

6月20日 旧額
6月25日 給与額を改定
7月20日 新額

という関係です(国税庁「役員給与に関するQ&A」Q2)。

 また、同Q&A Q3では、3月決算法人が5月25日の定時株主総会で給与額を改定し、毎月20日払いについて6月支給分から新しい給与額を適用する事例が示されています(国税庁「役員給与に関するQ&A」Q3)。

毎月20日払いには「さらに翌月からでもよい」というQ&Aはない

 月末払いでは、国税庁Q&A Q2によって、総会直後の6月30日ではなく7月31日から新額とすることが明確に認められています。

 これに対し、毎月20日払いについて国税庁資料で確認できるのは、

5月25日改定 → 6月20日から新額
6月25日改定 → 7月20日から新額

という取扱いです。

 例えば、

4月25日 給与額を改定
5月20日 旧額
6月20日 新額

とするように、定時株主総会後最初に到来する20日の支給日を旧額のままとし、さらにその翌月20日から新額にする取扱いを一般的に認めた国税庁の公表資料は確認できません。

 したがって、「月末払いで翌月末からの新額が認められているのだから、20日払いでも総会後最初の20日を飛ばして、その次の20日から新額にしてよい」と当然に類推することはできません。

4月25日総会・5月25日総会ではどう考えるか

 以下では、3月末決算で、従前の役員給与60万円を80万円へ増額するケースを考えます。

毎月20日払い

定時株主総会国税庁資料の考え方から最も素直に考えられる新額開始時期
4月25日5月20日
5月25日6月20日

 5月25日総会から6月20日開始については、国税庁Q&A Q3に同様の事例があります。

 4月25日総会から5月20日開始については、その日付そのものを国税庁が取り上げた事例ではありませんが、Q2の「6月25日改定→7月20日」、Q3の「5月25日改定→6月支給分」という考え方をそのまま当てはめたものです。

 したがって、4月25日の定時株主総会で給与額を改定した一般的な毎月20日払いの会社では、

4月20日 旧額60万円
4月25日 80万円へ改定
5月20日 新額80万円

という形が、国税庁資料から最も素直に導かれる取扱いと考えられます。

毎月末日払い

 毎月末日払いについては、国税庁Q&A Q2が直接扱っているのは「6月25日総会」です。

 Q2では、

6月25日総会 → 6月30日から新額
6月25日総会 → 7月31日から新額

の双方が認められています。

 したがって、このQ2の考え方を4月25日又は5月25日の総会に当てはめれば、次の取扱いが考えられます。

定時株主総会Q2の考え方を当てはめた場合
4月25日4月30日又は5月31日から新額
5月25日5月31日又は6月30日から新額

 ただし、4月25日・5月25日という日付について国税庁が直接回答しているわけではありません。

 あくまで、6月25日総会について示されたQ2の取扱いを、それぞれの日付に当てはめたものです。

なぜ毎月20日払いと毎月末日払いの結論が異なるのか

 ここで、「毎月20日払いでも毎月末日払いでも、総会後に次に到来する支給日は1つしかないのだから、同じ取扱いでなければおかしいのではないか」という疑問が生じます。

 例えば4月25日に定時株主総会を開催した場合、

毎月20日払い → 次の支給日は5月20日
毎月末日払い → 次の支給日は4月30日

です。

 確かに、いずれの場合にも「次に到来する支給日」は1つです。

 したがって、毎月末日払いについて2つの開始時期が考えられる理由を、「総会後同じ月に支給日が来るから」といった一般理論だけで説明するのは適切ではありません。

 毎月末日払いについて総会直後の支給日と翌月の支給日の双方が認められる最大の根拠は、国税庁Q&A Q2が、6月25日総会について、6月30日開始と7月31日開始の双方を具体的に認めていることにあります。

 したがって、毎月20日払いと毎月末日払いとの違いについては、「法令上、支給日に応じて異なる選択肢が定められている」と考えるのではなく、国税庁Q&Aによって確認できる具体的な取扱いの範囲が異なっている、と考えるのが正確です。

4月25日総会・毎月20日払いで6月20日まで新額を遅らせてもよいのか

 例えば、次のケースです。

4月20日 60万円
4月25日 定時株主総会で80万円へ改定
5月20日 60万円
6月20日 80万円

 法人税法施行令69条1項1号イは、3月経過日等までに「定期給与の額の改定」がされることを要件としているため、条文だけからこの取扱いを直ちに否定できるとは限りません。

 しかし、一般的な毎月20日払いの会社について、4月25日に給与額を改定した後、5月20日は旧額を支給し、6月20日から新額へ変更することを一般的に認めた国税庁資料、裁判例又は裁決例は確認できません。

 したがって、「4月25日に改定決議をしたのだから、5月20日でも6月20日でも自由に選べる」と説明するのは適切ではありません。

 国税庁Q&Aの具体例からは、4月25日改定であれば5月20日を改定後最初の支給時期とする取扱いが最も直接的に導かれます。

4月25日総会・毎月末日払いで6月30日から新額にしてもよいのか

 次のケースも同様です。

4月25日 80万円へ改定
4月30日 60万円
5月31日 60万円
6月30日 80万円

 国税庁Q&A Q2で明確に認められているのは、

6月25日改定
6月30日旧額
7月31日新額

というケースです。

 この考え方を4月25日総会へ当てはめれば、

4月25日改定
4月30日旧額
5月31日新額

までがQ2と同じ構造です。

 一方、さらに5月31日も旧額のままとし、6月30日から新額へ変更する取扱いについて、これを一般的に認める国税庁資料、裁判例又は裁決例は確認できません。

 したがって、3月経過日等までの間であれば、新額を適用する支給時期を自由に選択できるわけではありません。

3月経過日等までに決議すれば10月から新額でもよいのか

 例えば、

4月25日 60万円から80万円への増額を決議
4月から9月まで 60万円
10月から 80万円

とするケースです。

 形式上は4月25日に具体的な給与額を決議しているとしても、国税庁Q&Aが明確に認めているのは、定時株主総会から開始する新たな職務執行期間と通常の給与支給サイクルとの関係から、総会直後又はその翌月の支給時期から新額を適用するケースです。

 定時株主総会から数か月間旧額を支給し続け、その後になって新額へ変更するケースについて、「総会での改定決議が3月経過日等までだから通常改定として認められる」とする一次資料、裁判例又は裁決例は確認できません。

 したがって、3月経過日等までに改定決議をしておけば、その何か月後からでも自由に新しい給与額を適用できると考えるべきではありません。

「翌月払い」という呼び方だけでは結論は決まらない

 会社によっては、例えば5月20日に支給する役員給与を、経理上「4月分役員報酬」と呼んでいる場合があります。

 しかし、「5月20日支給分は4月分だから、4月25日の定時株主総会で増額した場合には必ず旧額でなければならない」と一律に考えることも適切ではありません。

 法人税法施行令69条や国税庁Q&Aは、基本的に「給与改定前の最後の支給時期」と「給与改定後の最初の支給時期」に着目して定期同額給与への該当性を判定しています。

 例えば国税庁Q&A Q2は、毎月20日払いについて、

6月20日 旧額
6月25日 改定
7月20日 新額

という区分を示しています。

 したがって、この考え方を4月25日の改定に当てはめれば、

4月20日 旧額
4月25日 改定
5月20日 新額

という関係は、単に5月20日の給与を会社内部で「4月分」と呼んでいることだけを理由として否定されるものではないと考えられます。

ただし報酬規程等で給与の対象期間と金額が確定している場合は個別判断

 もっとも、「翌月払いであっても総会後最初の支給日なら必ず新額にできる」とまで一般化することも適切ではありません。

 例えば、その法人の株主総会決議、取締役会決議、報酬規程その他の資料によって、

「4月1日から4月30日までの職務に対する役員報酬は60万円とし、5月20日に支給する。」

というように、特定の職務期間に対応する具体的な給与額が既に確定している場合には、その給与額を途中で変更することについて個別に検討する必要があります。

 したがって、単に「当月払い」「翌月払い」という呼称だけで判断するのではなく、実際の決議内容、職務執行期間、あらかじめ定められた給与の支給基準及び支給時期を確認することが重要です。

総会開催月から新額にしても日割りの遡及増額になるわけではない

 例えば、4月25日の定時株主総会で役員給与を60万円から80万円へ増額し、4月30日に80万円を支給したとします。

 この場合に、「4月1日から4月24日までの職務は既に終了しているため、その部分について事後的に増額したことになる」と機械的に考えるわけではありません。

 国税庁Q&A Q2は、6月25日の定時株主総会で役員給与を増額し、その5日後である6月30日支給分から新額を適用する場合についても、4月及び5月の支給額と6月以降の支給額がそれぞれ同額であれば定期同額給与に該当すると明示しています。

 国税庁は、役員給与について、暦月の1日から末日までの日々の職務に機械的に日割り対応させるのではなく、一般に定時株主総会から次の定時株主総会までの職務執行期間との関係で考えています(国税庁「役員給与に関するQ&A」Q2)。

国税庁が否定する「遡及増額」とは何か

 一方、国税庁には「定期給与の増額改定に伴う一括支給額(定期同額給与)」という質疑応答事例があります。

 この事例では、3月決算法人が6月末の定時株主総会で役員給与を増額する際、その増額を期首の4月まで遡らせ、4月分から6月分までの増額差額を7月に一括支給しています。

 国税庁は、この増額差額について、既に終了した職務に対して「事後」に給与額を増額して支給したものであるとして、定期同額給与には該当しないとしています。

 したがって、

6月25日総会
→6月30日から新額

というケースと、

6月末総会
→既に旧額で処理された4月・5月等について後から増額差額を追加支給

というケースは区別する必要があります。

 後者は、既に終了した過去の職務について事後的に給与額を増額する点が問題となっています。

申告期限と役員給与の3か月ルールは別の制度

 3月末決算法人で法人税の申告期限の延長を受けていない場合、法人税の確定申告期限は原則として5月末です(法法74①)。

 一方、定期同額給与の通常改定については、一般的な3月末決算法人では6月30日が3月経過日等となります(法令69①一イ)。

 したがって、「法人税の申告期限が5月末だから、役員給与も5月末までに改定しなければならない」という関係にはありません。

 もっとも、一般的な中小株式会社では、定時株主総会で計算書類の承認を受け、その確定した決算に基づいて法人税の申告を行います。そのため、申告期限の延長を受けていない3月末決算法人では、通常、5月末までに定時株主総会を開催することになります(会社法438、法法74①)。

 なお、国税庁Q&A Q2の「6月25日定時株主総会」という事例は、申告期限の問題を説明するための事例ではなく、申告期限の延長の有無も事実関係として示されていません。

「改定日」とはいつなのか

 国税庁Q&A Q2では、6月25日の定時株主総会で具体的な役員給与額の変更を決議した事例について、図上も6月25日を「改定」としています。

 また、Q3では5月25日の定時株主総会による給与額の改定を「通常改定」としています。

 したがって、株主総会、取締役会その他の権限ある機関において、各役員の具体的な給与額を確定的に変更する通常のケースでは、その決議日が給与額の改定日を判断する重要な基準になると考えられます。

 ただし、法人税法施行令69条1項1号イにいう「改定がされた日」が常に株主総会等の決議日であると真正面から判断した裁判例又は公表裁決例は確認できません。

報酬限度額だけでは各役員の具体的な給与額を決めたことにならない場合がある

 株主総会で取締役全員に対する報酬総額の限度額だけを決議し、各役員の具体的な給与額については取締役会等で決定している会社があります。

 このような場合には、報酬総額の限度額を決議した株主総会の日に、各役員の具体的な定期給与額が改定されたとは限りません。

 国税庁Q&A Q2でも、株主総会で役員給与の支給限度額を定め、各人別の支給額を取締役会で決議するなど、会社法等に従って役員給与額を決議する場合には、その各人別の支給額を決議する機関の決議を、Q2における株主総会決議と同様に取り扱って差し支えないとされています。

 したがって、税務上重要なのは、権限ある機関によって各役員の具体的な給与額がいつ確定的に決められたのかという点です。

令和6年8月1日裁決から分かる具体額の決定を証明する重要性

 令和6年8月1日裁決(金裁(法)令6第1号)では、歯科医業を営む医療法人社団の理事長給与について、定期同額給与への該当性が争われました。

 設立総会では理事長の月額報酬限度額が定められていましたが、具体的な支給額をいつ決定したのかを示す資料が確認できませんでした。

 そのため審判所は、7月の給与額改定については7月18日の総勘定元帳計上日、9月の給与額改定については9月17日の総勘定元帳計上日に、それぞれ給与額の改定がされたと推認しています(令和6年8月1日裁決・金裁(法)令6第1号、TAINS F0-2-1296)。

 この裁決からも、役員報酬の限度額だけを定めておくのではなく、各役員について具体的な給与額をいつ決定したのかを客観的な資料によって説明できるようにしておくことが重要であることが分かります。 

同じ役員給与を必ず12か月支給する必要はない

 「定期同額給与」という名称から、一度決めた役員給与は必ず12か月間同じ金額でなければならないと思われることがあります。

 しかし、法人税法には、「同じ給与額を必ず12回支給しなければならない」という要件はありません。

 給与額について通常改定が行われた場合には、その事業年度について改定前と改定後の期間を区分し、それぞれの期間の各支給時期における支給額が同額であるかどうかを判定します(法令69①一)。

同じ給与額が11か月しか続かない場合

 例えば、毎月20日払いの3月末決算法人について、

1年目
5月25日に60万円から80万円へ改定
6月20日から80万円

2年目
4月25日に80万円から100万円へ改定
5月20日から100万円

としたとします。

 80万円が支給されるのは、1年目の6月20日から翌年3月20日までの10回と、2年目の4月20日の1回で、合計11回です。

 しかし、各事業年度について、通常改定の要件を満たし、改定前後それぞれの期間における各支給時期の給与額が同額であれば、80万円が11回しか続かなかったという理由だけで定期同額給与から外れるものではありません。

同じ給与額が13か月続く場合

 反対に、

1年目
4月25日に60万円から80万円へ改定
5月20日から80万円

2年目
5月25日に80万円から100万円へ改定
6月20日から100万円

としたとします。

 この場合、80万円は、1年目の5月20日から翌年3月20日までの11回と、2年目の4月20日・5月20日の2回で、事業年度をまたいで合計13回続きます。

 この場合も、それぞれの事業年度について通常改定の要件を満たし、改定前後の各支給時期における給与額がそれぞれ同額であれば、「13か月同じ給与額が続いた」という理由だけで問題になるものではありません。

 したがって、定時株主総会の開催時期が年によって前後した結果、同じ給与額が11か月、13か月、12か月などと続くこと自体は、定期同額給与への該当性を左右するものではありません。

 重要なのは、「同じ給与額を12回支給したか」ではなく、各事業年度における給与額の改定が法人税法上認められる改定に該当し、改定前後の各支給時期における給与額がそれぞれ同額であるかどうかです(法法34①一、法令69①一)。

議事録には具体的な給与額と適用開始時期を記載する

 役員給与を改定する場合には、税務上の立証のためにも、株主総会議事録、取締役会議事録その他の決定書類に、各役員の具体的な給与額と、新しい給与額をどの支給時期から適用するのかを明確に記載しておくことが重要です。

 例えば、毎月末日払いの会社が5月25日の定時株主総会で月額60万円から80万円へ改定し、6月30日支給分から新額を適用するのであれば、

「取締役甲の報酬月額を60万円から80万円に改定し、令和○年6月30日支給分から適用する。」

など、具体的な給与額と適用開始時期の双方が分かる内容としておく方法が考えられます。

 ただし、実際にどの機関が役員給与額を決定するかは、その法人の定款、既存の株主総会決議、取締役会設置の有無、各役員への個別配分についての委任の有無等によって異なりますので、会社法上適切な手続に従う必要があります。

まとめ

 定期同額給与の「3か月ルール」について、まず重要なのは、3月経過日等までに新しい給与を実際に支給しなければならないという制度ではないことです。

 3月経過日等までに求められているのは、原則として「定期給与の額の改定」です。その上で、給与改定前の最後の支給時期と給与改定後の最初の支給時期を基準として、改定前後の各支給時期における給与額がそれぞれ同額であるかどうかを判定します(法令69①一イ)。

 また、「定時株主総会後最初の支給日から必ず新額にしなければならない」という明文のルールがあるわけでもありません。

 国税庁Q&A Q2では、6月25日に給与額を改定する毎月末日払いの法人について、6月30日から新額とする場合と、6月30日は旧額のままとして7月31日から新額とする場合の双方が定期同額給与となることが明示されています。

 しかし、これは「月末払いなら一般に2つの開始時期から自由に選べる」という法令上のルールがあるためではありません。月末払いについて2つの取扱いが認められると判断できるのは、国税庁Q&Aがその具体的な取扱いを明示しているためです。

 一方、毎月20日払いについて国税庁資料で確認できるのは、5月25日改定なら6月20日、6月25日改定なら7月20日という取扱いです。総会後最初の20日も旧額のままとし、そのさらに翌月20日から新額にすることを一般的に認めた国税庁資料は確認できません。

 したがって、3月経過日等までに改定決議をしておけば、改定後の新しい給与をいつから適用してもよいということではありません。

 役員給与を変更する場合には、「改定日」「職務執行期間」「給与改定後の最初の支給時期」を区別し、その会社の実際の報酬決定方法、支給基準及び議事録等の内容を一致させておくことが重要です。

※本記事は2026年8月26日現在の法令、通達及び公表資料等を確認して作成しています。

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